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第十九話「絶望の始まり~彩虹の戦乙女、最悪の事件②~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!


新作が書きあがりましたので、投稿いたします!

どうぞよろしくお願いいたします!

 【桜視点】


 何が起きているんだ?


 (ドクン・・・!)


 どうして、斗真が倒れているんだ?


 (ドクンッ、ドクンッ・・・!)


 おい、何やっているんだよ。

 いつまで、やられたふりをしているんだよ。


 お前がそう簡単にやられるわけないじゃないか。


 (ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ・・・!!)


 ねえ、起きてよ。


 『・・・あ~っ、今度こそマジで死ぬかと思った!!』


 それはこっちのセリフだと、ツッコミたくなるようないつものボケを言えよ。

 いつまでも、倒れてないで、早く起き上がってよ。


 『桜、僕がいなくなっても、あとは頼んだ』


 縁起でもねえこと、言うなよ。

 お前からそんな言葉、聞きたくないよ。

 だって、お前、いつ死んでもおかしくないような不運ばかりに、いつも巻き込まれているじゃないか。


 でも、今までだって、何度も乗り越えてきたじゃないか。

 あの時は本当にヤバかったねって、笑いあって、次は気を付けようねって言っていたじゃないか。


 視界が揺れる。


 目頭が熱い。


 止めようとしても、止まらない。


 「・・・斗真・・・?」


 斗真は、動かない。

 胸に深く突き刺さった長槍。

 生命の源が傷口から流れ出て、斗真の肌がどんどん命の輝きを失っていく。


 レベッカさんは、斗真の胸に深く突き刺さった槍を抜こうとするが、アレクシアさんが止めた。


 「バカ野郎!!下手に抜いたら、血が止まらなくなっちまうぞ!?」


 「・・・・・・アレクシア・・・・・・」


 「おい、トーマ!!しっかりしろっ!!目を覚ませ!!」


 「・・・・・・嘘だっ、目を覚ませ!!トーマ!!」


 悲しみに満ちた叫びが、からっぽになった頭の中に響き渡る。


 アイリスさんが必死に呼びかけても。


 ニナが涙を流して叫んでも。


 ビビアナさんが珍しく焦りまくった表情で、斗真に呼び掛けても。


 斗真は・・・いつものように・・・目を覚ましてくれない。


 


 「・・・サクラぁ」


 レベッカさんが座り込んで、虚空を見つめたまま、今にも消え入りそうな無機質な声で話しかけてきた。


 「・・・レベッカさん・・・?」


 「・・・さっきからさ、トーマ、全然起きねえんだ・・・」


 


 アレクシアさんが涙をこぼしながら、いつもの笑顔の仮面をかなぐり捨てて、顔を真っ赤にして斗真に叫んでいる。あんなに取り乱しているアレクシアさんを見るのは、初めてだ。




 「・・・トーマの身体がさ・・・どんどん・・・冷たくなっていくんだ・・・」




 ヴィルヘルミーナが必死に斗真に呼び掛け続けても、斗真は目を覚まさない。

 人の彼女を泣かせるんじゃねえよ。いい加減、早く目を覚ませってば。




 「・・・トーマの心臓の音が・・・全然・・・聞こえねえんだ」




 声が震えている。


 レベッカさんの赤色の瞳から、大粒の涙が流れ落ちる。


 押し寄せる感情が今にも爆発しそうになっているせいか、身体が小刻みに震えだす。




 「・・・トーマ・・・息・・・してねえ・・・」




 「・・・さっき・・・オレのことを・・・愛しているって言ってくれたんだよ?」


 


 「・・・オレさ、すごく、驚いたんだ・・・」

 



 「・・・オレ・・・男の人に・・・愛しているって言われたの・・・初めてなんだ・・・」


 


 「返事しなくちゃ、ダメじゃんか?トーマをちゃんと起こして、伝えなくちゃいけないことがあるのにさ」




 「・・・トーマ・・・本当に・・・」




 それ以上は聞きたくない。


 目からあふれる熱いものを抑えきれず、足がガクガクと震えて、崩れ落ちそうになる。


 でも、ダメだ。


 俺にはまだやらなくちゃいけないことがあるんだ。


 あの槍は、どこから投げられてきた?


 どいつが投げた!?


