第二話「霊剣テフヌト、復活!~強欲の魔王、色欲の魔王~」
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【三人称視点】
斗真がオクタヴィアに身体を乗っ取られて、ガイコツの兵士たちに追いかけまわされているその頃・・・。
魔法の国サマリア。
ベアトリクス・フォン・ベレトが治める大国の王宮に、桜たちは集められていた。
玉座の間で、膝をついて傅く桜たちを見下ろしながら、ベアトリクスは口を開いた。
「・・・霊剣の調査が終わったわ。今度は間違いなく本物だった。これから、霊剣の所有者としてサクラちゃんが本当に選ばれるのかどうか、見極めないといけない。ということで、サクラちゃんには霊剣の封印を解いてもらいたい」
霊剣と霊盾、二つの神器と七大魔王全員の力を解放しなければ、セルマを吸収して無限の魔力と不死の命を手に入れた千鶴を倒すことは難しい。さらに、千鶴がセブンズ・ヘブンと繋げてしまった現実世界とのトンネルを破壊することも出来ないのだ。
桜は本当なら今すぐにでも斗真やヴィルヘルミーナたちを助け出したいと逸る気持ちを抑えて、侍女から霊剣を受け取る。霊剣は桜の魔力を浴びると、さび付いていた霊剣が元の輝きと美しさを取り戻し、まぶしく光を放った。
鏡のように磨き抜かれた刀身。
黄金の装飾が施された柄。
見る者の目をくぎ付けにして離さないほどの、神秘的な美しさと圧倒的なオーラを放っている。
桜は霊剣の真の姿を目の当たりにして、思わず息をのんだ。
「・・・これが・・・霊剣テフヌト・・・!」
『・・・うん?誰じゃ、人が気持ちよく寝ていたというのに・・・』
桜の頭の中に、直接【声】が聞こえてきた。
老獪な言葉遣いだが、まるで少年のように幼い、あどけなさを感じる声だった。
『・・・ふん・・・また儂を使いこなそうとする未熟者でも現れたのか。例えどれほどの力があっても、儂は儂が仕えるに値する人物は自分で決める。力無きもの、心弱きもの、悪しき欲望に溺れたものには力など一切貸さん・・・うん?』
厳格な声が聞こえてきたかと思うと、霊剣が誰も触れていないのに生き物のように浮かび上がると、桜の身の回りをまるで見回すかのように回り出した。
「・・・え?あの、これは、一体・・・?」
『・・・ふむふむ・・・ほうほう・・・これは珍しい竜属性の魔力を持っているとはな・・・』
そして、霊剣は桜を正面から見つめるように、桜の前で動きを止めた。
『・・・汝・・・名前は何と申す?』
「・・・桜です、幕ノ内桜」
『・・・ふむ・・・そうか・・・』
そして、一息ついてしばらく黙り込んだかと思うと・・・。
『・・・念願の金髪ロリ巨乳かわい子ちゃんが、ついにキターーーーーーッ!!ヒャッフゥゥゥゥゥゥッ!!』
「・・・は?」
桜が突然、キャラが豹変したかのような霊剣の叫びに、ポカーンと目が点になった。
さらに、玉座の間で霊剣の動きを緊張して見ていたベアトリクスたちも、目が点になった。
『サクラちゃんかぁ~!儂は可愛くておっぱいが大きくて、強い正義の心と信念を持つ、さながら神話に出てくる”ヴァルキュリア”のような女性には目がなくてのぉ~!良いぞ、良いぞ、儂、お主に力を貸してあげよう!くぅ~っ、やっと出会えたわい!!儂はお主のようなかわい子ちゃんに仕えるために、ずっと待ち続けておったのよ!!』
『何じゃそりゃあぁぁぁぁぁぁっ!?』
呆然と立ち尽くしてしまった桜の周りでは、ベアトリクスやレベッカたちがその場で派手にズッコケた。ベアトリクスに至っては玉座から落ちた勢いで、階段を転げ落ちてしまうほどの派手なコケっぷりを見せた。
「・・・あの・・・えーと・・・その・・・俺・・・一応男なんスけど」
『うむうむ、分かっておるわい!なるほど、魔力の影響で女性の身体に変わってしまうとは驚いたのぉ。しかし、お主は儂の好みのタイプに顔がストライクど真ん中なのじゃ!!男の娘というのも悪くはないわい!!お主のことを、神器の所有者として快く受け入れようではないか!!』
「そんな理由で選んでいいのっ!?」
『儂がいいと言えば、いいんじゃ!!』
どうやらこのセクハラエロ霊剣のストライクゾーンは意外と広いらしい。
