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第十四話「Crying for the moon~桜VS闇の魔神オプスキュリテ②~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!

おかげさまで80万PVもいただき、改めて感謝とお礼の言葉を申し上げます!

これからも頑張って書いていきますので、今後ともお付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします!

 【斗真視点】


 「おい、これ一体どうなっているんだよ!?どうしてアイツ、ここまでトーマにそっくり化けることが出来るんだ!?」


 レベッカがリングの上にいる高森くんが変身した”僕”にそっくりな姿を見て、声を上げた。

 鼻が利き、体臭や魔力の匂いなどを嗅ぎ分けることが出来る彼女がここまで言うということは、他の人たちでは、彼が僕の偽物であることを見破るのは非常に難しいと証明している。


 「・・・前に戦った私たちの偽物とは比べ物にならないほどに、正確にトーマの姿を真似ている。いや、この動きは本物以上に動きの切れがいい」


 「ただの変身魔法じゃないってこと!?」


 あれは相手に化けるだけの変身魔法ではない。ヘラを巧みに操って鉄板焼きを次々と焼き上げていく腕さばきは僕よりも遥かに手際がいい。桜も必死で焼き上げていくが、高森くんの焼き上げたお好み焼きの数になかなか追いつかない。


 『・・・虹色の脚!』


 高森くんの両脚に虹色の光を放つ魔力が集まり出すと、炎のように揺らめく。そして、高森くんの脚から炎が勢いよく噴き出すと、鉄板の上を一気に加速し、目にも止まらない速さでタネを流し込み、素早く焼き上げていく!


 「ちっ、マジかよ・・・!どうなってやがるんだ!?」


 『悩んでいるヒマはないよ!』


 次々と焼き上がったお好み焼きがガーゴイルの口の中に放り込まれていき、桜との差がどんどん開いていく!まずい、このままじゃ桜が負ける!!


 「そんな、高森くんもまさか全属性の魔法を使うことが出来たの!?」


 「いや、それは違うな。そもそもお前の全属性というのは、全ての属性の魔法を自在に操ると言う超レアな能力なんだ。お前以外にそうそう使えるヤツがいるとは思えん!ましてや、戦う前に覗いたアイツの魔法属性は確かに闇だった。それなのに、どうしてアイツはトーマの全属性の魔法を使えるんだ!?」


 「・・・・・・今のアイツは、トーマの姿や魔力だけではなく、技まで完全にコピーしている!」


 一体どうなっているんだ!?

 落ち着け、高森くんの能力がどういうものなのか、じっくりと見るんだ・・・!


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 【桜視点】


 「負けるわけにはいかねぇんだよっ!!」


 高森が例え、どれだけ斗真の姿をまねても、能力や技が本物そっくりであろうと、俺がここで負けるわけにはいかないんだ!負けたら、ミーナがアイツのものになってしまう。そんなこと、絶対に認めるわけにはいかない!!


 死んでも負けられないんだ。

 絶対に譲れないものがあるんだ!!

 もう二度と、大切なものを失いたくない!!


 俺が振るうヘラと高森のヘラが激しくぶつかり合い、火花が飛び散る。

 高森の細い腕とは思えないほどの凄まじい剛腕が繰り出すヘラがぶつかり合うたびに、腕から身体中に電流が流れていくような強烈な衝撃が流れて、歯を食いしばらないと意識が持っていかれそうだ!


 この剛腕、完全に斗真そのものじゃないか・・・!!


