第十二話「Love is blind~恋は盲目、そんな熱い恋を一度はしてみたい~」
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【斗真視点】
『それでは、これより第二種目を開始いたします!』
「よしっ、それじゃあ、行ってくるわ!」
桜が自分の顏の頬を両手で叩いて気合を入れると、ヘアゴムを取り出して、金髪をポニーテールに縛り上げる。獰猛な目つきに豹変し、八重歯をむき出しにして笑う姿はまるで血に飢えた獣のようだ。
「気を付けてね。相手は闇の魔神だから、何を仕掛けてくるか分からないから」
「・・・分かった。ここでビシッと決めてくるからよ、終わったらあとで飯おごれよ?」
そう言って、桜は巨大なへらを担いで鉄板が敷き詰められたリングに上がっていった。
「なあ、トーマ。あの、闇の魔神ってどういうヤツなんだ?」
「高森くんのこと?・・・うーん、僕、あまり高森くんと話をしたことがないんだ」
高森士郎。
僕と同じクラスメートで、見た目は黒髪の美少女にしか見えないほどの可憐なルックスを持つ、中性的な少年で、クラスでは誰とも話さずに一人で本を読んでいるのを時々見かける程度しか見たことがない。
そんな彼が一体何を仕掛けてくるのだろうか?
僕は余裕綽々といった笑みを浮かべている高森くんに、ものすごく嫌な予感がした。
桜がどうか無事で返ってきてくれることを、願わずにはいられなかった。
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【桜視点】
「こうしてお主と戦うことになるとはのぉ。まあ、よろしく頼むぞい」
可愛らしい女の子のような顔立ちからは想像できない、老人のような古風な言葉遣いで高森は小悪魔のような笑みを浮かべた。
高森士郎。
クラスの中でも、孤立しているというよりは一人で過ごすことが好きなようで、休み時間になると黙々と本を読んでいたり、図書室で調べ物をしている姿をよく見かける。性格に色々と問題がある連中が多いクラスにいるにもかかわらず、不思議とアイツはイジメられたりすることはなかった。何だか存在感がないというか、影が薄くて気づいてもらえないのではないかと思ったほどだ。
「・・・高森、お前、邪眼一族と手を組んで一体何を企んでいるんだ?」
「ふむ、正直に言えば最初は気乗りせんかったがの。じゃが、いつまでもブラブラしていると、松本が何をしてくるか分からんかった故、身を寄せる場所として邪眼一族に下っただけのことよ。特にワシが邪眼一族に手を貸す理由を挙げれば、一宿一飯の礼を果たすため、といったところかの」
つまり、千鶴の元から離れるために、邪眼一族に下ったっていうわけか?ますますコイツが何を考えているのか、分からなくなる。もしかして、言葉巧みに俺を動揺させるつもりか?
「・・・まさか、千鶴を裏切ったって言いたいのか?」
「そう言うことになるのぉ。そもそも、お主は松本の恋人じゃから言いにくいのじゃが、あの女のやろうとしていることに本気でついていくアホウがどこにおる?あやつがやろうとしていることは『世界の救済』などと大それたことを言っておるが、世界の全てを巻き込んだ自決以外何物でもないわ。世界に絶望するのは松本の勝手じゃし、ワシらを巻き込まないでくれというのが正直な意見じゃ」
悔しいけど、高森が言っていることは正論だ。千鶴によって魔神に覚醒させられた後は、千鶴に利用されないために邪眼一族に下り、自分を拾ってくれた邪眼一族に義理を果たすために俺たちと戦うということか。
「義理立てするのは構わないけどな、お前の事情なんて知ったことか。お前をさっさと倒して、邪眼一族との戦いに決着を着けてやるぜ」
「・・・まあ、ワシもお主のことは前から気に入らんかったからの。それに、ワシが欲しい物を手に入れるためには、お主は邪魔じゃ。ここで消えてもらおうか」
巨大なへらを回転させて、鋭い切っ先を俺に向けながら高森は不敵な笑みを浮かべる。
「ワシがこの戦いに勝った暁には、ヴィルヘルミーナ・ワイズマン嬢に婚約を前提としたお付き合いを申し込む!!」
はい・・・?
えーと、今、何ておっしゃいました?
