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第十八話「大吉は凶に還る~彩虹の戦乙女、最悪の事件①~」

誤字報告を送っていただき、本当にありがとうございます!


新作が書きあがりましたので、投稿いたします!

どうぞよろしくお願いいたします。

 【三人称視点】


 大気が震えて、地鳴りとなって会場全体が揺るがすほどの大歓声が会場に響き渡る。

 しかし、そんな歓声を気にする余裕さえないのか、オリヴィアは切羽詰まった表情を浮かべて廊下を駆け抜けていく。


 (まさか邪眼一族がそないなことを企んどったやなんて・・・!こら、はよ陛下にお伝えせんと、大変なことになる!!)


 かつての部下だった衛兵に殺されかけていた窮奇を救い出した時、彼女から聞かされたのは、ヴェロニカの恐ろしい目論見だった。この戦いは、最初から仕組まれていた。ヴェロニカが自身の野望を叶えるために、自分たちはまんまと罠にはまってしまったのだ。


 (・・・さっきから胸騒ぎがする!何や、この感じは。よぉ分かれへんけど、ものすごく嫌な予感がする!)


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 『第三種目はトラワカ・ヒカル選手の反則負けにより、勝者は【彩虹の戦乙女】のカジ・トーマ選手!!よってこの戦いを制したのは【彩虹の戦乙女】ですっ!!』

 

 「・・・・・・トーマちゃんが、勝った!!」


 「勝った・・・!!トーマが勝ったわっ!!」


 「ああ、トーマ、でかしたぁっ!!」


 「・・・・・・さすがは私の弟分、そして私の夫に選んだ男。お見事」


 「最後はやっぱり決めてくれたか、さすがはトーマちゃんだぜ!!」


 彩虹の戦乙女のメンバーたちが立ち上がって、互いに抱き合い、目に涙を浮かべて勝利を喜びあっていた。これで邪眼一族に下ることはなくなり【彩虹の戦乙女】を取り込まれる心配もなくなった。それがアイリスたちにとっては、何よりもうれしかった。


 しかし、その中で一人だけ、普段なら真っ先に喜びの雄たけびを上げているはずのレベッカが戸惑いの表情を浮かべていた。


 「何だ、どうしたレベッカ?トーマが勝ったんだぞ?」


 「・・・違う・・・何だか・・・おかしいんだよ」


 「おかしい?」


 「・・・あのさ、さっきから、リングからずっと血の匂いがするんだ」


 レベッカの頬に冷や汗がつぅーと静かに流れ落ちる。

 リングの上に、背中を向けて立っている斗真をじっと見つめながら、レベッカはゆっくりと近づいていく。


 


 (どうして、さっきから、()()()()()()()()()()()()()!?)




 その瞬間。




 斗真が、糸の切れたマリオネットのように、膝から地面に崩れ落ちた。


 「・・・ここまで・・・か・・・」


 斗真の声が聞こえた瞬間、レベッカは嫌な予感が確信に変わった。


 「・・・斗真?」


 「・・・え?何が起きたんだい?」


 


 横たわったまま、ピクリとも動かない。

 彼が倒れたあたりには、赤い液体がにじみ出ていた。


 


 斗真の腹部には、鋭い爪で刺されたのか、深く傷つけられていた。

 生命の源である血液が、どんどん失われていき、斗真の身体を浸していく。


 


 「・・・トーマァァァァァァッ!!!」




 レベッカが血相を変えて斗真を抱き起す。

 背中に手をやって抱き起した時、自分の掌を見て、レベッカは凍り付いた。


 大量の血・・・。


 それはこれまでとは違い、斗真が命に係わるほどの深い傷を負っていることが一目でわかった。


 「・・・トーマ、しっかりしろっ!!」


 「・・・レベッカ、ごめん。ちょっと、ドジっちゃったみたい」


 「しゃべるなっ!!今すぐに救護班がやってくるから、大丈夫だからなっ!?」


 「・・・耳元でガンガン叫ぶなって。この程度じゃ死なないからさ」


 いつものように優しい口調、しかし、斗真の顔色は真っ青になっていた。


 「・・・ヒカルにやられたのか?」


 隣に倒れている光を見て、レベッカの表情が、感情をそぎ落としたような無表情に豹変していく。

 虚空を見つめるように、焦点の合わない目を向けながら倒れている光はブツブツと何かをつぶやいていた。




 「・・・お前も道連れだ・・・私はもうおしまいだ」




 光の爪には、斗真の血がべっとりとついていた。


 「・・・違うよ、光のせいじゃない」


 斗真は無理矢理重い身体を起こして、痛みに表情を歪めて、歯を食いしばる。


 「・・・がはっ、ごほっ、ちっくしょう!」


 口から吐き出される血液の塊。

 腹部から流れる大量の血液。


 このままでは、斗真が死んでしまう。


 レベッカは斗真を無理にでも押さえつけようとするが、斗真は苦しそうに呼吸をしながら、笑みを浮かべる。


 「・・・コイツのハンマーを避けようとしたら、足が滑って転んで、光の爪に間違って刺さっちゃったんだ・・・光のせいじゃないんだ・・・本当に運がないよなぁ、僕ってさ」


 僕が不運なんていつものことだろう、と斗真は笑う。

 そして、今にも泣きだしそうなレベッカの顔を見つめて、斗真も目に涙を浮かべて、真剣な表情で見つめる。


 「・・・レベッカ・・・僕からの・・・お願い・・・聞いてくれる?」


 「何だよ!?」


 「・・・光を・・・許して・・・!!」


 その言葉に、桜やアイリスたちも驚きで目を見開く。

 そして、倒れていた光も、斗真の言葉で我に返り、目を見開いて驚愕する。


 「・・・分かるんだよ、コイツの気持ち。一度思い込んだらとことん突き進んでいかなけりゃ、寂しさとか悔しさとか、やりきれない気持ちで心が潰れちまいそうになるほどに自分を追い詰めてさ。僕だって、追放されたとき、レベッカたちに会えなかったら、僕を召喚して利用しようとしたこの世界の全部を憎んで、手あたり次第ぶっ壊さないと・・・気が済まなかったかもしれない」


