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第二十一話「原罪の魔王、降臨~彩虹の戦乙女、最悪の事件④」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!

新作が書きあがりましたので、投稿いたします!

どうぞよろしくお願いいたします。

 【桜視点】


 ーグオオオオオオオオオオオオオッ!!!-


 空気が震えるほどのすさまじい雄たけびを上げて、ドラゴンゾンビが大きく開いた口から紫色の煙のようなものを吐き出した。リングに触れるとじゅうううっと焦げるような音がして、ボコボコっと泡を立てながらリングがドロドロに溶けていく。


 「気をつけろ、猛毒のブレスだ。喰らったらひとたまりもないぞ!」


 「距離を保ったまま、急所に集中攻撃だ!!」


 アイリスさんが弓を構えて、矢の先端に電撃を迸らせると、狙いを定めて放った。

 それに続いて、ニナさんが無数のクナイを放ち、ビビアナさんが尖った氷の塊を矢のように撃ちだし、心臓に次々と着弾する。ドラゴンゾンビは強烈な攻撃を連続で喰らってのけぞるが、すぐさま怒りと殺意に満ちた咆哮を上げて、骨が所々見え隠れしている太い腕を振り上げて襲い掛かってくる。


 「さっきからうるせえんだよ、このデカブツ野郎!!オレはなぁ、今、ものすごく機嫌が悪いんだよっ!!」


 レベッカさんが腕の上に飛び乗ると、そのまま素早く駆け出して、ドラゴンゾンビの頭に大剣を振り下ろし、頭蓋骨を真っ二つにするほどの勢いで刃を叩きつけた。しかし、かなり頑丈な表皮で覆われている頭部は、剣の刃が少しだけめり込んだが、それ以上肉を断ち切ることはできなかった。


 「腐ってもドラゴンやっちゅうことか、なんちゅう置き土産や!」


 「フン、ゾンビやグール程度ではこの怒りが収まるものか!・・・私たちの大事なトーマを手にかけた罪は、アイツらの命でも償いきれるものではないのだからな!!」


 「・・・よくもトーマをやってくれやがったなぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 レベッカさんが大剣を大きく振って、火炎弾をドラゴンゾンビに向かって放った。剛速球の火炎弾がドラゴンゾンビの巨体に次々とぶつかると激しく燃え上がり、ドラゴンゾンビが甘酸っぱい毒交じりの息を吐きながら苦しそうに悲鳴を上げる。


 「・・・トーマはなぁっ、本当に、いいヤツだったんだよっ・・・!!アイツのことが、オレは大好きだ!!アイツがいてくれたから、もう一度アイリスたちと再会することが出来たんだっ!!トーマがいるから、オレは毎日が楽しいって思えるようになったんだっ!!」


 レベッカさんの涙交じりの怒号は、俺たちの胸に深く突き刺さる。

 もはや荒れ狂う感情を全て大剣にこめて、ドラゴンゾンビの身体や腕をメチャクチャに切りつけて、刃を叩きつけて、休む間もなく攻撃を繰り出すレベッカさんの姿を見ていると、俺の目も潤んでしまう。


 追放したのに。

 あれだけ酷いことを言ったのに。


 それでも、俺が家族を失った時、一緒に泣いてくれた。

 俺のことを・・・許してくれた。


 俺のことを仲間として受け入れてくれた。


 涙をぬぐっても、涙腺が壊れてしまったように言うことを聞かない。

 歯を食いしばり、全神経をドラゴンゾンビに集中して、俺に向かって振り下ろされた巨大な腕を刀で斬り落とした。


 「トーマのバカ野郎ォォォォォォォッ!!勝手にいなくなるんじゃねえよ、チクショウ!!トーマとやりたいこと、まだまだたくさんあるんだぞっ!!それなのに、アタシたちの前からいなくなるなんて、酷いじゃねえかっ!!来る者は拒まず、去る者は追い回すのがオレたちの信条じゃねーかっ!!」


 声が震えている。


 怒り、そして、レベッカさんの深い悲しみが怒号となって響き渡る。


 やり場のない感情をぶつけている。そうでもしないと、斗真がいない現実に押し潰れてしまいそうだから。


 ドラゴンゾンビが大きく口を開き、激しく燃え上がる炎を生み出した。

 レベッカさんはドラゴンゾンビがいつでも火炎弾を吐き出す態勢に入っているにも関わらず、懐に飛び込んで、身体中に大剣を叩きつけていく。


 「レベッカ、退けっ!!」


 「まずいわ、隊長、完全に怒りで自分を見失っている!!」


 このままじゃ、まずい!!




 「トーマの・・・バッカ野郎ォォォォォォォォォォォォッ!!!」




 その時だった。


 巨大な火炎弾をレベッカさんに向けて放った、次の瞬間。


 レベッカさんの前に黒い影が飛び込んだ。




 「・・・ふん」




 そして、火炎弾がまるで幻のように、無数の粒子のようになって消えていった。


 「・・・え?」


 何が起きたんだ?


 火炎弾が一瞬で、霧のように消えていくなんてそんなことがあるのか?


 「・・・え?」


 


 そこにいたのは、人間離れした妖艶で退廃的な美しさを持つ、一人の女性だった。


 腰まで伸びている長い黒髪には美しい紫色のグラデーションがかかっている。

 エルフのように長く伸びて尖った耳。

 そして、彼女は上半身は何も纏っていない、裸体を露わにしていた。


 白く透き通るような肌には黒い紋様が身体中に浮かび上がっており、見えてはいけない部分を覆い尽くしている。


 彼女の周りには、赤色、橙色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色の光を放つ宝石のようなものが浮かび上がって、取り囲んでいる。


 「・・・誰だ・・・?」


 俺がつぶやくと、その言葉に反応して、女性がこっちに振り向いた。




 「・・・我・・・目覚めたり・・・我は・・・原罪の魔王・・・オクタヴィア・・・」




 オクタヴィア?

