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第十話「地の通路の戦い!①~ヴィナグラート魔城攻略戦④~」

投稿が遅れて申し訳ございません。

新作が書き上がりましたので、投稿いたします。

どうぞよろしくお願いいたします!

 【三人称視点】


 「・・・邪眼王も随分と、手の込んだおもてなしをするものじゃのぉ」


 ヴィナグラート魔城の地下水道に設けられた4つの通路に吸い込まれていった桜たちの姿を、水晶玉で一部始終見ていた高森は、呆れたようにため息をついた。


 まとめて倒すよりも、戦力を分けて出来る限り確実に敵を一体一体ずつ倒していく戦略を選んだのは合理的ともいえるが、仲間を一人ずつ減らしていき、桜たちを仲間がどうしているか分からないという不安に陥らせることで、精神的に揺さぶりをかけて、じわじわと苦しんでいく姿を見たいからという理由で、魔城の地下通路をこのような形に悪趣味な改装を施したのだ。


 「・・・まあ、ワシにとっては好都合じゃがの。一人ずつ時間がかかったとしても、傭兵団の全員が魔王の力を覚醒しなければ、邪眼王はもちろんじゃが、あそこまで増長してしまった松本は倒すことは出来んからな」


 ここで全員が全滅する程度なら、どのみち生き残って邪眼王に挑んだところで返り討ちに遭うのが落ちだろう、と高森は納得することにした。そして、水晶玉に映し出された寅若光の思い詰めた表情を見て、高森は神妙な面持ちになる。


 「・・・寅若よ、お主は自分の破滅を覚悟の上で動いておるのか?お主が死んで詫びたところで、梶が苦しむだけだということに、なぜ気づかないのじゃ?」


 まるで光を哀れむようにつぶやくと、高森はやりきれない表情を浮かべて、その場を後にした。


 「・・・死んで花実など咲くものか」


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 「そういうのを″死んで花見の酒モナカ"って言うんだよ」


 「それを言うなら″死んで花実が咲くものか"だと思う」


 地の通路に飛ばされたのは、レベッカ・レッドグレイブと寅若光の猪突猛進大暴走コンビであった。


 「そうなのか?トーマがそう言う風に言っていたの、聞いたことがあるぞ?」


 「・・・アイツ、ことわざや日本史、世界史といったのが大の苦手だったからな」


 自分たちがいた世界で、斗真の文系の成績は学年最下位レベルだったこととか、小学生でも知っているようなことわざでも間違えて覚えているせいで、テストに自信満々でとんでもない珍回答を書いて、教師たちを泣かせまくったことがあったことなど、斗真がその場にいたら発狂してしまうような恥ずかしい過去を、光はポンポン話していく。


 その代わり、理数系はトップクラスで、学校創立以来の最高の成績を収めている優等生であったことや、数学や物理に関しては無敵で、英語も外国人教師も顔負けの流暢な英語を話すことが出来ることも話した。


 「・・・トーマのこと、なんだかんだ言いながらも好きなんじゃねえかよ。お前、トーマの話をしている時、すごくうれしそうだぜ」


 「何を言っているんだ!?」

 

 顔を赤くしながら慌てふためく光を見て、レベッカは笑みを浮かべる。

 今の彼女は、斗真に復讐心を抱き、憎悪と悪意に満ちていた姿と同一人物とは思えないほどに、年相応の少女らしい一面を持つ、どこにでもいるような普通の女の子だった。


 「・・・アイツと私はあくまでも、幼なじみさ。それに、もう今更どんな顔をしてアイツに会えばいいのか、私には分からない。私はずっとアイツのことを傷つけていたんだからな」


 「でもよ、もうここまで来ちまったんだし、腹をくくるしかねえだろう?やると決めたら、当たって砕けるぐらいの勢いで行かないでどうするんだよ?」


 レベッカが光の背中を軽く叩きながら、あっけらかんと言った。

 斗真のために脱走までやらかしたにも関わらず、いざ斗真ともう一度向き合って話をしようとすると、彼女のことをもう一人の臆病な自分が止めてくる。


 「・・・過去のことをいくら悔やんでも、変えることは出来ねーよ。お前に変えることが出来るのは”現在いま”なんじゃねーのか?」


 「・・・現在いまを変える?」


 「ああ、あの時こうすればよかったとか、あの時に戻れたらとか、そんなことは出来やしねえ。出来ねえんだったら、もういっそ開き直って今の自分を変えるしかねーよ。本当に変わりたいなら、泣き言も捨てて、言い訳も言わないで、自分がなりたかったものを目指してもう一度突っ走ればいい」


 レベッカが光に振り向いて、太陽のように暖かく包み込むような笑顔を浮かべた。


 「現在いまの自分が変われば、未来の自分も変えることが出来るんじゃねえか?今よりも悪いことになるかどうかは分からねえが、何もやらないままで、何も変わらねえままでいるよりは、多分考え方も変わると思うぜ」


 「・・・今の自分を変えれば・・・未来を、変えられる・・・」


 「それに、トーマのヤツ、本当についてねえからな。謝りに行く前に落とし穴に落ちていたり、お供え物のまんじゅうを拾い食いして腹を壊したりして、気が付いたらまたポックリかもしれねえ。早く謝りに行かねえと、またいなくなっちまうかもしれねえだろう?」


 あり得ない、とは言い切れない。

 そこまで不運だらけの人生を送っているのに、よくもまあ17年間も無事過ごしてきたものである。酷い物言いのようにも聞こえるが、光は不思議と気持ちが前向きになっていくような気がした。


