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第七話「Get fire~いざ、殴り込みへ!!~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!

新作が書きあがりましたので、投稿いたします!

どうぞよろしくお願いいたします!

 【桜視点】


 決戦前日。


 あたしたちは砂漠の真ん中に君臨する黄金都市【ゴールド・リヴァー】に足を踏み入れた。

 もうここからは敵の陣地、一切気を抜くことは出来ない。邪眼一族が何を仕掛けてくるか分からないからな。それに、あたしの隣にいる斗真の様子も気がかりだ。


 高橋さんが重傷を負って、魔法病院に搬送された。

 腹部に大きな穴が空き、身体を鋭い切れ味の巨大な刃物か爪のようなもので引き裂かれており、奇跡的にも一命は取り留めたが、現在もまだ意識不明のままだ。


 高橋さんは魔神八傑衆の一体だ。

 そんな彼女にここまで深手の傷を負わせることが出来るヤツなど、かなり限られてくるだろう。


 しかし、もしその予想が見事的中してしまったら・・・待ち受けているのは最悪の未来だ。


 斗真はあれからずっと黙りこくったまま、誰とも一言も話そうとしない。

 いつになく深刻で、下手に話しかけたら感情を大爆発させてしまいそうになっている今の斗真はかなり危うい状況に置かれている。そのせいか、いつもは空気を読まずに騒ぎ立ててくるレベッカさんたちも、斗真に話しかけることが出来なかった。


 (・・・なあ、サクラ。トーマ、本当に大丈夫なのかい?)


 (あれはかなりヤバい状態だと思うで。ビビアナでさえも話しかけようとせえへんからな)


 (・・・アイツが無茶をしないことを願うしかないよ。もし、高橋さんを襲った犯人が邪眼一族だとしたら、アイツは邪眼一族を一人残らず叩き潰すだろうしな)


 普段は大人しくて争いごとを好まない、気弱で穏やかな性格だけど、仲間を傷つけられた時の斗真の怒りは想像を絶するほどに恐ろしいものとなる。


 アイツ曰く「仲間を傷つけたヤツには人権なんてない。ありとあらゆる手段で追い詰めて、ぶっ潰す。最初から殺すつもりで徹底的に叩き潰す」が信条だ。身内や仲間を傷つけられたら、自分がバカにされた時よりも激しく怒り、相手が何人いようと全員叩き潰すまで報復の手を止めることはない。


 (覚悟は決めておいた方がいい。ここはもう邪眼一族の敵陣だ。一瞬でも気を抜いたらやられる)


 そう思っていた時だ。


 「桜」


 「!?」


 「眉間にしわ、寄り過ぎ」


 斗真が呆れたような顔で、あたしのほっぺたを両方からぶにっと掌で挟み込んだ。

 鏡に映ったあたしの顏がブサイクに歪み、それを見て、オリヴィアとヴィルヘルミーナが唖然とした表情になり、レベッカさんがブッと噴き出した。


 「心配をかけてごめん、僕のことを気遣ってくれていたんだよね?」


 「え、いや、お前、大丈夫なのかよ?」


 「・・・つばさのことは心配だけどさ、僕が落ち込んでいたりしたら皆にも迷惑をかけちゃうよね。桜、冥界の猟犬の人たちにつばさのことを助けるように色々とやってくれてありがとう。つばさの身にもしものことがあったら、僕はきっとまともな状態で戦うことは出来なかった」


 意識不明の重傷だけど、一命を取り留めたことに斗真は安堵している様子だった。しかし、それでも高橋さんの意識が無事回復してくれることを願わずにはいられないし、アイツなりに何とか自分を落ち着かせようと言い聞かせていたのだろう。それでも、周りを不安にさせてしまったことに気づいた斗真は、皆に申し訳ないと頭を下げた。


 そうだ、コイツが一番不安と戦っているんだ。

 寅若さんとの戦いを控えていて、さらに高橋さんまであんなことになってしまって、ギリギリまで追い詰められているのに、あたしたちに気遣いが足りなかったと気を遣わせてしまった。


