第二十三話「反骨の炎~彩虹の戦乙女、最悪の事件⑥~」
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【三人称視点】
「チクショウ、町中の人間をアンデッドに変えやがったのかよ!?マジでイカレてんぞ!!」
「・・・この状況、まだ調査の途中の段階ですが、現在のクロス王国で起きている事件によく似ていますわ。都市一つに住む人間や魔物を一瞬でアンデッドに変えてしまうほどの強力な魔法が発動する条件に、町全体に円を描くように魔法陣を展開して、その中央で術を発動させるというものがあります。つまり・・・」
「・・・アンデッドたちをブッ飛ばすよりも先に、アンデッドを生み出している魔法陣の中心にある呪具や能力者を倒した方が早いってことか!!」
「ええ、そしてこの街の中央に置かれているのが、ここですわ」
堕天使の王バルバラと、アンデッドや死霊系の魔物の頂点に君臨する優れたネクロマンサーでもあるベルナデッダがスタジアムに押し寄せてくるアンデッドを薙ぎ払いながら、懸命に避難活動を続けていた。
「このスタジアムのどこかに、町の人間や魔物をアンデッドに変えている装置か術者がいるってことか!そうなったら、まずはそこを突き止めて、さっさとぶっ壊さなけりゃこっちが追い詰められちまうってわけだな!」
「ええ、今、私の死霊を使って、装置もしくは術者がどこにいるか、探していますわ!」
「ソロモン王に応援を願いたいところだけど、ヴェロニカが宣戦布告をした以上、いつ、ソロモン王や他のソロモン72柱に仕掛けていくか分からねえからな・・・!何とかオレたちだけで解決するしかねえ!!」
その時だ。
スタジアムの扉が吹き飛び、むせ返るような肉が腐る悪臭を放ちながら。動く屍と化した住民の成れの果てがなだれ込んできた。黄色く濁った瞳を向けて、肉片と血がこびりついた口を大きく開くと、よだれを垂らしながらよろよろと歩いて迫ってくる。肉が腐っているせいか、足を引きずって移動するため、動き全体が遅くなっている。
「もうここまで来やがったか・・・!!」
「一人でも多くの命を助けるためにも、ここから先には絶対に通しませんよ!!」
「言われなくても、分かってらぁっ!!」
バルバラが軍服を脱いで、タンクトップだけを着込んだ姿になった。
六つに割れた腹筋、下着代わりのタンクトップだけを上半身に纏った彼女の姿は荒々しくも美しい、野獣のようだ。自分の鍛え上げた肉体と光や聖なる浄化の魔法を武器とする彼女は、堕天使の王にして、魔界屈指の武闘派としてその名をとどろかせている。
上半身の筋肉が膨れ上がり、血管が浮かんだ大きな腕を繰り出して、アンデッドの顔面を拳で殴りつけた。強烈な拳の一撃を受けて、アンデッドの首が嫌な音を立ててちぎれ飛ぶ。
「ヴェロニカの野郎、絶対にタダじゃおかねえっ!!」
「・・・ええ、彼女はあまりにも愚かな選択をしましたね。ソロモン72柱だけではなく、ソロモン王にまで反旗を翻すなど、前代未聞の不祥事ですわ。その罪は、彼女の命だけでは済みませんわね」
「あったりまえだ!!もうアイツの魔力が感知できねえってことは、とっくに逃げたらしいが、アイツの拠点に乗り込んで、絶対に捕まえて、ソロモン王の所に連行してやるぜ!!」
スタジアムのメインゲートはもはや押し寄せるアンデッドやグールを抑えつけるには、限界が訪れていた。シャッターがきしみ、鈍い音を立ててシャッターが歪んでいき、隙間からは亡者たちの哀れなうめき声が聞こえてきた。
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「・・・ちっ、不快な匂いだ・・・」
リングで寝転がっていたオクタヴィアが不機嫌そうに表情を歪めると、飛び起きて、ふわりと身体が浮き上がった。橙色の魔石に手をかざすと、アレクシアが使っているものと同じ作りをした杖が現れた。
「・・・全て消し去ってやる・・・」
オクタヴィアの瞳が、黒色からオレンジ色の炎が燃え上がるように色が変わっていく。
そして、杖の先端から漆黒の炎が噴き出すと、彼女の全身を覆い尽くし、巨大な鳥の翼のような形へと変わっていく。黒い火の粉をまき散らしながら空に舞い上がる姿は、まるで死者を食らう呪われた鳥【フレスベルグ】のようにも見えた。
「・・・全てを消去・・・消去・・・消去・・・無に還す。我は原罪と虚無の魔王【オクタヴィア】。全てを無に還す使命を担うもの。虚無の闇で全てを飲み込み、終焉に導くことが我の使命。我は我に与えられた使命を・・・実行する・・・!」