 原罪の魔王?

 何だそりゃ、聞いたことがないぞ?


 その時だった。


 レベッカさんの身体から赤い光が飛び出すと、俺たちの所に彼女を乱暴に連れ戻した。


 そして、レベッカさんのご先祖様である憤怒の魔王【シャルラッハロート】様が光の中から姿を見せた。同じように、傲慢の魔王【ルアン】様、嫉妬の魔王【ヴェルディア】様、怠惰の魔王【ラピス】様、暴食の魔王【カレンドーラ】様も姿を見せる。全員、オクタヴィアと名乗る女性を前にして、顔を青くして、驚愕の表情を浮かべている。冷や汗を顔中に噴き出し、わずかに震えていた。


 そう、明らかに彼女たちは恐怖の色を浮かべていた。


 七大魔王である彼女たちでさえもここまで恐れるなんて、あの女性は何者なんだ?


 「・・・まさか、あのお方が現世に復活するなんて思わなかったッスね。これは、かなりヤバいかもしれないっス」


 「・・・ったく、冗談じゃねーよ。出来れば二度と会いたくないって思っていたのによ・・・!!」


 「全く、大人しく隠居でもしていればいい物を。よりによって、トーマの身体を媒介にして復活を果たすとはな・・・!!」


 「・・・・・・ご先祖様、あの露出狂、知っているの?」


 「・・・多分露出狂の意味を知らないから、何もしてこないと思うんスけど、あのお方に対して不敬な発言は控えた方がいいっスよ。文字通り、この世界から消されたくなければね」


 ビビアナさんをラピス様がとがめる。その目は真剣そのものだ。


 「・・・あのお方は私たち七大魔王の始祖となる魔神を7体生み出し、それぞれに自身が司る【罪】を七つに分け与えて、七大魔王を生み出した創造神・・・【原罪の魔王オクタヴィア】ですわ」


 七つの大罪と、七大魔王を生み出しただって!?

 

 「まあ、オレたちからすれば、神様みたいなモンだよ」


 「・・・私たちの大罪が人間が生きていくにあたって必要不可欠な欲望としてプラスの存在として考えるなら、彼女はそれに匹敵するマイナスを司る存在、つまり、大罪と七大魔王の力のバランスを調整する存在ということですわ」


 「・・・よく分からねえ」


 「何で分からねえんだよ、このバカ子孫!!つまり、オレたちに大罪の紋章を通して力を与えてくれているのは、あのオクタヴィアだってこと!!そして、オレたちの力が暴走しないように、大罪のマイナスの力を司ることで、お前たちやオレたちの力を調整しているんだよ!!」


 「いや、そもそも調整って何だよ!?」


 「まずそこから分からねえのかよ!?あー、もう、とにかく、オレたち七大魔王の全ての力を使うことが出来る上に、メチャクチャ強いんだよ!!」


 レベッカさん、こんな時にまでアホの子ぶりを披露しなくていい。


 「・・・あのお方が一度その力を解放してしまったら、その影響は計り知れませんわ。かつて、邪神がこの世界を狙って攻め滅ぼそうとしたことがありましたの。私たちも必死で戦いましたが、邪神の力はあまりにも強大で、我々も追い詰められたわ。その時、彼女が現れて、我々七大魔王が全員でかかっても敵わなかった邪神を、たった一人で邪神をこの世から消し去ってしまいましたの」


 「・・・でも、その力はあまりにも強すぎて、一度解放してしまうと、オクタヴィア様本人でも制御することが出来なくなってしまいました。その結果、魔界の大陸の3分の1が消滅するほどの被害を出してしまったのです。彼女が生み出す”虚無”はあらゆるものを無に還し、消し去ってしまう禁忌の魔法。私たちは死力を尽くし、命がけで戦い、何とか彼女の虚無を抑え込み、再び眠りに着かせることに成功したのです」


 「・・・それでも1年以上もの時間がかかってしまいましたがね」


 マジかよ・・・!

 そこまでヤバい魔王が、どうしてこんなところに突然現れるんだよ!?

 その時、ルアン様の言葉を思い出した。


 斗真を媒介にして復活したって、どういうことだ?


 「・・・ルアン様、さっき、斗真の身体を媒介にして復活した、とおっしゃっていましたが、それは一体どういうことなんですか?」

 

 「・・・え?もしかして、貴方たち、まだ気づいていませんの?もうとっくの昔に気づいているものだと思っていましたわよ?」


 ルアン様は呆れ果てたように頭を抱えると、まるで出来の悪い生徒を叱りつけるようにこめかみを抑える。


 「・・・まさか、誰もトーマの正体に気づいていなかったなんて・・・!」


 「七大魔王の生まれ変わりである貴方たちの封印を解放することが出来たという段階で、まさかとは思っていましたが、決め手が欠けていましたからね・・・」


 「・・・もう少し、トーマ君のことを注意深く観察しておくべきだったッス。迂闊だったッス」


 そして、ルアン様が口を開いた。




 「・・・カジ・トーマ、彼こそが8人目の魔王オクタヴィアが転生した人物だったのですわ」

 

 


 


斗真もレベッカたちと同じく魔王の魂を宿した転生者だった!

七大魔王が恐れるほどの脅威的な能力【虚無】が次回明らかになります!


ここまで読んでいいただき、本当にありがとうございます!

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