第十五話「女王様との謁見~国の事情は複雑です~」
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「雲竜風虎・風魔法・翼竜の竜巻!!」
「火牛之計!!炎魔法・鬼の爆炎!!」
ワイバーンが鉤爪に黄色く光る風を纏い、両手を振るうと風が渦を巻き巨大な竜巻へと変わっていく。
さらにレベッカさんが大剣から放った巨大な火炎弾が竜巻と混じり合う。
辺り一面を赤々と照らしながら、炎が竜巻にらせんのように回り出して、炎と一体化していく。
やがて竜巻は強烈な熱風に変わり、スケルトンたちを飲み込んでいく。スケルトンは悲鳴を上げる間もなく灼熱の炎でドロドロに溶けていき、真空の刃で切り刻まれて、跡形もなく散っていく。
動く骨の異形たちはわずか数秒で、この世から影も形も消えていった。
「お~、なかなかやるね」
「それじゃ、次の相手はお前だな?」
「・・・うーん、そうしたいところだったけど、今日はもうここまでかな?」
そう言って、ワイバーンが銃からジオラマのケースを外すと、桜の姿に戻った。
「何だよ、逃げるのかよ?」
「悪いけどあたしも色々とお仕事があるんだわ。それにあんな実力を見せつけられたら、対策もなしで勝てると思うほどバカじゃないって」
遠くの方で緑色の光が壁のような形で浮かび上がった。
そして、遠くの方からこっちに向かっていくつもの足音が聞こえてくる。
「こっちだ!!」
「何があった!!大丈夫か!?」
駆けつけてきたのは、この街の騎士団らしき人たちだった。
ミルティユの国章らしきエンブレムを襟につけて、甲冑を身に纏い手には剣や槍を持っている。
「これ以上暴れたら、みんなを巻き込んじゃうけどそれでもいいの?」
「・・・最初から見越していた、てか」
「そうか、ブルーベルさんが呼んでくれたんだ」
よかった、これで桜や鳳たちを捕まえてくれるはずだ。
そう思うと、ほっと一安心した。
・・・その時だった。
ヒュルルルルルル(何かが飛んでくる音)
ガツン!!(僕の脳天にクリティカルヒットした音)
は・・・はれ・・・?
なんだか、僕の頭の上に、何かが落ちてきたぞ?
グルグル回る視界に飛び込んできたのは、白くてボーリングの玉ほどの大きさがあるものだった。
こ、これは、スケルトンの頭蓋骨・・・?
「お、お、お~ほしさ~ま、き~らきら~?」
痛みとショックで僕の意識が遠のいていくような気がした。
何だろう・・・身体から・・・力が抜けていく・・・。
すごく・・・・・・ねむい・・・・・・。
「-・・・い・・・ト・・・マ・・・」
レベッカさん、何を言っているんだろう?
ああ、何だかもう分からないけど、もうとにかく眠いんだ。
も・・・う・・・だ・・・め・・・だ・・・。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「・・・う・・・ん・・・ここは・・・?」
気が付くと、僕はどこかの部屋で寝かされていた。
「トーマ、大丈夫か!?」
僕の呼ぶ声が聞こえて、顔だけを声がする方に向けるとそこにはレベッカさんが心配そうな顔で覗き込んでいた。
「レベッカさん・・・?」
「大丈夫か!?頭痛くねえか?」
「・・・えっと・・・僕は確か・・・」
「お前、オレたちが倒し損ねたスケルトンの頭がお前の頭に直撃してそのままぶっ倒れちまってたんだよ」
あ・・・そうだ、今、全部思い出した。
まさか、あの時僕の頭の上にガイコツが直撃するなんて思わなかったよ。
「というよりは、お前自分でも気づいていなかったんだろうけど、魔力を大量に使い過ぎてかなりヤバかったんだよ。テントを作った時点でも翌日までぐっすり寝て体力と魔力を回復しなくちゃいけなかったのに、変身して戦っていたからな」
「・・・だから、レベッカさんは僕に待てって言っていたんだ。それなのに、僕、勝手に飛び出して・・・」
僕はベッドから跳び起きると、そのまま正座をしてマットに両手をつき、頭を下げた。
つまりは土下座です。こんな無茶をやっておいて謝れなかったら人間としておしまいな気がする。
「本当にごめんなさい!!」
「あー、まあ、オレも思い切り殴っちまったしよぉ。ちょっとやり過ぎたかな~とか思っていたから、これでおあいこってことにしようぜ。もしオレがお前の立場だったら、絶対に飛び出していっただろうしな」
