第九話「まさかの助っ人参上!!~ヴィナグラート魔城攻略戦③~」
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【三人称視点】
「・・・魔力の気配や」
「おや、予想よりも早かったねぇ」
ヴィナグラート魔城の地下にある牢獄。
捕らわれていたオリヴィアとヴィルヘルミーナは、捕らわれの身とは思えないほどにのんびりとした様子で、外から感じる強い魔力に反応した。ヴィルヘルミーナは寝転がっていたベッドから上半身を起こして、大きく体を伸ばす。
「まあ、ウチらを人質として利用するために、ここまで連れてきたっちゅうわけやなさそうやしな」
「そうだとしたら、情報不足もいいところだよねぇ。ボクたちはあの7人の中でも手癖が悪い問題児なのにさ」
そう言って、看守の兵士からくすねておいた鍵の束を取り出して、ヴィルヘルミーナが微笑んだ。
「まあ、あのシロウとか言う兄ちゃんも、お前の色香にコロッと引っかかっただけやなさそうだし、何を考えてとるのか、いまいちよう分からへんけど、いつまでもここにおってもしゃあないしな」
「ボクたちを人質に取ったのに、特に何かしてくる様子もないからねぇ。まるでボクたちをエサにして、団長たちをおびき寄せようとしているともとれるし、もしくは・・・」
「・・・邪眼王がこの魔城の地下に隠れ家として利用しとるっちゅうことを、ウチらを使って教えようとしとるっちゅう可能性もあるな。どうしてそんなことをするのか、それは分からんけど」
「シロウという子からはなぜか敵意とか殺意というものを感じなかったんだよねぇ」
話し込んでいると、屈強な身体、黒い体毛で覆われている猪のような頭部と鋭い牙を生やしたオークの兵士がやってきた。手にはパンと湯気の立つスープ、そして、毛布があった。
「食事ダ」
「おやおや、随分と豪勢な食事だねぇ」
「闇ノ魔神様カラノ、ゴ指示ダ。人質ハ丁重にモテナセトナ。アト、夜ハ冷エルカラ、コレヲ使エ」
そう言って、毛布を差し出すとオークは鉄格子に顔を押し付けるようにして小さな声で話しかける。
「・・・クレグレモ、ココヲ脱獄シヨウトスルナヨ。ココハ、凶暴ナ、アンデッドヤ幽霊タチノ巣窟ダ。ココガ一番安全ナ場所ナノダカラナ。時ガ来タラ、ココカラ出スト、闇ノ魔神様ガオッシャッテイル」
強面なのに、何とも親切な衛兵だった。
「・・・何だか拍子抜けしちゃうぐらい、親切だねぇ」
「あらぁ、衛兵に向いとらんなぁ」
オリヴィアがベッドに寝ころび、パンをかじり出す。どうやら鑑定の魔法をかけてみたが、毒は入っていないらしい。普通に美味しかった。甘くて上質な小麦を使ったパンだ。
「・・・この城の地下に邪眼王が部下を連れてやってきているのは、間違いないんやな?」
「ああ、風で城の中の魔力を読んだ。風で読み取った記憶によると、この地下にはどうやら領主が昔使っていた魔法の研究施設があるみたいだねぇ。そこに引きこもって、何かをしようとしているところまでは分かったんだけど、具体的に何をしようとしているのかは分からない」
「まあ、ろくでもないことを企んどるのは間違いないやろな。ほな、頃合いを見計らって、サクラちゃんたちと合流しよか」
「そうだね。それまで、もう少しの間、ここで何が起きているのか情報を集めるとしようか。手ぶらで帰るわけにもいかないからね」
ヴィルヘルミーナは身体から風を起こすと、空気と一体化させて、城内の中にくまなく魔力を注ぎ込む。これにより、彼女は牢獄の中に捕らわれたまま、城内の様子をまるでその場にいて、自分の目で見て、耳で聞いて、情報を手に入れることが出来るのだ。
情報収集に関しては、ニナと同じぐらい優秀なのだ。
性格が色々と残念だが、彼女は傭兵としても、魔法使いとしても、優秀なスキルを持っているのだ。
「・・・うん?かなり強い魔力を持つ4体の能力者の気配を感じるね」
「おい、それ、ホンマかいな」
「・・・この魔力の強さから察するに、地下に繋がる扉を守る番人といったところかな。どうやら、簡単に邪眼王の所に行かせてくれないみたいだね」
「・・・参ったなー、ここじゃ通信機を使いたくても魔力が繋がらないから使えへんからな。ここでじっと待って、様子を探るしか、今のウチらには出来んのか」
