第六話「casino~眠らない町・ゴールドリヴァー~」
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【三人称視点】
「・・・ここが、あの有名な【ゴールド・リヴァー】か」
「なかなかのものですね。まさか、街全体が巨大なカジノになっているなんて」
紫の大陸パルフェ・タムール。
砂漠地帯のど真ん中にまるで支配者のようにそびえ立つ巨大な都市【ゴールド・リヴァー】を前にして【冥界の猟犬】のフォグライトとダイナモは圧倒されそうになる。この街が邪眼一族の四天王【窮奇】が支配している町であり、邪眼一族の重要な資金源の一つとも言われているのだ。
煌めくネオンランプ。
町中の至る所に置かれているスロットマシンに没頭する魔物たち。
勝利を告げるメロディが鳴り響くと、勝利の歓声が起こり、見物していたギャラリーが大いに沸きだす。
その反面。
路地裏では、みずぼらしい恰好をして落ちくぼんだ濁った瞳を向けながら物乞いをする浮浪者の姿があった。栄光と没落、成功と敗北、二つの両極端な人生の光景が見られることから、この街には天国と地獄が両立していると言われている。
邪眼一族との戦いが行われる【ゴールド・リヴァー】の話を聞いた桜が、すぐさま窮奇たちの動きや町の様子を探り、出来るだけ多くの情報を手に入れてくるように頼まれた【冥界の猟犬】は早速情報収集のために、ゴールド・リヴァーに向かったのだ。
その様子を耳に着けている魔道具で、桜のスマホに通信を行いながら、彼女たちは慎重に町の様子をうかがう。元暗殺者であるスキルを活かして、彼女たちは完全に気配を消して、大勢の魔族たちで溢れかえっている賑やかなメインストリートを足早に歩きながら、周囲の声に耳を傾ける。
(ダイナモ、”盗聴”の魔法を発動しますわよ)
(はい!)
耳に着けている魔道具を起動させると、彼女たちを中心とする半径50メートルの円を描くように魔力が発動し、範囲内にいる魔族たちの話声や、心の声が聞こえるようになる。莫大な情報の山をかき分けるようにして、フォグライトたちは近々行われる邪眼一族と彩虹の戦乙女の戦いに関する情報を探し出す。
(・・・今度の勝負はゴールド・リヴァー始まって以来の莫大な金額が動く勝負になっている。ヴィネ家に従っている魔族の貴族たちがそれぞれ大金をかけて、今度の勝負を観戦するみたいね)
(億単位の金がまるでチップのように動いているようですね・・・)
今回の勝負は邪眼一族と彩虹の戦乙女・・・魔王軍の一騎打ちという世界中が注目している二大勢力の戦いなので、魔界中の魔族・魔神たちが注目していると言っても過言ではない。そのせいか、戦いの裏ではそれに乗じて自分の欲望を満たすために大金を賭けるもの、戦いに勝ったほうがソロモン72柱の中でも実質最強の勢力を手に入れるため、勝った方に自分の一族を売り込もうとするものなど、様々な欲望が蠢いていた。
その時、ある一つの声がフォグライトの耳に入った。
『そう言えば、一昨日、海岸の近くにものすごいデカい鳥の魔物が出たって話を聞いたけど本当なのか?』
『どうせ酔っ払いの寝言だろう?』
『警備隊が調べに行ったらしいけど、特に何もなかったらしいぜ。ああ、でも海岸の近くにものすごい量の血液があったみたいだぜ。誰かがあそこで襲われたのかもしれないな。まあ、あのあたりには”ワーム”とか”ギルタブリル”とか出るから、冒険者が迷って、やられちまったのかもな』
『だけど、デカい鳥ってどれぐらいデカかったんだろうな』
『ああ、何でも空一面を覆い尽くすほどの巨大な翼を持つ鳥だとよ!』
『ありえねー!やっぱり酔っ払っていたんだよ!』
『まあ、俺たちも昼間から飲んでいるから、人のことは言えねえけどなっ!ギャハハハ!』
その話を聞いた後、桜から通信が入った。
『・・・フォグライトさん、海岸の方に誰か調査に向かってもらってもいいかな?空一面を覆い尽くすほどの巨大な鳥の魔物って、もしかしたら行方不明になっている高橋さんかもしれない』
(分かりました。早速、外の様子を確認しているラムアとカーミラに向かわせます)
そして、再びフォグライトとダイナモは調査に戻った。
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【斗真視点】