レベッカさんと僕はお互いにバツが悪そうにしていたけど、お互いに恥ずかしそうに笑った。
「それで、ここはどこですか?」
「ここはブラオベーレ王国の王宮だよ。お前ぶっ倒れて、ここで寝かされていたんだ」
ここ、王宮だったんだ。
確かによく見ると、広い部屋の中は豪奢な作りとなっており、高そうな調度品や家具が置かれている。
深みのあるターコイズブルーと柄のあるフットスローで清潔感のある空間は、普通の家とは違う解放感と高貴な雰囲気を感じさせる。
「・・・アイリスさんは?そうだ、幕ノ内や鳳は?」
「あ~、落ち着け。まずは順を追って話すぜ。アイリスは今、ここの国王をやっている【ヴァネッサ】と謁見の間で話をしている。オレが傭兵団のリーダーだから話をつけた方がいいかって言ったんだけど、オレじゃどうせ難しい話なんて分からないだろうって言われて、それでトーマの様子を見にきたんだよ」
アイリスさん、気持ちは分かるけどレベッカさんも一応団長なんだから立てて上げてよ。
「まあ、その通りなんだけどなっ!難しい話を聞くとすぐに眠くなっちまうしなっ。ニャハハハ」
「あ、自覚はあったんですね・・・」
「それでよ、午前中にクロス王国からもう一人勇者がやってきてよ。クロス王国の国王とセルマの詫び状を持ってきやがった。今度の一件は全面的にクロス王国が悪いっていうことを認めるってよ。そのうえで、ブラオベーレからの苦情や要求は全て飲むってよ」
「え・・・?それって、クロス王国が自分たちの悪事を素直に認めたということですか!?」
ちょっと意外だった。もうちょっとごねるか、自分たちの方が偉いんだから文句を言うなとかムチャクチャなことを言うかと思っていたんだけど。
「詫び状を持ってきたのが、えーっと、眼鏡をかけていて、おっぱいがすごく大きい可愛いお姉ちゃんだったよ」
眼鏡をかけて、おっぱいが大きい女の子の勇者。
その人物について、もうあの人しか心当たりがない。
松本千鶴。
桜の親友にして、彼女・・・らしい。
でも、変だよね。桜は確か女の子のはずなのに、女の子同士で彼氏彼女とかあるのかな?
「その、最初はヴァネッサすっごく怒っていたんだよ。もうクロス王国との聖霊石の取引は全て中止して、友好の条約も破棄するとまで言い出してな。このままだとクロスとブラオベーレが戦争になるかもしれないというところまでいきそうになったんだ」
そりゃそうでしょうね。何せ友好国のクロスがいきなり乗り込んできて、大事な聖霊石を発掘して差し出していたタラスク族の村を襲撃するわ、王都に勇者が仲間を率いて乗り込もうとするわではブチ切れるだろう。
「でもさ、そのお姉ちゃんとあのサクラとかいうヤツがものすごく口が達者というかよ。クロスはブラオベーレの要求を全て飲むということを告げると、友好を破棄する話はうやむやになっちまってな。結論から言うと、友好の破棄は一旦様子見、しばらくの間はクロスに対する聖霊石の輸出量を3割減らしたうえで、仕入れ額を倍にして今後は取引をするということで話がついたんだ」
「・・・え?それってクロスが仕入れる聖霊石の量を減らして、値段を倍にした価格で買い取ってくれるなら今度の一件はお互いに納得するという形で話がついたってことですか?」
「ああ、クロスもブラオベーレも今度の一件で友好を破棄して戦争になんてなったら、お互いに得することがねえからな。クロスが勇者たちの暴走を認めずに上から目線で主張をしていたら、他の友好国や連合国から愛想を尽かされて離れていくわけだから、まずはブラオベーレの言い分を聞いて、応えられる限りの条件を飲まなくちゃならねえ。もとはと言えば、ミルティユにいきなり乗り込んできたのはクロスの勇者なんだからな」
そうだよね。
これでもし戦争になったら、周りから『クロスって、勇者を召喚することに成功したからって友好国にいきなり勇者を寄こして侵略まがいの行為をやらかした挙句に謝罪もろくに出来ないなんて、ちょっと調子に乗っているんじゃない?』とか思われるでしょうしね。
