第七話「心配し過ぎて疲れたらまずは深呼吸して落ち着こう~ヴィナグラート魔城攻略戦①~」
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【桜視点】
「地下墓所に繋がる扉が現れただって!?」
ヴィナグラート魔城の偵察に向かっていた【冥界の猟犬】のダイナモさんからの報告を聞いて、俺は驚いた。どうして今まで見つからなかった入り口が、突然現れたんだろうか。
『はい、誰かは分かりませんが、扉を隠していた結界が爆弾らしきもので吹き飛ばされて、結界が破損したみたいなんです』
いやちょっと待て、ヴィナグラート魔城の地下墓所に繋がっている扉を隠していた結界を吹き飛ばすために、誰かが爆弾で吹き飛ばしたって、そんなことがあるのか?俺たちにとっては予想外のいい知らせだが、まさか敵が俺たちを誘い込むための罠かもしれないという不安も頭によぎる。
「・・・分かった。ありがとう、今すぐにこっちに戻ってきて」
通信を切り、俺は早速そのことをレベッカさんたちに報告した。
「・・・どうするのだ、隊長?」
「決まってンだろ。敵陣の扉が開いたなら、一気に突撃あるのみだぜ!ヴィルヘルミーナたちを取り戻して、全員合流しなけりゃクロスに攻め込むどころじゃねえ。こうしている間にも、あのバカ勇者がまた何かを仕掛けてくるかもしれねえ。その前に、邪魔な闇の魔神と邪眼王を一気に片付けねえとな!」
レベッカさんは好戦的な笑みを浮かべて、拳を掌でバシッと叩きつけた。
「・・・トーマのことも気になるけどよ、今はまず、捕らわれているヴィルヘルミーナとオリヴィアを奪還することが先決だ。お前ら、それでいいな!?」
「・・・分かっているさ、私たちの弟も今頃必死で戦っているのだからな。私たちもそろそろ動かねばなるまい!」
「一度火が点いたら、私たち、もう止まりませんわよ~?」
「・・・・・・私たちの大切な仲間は必ず取り戻すし、借りはきっちりと返す」
「わ、わ、私だってオバケが怖くて、トーマやミーナたちを助けられるかっての!やってやろうじゃない!」
ニナさんが顔を青くして、小刻みに震えながらも勇ましく言った。彼女も勇気を振り絞って、自分の苦手なものを乗り越えて戦おうとしている。みんな、斗真を守るために、全力で戦ってくれるんだ。兄貴分の俺がしっかりしなけりゃ情けないよな。
『・・・あ、そういえば、もう一つ、言い忘れていたことがありました』
その時、ダイナモさんから通信が入った。
「うん?どうかしたの?」
『・・・いえ・・・それが・・・その結界を吹き飛ばした犯人というのが・・・”顔立ちは綺麗なのに、上半身が裸の女性”らしいんです・・・』
「・・・・・・え?」
「・・・それって、もしかして、痴女とか言うヤツか?」
「もしかしなくても、それしかないだろうな」
「・・・・・・夜の墓場で、半裸で走り回る痴女なんて、レベルがかなりパネェッス」
「どうしてそこで、みんな、そんなヤツがいるわけないと否定しないの?そんなものが現実にいるということを受け入れることに抵抗しましょうよ」
「だって、ヴィルヘルミーナやアイリスのバカを散々見てきたからなー」
「・・・なるほどね、それなら納得だわ」
「心外だ。私とあの色情魔を一緒にするな。私は世界中の可愛い男の子を全身全霊で愛しまくるという崇高な使命を背負っているだけだ」
「人はそれを変態と呼ぶのよ」
「・・・・・・もしくは性犯罪者」
何だ、その反応に困る報告は。
ちょっと待って?夜の墓場を半裸でうろついている上に、爆弾を投げつけて結界を吹き飛ばすようなヤツがいる場所にこれから向かおうとしているの、俺たち。
「・・・まさか、ヴィルヘルミーナのヤツが脱獄に成功でもしたのだろうか?」
「ちょっと待って、どうしてその報告だけで犯人がヴィルヘルミーナに断定されるんだ。アイツだってそこまで空気が読めない、頭の中がお花畑のパッパラパーじゃないだろう」
「そこまでのパッパラパーだと、オレは思うぞ」
おい。
「・・・・・・捕まった先で、衛兵が女性だったら片っ端からナンパをしていてもおかしくないレベルのアホだと思う」
「過去に何回もやらかして、えらい目に遭ったわよね」
「それなのに、どうしてアイツは懲りないのだろうか。一度アイツの脳味噌の中身を見てみたいものだ」
マジかよ。
「間違いありませんわね~」
「・・・アイツ、昔から綺麗な女性を見ると敵味方関係なくナンパしていたしね」
「・・・・・・節操がない」
「そもそも、アイツの頭の辞書に慎みとか、貞操観念とか、そんな上等な単語があるはずがない」
すみません、その言葉、そっくりそのまま貴方たちにも当てはまると思うのですが。
そして、そんな変態呼ばわりされているのが、一応俺の彼女なんですが。
「・・・あ、いえ、その、サクラちゃん、失礼しましたわ~」
「・・・あんなヤツに振り回されて・・・可哀想に・・・」
そのことに気づいたのか、アイリスさんたちが俺のことをものすごく哀れみのこもった視線で見てきた。
アレクシアさん、何でハンカチを取り出して目元をぬぐう?なぜ俺に聞こえない様にひそひそと話をする?やめろ、目の前でそういうことをやるヤツがいるかい。
