第十六話「Black Sabbath~血戦・斗真VS光②~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!
新作が書きあがりましたので、投稿いたします!
どうぞよろしくお願いいたします!
【三人称視点】
斗真の身体を守るように、漆黒の輝きを放つ炎が揺らめく。
まるで夜の闇を思わせるような、妖しく心を惹き付けて離さない神秘的な美しさに、興奮していた観客は思わず息をのみ、会場全体が水を打ったように静まり返る。
炎は見る見る大きくなり、派手に燃え上がった。
そして、斗真の身体を包み込んだ炎はやがて大きな翼になって広がり、辺り一面に火の粉をまき散らす。
「あれって、確かミヅキってヤツが使っていた魔法じゃねえか!?どうしてトーマが使えるんだよ!?」
「・・・まあ、別に不思議ではないがな。元々トーマは全属性、つまりこの世界に存在している全ての属性の魔法を自在に操ることが出来るのだ。死属性の魔法を使えるようになったところで、驚くようなことでもあるまい」
不敵な笑みを浮かべているが、アイリスの頬に冷や汗が伝って落ちる。
死属性はネクロマンサーや呪術士といった黒魔術を生業とする特定のスキルを持つものや、極限的な状況に置かれて、心身ともに限界を超えた時に、霊の存在を視ることが出来るようになったり、意思の疎通を図ったり、霊を祓うことが出来るといった能力に目覚めたものが使える属性と言われている。
強力な術者になれば、呪われた呪文を唱えるだけで相手を死なせることが出来たり、死者に仮初めの命を与えて人形として自在に操ることが出来るが、自然の法則に反する【禁忌】と呼ばれる術を使い過ぎると、使役する霊たちに精神を蝕まれて、自我が崩壊し、最悪自分自身がアンデッドに変貌してしまうこともあるため、死属性は忌み嫌われてきた。
「だが、トーマからはそういった絶対的な”死”の恐怖や禍々しい邪念というものは感じられない。何といえばいいのか分からないが、アイツの死の炎からは、見ていると心が落ち着くというか、怒りや焦り、緊張というものを解きほぐしてくれるようだ」
「・・・・・・死は恐ろしいものではあるが、生者の誰にも訪れるもの。苦しみや痛み、悲しみをすべて優しく包み込んで、安らかな眠りを与えてくれるものでもある。トーマの死の炎は、そんな優しい”死”の力を感じる」
「ビビちゃんの感想が、一番しっくりきますわね~」
手に汗を握り、レベッカたちはリングの上で黒い炎を纏いながら優雅に舞い上がる斗真に注目する。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【斗真視点】
一体全体、これはどうなっているんですか!?
雁野、お前まさか僕のことをあの世から呪っているんじゃないだろうね!?
どうして僕が雁野の能力を使えるようになっているんだ!?ああ、ダメだ。いくら考えても全然分かりません!!僕は心の中で完全にお手上げ状態だった。
そういう時は、もう何も考えるな!
自分の力、使いこなすことだけに考えを集中するんだ!
「告死鳥の黒炎、発動!!」
炎が腕に集まり、鋭い爪を生やした巨大な腕に変わり、僕が身構えると何回りも大きくなった炎の腕を身構える。
「・・・ブラック・サバスだと?そんなこけおどしに、私が負けると思っているのか!!」
ワータイガーが怒りの咆哮を上げて、地面を蹴り飛ばすと右に左に素早く動き回り、握りしめたハンマーを力強く振り下ろす!僕が炎の腕でとっさにハンマーを防ぐと、ワータイガーの腕から黒い炎が燃え移り、まるでアザのように身体に黒い紋様が浮かび上がっていく。
「ちっ!!」
ワータイガーがとっさに素早く引くが、彼女の動きがさっきと比べると幾分か遅くなっているような気がした。獰猛な表情が歪み、焦りの色が浮かんでいる。
「この程度の技で私が倒せると思っているなら、なめられたものだな!!」
ワータイガーがハンマーを振りかぶると、次々と光の玉を撃ちだしてきた。
ハンマーを叩きつけられた光の玉は光線となって飛び出し、四方八方から僕目掛けて飛んでくる。
「うわっと!」
僕が掌を大きく突き出すと、僕の前にまるで壁のように大きく広がった炎の掌が飛び出して、光線を全て受け止めた。光線は黒い炎に飲み込まれると、勢いを失い、見る見る小さくなって・・・消えていった。
「何だと!?」
手で感じ取った、確かな死。
光線の勢いを死なせて、飲み込んだということが、自分でも分かった。
闇とは違い、光線を包み込んで静かに消えていく、安らかな死。
「・・・雁野のヤツ、こんなすごい技使えたんだ」
今思うと、雁野ってこんなすごい術を使えるほどのヤツだったんだ。
そんなヤツと戦って、よく勝てたなと改めて身体が震える。
「・・・くっくっく、そうだ。戦いとはそう来なくちゃなァ!!心身ともに限界まで追い詰められることで、成長し、さらなる強さを手に入れていく。これが戦いの醍醐味と言えるものよ!!」
ワータイガーが地面を蹴り飛ばして、思い切りハンマーを振りかぶると大きく腕を振るって投げ放ち、ハンマーが回転しながら僕の周りにいたビーストノームを数体仕留めて、ワータイガーの手の中に戻っていく。
「これでも喰らえ!!」
ハンマーをそのまま地面に叩きつけると、地面から光の柱が次々と飛び出し、僕は背中に生やした翼を必死で羽ばたかせて空中を飛び回る。空を飛んだことなんて一度もないけど、人間死ぬ気になったら根性で何でもできるもんだ!
