第一話「ここは地獄の一丁目~世界一危険な墓地~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!
今回から第十一章が始まります!どうぞよろしくお願いいたします!
【斗真視点】
本当に、どうしてこうなった。
僕の人生って、一度死んで復活したのに、どうしてこんな目に遭い続けるのか。
あれか、僕の不幸とか不運とか、死んでも治らないってヤツか。
バカは死んでも治らないっていうことわざもあるけど、僕の場合は「バカ」と「不幸」が改善されないらしい。
松本に不意を突かれてそのまま意識を失ったかと思いきや、次に目を覚ましたら、僕は魔王になっていました。ステータスを見てみたら種族が人間から魔族(魔王)に変わっていた。しかも、オクタヴィアの記憶を見てみたら、かつてはシャルラッハロート様たちの上司に当たる人物だったけど、世界の秩序と平和を守るためなら、人間や魔物が犠牲になることも厭わないといったとんでもないパワハラ上司だったという。
いったいどうしてこうなるの!?
神様、アンタ、僕のことが嫌いだろう!?アッハッハ、殺せよぉぉぉっ!!僕だって嫌いだ、バーカ!!
とにかく、そんなパワハラ魔王に身体を乗っ取られて、女性の身体に変わってしまっただけではなく、上半身が生まれたままの姿で外を堂々と歩き回ったせいで、いつ僕が公然わいせつ罪で通報されるか分からない、ストレスもSAN値も限界ギリギリまで追い込まれていた時だった。もし通報されたら必死で逃げよう。捕まったら脱獄してでも逃げよう。全ては魔王のせいだ。僕は悪くない。
『・・・おい、人間、ここはどこだ?』
僕の頭の中に直接声が聞こえてきた。
何だか気味が悪いというか、なかなか慣れないな、これは・・・。
しかし、今はオクタヴィアに構っているヒマなどない。
(あばよ~、衛兵のとっつぁ~ん、と言えば許してくれるかな)
『お前は一体さっきから一人でブツブツとつぶやいているのだ』
(捕まりそうになった時に、許してもらうための謝罪の練習をしているんだよ!)
『捕まる?誰が、誰を捕まえると言うのだ』
(お前以外に誰がいるんだ、この大バカ野郎!!)
上半身を産まれたままの姿で外を堂々と闊歩しているアンタを、衛兵や騎士団、自警団が見逃すわけがないだろうが。これで捕まった日には、魔王の制止を振り切ってでも僕は自分の人生に幕を下ろそう。魔王も一緒に地獄に引きずり込んでやる。
(痴女のせいで、僕の人生が最悪のバッドエンドを迎えそうになっているんだよ、コンチクショウ。そんな運命に必死で抗っているんだよ)
『もうすでに一回死んでいるのだから、バッドエンドもへったくれもないだろうが』
(アハハハー、本当に一度ブチ殺しちゃおうかなー、この野郎♪)
まだ生きているんだから、バッドエンドじゃありません。
そんな最低最悪のバッドエンドなんて、まっぴら御免だい。
(どこって言われても、真っ暗で何も見えないよ)
『ふむ、それでは見えるようにしてやろう』
オクタヴィアがそう言うと、僕の視界には、オクタヴィアが見ている外の世界が見えた。
辺り一面に立ち込めている、濃い霧。
外灯の灯りがぼわぁっと淡く光っており、一瞬、人魂のように見えた。
そして見渡す限りに、漆黒の絨毯を思わせるような綺麗に手入れされた芝生には、様々な形の墓碑や十字架が並んでいた。静かな森に囲まれた空間は息をのむような幻想的な美しさを感じさせる。
(・・・ここ、もしかして、墓地じゃないかな)
『・・・ここに看板があるな。【ヴィナグラート国立霊園】と書かれている』
ヴィナグラート国立霊園・・・?
あ、思い出した!
ここって、確か闇の魔神オプスキュリテ、高森くんがダンジョンを構えている場所じゃないか!それに、ヴィルヘルミーナさんが生まれ育った故郷という話も聞いている。それにしても、かなり広いな。墓地というよりは、まるで公園みたいだ。
(・・・そうだ、あの後みんなどうなったんだろう。連絡しておかないと・・・)
『連絡なんて、どうやってするつもりだ』
(確かスマホがあったはず。えっと、あれ、どこだっけ?・・・そう言えば、ゴールド・リヴァーの会場のロッカーにカバンと一緒に入れておいたんだった!)
なんてこったい!これじゃ、桜にも連絡が取れないじゃないか!
(とにかく、何とかしてみんなと合流しないと)
『・・・合流して、どうするのだ?』
(・・・えーと、まだ考えていなかった)
『お前って、物事を冷静に考えているようで、実は何も考えていないのだな』
やかましいわ。
だって、ついさっき自分が死んで魔王に生まれ変わったなんて聞かされたばかりだぞ!?何がどうしてどうなったのか分からないというのに、これからどうしようかなんて考えられるヤツがいるか!?