「まあ、焦りは禁物だよ。こういう時だからこそ、出来る限り情報を手に入れて置こう。きっとあとで、役に立つはずだからね」
ヴィルヘルミーナたちは、ここに到着したであろう桜たちの無事を祈った。
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【桜視点】
「・・・これは?」
魔城の隠し入り口から地下に降りて、進んでいくと、突き当りが見えてきた。
中国様式を取り入れた感じの豪奢な門が4つ並んでいる。
それぞれ【水】、【火】、【風】、【地】と書かれている。
「何で門が4つもあるんだよっ!?」
「・・・4つのうち、魔城にたどり着けるのは一つだけ、か」
「あらあらまあまあ~、3つは外れというわけですか」
「ここで、私たちをバラバラにするつもりかしら」
確かに、一斉に攻め込まれるよりも、戦力を分けておいたほうがいいからな。
『・・・おい、囲まれておるぞ?』
テフヌト様が低い声でつぶやくと、どこに隠れていたのか、俺たちの周りをいつの間にか大勢の兵士たちが取り囲んでいた。肌の露出が多い中華服によく似ている服装に身を包み、額に札をつけている異様な姿をした兵士たちは、一目で生きている人間ではないということが分かるほどに、青白い肌をしていた。
「おいおい、これって、キョンシーじゃねえか!?」
「ちっ、コイツらは魔法を使うことも出来るし、痛覚というものがないからな。ちょっとやそっとの攻撃じゃ、ビクともしない。気をつけろ!」
こっちの世界にもキョンシーっていうのはいたんだな。
腕や脚を伸ばして、飛び跳ねるように移動するたびに、豊満な胸がたぷんたぷんと揺れている。
その様子を見て、ビビアナさんとニナさんの顔色が瞬時に不機嫌になった。
「・・・・・・死人の分際で、セクシーアピールするとは無礼千万」
「ええ、速攻であの世に送り返してあげるわ。ああ、妬ましい、妬ましい、妬ましい・・・!」
ニナさんも鬼の仮面をつけて冷静さを取り戻すと、両手にクナイを持って身構える。よかった、キョンシーを前に顔が真っ青になったけど、嫉妬が恐怖を上回ったようだ。
「ウゥー・・・ウゥー・・・!」
「上等だ、全員まとめて火葬にしてやるぜ!!」
「お前たちに構っている時間などないが、目障りだ」
「ウァァアアアアァァァアアアッ!!」
キョンシーのリーダーが吼えると、俺たちの周りを取り囲んでいた100人近くはいるキョンシーたちが一斉に飛び出してきた。先ほどまでのぎこちない動きをしていたキョンシーとは思えないほどの、滑らかな動きで、中華刀を取り出すと勢いよく斬りかかってきた。
「・・・・・・急に動きが早くなった!?」
「そういえば、コイツら、普段は死体だから体の動きもぎこちないが、魔力を取り込むことで生きている人間とほぼ変わらない身体能力を発揮するんだった!」
「つまり、コイツらは元々はどこかの城に仕えていた剣士だったってこと!?」
「それなら納得だ、コイツら、動きに全くの無駄がねえ!」
竜刀を握りしめて精神を集中させると、俺に向かって飛び掛かってきた3体に刃を横なぎに叩きつける。青白い肌にまるでバターをナイフで斬るような感触で刃が肉に食い込み、腕や身体をバッサリと切り落とす。
いつもの感じとは全然違う。
刃の切れ味も、刀の重さも、これまでの刀とは比べ物にならないほどに軽い。
『霊剣の守護者に選ばれたことで、お主の中にある剣の才能がさらに研ぎ澄まされたのじゃ!』
集中力も今までとはまるで違う。
相手の動きがまるでスロー映像のように遅く、繰り出してくる攻撃の軌道さえも読める。
予想される攻撃をかわしながら、相手の急所を一瞬で素早く斬りつける。
俺はそれだけに意識を集中させる。
「お前ら全員邪魔なんだよっ!!」
レベッカさんが怒りの咆哮を上げると、大剣の刃から高温の炎が噴き出して、巨大化した炎の刃をそのまま自分を中心にして円を描くように大剣で斬りつけた。レベッカさんの周りを取り囲んでいたキョンシーたちは身体を真っ二つにされて、炎に包まれながら地面に落ちて、物言わぬ灰へと変わっていく。
「ギイイイイイイイッ!!」
キョンシーの一体が飛び出すと、右手を突き出す。
彼女の右手が光り出すと、黒く光る金属製の銃へと変わっていく。魔力を弾丸に変えて、トリガーを引くと複数の銃弾が一斉に飛び出し、レベッカさんに襲い掛かっていく!
