第十話「Bottomless greed~オリヴィアVS窮奇将軍②~」
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【三人称視点】
「これで勝負はアタイの勝ちだ!霊剣はヴェロニカ様に献上させてもらおう!!」
窮奇は自分の勝利を確信したような笑みを浮かべた。
彼女の能力【天神の眼】は、領域内におけるあらゆるものを的として捕らえて、百発百中の命中率を誇る狙撃を行うことが出来る。
でたらめな方向に撃とうが、狙いを定めた的に向かって銃弾は自動的に飛んでいき、確実に仕留める。
しかし、その能力は3分間しか使えないという制約がある。そのため、彼女は試合終了3分前まで待ち続けていた。
窮奇が銃弾を乱射すると、四方八方に飛び散った弾丸は次々と景品を撃ち落としていく。さらに、オリヴィアが放った弾丸に弾丸をぶつけて相殺し、妨害の手を緩めずに景品を確実に強奪していく。
「無駄だ!!アタイは狙った獲物は絶対に逃がさない!!負けるわけにはいかねェんだよ、死んじまった渾沌や饕餮、橈骨のためにも、邪眼一族の未来を守るためにもなぁっ!!」
(・・・コイツの目、なかなかいい目をしとるやないか)
オリヴィアは心の中で、窮奇の目に一切の濁りがなく、ぎらついた光が宿っているのが見えた。
「随分とマジになっとるやないかい。そんなにあの幼女魔王様に義理立てせなあかん理由があるんか?」
「アタイはあのお方に拾われなかったら、とっくの昔に死んでいたんだ!!私だけじゃない、渾沌も饕餮も、橈骨も、勇者に選ばれた人間どもが一方的に仕掛けてきた戦いに巻き込まれて、全てを失った!!」
窮奇は憎悪と怒りを糧に、瞳に宿る炎を燃え上がらせる。
「魔族は存在自体が悪という下らない理由で、家族も、同胞も、居場所さえも失った!!その時に誓ったんだ。自分たちこそがこの世界の支配者であると信じ込んでいる愚かな人間たちに、必ず復讐してやるって!!ヴェロニカ様はそんなアタイたちの手を取ってくれた!必ずアタイたちの願いを実現させてやると約束してくれた!その日から、アタイたちの命はヴェロニカ様に預けたんだ!!」
(妾も生まれつき魔力が強すぎると言う理由で、家を追われて、同胞からも傷つけられてきた)
(住処を奪われて、愛する家族や仲間を奪われたお主たちの、世界に対する憎しみや怒りは手に取るようにわかる)
(この腐り切ったすべての世界に、反旗を翻してくれてやろうぞ)
(妾たちを疎み、罵り、蔑んできた全ての愚か者たちに下剋上を果たしてやるのだ)
(妾の手を取り、妾についてくるがいい!!妾たちが支配するこの世界の全てを見下ろせる、遥かなる高みへと連れて行ってやろう!!)
その言葉に、腐り切っていた魂が生まれ変わったような気がした。
消えかけていた炎がもう一度、心に宿ったような気がした。
主の手を取った瞬間、心に決めた。
(どこまでもついていく。どん底から這い上がって、必ずこの王を高みへと上り詰めてみせる。自分たちがたとえ倒れても、踏み台になって、高みに続く道となって王を導く)
自分の命でさえも捨て駒として、ヴェロニカが栄光を掴むための道具であっても構わないと言い切る窮奇の瞳には、迷いがない。オリヴィアはそんな彼女の気迫に対して、不敵に微笑んだ。
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「このままじゃ、オリヴィアさんが負けちゃう!!」
「金色の宝箱もちょっとやそっとじゃ落ちないみたいだけど、それも時間の問題だ。このままじゃ、ヤバいな」
見学席でオリヴィアが劣勢に追い込まれている姿を見て、斗真と桜は食い入るように見て、焦りの色が浮かんでいる。
「・・・そろそろ、反撃の時間だねぇ」
「・・・ああ、久しぶりに見れるな。オリヴィアのとっておきが」
斗真たちとは裏腹に、レベッカたちは全く心配している様子などなく、むしろオリヴィアが何を狙っているのか察しているらしく、ワクワクした面持ちで観戦していた。
「どういうことだよ?」
「・・・あのナイスおっぱい天使ちゃんが、自分の能力を話してしまっただろう?それは、オリヴィアが相手だった場合は、最悪の悪手になるってことさ」
「試合終了まで、あと1分近く。ここから面白いものが見れるぞ、トーマ」
「アイツのあの能力って、ものすごく手順が面倒くさいんだよな。たくさん条件を成功させないと、発動することも出来ないからな」
「・・・・・・しかし、一度成功したら確実に相手を倒すことが出来る」
「そうですわね~。あの子があのとっておきの技を使えば、相手は一方的に瞬殺されてもおかしくないですしね~」
「使い勝手が悪いから使おうとしないだけで、上手くいけばあれほど反則な技はないわよね」
斗真と桜は、レベッカたちが話し合っている【オリヴィアのとっておき】が窮奇の【天神の眼】よりも遥かに凶悪的で、反則ともいえるほどのものすごい能力であることを聞かされて、首をかしげる。
そして、残り1分。
その時は、やってきた。
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窮奇が放った銃弾がオリヴィアの利き手を弾こうとした瞬間、彼女はもう片方の手で銃弾を受け止めた。掌に食い込んだ銃弾を、歯を食いしばって激痛をこらえながら握りしめる。そして、彼女の唇の端が吊り上がった。
「・・・これで、コンプリートや」
「・・・どういうことかしら?」
「まずアンタは”自分の能力の名前とどんな能力か説明した”。ほんで、ウチが今”アンタの技を受けた”。そして”時間は残り1分”。3つの条件を満たしたっちゅうこっちゃな」
右太ももに刻まれた狐の紋章が輝きだして、細い三白眼が開くと瞳には藍色の光が輝き、彼女の頬や身体中に藍色の紋様が浮かび上がった。
「これがウチのとっておきや!!狐狼盗難!強奪魔法・蜘蛛の盗賊王」
彼女の全身から藍色の光が解き放たれて、鋭い鉤爪と八つの瞳を持つ巨大な”蜘蛛”の姿になったかと思うと、窮奇に向かって鋭い爪が目にも止まらない速さで繰り出されて、身体を刺し貫いた。
「え?」
一瞬、窮奇が自分が刺されたと思い込んだ。
しかし、次の瞬間巨大な蜘蛛の姿はどこにもなく、目の前にはオリヴィアが立っているだけだ。
身体にも、精神的にも特に何の変化もなく、窮奇は呆気にとられた。
(・・・特に何の変化もない。もしかして、ただのハッタリかしら?でも、さっきコイツはアタイに何かを仕掛けた。一体何を仕掛けたの?)
