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第十七話「風の回廊の戦い!②~ヴィナグラート魔城攻略戦⑪~」

いつも拙作を読んでいただき本当にありがとうございます!

新作が書きあがりましたので、投稿いたします!

どうぞよろしくお願いいたします!

 【ニナ視点】


 ど、どうよ、やってやったわ・・・!

 耳栓をしていても、アイリスの凄まじい歌がまるで毒のように身体中に染み込んできて、歯を食いしばって必死で耐えていないと意識が遠のいていく。そんな歌を直接耳で聴いて、今までに無事だったヤツは一人もいないわ。


 あのデカ女は床に倒れこんで、苦しそうに全身を痙攣させていた。

 無理はないわね、だってあの歌は、王家の墓で私たちが遭遇した邪神の意識を奪うほどの破壊力を誇る代物なんだから。唯一無事なのは、こんな悪魔の歌を歌っていたアイリス本人だけだ。


 「おい、どうして私の歌を流したりしたんだ?」


 「・・・それについては、あとでちゃんと説明するわよ。まだ、決着が着いていない」


 「ふむ、私のあまりにも素晴らしい美声に思わず倒れてしまうほどに感動したのか。それは仕方がないな、なぜなら、この私の歌なのだからな」


 あー、ハイハイ。

 自分には非の打ちどころが一つもないって本気で信じ込んでいる天上天下唯我独尊ちゃんには何を言っても馬の耳に念仏だわ。下手なことを言って機嫌が悪くなったら面倒くさいし、黙っていようっと。


 「・・・よくも、やってくれたわね・・!!」


 地の底から響いてくるような怨嗟と怒りに満ちた声が聞こえた瞬間、背筋に寒気が走り、私たちは身構えた。あの歌でしばらくは精神が安定しないから、その間に彼女の動きを止めて情報を聞き出そうと思っていたけど、そう簡単にはいかないか。


 デカ女ことファフナーは、般若のような形相を浮かべて、指先から鋭い爪を伸ばして私たちを睨みつけてくる。手に持っている杖を振りかざすと、再び時計台の中に結界を作り出した。そして、私たちを見下ろすように祭壇に飛び上がると、地面に杖を突いた。


 「お前たちだけは絶対に許さない!!我が主シロウ様の居城をあのようなおぞましい歌でよくも汚してくれたなぁぁぁーーーっ!!命を持って、この大罪を償うがいい!!」


 「おぞましい?誰の歌がおぞましいと言うのだ!?私の歌がおぞましいと言いたいのか!?」


 ええ、おそらくあの歌の酷さを理解していないのはアンタだけですよ。

 他の連中が聞いたら、間違いなくアイリスが悪いと言うでしょうね。


 「来るわよ!!」


 「深き地の底から来たれ、我がしもべよ!!」


 地面に魔法陣が浮かび上がり、禍々しい血のような赤い光と共に現れたのは全身が骨で出来た巨大な獅子のアンデッド【スカルレグルス】だった。生前は血肉を好んで鋭い牙と爪で獲物を引き裂き、骨まで砕いて貪り食らうほどの脅威的な食欲と、槍や剣の刃を弾くほどの強靭な筋肉で覆われた肉体を持つ獰猛なモンスターが、アンデッドとして復活したことによって知性を失い、さらに食欲に従順な魔物と化している。


 ヤバいわね、確かコイツ冒険者ギルドでは危険度の高い【見つけたら即刻ギルドに報告!絶対に近づくな!】とかお触れが出ていて、S級クラスの冒険者でも迂闊に手が出せないヤツじゃない。


 「・・・まあ、もうやるしかないんだけどね」


 そう、誰が相手だろうと、私たちは先に進むしかないのだ。

 大事な仲間を取り戻すためにも、愛する弟分を取り戻すためにも、勇者や魔神のふざけた遊びを止めるためにも、私たちは戦う。


 それに、さっきから随分と私たちのことを見下してくれているじゃない?

