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第二十四話「傷だらけの再出発~彩虹の戦乙女、最悪の事件⑦~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!

新作が書きあがりましたので、投稿いたします!

どうぞよろしくお願いいたします。

 【レベッカ視点】


 トーマ、おい、どこに行くんだよ?


 行かないでよ。


 オレを、置いて行かないで。


 お前がいなくなるなんて、考えるだけでも嫌なんだ。


 悲しくて、辛くて、苦しくて・・・。


 胸が張り裂けそうになる。


 いくら腕を伸ばしても・・・。


 いくら叫んでも・・・。


 真っ白な光に飲み込まれて、トーマの姿がどんどん見えなくなっていく。


 「・・・トーマ・・・!!」


 一瞬だけ、トーマが振り返った。

 その時、トーマは涙を流しながら、オレが大好きなあの優しい笑顔を浮かべていた。


 ー絶対に、戻ってくる。絶対に帰る。-




 ・・・その言葉、信じて、いいんだよな?


 ・・・トーマ。



 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 「・・・一体何が起きたというのだ?」


 「・・・分からへん。せやけど、さっきまでの胸糞悪い空気がすっかり消えとる!」


 「・・・ああ、実に清々しい、爽やかで胸が空くような心地よい空気に変わっている」


 光が晴れて、目を開けると、スタジアムの中はさっきまでの腐った死体の甘酸っぱくむせかえるような臭いや、吐き気を催すような気味の悪い魔力の気配は嘘のように消えていた。


 辺り一面がキラキラと綺麗な光が瞬き、オレたちが座り込んでいた場外の草むらがふかふかで気持ちよく、濃厚で甘い匂いを放ち、生き生きとしていた。


 「・・・まさか、これは【浄化】の魔法!?」


 姐さんが声を上げた。


 「・・・浄化って、どういう魔法だったっけ?」


 「お前は浄化のことも知らんのか。まあ、お前のお粗末な脳味噌でも理解できるように説明してやろう。ザックリ言うと、聖なる光の力で汚れた邪気や魔力を清めて弱体化させたり、魔素で汚れてしまった土地やその土地に住まうものたちから邪悪な魔素を取り除き、体力や魔力を回復させるといったものだ」


 ふーん、つまり、癒しの魔法がパワーアップしたようなモンか。さすがアイリス、ショタコンとブラコンを拗らせている筋金入りの変態だけど、一応聖職者だもんな。よく知っているな。


 「・・・しかし、いくら何でもこれほどなまでに広範囲で発動する浄化の魔法は見たことも聞いたこともありませんわ~。もしかして、これはさっきトーマちゃんが出した、あの虹色の炎が起こしたものなのでしょうか?」


 「・・・他に考えられないわね」


 その時だ。


 「・・・ちょっと、みんな!あれを見たまえ!!」


 ヴィルヘルミーナがスクリーンを指さして、大きな声でオレたちを呼んだ。

 スクリーンを見ると、そこには、スタジアムの周囲を取り囲んでいた大勢のゾンビやグールが今にも扉をぶち破ろうと、シャッターに押し寄せていた・・・はずだった。


 『・・・あれ?俺たち、一体何をしていたんだろう?』


 『・・・どうして、あたしたち、スタジアムにいるのかしら?』


 『・・・頭がぼんやりとしていて、思い出せねえ・・・』


 おいおい、ちょっと待てよ!?


 さっきまで身体中の肉が腐り落ちて、白目を剥いて、理性を失っていたはずのゾンビが元の姿にもどっている!?スタジアムの前に群がっていた住民は何が起きたのか分からないといった様子で困惑している。腐り落ちていた肉が嘘のように生き生きとした血色のいい肌に戻っていた。


 「・・・・・・さっきまで、ゾンビだった人間や魔族が、元の姿に戻っている!?」


 「まさか、さっきトーマ君が放ったあの虹色の炎の力で、彼らを蘇生させたというのかい!?」


 何が起きているのか、全然分からねえ!!