そう言って、テフヌトが桜に向かって光を放つと、桜の掌に剣をあしらった紋章が金色の光を放って現れた。これにより、桜は正式に霊剣の所有者として選ばれたのだ。
『いやー、大変だったのじゃぞ?これまでにも、儂やかあちゃんの力を求めて様々な冒険者や盗賊が遺跡に忍び込んできたのだが、どいつもこいつも神器に選ばれる素質などこれっぽっちもないのに、儂らの力で世界を手に入れようとするとか、儂らを売り払って大儲けしようとか、ろくでもないことばかりを考えているような連中ばかりでの。その中にはナイスバディの可愛いお姉ちゃんもおったのじゃが、まあ、自分の欲望を満たすことしか頭にないから、心の中で泣く泣く、スッパリと断ったがの』
そういって、霊剣は桜の周りで、まるで踊っているかのように嬉しそうに身体を回転させる。
その時だった。
『・・・貴方?わたくしがいるというのに、それはさすがにないんじゃありませんの?』
空気が凍り付くような、穏やかだけど絶対零度の冷気を放つ言葉にテフヌトが凍り付いた。
ギギギ・・・と音がするようにゆっくりと振り向くと、そこには、身体全体から圧倒的な殺意を放ちながら霊盾ホルスがテフヌトを睨みつけていた。ホルスに顔があったら、それはそれはとてもいい笑顔を浮かべていたことだろう。目は絶対に笑っていないのだが。
『か、か、か、かあちゃん・・・!?どうして、ここに・・・!?』
『・・・あらあら、久しぶりに再会できたというのに、その反応は何ですか?だ・ん・な・さ・ま?もう、相変わらず若くて胸が大きい女の子に目がないのですね・・・?わたくしがここにいるのも気づかないなんて、少し傷つきましたわよ・・・?」
『こ、こ、これにはその、あの、色々とありまして・・・!!そ、そ、それと、儂はかあちゃん一筋ですから!!本当ッス!!どうか、許してください!!すみません、調子に乗り過ぎました!!ごめんなさーい!!』
テフヌトは地面に座り込んで、ぺこぺこと柄を必死で何度もヘッドバンキングをし始めた。どうやら土下座をしているらしい。
『・・・サクラ様?少し、旦那様とO★HANA★SHIをさせてくださいませんかしら?すぐに済みますわ」
「・・・は、はい」
『・・・全く貴方という人は昔からそうなんですから・・・ほら、こっちにいらっしゃい』
『・・・だ、だ、誰か助けておくれぇぇぇーーーっ!!儂、まだ刀身をへし折られたくない!!まだ死にたくない!!まだスクラップになりたくなーい!!サクラちゃん、いえ、サクラ様、マジで助けて!!あーっ!!かあちゃん、盾の装飾でヘッドバットはやめてーーーーーーっ!!!』
断末魔が遠くから聞こえてきた後、玉座の間はシーンと静まり返った。
「・・・神器って夫婦だったんだ」
「・・・私もこの展開は想定外でしたわ~」
しばし、呆然唖然としていた桜たちだった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
数十分後・・・。
ホルスがテフヌトを連れて、再び玉座の間に戻ってきた。テフヌトにはなぜか所々にひびが入っており、柄がへにょんと曲がっていて、ブツブツと何かをつぶやき続けている。さらに首の部分ともいえる柄には『もう二度と浮気をしません』とプラカードをぶら下げていた。哀れである。
『・・・ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、どうか、溶鉱炉には入れないでおくれ・・・』
「何をやったんですか・・・」
『うふふふ、ちょっとお説教をしただけですわ。ほら、お話の続きがまだあるのでしょう?』
『イエス、マァム!!』
ホルスに優しく言われて、テフヌトはビクンっと背筋をまっすぐに正し、咳払いをしてから話し出した。奥さんの尻に敷かれっぱなしである。
『・・・サクラちゃんよ、お主の心には儂が求めていた正義の光がある。自分のことをどうしても許せないと思うほどの過ちを犯し、その過ちから目を背けずに立ち向かい、大事なものを守りたいと強く願うお主の心は、とても強い。されど、強すぎる心や信念は自分自身も傷つける諸刃の剣にもなり得る。自分が傷ついても大事なものを守り抜こうとするお主はもう傷だらけじゃ。誰もお主のことを咎めることなどしないだろう。償いのために戦い続けると言うのなら、もうお主は十分に罪を償ったと儂は思うのじゃがな』