杖をかざすと、オクタヴィアの足元から巨大な魔法陣が展開して、スタジアムを瞬く間に飲み込んでいく。さらに魔法陣は広がっていき、ゴールド・リヴァー全体に達する。あまりにも巨大な魔法陣が展開されたことに、彼女の持つ膨大な量の魔力、そして、彼女が何をしようとしているのか察したアイリスの顏から血の気が引いていく。
「・・・まさか、このゴールド・リヴァーを丸ごと消し去るつもりなのか!?」
「ちょ、ちょっと、いくら何でもそれはヤバすぎるでしょう!?」
『・・・いいえ、オクタヴィア様ならやりかねません。彼女は【原罪】と【虚無】を司るマイナスの存在。彼女に与えられた使命は、私たちが司る大罪がもたらす欲望と同じ強さを持つ負の存在を自らの力に変えることで、大罪の力が使われても世界が崩壊しない様に裏から支え続ける事。つまり、大罪と呼ばれている私たちの罪が人間の欲求や感情といった生きるエネルギーとして考えるとすれば、彼女はその反対の全てを滅ぼすマイナスのエネルギーを振るい、世界に害を与える存在を消し去ることが使命なのです』
『しかし、その力はあまりにも強すぎるうえに、あのお方が物事をあまり考えないお方ですからね。世界を彼女の力で崩壊することになっても、世界を破壊する脅威が消え去るならやむを得ないと本気で思っているのですわ。つまり、わたくしたち七大魔王や七大魔王の転生者である貴方たちが消えることになっても、彼女にとっては世界から脅威となる存在が消えるなら、仕方がないと割り切っているということですわ!』
「何だよ、それ!?世界を救うためなら、自分の部下や仲間が死んでも構わないっていいたいのか!?それじゃ、あのおっぱい勇者と変わらねえじゃねえか!!」
『その上、手加減とか忖度とか遠慮とかが全くできないから、世界を何度も滅ぼしかけたのよ!!つまり、任務に忠実なばかりに、周りの被害や、自分のやっていることが結局本末転倒になりかねないようなヤバいことも、考えなしでやってのけるような魔王だってこと!!』
世界を救うために虚無の魔法を振るうが、後先考えずに世界全体を崩壊しかねない危険な魔法を使いまくったり、身内や仲間を犠牲になろうとも、自分の使命だけを第一と考えて実行し、結果的に世界を滅ぼす脅威を消し去ることに成功しても、それ以上の被害を出しかけたこともあるため、シャルラッハロートたちが長い年月をかけて封印したというのも、もう彼女が表舞台に出てきたら、いつ世界が破壊されても、全生物が死に絶えることになってもおかしくないと判断したため、オクタヴィアは封印されたのだ。
「・・・・・・分かりやすく説明すると、自分が良ければそれでいいって本気で思い込んでいる、仕事中毒の超自己中な上に、自分がやっていることが間違っているとは全然考えていない、真性のサイコパス?」
「あらあらまあまあ~、というか、ものすげぇおバカさんということですわね~」
「よりによって、それがトーマ君のご先祖さまとはね・・・!」
「・・・ああ、ご先祖様に似ていなくて本当に良かったと思うな」
斗真がそんな千鶴のような性格だったらと思うと、ゾッとする。
あの可愛い弟分があそこまで頭がイカレた人間になった時のイメージを思い浮かべたレベッカたちは、必死でイメージを記憶から消し去った。例えバカでも、斗真の場合は愛くるしいバカだ。からかったらすぐに泣いちゃうといった、純粋無垢な子なのだ。
「それよりも、急いでここから逃げないと!!」
「・・・終焉よ・・・来たれ・・・全ての敵を・・・消し去れ・・・我が虚無の炎よ・・・燃え上がれ・・・」
魔法陣が不気味な紫色の光を放ち、黒い炎がまるで生き物のように気味の悪い動きをしながら揺れている。空一面が赤く染まり、会場内の時間がまるで凍り付いたように静かになった。
その時だ。
「・・・ぐっ・・・!?また・・・”お前”か!?・・・どうして・・・邪魔をする!?」
”当たり前でしょうが!?魔王だか覇王だか知らないけど、人の身体を使って勝手になんてことをしようとしているの!?そんな魔法を使ったら、レベッカたちまで死んじゃうじゃないか!!”
「・・・え!?」
その時、会場にいた全員が、息をのんだ。
確かに聞こえたのだ。
オクタヴィアが頭を両手で抱えて、苦しんでいる。
彼女の隣に、もう一人、彼女にそっくりな顔立ちをした黒髪の少女・・・いいや、中性的な顔立ちをした少年の姿があった。透き通っていて、幽霊のようにも見える。
”例え、ご先祖様だろうと誰だろうと、僕の大切な仲間やお嫁さんになってくれる女性に、ひどいことはさせない!!”
『・・・我の・・・使命は・・・脅威を・・・世界から消し去ること・・・!』
”大切な仲間まで失うかもしれないのに、世界を守ることなんか出来るもんか!!何て言われても、僕は絶対に許さないし、絶対に認めない!!”