 「・・・トーマ!!」


 「・・・一人ぼっちって・・・やっぱり・・・辛いし・・・苦しいし・・・寂しいよ」


 斗真が涙を流しながら、胸の内の思いを吐き出す。


 親友を守れなかった負い目から、親友と距離を置き、他人との接触やつながりを拒み続けていたことや、家族に捨てられて、たった一人で生きていかなければいけなかった時に、嫌というほどに孤独の恐怖と寂しさ、絶望を味わい続けてきた。だから、同じように家族を失い、一人ぼっちになってしまった光の悲しみや怒りがまるで自分のことのように思えるのだ。

 

 「・・・僕のことを見たら、嫌なことを思い出すから、僕がいなくなればいいと思ったんだ・・・。そうすれば、光はきっと前を向いて歩きだすことが出来ると思っていたから。僕はそのためなら、どんなことだって・・・やってあげたいって思っていた。もう一度、光が笑ってくれれば、それだけでよかった」


 自分の人生を台無しにすることになっても、光のためになると信じて、ずっと距離を置いていた。

 それ以外に、自分が出来ることがどうしても思いつかなかった。


 「・・・でも、それだけじゃ、ダメだったんだなぁ・・・。本当に大切な友達なら、何度殴られても、喧嘩をしても、自分の思いをちゃんと伝えないままじゃ、ダメだったんだ・・・。だから、光と戦って、僕ももう逃げることをやめるから、光も、自分自身としっかり向き合ってほしかった・・・」


 足を引きずって、呆然としている光に斗真が笑みを浮かべて話しかける。

 足元には血がぽたぽたと落ちて、呼吸もどんどん苦しそうになる。


 「・・・光・・・負ける事って・・・全然恥ずかしいことじゃねえよ」


 「・・・斗真」


 「・・・お前に何度挑んで、何度も負けた。悔しいから強くなろうと必死で身体を鍛えまくった。強くなって、お前に一人前の男として認めてもらいたかった。喧嘩に負けて、ボロボロになって、空を眺めるたびに誓ったんだ。お前の隣に並んでも恥ずかしくない、肩を並べて歩いて行ける友達になりたいって。負けるたびに、絶対に次は勝つって思った。その思いがあったから、僕は一人でも生きてこられた」


 光の目に、揺らめくものが込み上がってきて、頬を伝う。

 そして、彼女の瞳には理性の光がうっすらと灯っていた。


 そこにはもう孤独な戦士の姿はなく、年相応の少女の姿があった。


 「・・・負けても、何度でも立ち上がれる。何度でも、前に向かって突っ走って、また転んでも起き上がって、傷だらけになっても、最後に勝てばそれでいいんだ。お前は何も間違っていないさ。そんなお前のことが、ずっと、憧れだったんだからな」


 「・・・斗真!!」


 桜が泣いていた。

 レベッカも、ニナも、アイリスも、アレクシアも、ヴィルヘルミーナも、ビビアナも泣いていた。


 今にも消えてしまいそうな命。

 それを燃やして、斗真は光を救い出そうとしている。


 「・・・ごめんな・・・光・・・。お前をずっと孤独ひとりにちしまって、ごめん・・・!」


 「・・・違う!!悪いのは私の方だ!!お前はずっと私のことを気にかけていてくれていたのに、私がいつまでも意地を張っていたから悪いんだっ!!全部、お前のせいにして、自分の弱さを見て見ぬふりして、やり場のない感情を全部ぶつけて、お前ひとりだけを悪者にして・・・!!それなのに、どうして、こんなどうしようもない私に、そんなことを言うんだぁ・・・!!」


 涙を流し、顔を真っ赤にして光が嗚咽まじりでしゃくりあげる。




 「だって、光は俺にとって最初に出来た、友達だから」




 自分の孤独を救ってくれたヒーロー、それは光だった。

 彼女がいなかったら、今の自分はここにはいない。辛かったこと、悲しかったこと、悔しかったこと、たくさんあるけど光と過ごしてきて学んだ【リベンジ】という柱が彼の心を支えてきた。


 斗真にとって、今でも光は親友であり、憧れのヒーローなのだ。


 「・・・レベッカ、桜、みんな・・・僕は死なねえよ」


 血色が悪く、汗を噴き出した土気色の顏で、斗真は力強く微笑んだ。


 そして次の瞬間。




 斗真は素早く飛び出して、レベッカのもとに駆け出す。


 そして桜とすれ違う際に、桜の耳に、ハッキリとした言葉で伝えた。




 「・・・桜、僕がいなくなっても、あとは頼んだ」


 「・・・え?」




 レベッカの身体を突き飛ばし、彼女がとっさのことに受け身が取れず、地面に倒れこんだ。




 「レベッカ」


 「え・・・?」





 「ありがとう、愛しているよ」




 その瞬間。


 斗真の身体を、一本の長槍が刺し貫いた。




 ドンッ。




 「・・・泣かないで・・・あと・・・無茶しないで・・・ね・・・」




 そう言い残し、斗真は力なく倒れた。


次回、斗真の運命は・・・?

衝撃的な展開が彩虹の戦乙女に襲い掛かります。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

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