桜が【冥界の猟犬】の人たちにお願いして、戦いの舞台となる【ゴールド・リヴァー】の調査に向かってもらうことになった。そして、桜がいつどこで誰が盗聴しているか分からないため、僕たちと離れて電話を終えた後に、再び戻ってきた。何を話していたのかと聞こうと思ったけど、桜は口を開こうとしなかった。こういう時の桜は慎重に考えて行動をしているので、話せない時は本当に話せない状況なのだ。
「しっかし、まさかあのゴールド・リヴァーで戦うことになるとはなぁ。この戦いが終わったら、カジノでパーっと一儲けでもしたいなぁ」
「パーっと使い果たしてスッカラカンにならんといいがな」
「アホ、ウチはお前たちとはちゃうねん」
「しかし、砂漠の真ん中に街全体が一つのカジノになっているなんて、まるでラスベガスみたいだね」
「ラスベガス?何やそれ?」
「俺たちの世界にある、ゴールド・リヴァーに似たような街があるんだよ。俺も時々、旅行で行ってお世話になっていたな」
ちょっと待って、確かラスベガスのカジノって21歳未満は入っちゃダメなんじゃないのかな?
桜に目で訴えるが、桜はどこ吹く風と言った様子で「ぴゅ~、ぴゅっぴゅっぴゅ~」と口笛を吹いていた。本当にもうこの不良少女は・・・!
「組の資金と生活費を稼ぐために、ちょっと年齢誤魔化しただけだもんね~」
「犯罪だからね、それ」
「極道だもんね~」
さすがはヤクザの三男坊。怖いもの知らずにもほどがある。あれ、女の子を相手に三男坊という呼び方でよかったかな?
「・・・いい加減、俺のことを女の子と間違えるのはやめれ。俺は男だって何回言えばいいんだよ!つーか、斗真、お前だけにはそんなことを言われたくないよ!?」
「何でさ、どこからどう見ても、365度、普通のどこにでもいるたくましい日本男児じゃないか!」
「一周したら360度だ、バカ」
「360度どこからどう見ても、頭が足りない、可愛らしい黒髪の女の子ですわね」
あれ、いつから変更したんだろう。あと、誰の頭が足りないって?
「しかし、私たちの勝負を使って賭けをするとはな。邪眼一族に賭けるものが多いようだが、そいつらが揃いに揃って破産する姿は見ものだろうなぁ」
「私たちのことをいつもバカにしてきた魔族たちにとびっきりの嫌がらせをすることが出来ますわね~」
「それにしても、ソロモン家が提示してきた3つの種目が、まさかトーマの世界ではお祭りの遊びとして行われているなんて驚いたわよ。というか、トーマとサクラって、修羅の国にでもいたの?」
「ニナ、僕たちのことを何だと思っているの?」
まあ、そう言う風に思われていても仕方がないだろう。
家と家を賭けた一世一代の大勝負に、まさかモグラ叩きや射的、鉄板焼きが選ばれるなんて夢にも思っていなかったし。
「・・・でも、どうせただの射的やモグラ叩きじゃないんだろうな」
そう、これまでの人生経験から、普通に勝負するということはまず期待してはいけない。油断して挑んでいったら、足元をすくわれて、そのまま地獄に急降下ダイブさ。
「でも、モグラ叩きなら僕少しだけ得意だから、頑張るよ!」
「へえ、そうだったんだ?」
「ふっふっふ、昔はよくハンマーで最高得点を出しまくったり、モグラを叩いたら土台ごと壊したりしていたから、モグラたたき屋泣かせの斗真ちゃんと呼ばれていたもんさ!」
あの後、町中の縁日からモグラたたき屋さんが消えたからな。
「・・・違った意味で泣きたかったんだと思うよ、それは」
「・・・レベッカたちのバカに感化されてしまったのかもな。だが、そんなちょっとおバカなトーマもまた愛おしいぞ!」
「アンタのその行き過ぎたブラコンも影響していると思うぞ、多分」
「ウチもよぉ射的をやっては、高価な景品ばかりを片っ端から手に入れて、射的屋から出禁にされとったなぁ。ほんで、手に入れた景品や倉庫に閉まっておいたいらない家具やら魔道具やらを持ち出して、店を開いて、一儲けするんや。いやー、あの時は儲かったわ」
「商魂たくましいな。でも、今度は俺たちのエロ写真を売るのはダメだからな?」
そんなことを話していると、再び桜のスマホが鳴り出して、桜が出て行った。
何だろう、桜が一瞬だけ僕を見た時、済まなさそうな顔をしていたような気がするけど、気のせいかな?