 長槍が投げられた方向を見たとき、そこには、俺たちを感情がこもっていない真っ黒な瞳で見下ろしている人物の姿があった。


 そいつは、豪奢な玉座に座り込んでいるヴェロニカ陛下の傍らに、まるで忠実な従者でもあるかのように立っていた。



 

 その瞬間。


 俺の身体中の血液が一気に沸騰し、頭の中が真っ白になった。




 誰かが俺を止めるような声が聞こえた気がするけど、知ったことか。

 頭がおかしくなりそうなほどに激しい感情が限界を突破して、集中力が異常なほどに研ぎ澄まされていく。観客席を飛び移りながら、そいつが立っている主催者席まで向かい、射程範囲に入ったと同時に刀を抜いた。




 そいつは、俺の姿を見た瞬間、まるで悪魔のような笑みを浮かべていた。




 コイツが、やったんだ。

 コイツが、()()()()()()()()




 松本千鶴。

 コイツが、俺の兄弟分を手にかけたんだ・・・!!




 「千鶴ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!!」




 ザシュッ!!


 肉を切り、骨ごと断つ感触が刀から伝わってくる。


 生暖かい血液が噴き出して、俺の頬や特攻服にどす黒いシミを染め上げていく。




 千鶴の首は吹き飛び、地面をコロコロと転がっていく。

 頭部を失った身体が膝から地面に崩れ落ちて、そのまま倒れこんだ。




 「・・・ひどいよ、桜くん。いきなり、こんなことをするなんて」




 背筋が凍り付く。

 思考回路が停止して、頭の中が真っ白になる。

 

 どうして。


 今、確かに首を斬り落としたはずなのに。

 

 後ろを振り返ると、そこには目を疑いたくなるような光景があった。




 「・・・あ、まだ言っていなかったね。私、人間を辞めたんだ」




 首のない千鶴の身体がゆっくりと起き上がった。

 そして、転がっている自分の首を両手で拾い上げると、自分の胴体にくっつける。

 すると、傷口が一瞬で塞がり、何事もなかったように元通りになった。




 「・・・セルマ様を食べちゃったんだ。そしたら、不老不死の身体になれたの。やっぱり、英雄になるんだから、そのぐらいのスキルはあっても不思議じゃないよね、多分」





 千鶴は怖気がするような、優しく、歪に微笑んだ。


 コイツは、俺が知っている千鶴じゃない。

 いや、そもそも俺の目の前にいるコイツは、もはや人間ではない。

 永遠の命を手に入れたことで、人間としての感情や心が欠落している化け物はさらなる進化を遂げてしまった。踏み越えてはいけないラインを、彼女はあっさりと乗り越えて、行きつくところまでたどり着いてしまった。


 人間を捨てることでさえも、いとも簡単にやってのける異常なまでの英雄に対する執着。

 たった一言吹き込むだけで、人に悪意を植え付けて、意のままに操り、その行為に一切の罪悪感を感じることがない、自分が何をやっているのかまるで分っていない純然なる悪意。


 そんなおぞましいものが集まって人の形をしているモノ。


 それが松本千鶴という女性だった。


 


 「・・・斗真をどうしてやったんだ?」


 「・・・私が英雄になりたいのに、いつまでも邪魔ばかりしてくるから、嫌になっちゃって。それに、梶くんをいい加減この世界の呪縛から解放してあげたかったの。これでもう梶くんは苦しむこともないし、悲しむことも、傷つくこともない。これで私はまた一歩、英雄に近づけた気がするんだ・・・多分」


 「・・・邪眼一族と手を組んだっていうのか、そんな理由のために!!」


 「・・・ヴェロニカ様は私のやろうとすることを認めてくれたんだ。だから、力を貸してもらおうかなって。やっぱり、選ばれた人間のことを分かってくれる人っていうのは、必要だったみたいでね。それなら、邪眼一族だろうと何だろうと、何でもいいかなって」


 


 俺の隣に、血相を変えた【ベリアル】家の当主【バルバラ・フォン・ベリアル】と【ビフロンス家】の【ベルナデッダ・フォン・ビフロンス】が駆けつけてきた。そして、バルバラ王が鬼のような形相で怒鳴りつける。


 「ヴェロニカ王、これは一体どういうつもりだ!?このヴァルハラ・ゲームはソロモン王が敷いた厳正なルールに基づいて行われる家同士の交渉でもあるんだぞっ!?ゲームに負けたヴィネ家はベレト家のもとに下らなければならないのに、それを反故にしたばかりか、ベレト家の人間を手にかけるとは、それが誇り高き魔族の王のやることかっ!!」