 


 「・・・あれは、反骨の炎によって、一度死んでゾンビとして復活した彼らの魂を冥界から連れ戻した、反魂の魔法よ」




 後ろを振り返ると、姐さんが呆然とした表情を浮かべていた。


 「・・・まさか、本当にこの目で見られるなんて、思わなかった」


 「反骨の炎とは、何ですか?」


 「・・・全属性の魔法能力者でも、ごくわずかの選ばれたものにしか使えないと言われている、究極の癒しの魔法にして、全てを破壊する魔法であり、死という絶対的な存在でさえも根元からひっくり返す禁忌の魔法。でも、トーマちゃんが使った反骨の炎は、これまでのどんな高名な魔法能力者であっても使いこなせることが出来ないことをいとも簡単にやってのけた」


 一体どういうことだ?


 「・・・反骨の炎に制約を無自覚に設けることによって、生命の禁忌に触れることなく、仮死状態となっていた人間や魔物を元の姿に戻したということだ。しかし、一度でも人を食らい、人の肉の味を知ってしまったものは、魂が汚れ切って、人間の感情や記憶を全て失い、全く別の存在として生まれ変わったグールやゾンビとなる。そういった邪悪な存在になったものだけを消滅させて、まだ人間の魂や記憶、感情が完全に消えていないものだけを復活させたんだ」


 「・・・・・・なるほど、トーマは臆病だから、デカい能力を使おうとするときに無自覚でやってはいけない一線を本能で感じ取ることが出来る」


 「・・・えーと、つまり、魔法でアンデッドの姿に変えられても、人の肉を食っちまって味を覚えちまうと、もう完全にアウトというわけで、まだ人間の肉を食っていない連中だけが元の姿に戻れたってことか?」


 「まあ、ゾンビ化の初期症状なら、元の人間の姿に蘇生することが出来るというわけかな?」


 なるほど、それなら分かりやすい。


 「・・・しかし、いくら制約を設けたとはいえ、町中の人間を蘇生させるほどの強力な蘇生魔法なんて、反骨の炎ってすごいんですね」


 「・・・いいえ、反骨の炎はただの蘇生魔法というわけじゃないわ。私が古文書で見たことがある限りでは、反骨の炎は【起きている事象を強制的にひっくり返すことが出来る魔法】と呼ばれているの。


 絶対的な力で何かをなそうとすれば、それを失敗させることが出来る。悪い事が起きているのなら、何らかの打破となる展開を引き起こす、つまり、絶対的な力に唯一対抗できる能力ということらしい。


 うーん、姐さん、全然分からねえ。頭の中がグルグルと回るよー。


 「・・・斗真らしい能力だよね。アイツ、意外と負けず嫌いだし、頑固なところがあるし」


 「そう考えれば分かりますわ~。つまり、あのクズ勇者が町中の人間をアンデッドに変えようとしている力が絶対的なものだとしたら、トーマちゃんはそれに何が何でも反抗して、人の肉をまだ食っていない人間や魔族を蘇生させて、アンデッドとして生まれ変わってしまった人たちの魂を浄化して、成仏させたということになりますわね~」


 「・・・・・・おっぱい勇者の思い通りになるなんて、絶対に嫌だというトーマの悪あがきが生み出した能力という認識でよろしいのだろうか」


 あー、これでようやく分かった!!


 「これってもしかしてさ、トーマって、ものすごい魔法の才能があるってことか?」


 「・・・ええ、私が知っている限り、反魂の炎を無自覚とはいえ、暴走させることもなく使いこなせる魔導師は見たことも来たこともない。世界中の魔術師や魔導師が聞いたら、泡を吹いて卒倒するレベルね。これは基礎から学びなおして、徹底的に魔法の知識を教えて、自分のものに出来たら・・・数千年に一人の天才と言える魔導師になれるかもしれない」


 トーマが、数千年に一人の天才魔導師・・・!!