頭の中が真っ白になった。
何を言っているんだ、コイツは。怒りとか緊張とか、そう言った感情が全部綺麗さっぱり吹き飛んだ。
「・・・な、何じゃ、どうしたのじゃ。お主、ものすごい間抜けな顔になっておるぞ?」
「・・・あの、高森さん?」
「なぜ、敬語?」
「・・・もう一度、言ってもらえませんか?えーと、ワシが勝った暁には・・・何て?」
「耳が遠くなったのか?ヴィルヘルミーナ・ワイズマン嬢に婚約を前提としたお付き合いを申し込むと言ったのじゃ!」
『はあああああああああああああああっ!!?』
俺が口を開く前に、後ろから斗真たちの絶叫の大合唱が響き渡った。
後ろを振り返ると、ぽかーんと口を開いたままで固まっているヴィルヘルミーナと、信じられないものを目の当たりにしているかのように目が飛び出しそうなほどに大きく見開き、わなわなと震えている、驚愕の表情を浮かべた斗真たちの姿があった。
あれ?さっきまでの緊張感とか、圧迫感は一体どこに行った?
「・・・・・・おい、闇の魔神。お前、頭がマジでイカレているのかっ!?」
「悪いことは言わん。コイツだけはやめておけ!!せっかくの人生を棒に振るようなことをすることはないだろう!!」
「見た目はそりゃ極上の美人だし、スタイルは抜群だし、同性でさえも魅了されてしまうほどの美女だけど、見た目に騙されるとあとでえらい目に遭うんだからねっ!?」
「ちょ、ちょっと待ってくれないかいっ!?何もそこまで言うことはないじゃないかっ!?」
ヴィルヘルミーナに対する容赦ないディスの嵐に、さすがに彼女も反論するが、アイリスさんたちの勢いは止まらない。
「・・・まあ、こういう女性がよく見える時期というのは、若い時には一度か二度はありますからねぇ~。好きって理屈じゃありませんしね」
「真面目で地味で大人しい女性じゃ物足りないという気持ちは分かるけどね。でも、コイツはやめておいたほうがいいわね。相棒の相手はサクラで十分・・・というか、サクラぐらいじゃなかったら、コイツのアホは制御出来ないと思うわ」
「ねえ、君たち、仲間のことをそこまでボロクソに言うの!?泣くよ!?21歳の大人の女性が人目もはばからず、マジ泣きするよっ!?」
「だって、サクラっていう彼氏がいるのに、可愛い女の子を見るとすぐにナンパするし、人前でも平気で服を脱いで誘惑するし、頭の中身はエロいことばかりしか考えてないじゃん!」
「率先して男風呂の覗きをやるわ、男子更衣室のロッカーに隠れて着替えを覗いたこともあるからな」
「いや、それはアイリスだってやっているから、人のことは言えないでしょうが」
「・・・・・・トーマやサクラが寝ている間に、下着姿で部屋の天井に張り付いて忍び込んだこともある」
「サクラちゃんに夜這いを仕掛けたこともありましたわね~。それでサクラちゃんの【放送禁止用語】を食べちゃいましたしね~。ケダモノさんですわね~」
「・・・目を開けたら、天井にミーナさんが張り付いて僕を見下ろしていた時には、マジでオバケが出たかと思って、つい部屋中のものを投げつけまくったっけ・・・」
翌日、ヴィルヘルミーナが満身創痍となった無残な姿で廊下で倒れていたというのは言うまでもない。今じゃ下着姿の女性がタンコブだらけで目を回して倒れているところを見ても、驚かなくなったからな。ほとんどコイツがやらかしているから。
というか、見た目だけならトップモデルかと思えるほどの美しい顔立ちと抜群のスタイルを持つ女性が、布地のほとんどがスケスケになっているような下着としての機能を果たしているのかいないのか分からない黒の下着を身に着けただけの姿で、そんなアホなことばかりやるんじゃないとツッコミたい。
変態に襲われたらどうするんだ、とこっちは本当に心配をしているんだからな!?