このバカなやり取りのおかげなのか、無駄な力が抜けたような気がする。
しかし、感謝など絶対にしない。コイツら、後で全員揃ったら説教だ。
「それでも俺はアイツらを助けたい。バカな所も、スケベな所も、がめついところも、オッチョコチョイな所もあるけど、ちょっとだけ優しいところもあるし、仲間思いな所もあるし、いつだってみんなを前向きにさせてくれる。いいところも悪いところも全部ひっくるめて俺は惚れたんだからな」
ああ、俺はこれでいいんだ。
何も悩むことなどない。きっと斗真だって3分考えて分からなかったら、考えるのをやめて、自分がやりたいことをやるんだから。
「・・・ヤベエ、今のちょっとだけカッコよくなかったか?」
「・・・トーマちゃんの影響でしょうか~?サクラちゃん、カッコイイことが言えるようになりましたわね~」
「さて、それじゃあのバカたちをさっさと引き取って、喧嘩を売ってきた連中を片付けようか」
こうして俺たちは魔砲特急アルコバレーノに弾薬や武器の補充の確認が取れ次第、すぐに出発することにした。
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【斗真視点】
とりあえず、どこかに繋がっている穴があったから入ってみたけど・・・。
これって、もしかして地下通路かな?綺麗に整備されているし、所々に灯りがついている。
僕はオクタヴィア様に頼み込んで、何とか物置部屋らしき部屋の中に入って、隠れることにした。
僕たちのことを追いかけてきた、ガイコツの兵士たちは部屋の前を通り過ぎていった。
足音ももう聞こえなくなった。どうやら逃げることに成功したようだ。
「・・・この魔王オクタヴィアを箱の中に隠れさせるとは、いい度胸をしているな、もぐもぐ」
『箱の中にあったパンなんて、よく食べられるよ。お腹が痛くなったらどうするのさ』
「お前、しょっちゅう猫娘の作る料理やお菓子を食べているから、このぐらいじゃどうということはないだろう?」
うるさいわい。
今じゃもう毒を飲まされても、お腹が痛くなるぐらいで済むようになったわ。毒耐性のスキルもSクラスになったしね。つまり、毒はもう効かない身体になったというわけだ。
えーと、この辺りの地図を見ると、この通路の先には城の中庭に繋がる巨大な古井戸があるのか。
古井戸は昔の城主が避難用の通路として、水が枯れて使われなくなった古井戸を改造したのか。
外に出てガイコツの兵士たちにまた追われるなんて冗談じゃないし、このまま、地下通路を通って城の中に忍び込めば、ヴィルヘルミーナさんたちが見つかるかもしれない!
「・・・城ごと虚無で飲み込んでしまえば、いいものを」
『そんなことをやったら、ヴィルヘルミーナさんたちだって無事じゃ済まないからダメだよ!?』
やれやれ、とりあえず説得して、僕たちは古井戸へと向かった。
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古井戸の中は予想していたよりも広く、そして天井がものすごく高いものだった。
古びた木の板のつり橋の真下から、地の底から響く亡者の泣き声のような音が聞こえてくる。所々の穴から風が吹き抜けているのだろう。
「”浮遊”」
オクタヴィア様が呪文を唱えると、足がふわりと浮かび上がり、そのまま僕の身体が上に空いた小さな穴に向かって舞い上がっていく。
その時だ。
暗い闇の中で、赤い光がギラリと灯った。
闇が蠢き、獣のように荒い息遣いと共に、天井の穴をふさぐような巨体の影が僕たちの頭上に現れた。
赤い光が8つ灯り、僕たちを見下ろしていた影が、姿を見せた。
「ほう、【エンプレス・タランテラ】とはな。我が生きていた時に見たものと比べると、若干身体が大きくなっているような気がするな?」
全身を漆黒の甲冑のような表皮で覆われた巨大な蜘蛛の姿をした魔物は、大きく開いた口の無数の牙と鋭く光る鉤爪を光らせて、だらだらと涎を垂らした。僕たちのことを食料と認識したようだ。
「どれ、どこぞの誰かがあれはするな、これはするなとガミガミうるさいからな。少しばかり、ストレス発散に遊んでやるとしようか。喜べ、虫けら。この虚無の魔王の遊び相手に選ばれたことを光栄に思いながら、逝くがいい!」
エンプレス・タランテラに不敵な笑みを浮かべて手をクイクイとやると、エンプレス・タランテラが牙をむき出しにして耳につんざく甲高い雄たけびを上げた。
そして、エンプレス・タランテラが8本の脚を動かすと、爪の先から出ている無数の糸につるされて、甲冑を纏ったガイコツの兵士たちがまるでマリオネットのように器用に操られていた。手に持っている刃の大きい剣を、勢いよく斬りつけてくる!
「ちっ、まずは高みの見物か。随分とナメてくれるではないか」
『油断しないで、来るよ!』
「せっかくの余興なのだ。楽しまなくてはな!」
オクタヴィア様がレベッカの大剣を生み出すと、手に握りしめて、不敵な笑みを浮かべた。
最近めっきりと寒くなってきましたが、風邪や体調にはどうかお気をつけて!
お身体にはお大事に!
次回もよろしくお願いいたします!