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「・・・そうか、それで、高橋さんは見つかったんだな?」
やっぱり、そこにいたのかと桜は安堵のため息を内心で漏らしていた。しかし、カーミラからの話を聞いていくにつれて、桜の表情はこわばっていく。
「・・・意識不明の重体、か。分かった。早急に魔法病院に搬送して、手術の手続きを取ってもらってくれ。ああ、邪眼一族は高橋さんを始末したつもりでいるからな。奴らに気づかれたら絶対に高橋さんを狙ってくるだろう。あたしの伝手で、知り合いの魔法病院がある。そこなら口が堅いから信頼できる。そこに転移魔法で転送してくれ!」
電話を切ると、桜は深くため息をついた。
その時、ドアが開いた。
桜が振り返ると、そこには斗真が立っていた。
「・・・斗真」
「・・・ごめん、盗み聞きするつもりはなかったんだけど、今、つばさのことを言っていたよね?」
斗真が桜に近づくたびに、桜は髪の毛をかきあげながら、口を開いた。
「・・・何があったの?」
「・・・高橋さんがゴールド・リヴァーの近くの洞窟で見つかった。誰かに襲われたらしく、意識不明の重傷らしい。今、カーミラたちが彼女を魔法病院に転送した」
「・・・え!?」
斗真の顔色が見る見る血の気が引いていき、身体がガクガクと震えだす。
「・・・どうして、つばさがそこにいるの?誰にやられたの?一体何がどうなっているんだよ!?」
「あたしにも分からない。ただ、彼女がゴールド・リヴァーに向かったのは、寅若さんが邪眼一族に下ったという情報が入ってきてからすぐだ。・・・もし・・・その話を聞いて、寅若さんを連れ戻そうとして、襲われたんだとしたら・・・」
「・・・それだけはあり得ないよ。光がつばさを襲うなんて、絶対にない」
「・・・でも、その可能性もあると言うことだ。斗真、高橋さんは何とか無事だ。今、俺たちがやるべきことは、高橋さんのためにも、邪眼一族との勝負に勝つことだけに専念することだ」
「・・・分かっているよ!でも、光が、つばさを傷つけるなんてあり得ない。僕のことを恨んでいるのは分かるけど、つばさはずっと光のそばにいてくれていたんだ。光が一人きりにならない様に、僕とつばさで約束したんだ。光を守ってくれるって、そうアイツは言ってくれたんだ!」
「・・・斗真」
つばさが襲われて意識不明の重傷となり、つばさを襲ったのが邪眼一族か、もしくは親友である光かもしれないという最悪の展開を必死で振り払うように、斗真は強く言い切った。
信じたくない。
光にとっても大事な友人であるつばさを、彼女が手にかけることなどありえない。
斗真はそう信じたくて、仕方がなかった。
円を描くように一周すると角度は何度になる?
斗真の回答:365度
正解:360度
こんな答えなのに、数学を始めとする理数系はトップクラスだったそうな。
その代わり、古典と現代国語、英語は赤点ギリギリの斗真でした。
ちなみに桜は文系、理系、両方がトップだったので学年首席です。
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