「しまった!!」
「レベッカ!!」
「ちっ!!」
銃弾が確実にレベッカさんの急所を捕らえて、まっすぐに飛んでいく。
俺たちが振り返った時には、もうすでに銃弾は彼女の身体を貫く寸前ーと思われた。
「はああああああああっ!!」
その直後だった。
銃弾よりも早く、飛び出してきた一筋の【光】。
それは長い脚を繰り出して放った回し蹴り。
銃弾を全てなぎ倒す強烈な蹴りを放ったのは、寅若光さんだった。
指ぬきグローブをつけた拳を握りしめて、長い右足を前に突き出して腰を低くして身構える。
「天花嵐墜、風魔法、暴風の障壁!!」
さらに、レベッカたちの周りに凄まじい風が吹き出して、猛烈な勢いで竜巻が生まれると、キョンシーたちの身体を飲み込み、宙に舞い上げて、天井に力いっぱい叩きつけていく。
「ギャアアアアアアッ!!」
固い天井に身体を叩きつけられて、吹き荒れる真空の刃の奔流に身体や衣服を切り刻まれて、キョンシーたちが次々と地面に墜落していく。キョンシーたちはそのままピクリとも動かなくなった。
「・・・寅若さん!高橋さん!!どうして、ここに・・・!!」
「・・・まさか、脱走をしてきたのか!?」
そこにいたのは、罪人として魔法病院に入院していたはずの寅若光さん、そして、高橋つばささんがいたのだ。
「・・・どうしてここにいるんだよ!?」
「・・・私は取り返しのつかないことをしてしまった。どんな罰でも受ける。でも、その前に、どうしても、斗真を取り戻したい・・・!」
寅若さんは拳を握りしめて、今にも泣きだしそうな表情で身体を震わせながら、胸の内を吐き出す。
「・・・そんな資格なんてないことは分かっているんだ!私が斗真を傷つけた、私が斗真にあんなことをしなければ、アイツは松本に殺されることもなかったんだ。私がいつまでも意地を張っていたから、斗真は、死んだ・・・」
寅若さんの瞳から涙がこぼれ落ちて、頬を伝っていく。
「それなのに、アイツは私に恨み言を言わなかった!それどころか、私に謝ったんだ!!私を一人にしてしまって、本当にごめんって・・・!!それで思い出したんだ、アイツが私のことを裏切ったんじゃない、私がアイツの信頼を裏切ったんだ!!私を守ろうとしてくれるアイツの優しさを、弱さと決めつけて、切り捨てた!!アイツは自分自身の人生や、命をかけてでも、私たちを守ってくれていたのに・・・!!」
「・・・光のやったことは許されることではない。私も一緒に彼女の罪を背負っていく。勝手なことを言っているのは百も承知だ。どうか、私たちも一緒に連れて行ってほしい」
そう言って、高橋さんは地面に跪いて、両手をついて額を地面にこすりつけた。
「・・・私たちも、この世界を守りたい・・・!一人ぼっちだった斗真を受け入れてくれた、大切な仲間たちがいる世界を、斗真が命を懸けてでも守りたかったものを、私も守りたい・・・!」
「・・・お゛ね゛か゛い゛し゛ま゛す゛!!!」
寅若さんも額を地べたにこすりつけて、懇願する。
その涙も、熱意も、偽りのものではないと言うことが分かる。
「ダメに決まってんだろ。お前たちの気持ちは分かるけどよ、お前たちの身にもしものことがあったら、オレたちはトーマに会わせる顔がねえぜ!・・・それにヒカル、お前、もう体が限界を迎えているんじゃねえか?」
レベッカさんが赤く光る瞳を鋭く光らせて、寅若さんを睨みつける。
彼女の身体をよく見てみると、わずかだが、黄色の光の粒子が噴き出していた。
それは消滅の兆し。
粒子化が一気に進んでしまったら、彼女の身体は光となって消えていく。
影も形も残さずに。
「お前、ちゃんと会ってトーマに謝りたいんだろうが。自分の罪を償うために、命を捨てるなんて、誰一人救われねえんだよ!謝りたいんならちゃんと生きて謝れよ!ここから先は危険だ。お前たちを守りながら戦うのは、オレたちにもお前たちの命の保証なんて出来ねえ!」
「・・・それでも、命を懸けてでも、私はアイツに・・・詫びなければ・・・!」
「お前が死んだら、アイツが悲しむんだよ!アイツがそういうヤツだってことは、お前が一番よく分かっていることじゃねえか!」
その時だ。
ギギギ・・・と低い音を立てて、後ろの扉がゆっくりと開いた。
「・・・扉が、開いた?」
「・・・・・・ヤバい、これ、罠だ!」
ビビアナさんが叫んだときには、もう遅かった。
扉の奥に広がる暗闇が、扉の前にいた俺たちを吸い寄せる。
抵抗しようとしても、あまりにも強い力に、俺たちは逆らうことが出来ず、じりじりと扉の中に引き込まれていく!
「みんな・・・!!」
俺が手を伸ばしたが、目の前で次々と扉の中に飲み込まれていき、扉が閉じていく。
そして、俺の身体も浮き上がると、空中で回転しながら扉の奥に広がる闇の中へと吸い込まれていった。
(・・・斗真・・・みんな・・・!!)
俺の目の前で、扉が音を立てて閉まり、辺り一面が真っ暗な闇に覆われた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
その光景を水晶玉で見ていた高森が、口元に笑みを浮かべる。
「・・・さあ、誰が最初に邪眼王が待ち受ける霊廟にたどり着けるかな?」
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!
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