「でも、ブラオベーレも友好を破棄したらかなりヤバいことになるんだよ。これまではクロスと友好を結んでいたから他の国からの聖霊石や水産資源の干渉をクロスが上手く調整してくれていたんだよ。ブラオベーレの持つ地下資源や水産資源は世界中の国々が喉から手が出るほど欲しがるほどの最高級品ばかりだからさ。これまでにも何度か他国から聖霊石を卸してくれないかっていう誘いがあったんだけど、それを全部引き受けちまったらブラオベーレがスッカラカンになっちまうだろう?」
「そこで、世界的にも大国のクロスが間に入ることでブラオベーレから仕入れた聖霊石を他国に流して、その代わりに他国から仕入れてきた物品や資源をブラオベーレに流すことによって他国からの干渉を一定にするように調整していたということですか。確かにクロスがどうしてもと言えば他の国は断れないでしょうしね」
ブラオベーレだけだと、他国が手を組んで一斉に攻め込んでしまうことによって無理矢理大陸ごと手に入れようとすることがかつて何度かあったらしい。そこで、クロス王国と友好を結ぶことによってクロス王国が味方となって、資源が一定量以上、他国に流れないように便宜を図ってくれていたということか。
「それがなくなったら、クロスによって守られていたから手が出せなかった国々が一斉にブラオベーレの資源を自分たちのものにしようと、戦争を仕掛けてくる可能性も出てくるんだよ。それで、クロスからは聖霊石をブラオベーレからの条件の下で今後も購入させてもらうという条件と、逃走した元勇者のキリトってヤツをブラオベーレに身柄を引き渡せば、今度の騒ぎは双方ともに納得するという形で話を取り付けたんだ」
なるほどね。
ろくでもないとはいえ、大陸を支配するほどの大国の影響力はバカには出来ないってことか。
「まあ、そういうわけでキリトの行方をサクラの部隊がブラオベーレ騎士団と一緒に探しているところさ。そう遠くには逃げてねえみたいだし、ミルティユから出ている街道にも検問を置いたからそう簡単にブラオベーレを脱出することは出来ねえ。転移魔法も、妨害の結界を張ったからな」
「転移魔法で逃げることも出来ないということですか」
「そういうことだ。ところで、お前、もう大丈夫なのか?」
「え?ええ、もう大丈夫です。魔力も無事回復しているようですし、身体も大丈夫です」
「よっしゃ、それなら今から悪いんだけどさ、ヴァネッサに会ってくれねえか?」
突然レベッカさんがそう言ってきて、最初は何を言っているのか僕はピンとこなかった。
「・・・えーと、確か、ヴァネッサさんって」
「ブラオベーレの女王陛下。本名は【ヴァネッサ・フォン・ヴェパル6世】。ソロモンの一族【ヴェパル家】の当主にして、このマリブ大陸の統治者と言っても過言じゃねえな」
ちょっと待てやっ!?
何それ、いきなり僕に大陸を治めているトップの人に会って話をしてこいとか、何を言っているんですかアンタは!?僕に不敬罪で死んで来いと!?
「いやさー、ブルーベルからお前の話を聞いたら一度でいいから話がしたいと言って聞かねえんだこれがさ。まあ、お前も会って話してみるのもいいかもしれねえと思ってさ、目が覚めたら連れてくるって約束しちまったんだわこれが、ニャハハハ」
「笑って言うような話じゃないと思うんですけど!?ていうか、アンタ、国の王様のことを呼び捨てにしたり、勝手に約束を取り付けてくるとかありえないことばかりしていますよね!?」
「大丈夫。ヴァネッサは300年前にオレたちがミルティユに乗り込もうとしていた他国の海賊艦隊をブッ飛ばしたことがあってさ、それ以来、オレたちのことを姉貴分のように慕ってくれているんだよ。オレたちのことを見た瞬間に思い出してよ、ボロボロ泣き出してオレたちとまた会えたことを喜んでくれてな!公の場じゃないところでなら、昔みたいに呼び捨てで構わねえってさ!」
「え゛っ」
あり得ない。
ていうか、本当にその人と会わなくちゃいけないんですか?
僕、ただの異世界出身の一般人ですよ?
どうしよう、僕、不敬罪で死刑になったりとか・・・ならないよね?
クロス王国にとって最悪の展開、とりあえずは様子見ということで一時休止状態に。
もしこれで桐人が見つからなかったらクロス王国が責任問題で世界中から叩かれまくることになるので、桜たちも尻に火が付いた状態で桐人を探し回っております。
次回、ブラオベーレ王国の女王【ヴァネッサ】と斗真が初めて出会います。
次回もどうぞよろしくお願いいたします。




