第五話「地下霊廟に乗り込め!~進め忍者トーマくん~」
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【斗真視点】
『待テ!!待タンカァァァッ!!』
『大人シク、神妙ニ、オ縄ニツケィ!!』
(待てと言われて誰が待つかぁぁぁっ!!)
「・・・おい、人間よ。いつまで逃げ続けなければならない?もういっそのこと、この陰気臭い墓場ごと全て無に還してしまえばいいだけではないか」
(絶対にダメに決まってンだろう!!ここにはヴィルヘルミーナさんとオリヴィアさんがいるんだからな!?みんなまとめて消し去ったら、彼女たちまで巻き込んじゃうでしょうが!!)
深夜の墓場で、僕は今必死でガイコツ兵士たちから逃げまくっていた。
僕の言うことも聞かずに、オクタヴィアがガイコツ兵士を何人か吹き飛ばしてしまったせいで、完全に僕らはお尋ね者として追われる羽目になった。チクショウ、このままじゃ高森くんに気づかれるのも時間の問題だ!気が付かれない様に忍び込もうと思っていたのに、どうしてこんな目立つ展開になるんだ!?
というか、上半身素っ裸で深夜のお墓を徘徊していて、捕まった魔王なんてあまりにもカッコ悪すぎるだろう!嫌すぎるわ、そんなの!もしそんなことになったら、僕はもう生きていけない!
「・・・あのな・・・」
(何!?今は逃げることに集中してよ!)
「・・・さっきから言おうと思っていたのだが・・・」
ああもう、もったいぶらないで早く言ってよ!?オクタヴィアは首をこてんと傾げながら、不思議そうな顔で僕に尋ねてきた。これでもし、しょうもないことを聞いてきたら、そろそろ伝家の宝刀のハリセンを出してもいいだろう。
「・・・どうして、闇の魔力で服を仕立てて、着ようとしないのかと思ってな」
『・・・・・・』
「・・・服を着た方がいいというのなら、我が服を仕立てて着ればいいだけではないのかと思ってな」
『・・・あのさあ・・・』
「うん?」
『そういうことは・・・もっと早く言ってよ・・・!』
「お前が人の話を聞かなかっただけだろうが」
僕は全身から力が抜けていくのを感じながら、とっさにオクタヴィアに頼みこんで、墓場中に漂っている闇の魔力を糸に変えて服を仕立てていく。艶々と光沢のある漆黒の布を素早く仕立てて、僕は頭の中に思い描くイメージを投影させるように、針で素早く縫い付けていく。
『闇に紛れて気配を消すことが出来る衣装と言えば、ニナのアレだ!』
闇の魔力を秘めた衣装を身に纏い、僕はとっさに物陰に隠れるようにオクタヴィアに言った。オクタヴィアはしぶしぶ僕の言うことを聞いて、物陰に隠れると、すぐ近くまでガイコツ兵士がやってきた。
『・・・アレ?ドコニ、行ッタノダ?』
『急ニ気配ガ消エタ・・・?』
どうやら完全に僕たちの気配を見失ったらしい。
辺りを見回しているが、僕たちがとっさに隠れている場所を何度も素通りしている。
そこへ、もう一体誰かが近づいてきた。
『そこで何をしておるか』
『ジール将軍殿!』
『墓場ニ、上半身ガ裸ノ、自身ヲ魔王ナドト名乗ル不届キナ女ガ現レマシテ・・・!』
兵士たちは膝をついて頭を下げる。
そんな彼らを見下ろしているのは、全身を血のように赤い、物々しい雰囲気の甲冑に全身を包んでいる騎士だった。声が幾分か高く聞こえるから、これはおそらく女性なのかもしれない。
『・・・そのような痴女が魔王であるわけがないだろう。例え誰であろうと、城、特に地下霊廟の入り口には近づけてはならぬ。見つけ次第、直ちに処分するのだ。邪眼王様のご命令だ。もしネズミ一匹であろうとも、城に近づけたら、その時には・・・どうなるか、分かっているだろうな?』
『モウシワケ、ゴザイマセン・・・!』
真っ赤な騎士が冷たく言い放つと、ガイコツ兵士たちの顔色がさらに真っ白・・・いや真っ青になったような気がした。そして、僕たちの前を通り過ぎて、立ち去っていく。
『霊廟には、彩虹の戦乙女の女たちを閉じ込めてある。他の連中もきっと奴らを助けるために、霊廟にやってくるはずだ。その時には、この『ワイトナイト』の『ジール』が全員地獄に送ってくれるわ。そして、オプスキュリテ様に我が忠節を示すのだ・・・!』
とろんとした瞳になり、赤色の甲冑の騎士が甘く、そして力強い決意を口にして、拳を強く握りしめる。ああ、この部隊長さん、ひょっとして高森くんのことが好きなのかな?確かに高森くんは、元の世界では女子生徒からかなりの人気があったよね。本人はあまり気にしていなかったみたいだけど。
そして、足音が聞こえなくなった。
『良かった、どうやら気づかなかったみたい』
「しかし、こんな間抜けな姿でよく気づかれなかったものだな」
ふふん、これが僕の裁縫魔法のすごいところです。
闇の魔力を実体化させた衣服を着込むことで、存在そのものをそこらへんに転がっている小石程度にしか認識されないように作った気配遮断魔法を発動するこの『カメレオン忍者服』はどうだ!!