「・・・トーマ・・・!!」
そこにいたのは、死んだはずの梶斗真だった。
オクタヴィアの中に、まだ斗真の魂が生きて存在している・・・!
レベッカの瞳に光が宿り、赤色の瞳から涙がこぼれ落ちる。
「・・・アイツ・・・まだ・・・オクタヴィアの中にいるんだ!!」
桜も涙を流し、その表情に生気が戻っていく。
絶望と怒りに染まっていた瞳が、徐々に希望の光が灯り、口元の端がゆっくりと上がっていく。
”絶対に守ってみせる!!僕が守る!!最後まで諦めるもんかぁぁぁぁぁぁっ!!”
斗真が叫ぶと、魔法陣の光が見る見る美しいグラデーションを彩る、優しく暖かい光に変わっていく。まるで傷を優しく包み込み、癒すような心地よい光。斗真がオクタヴィアの身体に重なると、オクタヴィアの瞳に光が灯り、感情を感じさせない無表情が豹変した。
そこには、自分たちが愛する可愛い弟分にして、最高の仲間である彼の幼さを感じさせる童顔があった。
「レベッカ!!」
「・・・トーマぁっ!!」
「桜!!」
「・・・あの・・・バカ野郎!!」
「アレクシア!アイリス!ニナ!ビビ姉!オリヴィアさん!ミーナさんっ!!まだ諦めるな!!最後まで、絶対に諦めちゃダメだ!!」
「・・・トーマ・・・!!」
「・・・アハハハッ、私たちとしたことが、トーマに励まされるなんてね!」
「・・・・・・まだ、勝負は終わっていない!」
「ああ、ここで落ち込んどるヒマはあらへんな!!」
「・・・と゛ぉ゛ま゛く゛ぅぅぅぅぅぅん!!」
先ほどまで沈んでいた表情から絶望が消えて、闘志が戻っていく。
一度死んで、魔王として覚醒したにも関わらず、彼はまだ戦っているのだ。
一度死んでも絶対に諦めず、仲間を励まし、自分自身も立ち上がり続ける。
そんな彼を見て、自分たちが落ち込んでいるわけにはいかないではないか。
「運命とか、使命とか、そんなもの知るか!!僕は僕だ!!僕の大切な仲間を傷つけるヤツは、誰だろうと、絶対に・・・許さないっ!!」
杖を地面に突き刺すと、魔法陣から無数の光の粒子が噴き出した。
光の粒子がまぶしく光り出すと、レベッカたちは目を開けていられず、思わず閉じた。
(・・・何だこれ、すごく、あったかい・・・!)
(・・・身体中に力がみなぎってくる・・・!)
(・・・・・・とても優しくて、暖かい、まるでお日様みたい)
「・・・大好きな人たちを、大好きな世界を傷つけるものなんて、全部吹き飛ばしてやるっ!!そして、絶対に守り抜いてみせるっ!!守るんだっ、絶対に守るんだぁぁぁっ!!」
斗真の身体を包み込んでいた黒い炎が膨れると、隣にもう一つ、新雪のように真っ白で穏やかな光を放つ白色の炎が現れて、斗真の左半身を包み込んだ。そして黒い炎が右半身を包み込んでいく。
「反骨の炎!!」
スタジアム、いや、ゴールド・リヴァー全体をまぶしい光が包み込んでいく。
やがて何もかもを光が飲み込んでいき、視界が真っ白になって、そのまま・・・桜たちは意識を失った。
”・・・必ず自分を取り戻して帰るから・・・待っていてね・・・。”
光の中から、斗真の声が聞こえたような気がした。
レベッカはまぶしさに目を閉じそうになるが、必死で斗真がいる場所に向かって走り出す。
腕を必死で伸ばしても、伸ばしても、斗真には届かない。
「行かないで!!トーマ、アタシの前からいなくなるなよ!!」
”・・・レベッカ。”
「・・・好きなんだ!!」
レベッカは光の中に向かって思い切り、叫んだ。
初めて会って、共に家族として過ごしてきて、家族とは違う淡い感情を抱くようになっていた。
涙を流して、遠くに行ってしまわないように、必死で叫ぶ。
「オレは・・・アタシは・・・カジ・トーマのことを・・・愛しているっ!!!」
「お前だけの女になりたいんだっ!!アタシのつがいは、お前じゃないと嫌なんだっ!!!」
「どこにいても、絶対に見つけ出すっ!!絶対に取り戻す!!お前は・・・アタシのものだっ!!!」
「トーマのことが、弟分としてじゃなくて、男として大好きなんだぁぁぁっ!!!」
”・・・ありがとう・・・すごく・・・嬉しい・・・。”
”僕、この世界に来て、本当に良かった・・・!”
今にも泣きそうな、斗真の声が聞こえた。
そして、光が晴れると、そこには・・・斗真の姿は・・・なかった。
斗真の行方は果たして・・・。
レベッカがヒロインとして、ついに告白をしました。
彼女の恋の行方も、今後ともよろしくお願いいたします。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!




