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第八話「原罪の魔王、無双する~ヴィナグラート魔城攻略戦②~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!

更新が遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。

何とか新作を書き上げましたので、どうぞよろしくお願いいたします!

 【斗真視点】


 「我の問いかけに答え、我の前に姿を現せ。七大霊具よ!」


 オクタヴィア様が呪文を唱えると、彼女の周りに、七つの光の玉が現れた。

 そして、光の玉がそれぞれ武器の姿へと変わっていく。


 赤い光を放つ【霊剣イグニス】。

 オレンジ色の光を放つ【霊杖ヴェルデ】。

 金色の光を放つ【霊弓エクレイア】。

 緑色の光を放つ【霊双剣ザラム】。

 青色の光を放つ【霊鎚ニパス】。

 藍色の光を放つ【霊槍エルダ】。

 そして紫色の光を放つ【霊刀ヴェテル】。


 レベッカたちが使っていた武器と同じものが、オクタヴィア様の周りを守るように浮かび上がっていた。


 『レベッカたちが使っていた武器がどうしてここに!?』


 「元々これらは我が作ったものだからな』


 え、そうだったのか。

 確か、レベッカたちは七大魔王の加護を受けて、霊具を使うことが出来たから・・・。

 そうか、元々はオクタヴィア様が作った武器だったのか。


 「魔力の性質に合わせて、適当に思い浮かんだ武器をとりあえず作っただけなんだがな」


 『大雑把過ぎません!?』


 今まで命を預けてきた大切な武器が、オクタヴィア様が適当に作ったものだったなんて、レベッカたちが聞いたらきっと泣くぞ。 


 頭の上が暗くなり、見上げると8つの赤い瞳をぎらつかせながら、エンプレス・タランテラが急降下してきた。鋭い無数の牙をギチギチとむき出しにして、勢いよく突っ込んでくる。


 「ふんっ」


 オクタヴィア様がかわすと、エンプレス・タランテラの襲撃は空振りで終わった。そして、バンジージャンプのように、すぐさま反動で天井高く上がっていく。その瞳には、獲物に逃げられたことに対する怒り、憎しみ、そして絶対に追い詰めて食ってやると言う執念を感じる禍々しい光が宿っていた。


 「虫けらが我を見下ろすとは、いい度胸だ」


 オクタヴィア様が霊刀ヴェテルを握りしめると、再び急降下を仕掛けてきたエンプレス・タランテラの巨体を支えている太い糸に狙いを定めた。そして、地面を蹴り飛ばして高く跳び上がり、エンプレス・タランテラのお尻の先にある糸めがけて、霊刀を大きく横なぎに振るう。


 ビュウウウウウウッ!!!


 凄まじい風が吹き出し、真空の刃が幾重もの糸が絡み合って出来た強靭なロープをものともせずに斬りつけていく。巨体を支えていたロープは切れ目から徐々に音を立てて、ちぎれていく。エンプレス・タランテラの重さによって、ロープはあっさりと敗北する。


 「おこがましいぞ」


 今度は霊弓エクレイアを取り出すと、大きく弦を引っ張って、迸る光の矢をエンプレス・タランテラの頭上目掛けて放った。すると、エンプレス・タランテラの頭上には巨大な魔法陣が現れた。


 「塵一つ残さず、消えろ」


 指を鳴らすと、魔法陣から無数の電撃の矢が轟音と共に次々と降り注ぎ、エンプレス・タランテラの身体を容赦なく破壊していく。超高熱の雷の矢が全身にくまなく降り注ぎ、肉が焦げるような悪臭を放ちながら、エンプレス・タランテラの巨体から炎が噴き出し、耳をつんざく悲鳴を上げながら、炎に飲み込まれていった。


 その間、オクタヴィア様からは一切の感情を感じられなかった。

 まるで機械のように、目の前の敵を容赦なく倒していく。何の感情も持たずに、あっさりと敵の命を奪っていく。


 あっという間だった。


 目の前で、あっさりとあんな巨大な怪物をこんなに簡単に倒してしまった。


 「・・・やはり、つまらんな。なぜ、こんなつまらないことを、人間も魔族も繰り返すのだろうか、全く分からん」


 『・・・つまらないって、戦いのこと?』


 「それ以外、何がある?勝ってもただ生き残る、それだけのこと。勝っても高揚感も湧かぬ、喜びも感じない、楽しいと思ったことなど一度もない。どうしてこんなつまらないことを、古の時代から繰り返されるのだろうな。戦わないと、人間も魔族も、生きていけないのだろうか」