そして、そのまま勢いをつけてワータイガーに向かって突っ込む!!
「・・・昔のアンタじゃ勝てなかったけど、今のお前じゃ、俺には勝てねえよ」
「・・・何だと!?」
「昔みたいに、負けられないって言う気迫が全然感じられねえ」
あの頃の光は、僕にとってはずっと憧れのヒーローだった。
喧嘩をやらせたら誰にも負けないし、いつも僕とつばさを引っ張ってくれていた。
強くて優しくて、太陽のように暖かい僕たちのヒーロー。
でも、今の彼女は違う。
怒りや憎しみで心が支配されて、ひたすら勝つことだけにこだわり続ける孤独な暴君だ。
明が死んでしまったこと。
僕が離れてしまったこと。
光を変えてしまったのは、僕にも原因がある。
だからこそ、もう今度こそは逃げない。
僕に戦うことの大切さと、強さを教えてくれた大切な仲間を・・・!
「俺がお前の目ェ、覚まさせてやる!!寅若光!!」
「斗真・・・!!」
ワータイガーの強靭な筋肉で覆われているボディにハンマーを振りかぶって、思い切り叩きつけた!!
「がはっ・・・!!」
骨がきしむ音を立てて、ワータイガーは口から血の塊を吐き出し、白目を剥く。そして思い切り吹き飛ばされた。ビーストノームに向かって巨体が突っ込んで、土煙を舞い上げて倒れこんだ。
腕がまだ震えている。
心臓の高鳴りが、頭の中にガンガンと響く。
足が震えて立っているのもやっとだ。
「・・・くっくっく、そうだ。やっとやる気になったか。甘さを捨てろ、相手を殺さなければ自分が死ぬ。戦いとはそういうものだ。余計な情など捨てて、全てをかけて戦うんだ・・・!!」
土煙の中、ワータイガーがおかしくてたまらないといったように笑いながら、ゆらりと立ち上がった。そして、ハンマーを振りかぶると土煙を突き破って、無数の光線が飛び出してきた。僕は死の炎を展開して光線を防ぐ。
「・・・ああ・・・いいぞ・・・!死が、死が確実に私を蝕んでいく・・・!!一歩でも引いたら死に飲み込まれる、この崖っぷちの状態で戦うからこそ、精神が研ぎ澄まされていく・・・!!」
光・・・?
彼女の様子がおかしい。
その目つきはもはや僕が知っている光のものではなく、戦いや死にとり憑かれてしまっている狂人の目つきをしていた彼女の変わり果てた姿に、僕は息をのんだ。
「・・・うっ!?」
突然、ワータイガーが動きを止めると、両手で頭を抑えて大きく叫び出した。
「ウガアアアアアアッ!?し、しまった、こんな時にまた、発作がァ・・・!?」
ワータイガーは地面に座り込むと、リングに自分の頭を狂ったように叩きつけ出した!
「ウガアアアアアアアアアアアアーーーッ!!」
ガンッ!!ゴンッ!!グシャッ!!ガンッ!!グチャッ!!
何度も何度も何度も、額が破れて血が出ても、彼女は止めようとしない。叫び狂いながら、苦しそうに叩きつけて、自分自身を傷つける姿に、僕は足が凍り付いて動くことが出来ない。
「・・・ヒ、ヒヒヒ、私は、お前に勝つために、全てを失ったんだァ・・・!」
地面がえぐれるほどに叩きつけると、彼女の動きが止まった。
そして、額が切れて血が流れる凄惨な顔つきを浮かべて、ゆらりと立ち上がった。
「・・・ハァ、ハァ、ハァ、まだ、戦えるぞ・・・!!斗真、お前を倒すまで、私は止まらねェ・・・!!私はもう誰にも負けるわけには・・・いかないんだ・・・っ!!クックック・・・!!」
「・・・光!」
彼女は完全に壊れていた。
一体何がそこまで、光の心を追い詰めて、壊してしまったんだ・・・!?
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【三人称視点】
「・・・アイツ、マジでヤバいわよ」
ワータイガーの狂気に満ちた行動を目の当たりにして、ニナが顔を青くしてつぶやいた。
観客もワータイガーの常軌を逸脱している行動に言葉を失い、完全に引いていた。
もう彼女は廃人の方がまだマシと思えるまでに、狂ってしまっていた。戦いにとり憑かれて、勝利に必死になってしがみつき、斗真を手にかけようとする強い殺意と怒りがもはや尋常ではない。
「・・・光!」
その時だ。
レベッカたちの後ろから、冥界の番犬のメンバーに支えられながら、ある人物が顔を出した。
その人物の姿を見たとき、レベッカたちが思わず目を見開いて驚く。
そして、ワータイガーが視界にその人物の姿を見た瞬間、目が大きく見開かれて、愕然となる。
「・・・どうして?お前は、私が確かに殺したはずなのに!?どうしてお前がここにいるんだっ!?」
「ツバサ!!お前、どうしたんだよっ!?」
腫れあがった顔には絆創膏を何枚も貼り、苦しそうに呼吸をしながらリングに現れたのは、顔や体に包帯を巻きつけ、痛々しい姿となった【高橋つばさ】だった。
雁野の能力【死属性】を発動し、光を追い詰めた斗真。
そして傷ついたつばさもついに合流しました。二人の戦いは次回決着をつけます!!
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!