 あたしたちが今やるべきことは、自分の戦いに専念することと不安に陥らない様に仲間を鼓舞し、絶対に負けないという決意の炎を絶やさないことだ。


 「僕たちは僕たちらしくやろうぜ。いつだって、どんなヤバい喧嘩や勝負だって、僕たちは・・・笑って乗り越えてきただろう?派手に暴れてやろうぜ?」


 「そうこなくっちゃあな!さすがはオレの弟分だぜ!」


 「フン、当然だ」


 「今回だけは、気兼ねなく派手に暴れるわよ!」


 「全部終わったらカジノで一儲けするでぇ~!」


 「お前はそれ以外ないのか」


 「フッ、明日の戦いに備えて、今夜はみんな同じ部屋で寝ると言うのはどうだい?恋バナでもしながら、明日に備えて気合を入れようではないか!」


 「ヤダ、面倒くさいし眠い!」

 「旅行と決戦を勘違いするなんて、頭がおめでたいにもほどがありますわよ~?バーカ」

 「寝言は寝てから言え、バカ」

 「一人でやってなさいよ」

 「・・・・・・永久の眠りに着かせてやろうか、色ボケ」


 「・・・うん、この塩対応もいつもの君たちらしくて安心するなぁ。ボク、泣いてもいい?」


 もうとっくの昔に号泣しとるやないかい。仕方がないので、あたしがヴィルヘルミーナを慰めてやると、彼女はあたしの胸に顔を埋めてオイオイと泣き出した。


 こうして、張り詰めていた空気が薄れて、いつもの冗談半分本気半分といった、いや、やる気があるのかないのか分からない、いや、平常心を取り戻したあたしたちは明日の戦いに臨むことになった。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 【斗真視点】


 僕たちはヴィネ家の使者と名乗る魔族の人に案内されて、会場となるスタジアムの近くに建っている豪華なホテルへと案内された。こんなに立派なホテルなんて、テレビでしか見たことがないよ。このホテルだけじゃなくて、この街にあるカジノやレストラン、ホテルの全てが邪眼一族の【窮奇】って言う人のものなの!?いや、異世界に来てこれほどなまでのお金持ちを見るのは初めてだわ。


 「田舎ものじゃないんだから、あっちこっち見たりするなよ」


 「やるかそんなこと」


 やりかけたことは黙っておこう。


 いよいよ、明日は光と戦うことになる。

 そして、邪眼一族と彩虹の戦乙女の最終決戦になる。


 さっき、桜が緊張していたから、リラックスしなよと言っておきながら、僕自身は・・・ものすごく緊張していた。もうここまで来たら腹をくくるしかないし、どんな結末になろうと、僕は僕の思いを全て光にぶつけていく。そして、必ず僕たちが勝たなければならない。


 【射的】【鉄板焼き】【モグラ叩き】といった、縁日の屋台のような種目だけど、きっと僕が知っているようなものではない。この戦いで勝った方が負けた方の家や戦力、財産、領地の全てをいただくことが出来るのだから、きっと何か罠を仕掛けてくる可能性は高い。


 だから、今から明日に備えてちゃんと心の準備をしておくことは大切だ。

 どんな結末になろうと、全てを受け止める。

 でも、最後まで悪あがきはやめない。


 光を連れ戻すまでは、絶対に・・・折れない!!


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 【光視点】


 「・・・ぐぅ・・・がぁっ・・・!!」


 ま、まただ・・・。

 また、発作が・・・!

 目が・・・かすむ・・・!

 身体が・・・痛い・・・!

 息が・・・出来ない・・・!!


 「薬を・・・早く・・・!」


 私は錠剤を素早く口の中に放り込んで、水で流し込む。

 苦しかった呼吸が少しずつ落ち着いてきて、私は大きく息を吐いた。

 まるで水浴びでもしたかのように身体中から汗が噴き出し、服がじっとりと張り付いている。


 「・・・薬が切れるのが・・・早くなってきている・・・」


 それがどういうことなのか、否定しようとしても決して逃れられない現実を思い知らされる。

 