「壁と同じ模様の壁紙で身を隠しただけなのに、よく見つからなかったものだな」
これが異世界の忍者の隠れ方『隠れ身の術』だい。
そして、このカメレオン忍者服だったら、霊が近づいても存在が探知できない結界を張っているし、墓場の探索には持ってこいだ!敵に見つかったとしても、身体を周りの景色と同化して見えなくしたり、さっきのように壁と同じ模様の布を仕立てて、こうして隠れれば壁の一部として全くバレないのだ。
しかし、なぜか膝の丈が短くてまるでミニスカートのようになってしまっているのはなぜだろうか。決して女装を毎度毎度やらされるために、女物のコスチュームを作って着ることが当たり前になっていたために、無自覚で作ってしまったというのだろうか?僕は決して女装趣味に目覚めたわけではない。ないったらない。
黒いフードはカメレオンをイメージした大きな複眼型レーダーが備わっており、これを被ると暗闇の中でも相手の気配を探ることが出来るのだ。しかし、オクタヴィアの姿でこれを着ると、上半身が裸の時よりもいやらしいというか、セクシーな感じがするような気がするが、気にしたら駄目だ。
鎖帷子越しでも谷間が見えるほどの豊満な胸なんて気にしてはいけない。
スカートからむき出しになっているむっちりとした太ももなど気にしてはいけない。
僕は男の子、あくまでも男の子の身体なのだ。僕の姿を見て「エロい」とか「くのいち」などと抜かすヤツがいたら、問答無用でドロップキックをくれてやる。
『地下霊廟には近づけるなって言っていたね。もしかしたらそこに、ヴィルヘルミーナさんたちもいるのかもしれない!』
「そうか。捕まった奴らには興味がないが、我に喧嘩を売るとはいい度胸だ。あのドラゴンゾンビをけしかけてきた罪は、その勇者と魔王の命を持って償ってもらうとしようか」
『僕の身体で、あまり無茶なことをしないでよ!?』
「何を言う。これは我のものだ。我の身体を我がどう使おうが、我の勝手だ」
『もともとは僕の身体でしょうが!!アンタはどこのガキ大将だ!?他人の物は俺のもの、俺のものは俺のものってか!?』
「・・・うん?この胸の中に入っている、これは何だ?」
僕の話も聞かないで、オクタヴィアが胸の谷間に手を突っ込んで取り出したもの。
それはまるで砲丸投げで使う砲弾ほどの大きさと丸い形をしたものだった。そして、丸い物には導火線らしき縄がついていた。それに反骨の炎を宿したままの手でオクタヴィアが触れると、火がともったかと思った瞬間、音を立てて導火線を火が伝っていった!
『ば、ば、爆弾だぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!』
「ふむ、どうすればいい?」
『とにかく早く遠くに投げろぉぉぉーーーーーーっ!!』
「うむ」
オクタヴィアが振りかぶり、爆弾をものすごい勢いで空の彼方に向かって投げ放った。
投げた爆弾は目にも止まらない速さで飛んでいき、やがて、光となって消えていった。
そう思った次の瞬間。
ドオオオオオオオオーーーーーーン・・・!!