 オクタヴィア様は何の感情も抱かず、ただ、自分の疑問を思ったままに口にする。

 どうして戦わずにいられないのか、衝突と対立を繰り返す人間や魔族のことが理解できない様子だ。


 「つまらないよなあ、勝たなければ死んでしまうから、勝っていれば、皆が恐れて我から離れていく。命の重みというのが、あまりにも軽くて、我がちょっとでも力を入れてしまえばすぐに壊れてしまう。消えてしまった命は二度と戻ることはない。ただ、消えていくだけ。それの繰り返しのどこが、楽しいのだ?」


 オクタヴィア様の言葉は、僕の胸に深く・・・刺さった。


 その疑問は、僕が昔、ずっと思っていたものだった。

 毎日、毎日、喧嘩に明け暮れていて、心から信じた仲間以外の人間を誰一人信じられなかった時。

 自分に敵意を持つ人間に対して、ニュースや新聞で誰が誰を傷つけたとか、誰が誰を殺したとか、そう言った情報を目にするたびに思っていた。


 ”暴力なんて、嫌いだ。”


 ”一番嫌いなのは、一度カッとなっちまうと自分自身でも抑えられなくなる、僕自身だ。”


 ”戦っても、誰も認めてくれない。勝っても、誰も褒めてくれない。”


 ”それでも、勝ち続けないと、自分自身の存在が消えてしまいそうになる。”


 喧嘩を挑まれて、相手を叩きのめしても、嬉しいと思ったことはない。

 僕のことをまるで化け物でも見るような目で、怯えて、心にもないおべっかを言って、取り入ろうとしたり、僕のことを避けていく。まるで腫れ物のように扱われる。


 それじゃ、負けて死んでしまえば満足なのか?

 殴られて、傷ついて、ボロボロになればお前たちは満足なのか?

 戦いたくなくても、どうしても戦わなくちゃいけない時があるのに。


 勝っても、誰も、認めてくれないじゃないか。


 それじゃ、一体どうすればよかったのだろうか。


 「行くぞ」


 『え?』


 「どんなに退屈でも、つまらないものでも、敵が目の前にいるなら、全て叩き潰すだけだ」


 見ると、古井戸の壁にある穴から、ガイコツの兵士が大勢で押し寄せてくるのが見えた。エンプレス・タランテラが倒されていることに驚きつつも、自分の任務を忠実に守る彼らは僕たちの姿を見つけて、威勢よく雄たけびを上げながら、武器を持って迫ってくる。


 オクタヴィア様は霊剣イグニスを手に取ると、面倒くさそうに首の骨をコキコキと鳴らした。


 「やれやれだ」


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 【三人称視点】


 一方、その頃。


 桜たちは魔砲特急アルコ・バレーノ号に乗り込み、ヴィナグラート霊園が一望できる、上空から見下ろしていた。空に魔法で生み出された線路と枕木がかかり、その上を、メタリックブルーが映えるオリハルコンのボディを持つ、動く要塞が汽笛を鳴らしながら爆走する。


 「もうすでにこのエリアは邪眼王たちの手に落ちたと見て間違いなさそうだな」


 「つまり、この辺りにはもう敵しかいないってことか」


 「どうしますか~?墓地を突っ切って、城の入り口に向かうとしても、かなりの数のガイコツ兵士やゴーストがいるみたいですわよ~?」


 「ニナを出したら、墓場が火の海になりかねんしな」


 「オバケなんて嘘よ、みんな夢か幻なのよ。寝ぼけて見間違えたのよ。そんなものがこの世にいるはずがないわ。そうよ、嘘よ、いるはずがないんだから、いるのがおかしいのよ。もしいたら、片っ端から吹き飛ばしてしまえばいいんだわ」


 「コイツに爆弾や火薬の類は持たせるなよ。私たちにまで飛び火しかねん」


 大量の手投げ爆弾を準備しながら、完全に目がイッてしまっているニナは本気でヤバかった。世界各国の王族や貴族が眠ってる墓地を丸ごと焼き払いましたなんてことになったら、減給どころで済む話ではない。