さっきまでの情けない姿とは思えない真剣な声で、まるで桜を諫めるように、霊剣は語り掛ける。
桜は言葉を選ぶように考えてから、ゆっくりと口を開いた。
「・・・償いのため、だけじゃねえさ」
『ほう?』
「・・・アイツを追放した時、俺はアイツにひどいことを言った。その罪は誰が何て言っても消せるものじゃない。何度謝っても、何度償っても、許せない。でも、それ以上に俺はアイツを助けたい。俺のことをアイツは初めて出来た男友達だって言っていたけど、俺にとっても、そうだから」
実家が極道であったことから、桜の周りには桜の実家の金や権力、暴力を頼ってくる連中ばかりだった。桜の顔色を窺い、心にもないおべっかを使い、すり寄ってくるハイエナのような連中に桜は表向きは明るく平等に接していたが、心の中では冷たく見下していた。
(誰も俺のことなんか見てくれていない)
(みんな、俺の家のことを恐れて、俺とまともにぶつかってきてくれない)
コスプレで女装をして、皆の目を引いていたのもこうしていればどこにでもいる普通の高校生として見てもらえるかもしれないという期待もあったが、それは叶わなかった。自分が拾い、家族として受け入れた仁美、麗音、忍、そして梨香や花桜梨だけが唯一信じられる存在だった。
その存在を全て失った時、自分の心を救ってくれたのが、追放したはずの斗真だった。
「・・・俺のことを仲間だって言ってくれた。俺と正面からまともに取り合ってくれたのも、ぶつかってきてくれたのも、全部斗真が初めてだった。アイツがいなかったら、俺はもうとっくに腐っていたよ」
頬を涙が伝って落ちる。
絶望に落ちた自分の手を取って、光が差す場所に引きずり上げてくれた友を想い、桜は涙を流す。
「アイツがいてくれたから、俺はここまでやってこられた。好きな女性も出来た。仁美たちのことを思い出すたびに何度もくじけそうになった時も、立ち上がることが出来た」
拳をぎゅっと力強く握りしめて、涙をぬぐい、桜はテフヌトにむき出しの思いを言葉にして放った。
「だから、今度は俺の番なんだ。アイツのことを何が何でも助け出す。そして、連れ去られた大切な女性たちも全員取り戻す!それを果たすまでは、絶対に諦めねぇって!!」
-絶対に諦めねェ!!-
斗真が使っていた力強い言葉が、桜にもしっかりと伝わっていた。
「・・・だから、俺はアイツやヴィルヘルミーナたちと笑って生きていけるために、この世界を守りたい!最後まで絶対に諦めたくない。だから、俺は戦います!!そのためにも、どうか、力を貸してください・・・!」
『その言葉、忘れるなよ。青臭い言葉じゃが、欲望まみれの人間ばかりを相手にしてきたせいか、こういうまだまだ未熟なものを鍛えるというのも悪くはないのぉ。お主は強くなれるぞ、儂は自分の直感を信じる』
大切な家族を守るために、仲間との約束を守るために、必死になって戦う姿はまだ戦士としては未熟かもしれない。しかし、決して折れない心と熱い気迫を桜から感じた霊剣は、彼のことが気持ちいい人物と思えてきた。
『それなら、サクラちゃんには強欲の七大魔王【サルヴィア・フォン・マモン】、色欲の七大魔王【ヴィオレティア・フォン・アスモデウス】と会ってもらおう。彼女二人は、霊剣に選ばれたものに力を与える使命を担っているからな』
「オリヴィアと、ヴィルヘルミーナのご先祖様ということですよね。彼女たちは、その、今・・・」
『何、魔王たちと契約を交わした後に、彼女たちに魔王の力を譲渡することは出来る。心配はいらんよ。それに、魔王の加護が彼女たちにももたらされるから、彼女たちの身を守ってくれるじゃろう』
テフヌトの話を聞き、契約をすることで彼女たちはひとまず安全が約束されるらしい。桜は承諾し、ベアトリクスから藍色の魔法石と紫色の魔法石を受け取ると、テフヌトの柄にはめ込んだ。魔法石が光り出し、桜の足元に魔法陣が浮かび上がると、まぶしい光が桜を包み込んだ。
霊剣テフヌト、ついに覚醒しました。かなりのポンコツな性格でしたが、実力はあります。彼の活躍、ご期待下さいませ。次回登場する最後の七大魔王の二人は果たしてどんな人物なのか?
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