一瞬だけ、投げた方向で何かがまぶしい光を放ち、凄まじい爆音を響かせた。
地面が少しだけ揺れて、遠くから煙がもうもうと噴き上がっているのが見えた。
その辺りを見ると、見渡す限り墓石が建ち並ぶ小高い丘の上からは黒い煙が上がり、オレンジ色の揺らめく炎が見えた。ああ、そりゃあれだけ派手に爆発すれば火の手だって上がるよね。
『・・・あ、貴方はバカですかぁぁぁーーーっ!?墓地を爆弾で吹き飛ばすなんて罰当たりなんてモンじゃ済まないからな!?どうするのさ、ただでさえ神様から罰の集中誤射を食らいまくっているような人生なのに、これ以上神様の怒りを買ったら、僕マジで死んじまうわ!!』
「一回すでに死んでいるだろうが」
『ええい、うるさい!!そうでした、死んでいたことを忘れていました!!』
「普通、そんな大切なことを忘れるか?お前の方がよっぽどバカではないか」
『誰がバカだ、誰が!?バカって言った奴がバカなんだよ、バカ!!』
「それでは、やはりお前の方がバカではないか。それに、お前が投げろと言ったから投げてこうなったのだから、お前のせいだろうが。バーカ、バーカ」
『そうでしたー!!導火線の火を消すという方法を思いつかなかった僕がバカでしたー!!』
恨むぞ、僕の貧困なボキャブラリーよ。
ぐっ、ああいえばこう言いおって・・・!!
しかしヤバいぞ、墓場で爆発が起きたら間違いなくさっきのガイコツ兵士たちが動き出すのは間違いない!見つからないうちに、早く霊廟の入り口を見つけ出さないと・・・!
「・・・人間」
『何ですか!?」
「・・・何だろうな、この感じは。我はずっと虚無だった。感情というものなど知らず、知る必要もなく、これからも我が必要とすることはないと思っていた。しかし・・・今は・・・こうしてお前と喧嘩をしていると・・・胸の奥が・・・ぽかぽかとしてくる」
オクタヴィアが胸に手を当てて、自身に心臓の鼓動が高鳴っていることに、驚きを隠せないような表情になっている。そして今まで人形のようだった無表情の彼女の口元が、少しだけ、上に吊り上がった。
「・・・これが・・・楽しいという感情か」
彼女が初めての感情に戸惑いつつも、どこか嬉しそうに微笑んでいた。
今まで、彼女は嬉しいこととか、楽しいとか、そういったことがなかったのだろうか。
というか。
『今はそんなセンチメンタルな感傷に浸っている場合じゃなぁぁぁぁぁぁいっ!!』
「・・・ふふふっ・・・これはなかなか・・・楽しいな!」
オクタヴィアはまるで生まれて初めて外に散歩する子供のように、目をキラキラとさせて、スキップをする足取りも軽かった。かつては虚無の魔王と呼ばれていた彼女がまるで子供のようにはしゃいでいる姿を見たら、七大魔王たちはどれだけ驚くことだろうか。
まあ、そのためにも早く仲間たちと合流を果たさなければならない。
『墓場ヲ吹キ飛バシタノハ、オ前カァァァッ!?』
『絶対ニ許サン!!コノ罰当タリガァァァッ!!』
『捕マエテ、奴隷トシテ墓ノ修理ト庭園ノ手入レヲ一生ヤッテモラオウカァァァッ!!』
後ろから怒り心頭になって追いかけてくる、ガイコツの兵士たちに捕まらない様に、僕はオクタヴィアに頼み込んで全力全身で逃げまくるのでした。
斗真、原罪の魔王オクタヴィアに振り回されっぱなしです。
生まれて初めて知った感情に驚きつつも、子供のようにはしゃぐオクタヴィアは徐々に斗真に興味を持ち始めてきました。自分のご先祖様まで落としてしまうのでしょうか?
そして墓場を爆弾で吹き飛ばして、騒ぎを早速引き起こしました。
静かに、相手に気づかれることなく行動をするなんて、斗真には無理のようです。運命が放っておきません。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!