 私の中の【嫉妬】が今にも身体の中から飛び出しそうになるほどに暴れている。

 

 「アイリス、ここは私にやらせて」


 「・・・分かった。ここではお前の方が適任だろうしな。ただし、負けは許されんぞ」


 「私が負けると思っているの?そういう上から目線な所・・・本当に嫉妬するわ」


 ああ、心地よい。

 自分の中の嫉妬が高まって、怒り、殺意、妬み、嫉みが渦巻いて私の力になっていくのを感じる。


 「貴方たちのような小うるさい虫けら程度に、何が出来るのかしら!?」

 

 「・・・虫けらねぇ。いいわ、もっと私を見下しなさいよ。笑いなさいよ、嘲りなさいよ。貴方に対する嫉妬が頂点に達する時、私の中の魔王の力が高まるのだから」


 バックルをお腹に押し当てると銀色の光と共に帯が飛び出し、腰に巻き付いた。

 緑色の宝箱を魔力で生み出すと、バックルに押し当てて鍵を回し、宝箱の蓋が開くと同時に部屋中の影が無数の蛇に変わり、私の身体に集まってくる。


 「ご先祖様、思い切り暴れますよ!」

 

 『ええ、七大魔王が一人【嫉妬】のヴェルディアの力、存分に使いなさい!』


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 【三人称視点】


 ニナの足元から巨大な緑色の蛇の形をした魔力が大きく口を開き、ニナを丸ごと飲み込んだ。

 そして、蛇の姿が消えるとそこには劇的に生まれ変わったニナの姿があった。


 まず、これまでコンプレックスだったなだらかな胸が、これまでに味わってきた屈辱を晴らすかのようにボンッと大きくなり、スラリとした長い脚、キュッと引き締まった腰つき、モデルのようなスタイルが磨き抜かれた姿に変わった。


 腰まで伸ばした緑色の髪。

 身体中に浮かび上がる緑色の紋様。

 緑色を基調とするドレスに、神秘的な光沢を放つ美しい銀のアーマーが装着されて、胸元のプレートには【Envy】と刻まれている。両手に持っている双剣には黄金の装飾が入り、闇の魔力が刃から迸っている。腰まで伸ばした髪を一匹の蛇が結い上げてポニーテールにまとめ上げていく。


 「・・・何!?」


 「・・・お、お前、ニナなのか!?」


 「・・・ええ、他に誰がいるのかしら?ああ、妬ましいわ。目に映るすべてのものが妬ましい」


 気だるげな瞳を開くと、地面にいくつもの巨大な緑色の目が現れて、先端に鋭い刃が着いた鎖を勢いよく放った。無数の刃がスカルレグルスの身体中に突き刺さり、骨を砕き、ジャラジャラと鎖が巻き付いていく。スカルレグルスが必死で振りほどこうとするが、鎖はビクともしない。


 「・・・私を見下すその大きな体躯が妬ましい、私の身体を容易く引き裂く鋭い爪が妬ましい、身体中を拘束されてもなお失わない闘志が妬ましい。だから、嫉妬が渦巻く闇の底に沈め」


 まるで歌うかのように、凛とした声でスラスラとつぶやく。

 そして、鎖が力強く地面の下に戻っていくと、スカルレグルスが魔法陣の中に沈んでいく。必死であがくが、あがけばあがくほどに鎖の力が強まり、スカルレグルスは絶叫を上げながら魔法陣の中へと飲み込まれていった。


 「バ、バカな!?私のとっておきの使い魔をいとも簡単に・・・!?」


 ファフナーが動揺して思わず叫んだ。

 しかしすぐさま表情が険しくなり、杖を回転させると地面を突き、青白い光線をニナに目掛けて放った。

 

 「あらあら、どうしたのかしら?すごく怖い顔をしているじゃない?」


 「黙れぇ・・・!!」


 「あの程度でまさかとっておきという言葉が出てくるとは思わなかったわ。拍子抜けもいいところよ」


 「黙れぇぇぇーーーっ!!」


 「焦っているの?雑魚だと思っていた私たちを簡単に倒せないからって、焦っているのが分かるわよ?私たちの強さが想像以上で、悔しいんでしょう?」


 ニナのあおりに激昂して、冷静さを失ったファフナーが杖を振り回して光線を発射する。しかし、ニナが地面を踏みつけると無数の鎖が飛び出して、光線を弾き飛ばした。無数の緑色の目がまるで彼女を哀れむようにジィっと見つめている。ファフナーの胸の奥から湧き上がる怒りを煽り、次第に平静さを失わせていく。