 顔を真っ赤にして怒鳴りつけるバルバラ王と、氷のように冷たい瞳で睨みつけるベルナデッダ王。しかし、ヴェロニカは余裕綽綽といった笑みを浮かべたまま受け流している。


 「・・・ピーチクパーチクと喧しいのぉ。もうお主たちにはうんざりじゃ。元々、妾はそのつもりでヴァルハラ・ゲームを仕掛けたのよ。いちいち妾のやることなすことにケチをつけてくるソロモン王やソロモン72柱など、まとめてこの世から消し去ってやるつもりでな」


 「・・・その言葉は、ソロモン王に対する叛逆の意思があるということで、よろしいのですか?」


 「ああ、構わぬよ。今日をもって、ヴィネ家はソロモン72柱を抜ける。邪眼一族をさらに超える強さを手に入れた新しい血族と共に人間界も魔界も全て妾が支配してやろう。そして、今日ここに訪れたお主たちはもはや袋の鼠じゃ」


 不気味な言葉をつぶやき、ヴェロニカはソロモン72柱の一員である証の紋章をちぎり、幼女のような手からは想像もつかないほどのパワーで握りつぶすと、ゴミのように放り投げた。黄金の輝きを放つ紋章だった塊が転がって、やがて群衆の足元にまぎれて見えなくなった。


 「それでは今日はここで失礼するとしよう。お主たちが無事生き残れたら、また会える日を楽しみにしておこう。まあ、その可能性はないと思うがのぉ!」


 ヴェロニカは千鶴を見上げて、くいっとあごで合図をすると、千鶴は槍を地面に突き立てて水柱を勢いよく噴き出した。




 「また会える時が楽しみだよ、桜くん。ここから、生きて出られるといいね」




 「待ちやがれっ!!」




 再び刀を抜いて斬りかかるが、水柱に吹き飛ばされて、再び顔を上げたときには千鶴とヴェロニカの姿はどこにもなかった。そして、巨大なスクリーンに突然映像が映し出された。


 『みなさま、どうか落ち着いて聞いてください!!現在、ゴールド・リヴァーで大規模な暴動事件が発生した模様です!!職員の指示に従って、速やかに、地下の非常通路を使って脱出してください!!繰り返します・・・!!』


 実況をしていた獣人のお姉さんが必死の形相で、観客たちに避難をよびかける案内を行う。


 スクリーンに映し出されたのは、まさに地獄そのものだった。


 「・・・何だよ・・・これは・・・!?」


 



 さっきまでの賑やかな観光地が、地獄のような光景に変わっていた。


 身体中の肉が腐り落ちて、白く濁った瞳をした魔物たちがおぼつかない足取りで歩き回り、生ける死者(ゾンビ)となった住民たちで街があふれかえっている。


 逃げ惑う住民たちに襲い掛かり、鋭い牙で喰らいつき、そのまま押し倒して嫌な咀嚼音を立てながら、肉を食いちぎり、血を啜り、内臓を取り出して口に頬張っている”食人鬼グール”。


 スタジアムの外から、ゾンビとグールの遠吠えが重なり合い、風に乗って不気味な不協和音となって聞こえてくる。


 「町中の人間を一度にアンデッド化させたというの?」


 「ヴィネ家の血族や付き従う魔族たちもいるじゃねえか!!ヴェロニカの野郎、自分の領民まで化け物にしやがった!!」


 会場内はもはや大混乱、阿鼻叫喚の地獄と化した。


 逃げ惑う観客。

 怒号と恐怖の叫びが響き合い、誰もが自分だけが助かろうと懸命に逃げている。

 転んだものや脅える女、泣き叫ぶ子供には目もくれずに地下通路に繋がるドアにぎゅうぎゅうに押し寄せていく。


 ゴールド・リヴァーはこの世の地獄と化した。

斗真の運命は・・・?

そして、桜たちにさらなるトラブルが襲い掛かる!


ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 首領・ゴールド「今に見ていろ…!!」 首領・ゴールドが怒りをあらわにした その時、松本千鶴が泡を吹いて倒れた! 首領・ゴールド「何があった!?」 どうやら千鶴はとんでもないものを見てしまった…
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