 レベッカ・レッドグレイブがくせ者だらけの傭兵団の団長として、皆から慕われているのはこうした懐の大きさと面倒見の良い性格、ふさぎ込んでいた気持ちに風穴を開けてくれるところなのだ。彼女と話していると、悩んでいることが小さく思えて、前向きに考えられるようになるのだ。

 

 「・・・早くトーマに会いに行こうぜ。オレはもうトーマに会いたくて会いたくて、ガマンが出来ねえからな!もたもたしていると、置いていくぜー?」


 そう言って、おどけながら走り出そうとした時、レベッカの足が急に止まった。


 「どうかしたのか?」


 「匂うぜ。墓土と死体の匂いのほかにも、ものすげえ臭い悪意の匂いがプンプンしやがる」


 眉をひそめて、レベッカが地面を蹴り飛ばすと奥に向かって駆け出した。光も慌てて、後ろからついていく。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 ”ウオオオオオオオオオオオッ!!!”


 長い通路を走り抜けて大きな扉が見えてきたとき、扉の向こうから空気がビリビリと震えるような怒号が聞こえてきた。怒り、憎悪に満ちた叫び声が地面を揺らし、何かものを叩きつけているような耳障りな音が衝撃と共に伝わってくる。


 「ケッ、この先でどこの酔っ払いか知らねえけど、随分と荒れているみたいだな」


 「迂闊に近づいたら危険だ。あそこに通路がある。あそこから部屋の中の様子が見えるかもしれない」


 光が指さした先には、部屋の上に通じている回廊の扉があった。

 

 「あそこから部屋の中を見られるのか」


 「部屋に飛び込んでいく前に、誰が暴れているのか調べてみよう」


 二人は扉に向かって、ノブを回した。

 鍵はかかっていなかった。扉を開けると、階段があり、駆け上がると中の部屋を見渡せる回廊があった。

 気配を隠し、隠れながら頭だけを覗かせて部屋の様子をこっそりと覗き見る。


 「ウオオオオオオオオオオオオオッ!!!」


 二人の目に飛び込んできた光景、それはまさに地獄のような光景だった。

 

 背の丈が3メートル以上はある巨大な体躯、腐り切って所々から骨が見え隠れしているが、生前は相当鍛え抜かれていたと思われる分厚い筋肉を持つ巨漢のゾンビが両手に持っている巨大なハンマーを振るって、雄たけびを上げながらスケルトンの兵士たちを次々と殴り飛ばしていた。


 ハンマーの一撃を食らい、スケルトンの兵士は壁に叩きつけられて、粉々に砕かれていく。

 犠牲となった魔物の中には女性のヴァンパイアもおり、彼女たちは顔を執拗に殴られて原形を保てないまでに潰されていた。


 「フハハハハ!!俺サマノ筋肉ノ糧トナルガイイ!!コノ程度ノ玩具デハ、面白クナイ!!オノレ、梶ィィィッ!!幕ノ内ィィィッ!!憎イ、憎イ、憎イィィッ!!」


 胸にはむき出しになった心臓が飛び出し、ドクンドクンと不気味な音を立てて脈を打っている。

 頭には曲がりくねった巨大な角が二本生やし、目は片目がどろりと濁った金色の光を放っている。

 その異形の姿を見た瞬間、光は思わず息をのんだ。




 「・・・あれは、雨野!?」


 「アメノ?確か、それって、斗真を追放して殺そうとしたバカ勇者の一人だったか?でも、アイツは桜が王家の墓で倒したはずだぜ?」


 「でも間違いない。あの顔は間違いなく雨野柳太郎だ」




 【ドラブグル】。

 アンデッドの一種で、生前は戦士や格闘家と言った人物が死後に魔力を得て、アンデッドとは異なる驚異的な体力と魔力を手に入れた異形の姿となって復活した魔物。

 

 かつて勇者だった雨野柳太郎は、斗真と桜に対する恨みから、何らかの理由でアンデッドとして復活を果たしたようだ。憎しみに完全に心を支配されており、目に映る自分の部下としてあてがわれたはずの魔物たちに次々と襲い掛かり、生前のように女性の顔を潰れるまで殴りつける残虐的な行為を楽しんでいた。


 「・・・そうかい、アイツがトーマの人生をメチャクチャにしてくれやがったアメノってヤツか」


 レベッカが大剣を取り出して、八重歯をむき出しにして獰猛な笑みを浮かべた。


 「嬉しいじゃねえか、トーマをずっと苦しめてきた大バカ野郎と出会えるなんてよ。思い切り、ブッ飛ばしてやりたかったんだ」


 「レベッカ、アイツからかなり強い魔力を感じる。おそらくだが、ヤツがこの通路を守っている番人かもしれん。あそこに、別の部屋に繋がる扉があるからな」


 「おうおう、それなら尚更相手にしてやらねえとなァ」


 レベッカが通路から飛び出すと、大剣を振り上げて一気に襲い掛かった。


 「覚悟しろや、このバカ勇者がぁぁぁっ!!」


 「グオオオオオオッ!?」


 腐った肉に刃がめり込み、袈裟懸けに切り裂く。

 傷口から炎が噴き出し、ドラグブルは悲鳴を上げてのけぞった。


 「・・・相手になってもらうぜ、デカブツさんよぉ!!」


 レベッカが大剣を構えて、不敵に微笑んだ。

因縁の勇者、雨野柳太郎が復活!

アンデッドとなったレベッカと、次回、一騎討ち!


次回もどうぞよろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[一言] レベッカ=サン トーマを追放? ならば殲滅だな!! トーマの人生を滅茶苦茶にした? ならば壊滅だな!! トーマを追放したおかげ?であたしらとトーマの出会いがあった? それはそれ!これは…
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