 -それなら、吹き飛ばさずに、敵だけを倒してしまえばいいのだろう?-


 そう言いだしたのは、ニナから爆弾を回収したメイド服姿のユキだった。


 「ユキ、何かいい方法があるのか?」


 -ああ、我にいい考えがある。少し、任せてもらえないか?-


 そう言って、ユキが部屋から出て行った。


 『あの可愛いメイドちゃん、大丈夫かのう?』


 セクメト様が不安そうにつぶやくが、桜たちはユキの真剣な思いを信じることにした。古代図書館に封印されていた、かつては大陸を支配する強大な力を持つ伝説の魔獣は、今では心から信じあえる心強い仲間となった。ユキも斗真が死んで、魔王として覚醒を果たしたと聞かされたときには、ショックでしばらくの間、打ちのめされていた。


 しかし、斗真がオクタヴィアの身体の中でまだ意識が消えていないということを聞かされると、主であり、親友である斗真を連れ戻すために、桜たちと共に列車に乗り込んで、共に戦うと言った。


 ユキはもう孤独な支配者でもなく、凶暴な魔獣でもない。


 【彩虹の戦乙女】の仲間の一人なのだ。


 ユキは天井のハッチを開けて、屋根の上に上がると、天井を蹴り飛ばして宙に舞い上がった。


 -トーマ、お前は我の主であり、我に色々なことを教えてくれた大切な”仲間”だ。-





 魔獣である自分のことを仲間として受け入れてくれた。

 弟分として、目に入れても痛くないほどに可愛がってくれた。

 揚げたてのから揚げを持って、灯台に上って、海を眺めながらゲームをしたり、取り留めのない話をしたり、楽しいことを一杯やった。


 『ユキちゃん!!』


 いつも人懐っこく笑いかけてくれた、甘えん坊で優しい主。

 目を閉じれば、出会った時のことがまるで昨日のことのように思い出せる。




 -我はお前が好きだ。お前たちに会えて、我は孤独ではなくなった。だから、我が今度はお前たちを守る番だ。トーマ、お前を必ず取り戻す!!-



 ユキの姿が見る見る巨大なアイスキマイラの姿に変わり、アンデッドたちがうごめくヴィナグラート墓地を見下ろすと、全神経を集中させて、魔力を口の中に集める。


 青白い光が口の中に集まり、見る見る巨大な冷気を帯びた光の球となって膨らみだす。辺り一帯の空気が一気に冷え込んでいく。アイスキマイラの魔力を受けて、空気中の水分が凍り付き、雪となってちらほらと舞い落ちる。




 -氷霊獣の(アークティック・)暴風雪(ブリザード)!!!-




 光の球が強烈な吹雪となって飛び出し、瞬く間にヴィナグラート霊園一帯に吹き荒れる。

 絶対零度の吹雪を浴びたアンデッドたちは魔力によって魂が凍り付き、氷の中に閉じ込められて、無残な氷像と化していく。大地は一瞬で真っ白な氷と雪で覆われていき、桜たちの目の前でヴィナグラート霊園は広大な氷の大地へと変わっていく。


 「はあああああああああ!?」


 「れ、霊園が一瞬で氷漬けになっただと!?」


 「あ、あ、あとで、バチが当たったらどうするのよー!?」


 ニナが真っ青な顏になって悲鳴を上げた。

 しかし、そんな彼女にレベッカが強気な笑みを浮かべて、彼女の肩を叩く。


 「大丈夫だって!オレたち以上に罰当たりなことをしているヤツをとっちめに行くんだから、大目に見てくれるって!」


 「だからって、敵ごと、墓場を氷漬けにするヤツがどこにいるのよ!?」


 「いるだろう、そこに」


 「・・・あああ・・・もう、おしまいだわ。私たち、きっとみんな呪われるんだわ。もうこうなったら一人でも多く地獄に道連れにしてやらないと、気が済まないわ」


 ニナが物騒なことを言い出したが、桜たちはいつものことだと特に気にしなかった。


 「さてと・・・殴り込みますか!」

 

次回から、凍り付いた墓場で【彩虹の戦乙女】たちが大暴れいたします!

ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!

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