「・・・なるほど、彼女の噂ならワシも少なからず聞いておるわ。まあ、他の連中に関しても同じような話を耳にするがの。バカに腹黒、ショタコンにヘタレ、金の亡者に宇宙人。よくもまあ、ここまで性格に問題がありまくるヤツばかりが揃ったものじゃ」
どうしよう。そんなことはないと言いたいのに、言い返せない俺がいるよ。後ろを見ると、斗真も目から涙を流してガックリとうなだれている。うん、そのやり切れない気持ちは俺にも分かるよ。
「しかし、それでもワシは彼女の美しさに一目見た時にすっかりほれ込んでしまったのじゃ。ワシは彼女の破天荒な性格も、常軌を逸脱しているとしか思えない奇行も、戦闘時には別人のように豹変して最前線で敵を容赦なく倒していく残忍で冷酷な一面も、全てを愛せる自信がある!ワシは彼女といつか添い遂げて、この世界の全てを彼女に捧げてみせようぞ。そのためなら、クロス王国も”彩虹の戦乙女”も、全て叩き伏せてくれるわ!」
「・・・あのさ、ボク、全然褒められているような気がしないんだけど?」
「・・・そんなところが気に入るとは、かなりの変わり者ね」
「まあ、サクラちゃんみたいな物好きもいますしね~」
高森の瞳はどこまでも真剣だった。
コイツ、惚れた女を自分のものにするために、命を懸けて戦うって言うのか。
対決で勝てば望んだものが自分のものになるというルールなのに、彼女に交際を申し込むと言っているから、ミーナを無理矢理自分のものにしようとするわけではなく、彼女の意志も尊重するようだ。
「・・・上等じゃねえか」
俺だって、ミーナのことはマジで惚れているんだ。
確かにバカだし、スケベだし、時々何を考えているのか分からなくなるところはあるよ?
でもな、俺だってそう言う欠点も含めて、ミーナという女性を、好きになった理由なんてうまく思いつかないぐらい、好きなんだよ!
「俺のミーナは絶対に渡さねえよ!!俺の嫁になる女に手ェ出すな!!」
胸を張れ。
自信満々に言ってやるんだ。
勘違いしているんじゃないかと思われても、知ったことか。
ミーナを誰かに奪われるぐらいなら、とことんバカになって守り抜いてやるよ!!
「嫁ェェェッ!?えっ、何、ボクのもろ好みのタイプの男の娘たちが、ボクを取り合って・・・争いあうなんて・・・!ついに来たのか、ボクのモテ期!ハレルヤァァァッ!!ヒャッフー!!」
「馬鹿者!!いちいち脱いで踊り出すな、この痴女が!!」
「・・・・・・いっぺんマジで死ぬか?」
うん、後ろでミーナが鼻血を噴き出しまくりながら踊り狂っているような気がするけど、気にしない!
誰が何て言おうと、そんなおバカで明るいお前のことが大好きさ!!
俺の目から涙が滝のように流れているような気がするけど、きっと気のせいだ!!
あとで、アイツはきちんとシバく!!
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【斗真視点】
桜、今だけは後ろを振り返らないでね。
さすがにこんな状況で、鼻血を噴き出してまき散らしながら、服を脱いで下着姿で踊り狂っている変態の姿なんて見た日には百年の恋も一気に冷めるだろうし。
この人たちにシリアスとか緊張感を求めた僕たちがバカだったんだ。
ああもう、身体中から力が抜けていくような気がする。
まあ、これも無駄な力が身体から抜くためのリラックス法ということで、納得しよう。
「・・・梶よ、お主たち追放されてから、ずっとこの連中に振り回されてきたのか?」
「文句あるか?」
「・・・何というか、大変じゃったのぉ」
「うるさい、哀れむな、殺すぞ」
人生で初めて、哀れみに対して殺意を抱いた今日この頃。
高森はクラスメートの中では比較的まともな感性を持っているようだけど、邪眼一族と結託している以上、彼のことも「敵」として認識しておいた方がよさそうだ。それに、ミーナさんに告白すると言うとんでもないことをやらかしてくれた。
しかし、ここで勝負が決まれば邪眼一族の野望もおしまいだ。
今は桜を応援することに、全力で集中しよう!
そして、色々とドタバタ騒ぎがあったが、第二回戦が始まった。
次回、ヴィルヘルミーナをかけて桜と高森の戦いが始まります!
4人目の男の娘は黒髪のヴィジュアル系メイクを施した爺言葉で話すタイプ。
ヴィルヘルミーナに一目ぼれしてしまい、交際を申し込むために桜に勝負を挑みます!
そして、仲間をディスることに一切合切手加減無用なレベッカたち。
ヴィルヘルミーナのスチャラカな性格も全部ひっくるめて好きだと豪語する、桜と高森の戦いの結末は?
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!