 「・・・トーマちゃん、どこに行ってしまったのでしょうか~?」


 「・・・アイツの魔力を手掛かりに、探し出すしかないわね」


 「戻ってくるとは言っていたけど、こっちから探しに行かないと、トーマ君が迷子になってしまいそうだからねぇ」


 そうだよ、まずはトーマを連れ戻さないと。

 必ず帰るって言っていたけどさ、オレ、待つの苦手なんだよ。


 お前と今すぐにでも会いたい。

 抱きしめたい。お前と熱く、激しく、愛し合いたい。


 お前が欲しいんだ。


 お前がそばにいてくれないと、嫌なんだ。


 オレ・・・アタシのつがいはお前だけだ。

 アタシの身体も、心も、もう全部お前だけのものなんだからな。


 本能が、お前を求めている。

 お前を絶対に手放さない、失いたくない。


 「探そうぜ。トーマのことだから、魔王の姿になっても、絶対にオレたちのために何かしようとして、無茶なことをしそうだもんな」


 「まあ、考えられる場所と言えば、残りの魔神の居場所か、邪眼一族の根城といったところか」


 「・・・・・・アイツの性格を考えると、絶対に報復する」


 「まあ、一度は命を奪われたわけだしね。そこまでやられて、仕返しをしないわけないし」


 


 「・・・やれやれ、この展開は想定外じゃのぉ・・・」



 その時、突然リングの上に黒い闇が現れると、見る見る大きくなって広がっていき、その中からサクラと戦った闇の魔神オプスキュリテ・・・シロウと名乗る女の子が現れた。


 「な、何や?この闇は!?」


 「身体が・・・動かない・・・!?」


 シロウの身体から放っている闇がまるで生き物のように、巨大な腕でヴィルヘルミーナとオリヴィアの身体を羽交い絞めにする。必死で二人は腕をほどこうとするが、腕はビクともしない。


 「高森!!どういうつもりだ、勝負はついたはずだろうが!!」


 「まあな。しかし、主が勝手にご破算にしてしまった以上、その話はなかったことになるのぅ。それならば、改めてワシも彼女たちを手に入れようとしても決して誓いを違えたということにはなるまいて」


 シロウのヤツ、まさかオリヴィアとヴィルヘルミーナを自分のものにするつもりか!?


 オレたちが武器を取り出して動き出そうとした瞬間、シロウの足元から影が大きく広がると、オレたちのことを覆い尽くすほどの巨大な闇の津波が目の前に現れて、あっという間に飲み込んでいく。


 「高森ぃぃぃぃぃぃっ!!」


 「ワシは【ヴィナグラート古城】で待っておるぞ。彼女たちを取り戻したければ、ヴィナグラート古城に来い。そこでリターンマッチをしようではないか。ワシに勝つことが出来れば、彼女たちを解放しよう。まあ、霊剣の力を解放することも出来ないお主に、ワシに勝てるとは思えんがな。楽しみにしておるぞい」


 シロウの姿が闇に飲み込まれて消えていくと、周りが何もかも真っ暗な闇に包み込まれていく。




 「暗黒沈静、闇魔法、闇魔神の(ダーク・)世界(ストッパー)




 その声が聞こえた瞬間、オレの思考が停まった。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 【士郎視点】


 ふう、これからが忙しくなりそうじゃな。


 全く、まさかあそこで松本が出てくるとは想定外じゃ。あやつ、クロスを離れることが出来るようになったということは、もう一刻の猶予もないな。


 この世界を滅ぼすつもりじゃろうが、そうはさせん。


 ワシはワシのやり方で、ワシが今後生きていくであろうこの世界を守ることにするかのう。


 まあ、幕ノ内にあんな形で喧嘩を売った以上、幕ノ内に殺されるかもしれんがな。


 しかし、そのぐらいの意気込みでかかってこなければ、霊剣の力を解放することなど不可能じゃ。

 いい加減、アイツも自分の奥に眠っている勇者の真の力に目覚めてもらわないといかん。


 「すまんのう、ヴィルヘルミーナ殿、オリヴィア殿。手荒な真似はしないと、約束はしよう。幕ノ内の真の力を限界まで引き出すためには、お主たちの力が必要じゃ」


 気を失っている二人を抱えながら、ワシは詫びの言葉をかけた。


 さて、ワシも気を引き締めて、最後の仕上げに取り掛かるとしようかの。


斗真の行方は果たしてどこに?

そして、高森の真の狙いは・・・?


次回で第十章、終了となります!

このお話も、あと二章で完結となります!

最後まで頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします!

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