 「・・・魔神になっても、私の病気は治らないというのか」


 普通なら、とっくの昔に墓の中にいることになっている病巣でボロボロになった身体をここまでよく持たせることが出来たものだ。邪眼一族の医師の話によれば、私の身体の内臓のほとんどが腐り果てていて、いつ死んでもおかしくない状態らしい。こうして普通に生きていること自体が信じられないらしく、ましてや戦うことなどもってのほかだそうだ。


 この世界に来る前に、体調不良で病院に行った時、医者から告げられたのは・・・【末期がん】だった。


 もう身体中に転移していて、手術をしても助かる見込みはないと見放された。

 余命は残り1年・・・。


 私の頭の中は真っ白になった。


 両親は仕事にかまけて、私や弟のことなどほったらかしにしていた。

 弟が死んだ時だって家には帰ってこなかった。祖父母はそんな両親を絶縁した。

 あの人たちは、私たちのことが疎ましいんだ。それなら最初から産まなければよかったのに。


 きっと、あっちの世界で私が死んだとしても、何も感じないのだろう。


 弟が死んだ後に、祖父母も後を追うように亡くなっていき、私一人だけになった。


 遺産を遺してくれたおかげで高校に通うことは出来たけど、家に帰ってきても、学校でも、私はずっと一人だった。私のことを心配してくれているつばさでさえも煩わしくて、遠ざけるようになった。


 人間なんて生まれた時から、死ぬ時まで、ずっと独りなんだ。


 誰も悲しんでくれる人などいない。

 誰も私のことを看取ってくれる人はいない。


 苦しい。

 

 寂しい。


 そんな弱さを必死で吹き飛ばすために、自分自身に負けないために、空手を習い続けた。

 誰よりも強くなれば、きっと独りのままでも、辛いと思わなくなるから。

 一人きりで死んでいくことになっても、きっと大丈夫だと思えるようになると信じたかったから。


 「・・・斗真、私はもう後戻りなんて出来ない!強くなれるなら、落ちるところまで落ちてやる!お前みたいな根性無しに、負けてたまるものか!」


 分かっているんだ、本当はお前が悪くないことなんて。


 私がお前の言うことを聞かないで、暴走したせいで、弟が巻き込まれて死んだことも。

 お前が必死になって私や弟を守ろうと、身体を張って戦ってくれていたことも。


 でも・・・!


 それを認めてしまったら・・・!!


 私は何のために、ずっと、歯を食いしばって頑張ってきたんだ!?

 私が信じていた強さが間違っているなんて、そんなこと、認めることなど出来るものか!!


 「・・・私は・・・勝ち続けるんだ!自分自身にも、お前にも、運命にも!!」


 間違っていることなど分かっている。

 それでも、どうしても認めることが出来ないものがあるんだ。

 もう死を待つしかない私だけど、自分が必死で守り続けてきたものが、間違っているなんて認めることなんてできない!!


 「・・・斗真を・・・倒すんだっ!」


 こんなバカでどうしようもない私のことを、相棒と呼び慕ってついてきてくれた、可愛い奴。


 「・・・私は全てを失ってでも、最後まで勝ち続けるんだっ」


 勝ち続ける事だけが、私の価値観を唯一肯定する。


 私自身が壊れないために、私の全てがなくならないためにも。


 自分自身の愚かさを、分かっていたとしても!


 「・・・私は・・・お前に・・・勝つ・・・!」


 どうか笑ってくれ。

 こんなにも愚かで情けない、強さだけに固執する私をどうか見捨ててくれ。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 【三人称視点】


 そして翌日・・・。


 【ベレト家】率いる【彩虹の戦乙女】。

 【ヴィネ家】率いる【邪眼一族】。


 ソロモン72柱の魔神の中でも選ぶ抜かれた4人の【王】の位についている二大名家が、全てを賭けて戦うという前代未聞の戦いに、魔界中の魔神や魔族たちが注目していた。


 この戦いに勝てば、実質、魔界でも最強の勢力を誇る一大戦力となる。


 その戦いが始まろうとしていた。


いつ死んでもおかしくない病に侵されたままで、薬を飲みながら必死に戦い続ける光。

戦いにとり憑かれてしまった彼女を、斗真は救い出すことが出来るのか・・・?


次回から、邪眼一族とのバトルシーンを書きます!


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

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