 「その程度のことで、動揺して自分を見失うなんて、アンタ、本当は大したことないんじゃないの?」


 決定的な一言を受けて、ファフナーの理性の糸がブチブチブチっと音を立てて切れた。

 獣のような咆哮を上げて、杖の先端の鋭い刃を突き出しながらニナに向かって繰り出してくる。しかし、結界で自分の安全を保ちながら戦っていた彼女が防御を止めて、攻撃に全神経を集中するのは悪手だ。地面に杖を突きさして次の攻撃を繰り出そうとした瞬間、彼女が振り返るとそこにはすでに双剣を振り上げているニナの姿があった。


 彼女の放つ嫉妬を浴びることによって、相手は冷静な思考や分析が出来なくなる。

 湧き上がる怒りに駆られて、自分がニナの掌の上で踊らされていることにも気づかずに、感情的になって攻撃を繰り出す。これが本能とパワーにものを言わせる脳筋タイプだったら、ニナが確実に不利に陥るが、彼女には高い知能と鼻っ柱が伸びて天狗になっていることに気づいた。そこを嫉妬で煽ることによって、ファフナーは哀れにもニナの玩具と化した。


 「なっ・・・!!」


 「覚えておきなさい。度が過ぎる嫉妬は自らの身を亡ぼすわよ」


 緑の閃光が走る。


 身体が引き裂かれる鈍い痛み、火を帯びたような激痛と熱さ、ファフナーの身体が大きく吹き飛ばされた。床をバウンドして、石作りの祭壇に身体を思い切り叩きつけられると、口から血液の塊を吐き出し、激しくせき込む。

 

 顔を上げると、そこには緑色の目が空中や地面に浮かびあがり、そこから無数の緑色の刃に鎖が着いた武器がゆっくりと出てくる。


 「・・・ちっ!!」


 ファフナーが杖を構えて身体が光に包まれると同時に、無数の鎖が飛び出して一斉に襲い掛かった。刃の部分が蛇の頭のように開き、意思を持つ生き物のように襲い掛かる。

 

 「・・・諦めが悪いわね」


 放った鎖が弾かれて、ニナが舌打ちする。

 そして、再び上の階に移動すると、彼女は階段を駆け上がっていく。


 「逃げるつもりか!?」


 「逃がさないわよ」


 無数の鎖が飛び出すと、絡み合って巨大な鎖の塊になると上の階のフロアに喰らいつき、その上をニナとアイリスが駆け上がる。


 「逃げられたら厄介だぞ!」


 「大丈夫よ、私の鎖は一度噛みついた相手は絶対に逃さないわ!私の嫉妬を甘く見るんじゃないわよ、地獄の果てまで追いかけてやるわ!!」


 「・・・何というかお前の新しい能力って、質が悪すぎるヤンデレのようだな」


 「もうちょっとマシな言い方はないの!?」


 ニナがツッコミながらも、上に向かって駆け上がっていく。

ニナの内心「ついに巨乳デビューしたわぁぁぁっ!!やっふー!!やっふー!!これでツルペタ枠はビビアナだけよ、ざまあみなさい、アーッハッハッハッハッハ!!」


ビビアナ「・・・・・・唯一の同胞を失ったような気がする」


次回もどうぞよろしくお願いいたします!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 投稿待ってましたっ! 遂に本格的なバトルに突入しましたね、どうせめぎあう展開になるのか楽しみでニナのパワーアップ形態などもあって面白かったです。 ただ未だカウントダウン執行中なのが知られて…
[一言] ブロンズ・ルド「アイリス、ほんとに自覚ないんだな 「おぞましい?誰の歌がおぞましいと言うのだ!?私の歌がおぞましいと言いたいのか!?」とか 自分だけ何も知らないみたいなこと言ってるよ」 首領…
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