(まずは、最終的には松本とヴェロニカを二度とバカなことが出来ない様に、この手でブッ倒す)
生かしておいたら彼女たちは次に何をやらかすか分からない。もう彼女たちに反省や更生を求めるのは無理だ。街の住民を躊躇なくアンデッドに変えてしまったり、世界を救済するために世界を崩壊させようとするなんて、人間としての大切な心や感情が欠落してしまっている。
不死身になったとしても、まだ何か対策が打てるはずだ。
(・・・オクタヴィアさん、この反骨の炎って、不死身になった人間が相手でも効果があるのかな?)
『知らん』
一回、本気でぶん殴るぞ。
『我はあのような愚物を相手にしたことなどないのでな。ただ、我の反骨の炎は”世界に影響を与える事象に対してその動きを反対にする”ことが出来る。つまり、あの勇者が世界を崩壊に導こうとしているのなら、その魔道具や術者に我の炎を使って、この世界の崩壊を食い止めることは出来る』
しかし、松本がどれほどの魔力を持っているのかどうかは分からないため、過信は出来ないという。だから、知らんと言ったのか。そりゃそうだ、松本とは初めて戦うことになるもんな。
「・・・その能力を松本が知ったら、きっと対策を打つだろうね。でも、その前にまず結界を破るために全ての魔神八傑衆の力を手に入れないといけない。高森くんに力を貸してもらうか、もし、戦うことになったら、封印するしかないのか」
花房や百田のように僕たちに対して明らかに殺意を持って、色々と仕掛けてくるなら問答無用で倒すんだけど、高森くんの動きがどうしても読めない。ヴィルヘルミーナさんに好意を持っているということだけは分かるけど、どういう意図があって彼女に好意を寄せているのか、皆目見当がつかない。
見た目だけなら同性異性が振り向かずにはいられない美人だけど、一度口を開いたらドン引きしまくるようなバカなことばかり言うし、だれかれ構わずにアプローチをするし、とにかく自由奔放にもほどがあるのだ。よくこれまでに公然わいせつ罪で捕まらなかったものである。
彼女を自分のものにしようとしていたけど、それにも何か意図があるのだろうか?
いずれにせよ、高森くんの所に向かわなくちゃいけないような気がする。
(・・・きっと他のみんなも僕を探すよりも先に、残りの魔神八傑衆を何とかしようとするはず。御厨さんと百田くん、大浦くんに花房、宗像さん、そしてつばさと光を抑えた今、残っているのは高森くんだけだ)
『闇の魔神オプスキュリテの所に、あの連中が向かうということか?』
(うん、きっとそうすると思う)
『・・・ふむ、闇の魔神オプスキュリテの話なら我も聞いておる。あやつは実質魔神八傑衆の頂点に君臨する実力を持っている。アイツの操る闇の魔力はあらゆるものを強制的に無力化させることが出来るらしい。特に、短い時間の間だけ、時間を停止させることも可能らしいな』
時間を停止させることが出来る?
その時、僕の脳裏に桜が高森くんと対決し、破れた時のことを思い出した。
あの時、試合が終わる10秒前ぐらいから、高森くんと桜の戦いの記憶が抜け落ちているのだ。
何て言うか、気が付いたら試合が終わっていて、桜が負けていたという感じだ。
(・・・そうか、もしかしたら、あの時高森くんは時間を止めて、その間に鉄板焼きを作り上げたんだ。それで、桜は負けた。つまり、10秒間時間を止めている間は高森くんだけが自由に動き回ることが出来るということになる)
でも、時間を止める魔法となると相当な量の魔力を消費するのではないのだろうか。領域を作り上げて、その中だけの時間を止めるとしても、そうそう使えるものとは思えない。高森くんはとっておきの秘密兵器として、そんな能力を使ったのだとしたら、どうやって倒すことが出来るんだ?
その時だった。
『・・・うん?なんだ、この連中は?』
(え?)
気が付くと、僕たちの周りには、甲冑に身を包んだ兵士たちに囲まれていた。
彼らの身体には肉がついておらず、骨だけの身体を武装して、手に持っている長槍の切っ先を向けていた。僕たちを睨みつけているであろう目がある部分には目玉はなく、眼窩がポッカリと空いている。
『ソコデ、何ヲシテイルノダ!』
ガイコツの魔物【スケルトン】はカタカタと音を鳴らしながら、どこから発しているのか分からないが、低くて無機質な声で僕たちに話しかけてきた。
『・・・コンナ真夜中ニ、素ッ裸デ墓場ヲウロツキ回ッテイル痴女ガイルト、通報ガアッタゾ』
『今スグニ、ヤメナサイ!』
しっかりと通報されていましたー!しかも骸骨の兵士たちがお出ましかーい!。
というかヤバい!!さすがにここは大人しく退かないと、マジで捕まっちゃう!!
転生してすぐに公然わいせつ罪で投獄されましたなんて、さすがに笑えないぞ、オイ!?
『・・・我に命令をするとは、随分といい度胸をしているな。下級種族が、魔王に逆らうとどうなるか教えてやろうか』
『エッ?』
10秒後。
僕たちはガイコツの兵士たちから変質者&暴行の現行犯として追われる身となった。
魔王オクタヴィア&斗真、相変わらずの不幸全開で珍道中を繰り広げております。
斗真はこの最悪なバッドエンドを回避することは出来るのでしょうか?
今度の舞台はゴーストやアンデッドで溢れかえった世界最大の墓地で大暴れいたします!