 『今の桜じゃ、僕には勝てないよ。この”闇魔神の幻影”を破れない限りはね』


 高森が斗真の姿で、自信満々に挑発する。


 「・・・ただの変身魔法じゃないってことか!」


 『そう、これは”相手の心がイメージする人物の姿を自分に投影する”技なんだよ。このメイク道具を使って、一瞬で僕は君が思い描く”梶斗真”の姿を自分にメイクして、本物以上の実力を発揮することが出来るようになったっていうわけさ。まあ、あと数秒で効果が切れるんだけどね』


 高森はすさまじい力で俺の持っていたヘラを弾き飛ばすと、そのままヘラを振りかぶって、俺に向かって鋭い切っ先を突き出してきた。とっさにかわすが、風圧で胸当てが一文字に切り裂かれた。何とか肉までは切られずに済んだ。


 そして、俺の目の前で高森は元の姿に戻った。


 「・・・とまあ、せいぜいワシの”闇魔神の幻影”は3分が限度じゃな。しかも相手が強い魔力を持っていたり、レアなスキルを持っていると、ワシの魔力の消耗が激しくなるからさらに時間が短くなる。梶の全属性の魔力を使えるというスキルを写し取るのは、ちと骨が折れたぞい」


 高森は腰に巻いていたポーチ付きのベルトから、メイク道具を両手に持って身構える。

 そうだ、今思い出した。高森は確か現役高校生でありながら、海外で有名な俳優から直々にオファーが来るほどの超人気メイクアップアーティストで、アイドルや芸能人のメイクやお化け屋敷の特殊メイクなど、様々なメイクをこなすと言われているヤツだった。


 「メイクというものは、メイクをする人間がなりたいと思っているものを感じ取って、イメージするメイクを施し、普段の自分ではない非日常の自分を生み出すことが出来る。ワシはお主が思い描く”梶斗真”のイメージを読み取って、その姿をワシ自身にメイクを施して投影させたのよ。お主の憧れやイメージによって、その力は本物をしのぐ実力を発揮することが出来る・・・というわけじゃ」


 「つまり、俺が斗真の調理スキルに対して信頼していたから、その信頼している気持ちも上乗せされて、あれだけの実力を発揮することが出来たってわけか・・・?」


 「ああ、かつてお主が梶を追放したという負い目もあるのかもしれんが、それ以上にお主にとって梶という人間は心から信用し、慕っているのじゃな。それによって、梶に対する信頼や期待が本人の実力以上に強いものを望んでしまっている。ワシはその高くなった期待やイメージをそのまま自分の力として操ることが出来るのじゃ」


 それって、つまり、俺が斗真のことを信じる気持ちが強ければ強いほど、本人以上に強い能力を手に入れることが出来るということか!?


 相手のことを自分よりも優れていると思うイメージや期待が強くなるのは、自分にはないものを相手が持っているから羨ましいという”嫉妬”か”憧れ”特有の感情だ。それを高森は利用して、俺が抱いている斗真のイメージを自身にメイクを施すことによって、本物により近い、いや、それ以上の実力を持つ斗真の姿に化けることが出来るというわけか。


 「・・・自分の能力をそこまでバラしちまうなんて、余裕だな?それを破られたら、どうするつもりなんだよ?」


 「・・・そう簡単には破られんよ、ワシのこのメイクはな。そもそも、この魔法は自分自身が誰にも劣らない、唯一無二の実力を持つ存在と心から信じ込んでいる存在には通じん。そいつの姿に化けても、結局はそいつと五分五分の実力になるから、魔力が切れたらワシの方が不利になる」


 そう言って、高森は微笑む。


 


 「・・・じゃが、本当にこの世にはいるのかのう?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()などな」




 「・・・どういうことだ?」


 「・・・どんなに強がっていても、どんなに自分に自信があろうと、心の中のどこかに自分がなりたいと強く願う高みというものはあるものよ。誰もが自分が一番でありたいと願っていても、他人と比べて自分に足りないものを探して、他人と比較して、永遠に満たされることのない、ない物ねだりを続けておる」


 高森の目はまっすぐで、穏やかな光を讃えていた。闇の魔神とは思えないほどに。


 「・・・理想の自分を手に入れるために自分に足りないものを身に着けようと努力して、自身を鍛え上げて強くなろうとする。そんな自分を支える”信念”というものが確固たるものは強い。ワシはワシの信念をかけて、この異世界で生きていこうと心に決めた。松本のためでもなく、邪眼一族のためでもなく、ワシがワシであるために戦う」