「さーてと、ウチも反撃開始と行こか」
そう言って、オリヴィアがライフルを撃った。
照準はあらぬ方向を向いており、銃弾は景品にかすりもせずに飛んでいった・・・かと思われた。
銃弾はひとりでに軌道を曲げて、近くに置かれていた写真集が入っている銀色の宝箱に向かって飛んでいき、そのまま撃ち落とした。
「何!?」
窮奇が驚きで思わず目を見開く。それはまさに自分が使っていた能力と全く同じものだった。
(アタイと同じ自動追跡の魔法を使えたというの!?でも、残り一分でそれを使ったところで、アタイの方が有利!使うのが遅かったみたいね!)
窮奇が再び銃を構えて、引き金を引いた。
まっすぐ飛んでいく銃弾は、景品が並んでいる棚とは明後日の方向に飛んでいく。しかし、銃弾は軌道を曲げて、景品を確実に仕留める。
そのはずだった。
「・・・え?」
銃弾はそのまま、見当違いな方向に飛んでいったまま、建物の壁に撃ち込まれた。
軌道を曲げずにそのまま飛んでいった銃弾に、窮奇の表情が凍り付いた。
(外した?そんなはずはないわ。アタイの能力が発動している間は、どこに弾を撃とうと確実に景品を仕留める!!)
しかし、続いて撃った弾丸は景品に当たることはなく、ミスショットが続く。
銃弾が外れるたびに、窮奇の表情が強張って、血の気が引いて真っ青になっていく。
目は血走り、思考回路が真っ白になっていき、顔や身体中から汗の玉が噴き出す。
「・・・どうして、どうして、どうして当たらないのよっ!?」
思わず窮奇は狼狽えて、叫んでしまった。
「・・・そら当たらんやろうな。ウチがアンタの能力を、そっくりそのままいただいたんやから」
「・・・え?」
窮奇は一瞬、オリヴィアが何を言っているのか分からなかった。
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「相手の能力やスキルの全てを奪う能力ですって!?」
「そう、オリヴィアの盗賊としてのとっておきの技がそれさ」
「強力な能力だが、条件が3つあるんだ。まず【相手の能力の名前とどういう能力か知らないといけない】、次に【相手の能力による攻撃を一回受けないといけない】。そして【能力は1分間しか使えない】。ほとんどギャンブルに近い技だ。しかし、成功すると今のように、窮奇の【天神の眼】だけではなく、動体視力や射撃の技術までも盗んで、自分のものにしてしまう。さらに、一度奪った能力は相手に戻ることはなく、使い捨てのごとく消滅してしまう。つまり、この時点で窮奇は完全に無力化したということさ」
「あとは能力なしで、実力で勝つしかないってことか」
「でも、オリヴィアも動体視力や運動神経は元々いいわけだし、それに窮奇の能力も上乗せすれば、圧倒的に彼女を負かすことも出来るかもしれないっていうわけよ」
しかし、残された時間はわずか。
景品の数は窮奇がわずかに上回っている。金色の宝箱を手に入れても、ポイントに加算するとギリギリで勝てるかどうかといった微妙な状態だ。
「・・・さてと、相棒はここからどう勝負に出るつもりかな」
ヴィルヘルミーナは真剣な瞳で、窮奇の能力を奪い取ったオリヴィアが次にどんな手を打つのか、じっと見つめて様子をうかがう。
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「ウチのこの能力は、アンタの能力と違って1分間しか使えへん。せやけど、この1分間だけは、アンタの全てのスキルや能力をウチのモンにすることが出来る。そして、この能力が終わった後も、アンタは【天神の眼】を使うことはこの先永遠にない。なぜなら、ウチのものとして奪ってやったからなぁ」
オリヴィアの言葉に、窮奇は絶句した。
「アタイのスキルや能力の全てを・・・奪った・・・!?」
もしそれが本当なら、自分にはもうなすすべがなく、実力だけで景品を奪い取るしか方法がない。しかし、彼女が得意だった銃を外したことから、得意の射撃のスキルまでもが奪われてしまったことを彼女は悟った。その証拠に、今までなら手の届く位置に置かれているように見えていた的が、ひどく遠くに置かれているように見えた。驚異的な動体視力も、射撃の腕前も、彼女は奪われたのだ。
条件は多くても、一度発動すると圧倒的に相手を倒せる魔法を書いて見たくて、今回全力で書いてみましたがいかがでしたか?次回、1回戦の決着が着きます!
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!