 千鶴やヴェロニカに命令されたからというわけではなく。

 自分が自分であるために、自分の思い通りに生きていくために、全てをかけて戦うという信念。

 高森の目が放つ光はどこまでもまっすぐで、強い光を宿している。


 「・・・ワシもまだ道半ば、未熟者よ。されど、生まれて初めて一目ぼれした女性に自分の思いを伝えたいという気持ちはとことん貫かせてもらうぞい!」


 「・・・本気で、ミーナに惚れているって言うのかよ」


 上等だ。

 コイツは惚れた女のために、魔神の力の全てをかけて挑んできている。

 どうしようもない大バカ野郎だけど、そこまで言われて本気にならないわけにはいかない。


 「・・・渡さねえよ!!ミーナは、俺の女だっ!!俺だけのものだっ!!」


 「そうじゃ、そうこなくてはなぁっ!!」


 最後まで、諦めない。

 

 もう二度と、失いたくない・・・!!


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 【斗真視点】


 『・・・これは、何という結末でしょうか。実況を任されている私でさえも思わず実況を忘れてしまうほどの激しい攻防戦に、ついに決着が着きました・・・!!』


 試合終了のゴングが鳴り響く。


 桜と高森くんは、それぞれヘラを杖代わりにして自分の身体を支えるようにして立っていた。息が上がって、もはや気力だけで立っている感じだ。


 『・・・マクノウチ選手、500枚・・・!』


 画面に桜の焼き上げたお好み焼きの数が表示される。


 そして・・・!!




 『・・・タカモリ選手、501枚・・・!!』




 一瞬沈黙した後、観客たちの歓声が花火のように爆発した。

 空気がビリビリと震える。




 『第二種目・・・勝者は邪眼一族チームのタカモリ選手ーーーーーーッ!!』




 桜が・・・負けた・・・!


 「・・・一時はヤバいかと思ったぞい。じゃが、どうやら今回はワシの粘り勝ちじゃな」


 高森くんはヘラを杖のように突いて、足を引きずるように歩いて桜に近づく。

 桜は愕然とした表情のまま、頭をうなだれて座り込んだ。


 「・・・俺が、負けた・・・?」


 「・・・まあ、まだ最後の種目がある。梶が寅若に逆転すれば、お主にもまだ望みはあるということじゃ」


 高森くんは桜に何か話しかけてから、スッキリとした面持ちでリングを下りていく。

 そして、背中を向けたまま、桜に向かって一言、僕たちにも聞こえるような声で言った。




 「まだ終わりじゃない、そうであろう?」


 「・・・・・・!」


 「恋敵は強ければ強いほど、この恋も燃えるというもの。再戦はいくらでも受けて立つぞい!」




 桜は顔を上げて、消えかけていた瞳に再びギラギラした光を灯して、高森くんの後姿を睨みつける。リベンジを誓った桜の瞳は黄金色の光を放つ、竜のように研ぎ澄まされていた。


 「・・・すまねえ、斗真」


 「桜、あとは任せておいて。僕がビシッと決めてくる!」


 僕が拳を突き出すと、桜は力なく笑いながら、拳を突き出してきた。

 拳と拳をぶつけ合わせて、僕は誓った。




 「この勝負、絶対に僕が勝つ!」




 相手は僕の元相棒にして、今まで一度も勝てなかった人物”寅若光”。

 喧嘩の実力だけなら、間違いなく僕よりも強い。

 さらに光の魔神が憑依して、光の力を自在に操ることが出来るようになった光は、今までの敵の中でもかなりの強敵になることは間違いない。


 それでも、今回ばかりは絶対に負けるわけにはいかない。


 (光、お前を絶対に連れ戻す!!)


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 【三人称視点】


 (・・・斗真・・・この時をずっと待っていたぞ)


 殺意と怒りが膨れ上がり、握りしめていた拳が震える。


 (・・・お前を殺してやる・・・!)


 光の瞳は親の仇でも見るような、憎悪にとり憑かれた瞳をしていた。 

桜、無念の敗北。

そして次回は斗真と光、因縁の対決が始まります!


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!

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