第五話「Bad news~覚悟を決める時~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。
新作が書きあがりましたので投稿いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
【桜視点】
邪眼一族との最終決戦を迎える5日前。
俺たちは再びベアトリクス陛下に呼び出されて、大広間に集まった。
陛下は眉間にしわを寄せて、疲れ切った表情を浮かべていた。決戦を控えているこの時期に、俺たちを呼び出してどうしても伝えなければならない話があるようだが、一体何だろう?
「・・・闇の魔神オプスキュリテと、光の魔神ラディウスが邪眼一族に下ったという事実が判明したわ」
それは、俺たちにとっては最悪の知らせだった。
よりによって、こんなタイミングで邪眼一族と魔神八傑衆が手を組むとか、明らかに俺たちを潰そうとしているのは間違いない。しかも、オプスキュリテとラディウスって・・・高森と寅若さんじゃないか!
「向こうから自分たちのチームは窮奇将軍、オプスキュリテ、そしてラディウスを出すという報せが届いたわ。相手が魔神八傑衆となると、そう簡単に勝たせてくれるとは思えないわ。このヴァルハラ・ゲームは一戦ごとに勝った相手は負けた相手から一つだけ味方や戦力の一部、武器などを手に入れることが出来る上に、負けた相手の魂を抜き取って、封印することが出来る。でも、次の試合で1回戦で負けたチームが勝てば、魂を取られた味方を取り戻すことが出来るわ」
「そこを考えると、改めて誰を選ぶか、慎重に選ばないといけないな」
「誰が出るか、今日中に決めねえとヤバいってことか・・・」
レベッカさんたちも頭を抱えて、誰を出そうか、真剣に話し合っている。
一昨日に邪眼一族からの挑戦状ともいえるヴァルハラ・ゲームの話を聞かされてから、どんなルールで戦うのかまだ分からなかったから、ゲームマスターであるソロモン家からのゲームのルールと種目を確認してからチームを編成しようということで、いつ誰がどんな種目に出ることになっても大丈夫なように、それぞれのステータスや能力を出し合って話し込んでいた矢先に、こんな報せが舞い込んでくるなんて。
斗真を見ると、その話が信じられないのか、必死で平静を保とうとしているけど明らかに目が動揺している。そして、自分の中でこの報せを受け入れたかのように、深くため息をついた。
他のみんなも斗真のことを不安そうに見ている。
斗真が寅若さんと何とか和解が出来たらと淡い願いを抱いていた矢先に、邪眼一族に下った寅若さんと戦うことがこの時点で決まってしまったから、辛い現実を受け止めることが出来るか、みんな不安に思っていたのだろう。俺もそのことを心配していた。
「・・・そうか・・・光とはどうしても・・・戦うことになっちゃったんだ」
「・・・トーマ、お前、本当にヒカルと戦うつもりかよ?」
「・・・今、戦闘モードにならなかったら邪眼一族に負けちまう。昔の親友だからとか、そんな理由でいつまでも引きずっていたら、みんなの邪魔になっちまう。アイツはもう俺の敵だ」
斗真の一人称が”俺”になった。
これは本気になったという証だ。
本気で・・・寅若さんと対決するつもりだ。
「・・・みんな、もう俺は腹をくくったよ。俺が寅若光を・・・この手で・・・”ブッ飛ばす”。邪眼一族に負けるわけにはいかねえ。これは”彩虹の戦乙女”の存続の危機なんだ」
もう斗真も、寅若さんを何とかして助けたいという思いがあっても、これ以上みんなを巻き込むわけにはいかないっていうことを・・・覚悟したんだ。
「売られた喧嘩は高値で買い取り、買った喧嘩は返品不可、仕掛けた相手には1000倍返し。それが、彩虹の戦乙女のルールだ。それを俺のわがままで捻じ曲げるわけにはいかない」
斗真・・・。
お前、本当にそれでいいのかよ?
自分の手で、寅若さんを倒すっていうことなんだぞ?
唯一無二の相棒とまで言っていた、お前が信頼を寄せていた親友を倒さなくちゃいけないんだぞ?
それがお前が決めたことなら、俺は何も言わないけど・・・。
辛くないわけないだろうが。
人一倍仲間や家族を大切に思うお前が、自分の手で仲間をブッ飛ばすなんて言い出すなんて、俺は正直聞きたくなかった言葉だ。
その時だった。
ビビアナさんが口を開いた。
「・・・・・・ブッ飛ばすと言うことは、彼女を負かした後に、邪眼一族から彼女を取り戻すつもり?」
え・・・?
俺は一瞬、ビビアナさんが何を言っているのか分からなかった。
すると、レベッカさんたちも何かを察したのか、楽しそうに笑みを浮かべていた。
「確かにお前の言う通り。彩虹の戦乙女に敗北は許されない。売られた喧嘩は高値で買い取り、買った喧嘩は返品不可、仕掛けた相手には1000倍返し。それが、彩虹の戦乙女のルールであることは間違いない。でも、相手を確実に殺さなければならないというルールは設けていないぞ」
「売られた喧嘩は買わんとアカン。せやけど仲間は助けたい。下手な同情をみんなから買わんかったことは立派や。もしここで”友達と戦いたくない!”なんて甘えたことを言うたら、ウチ、トーマちゃんを見限っとったわ」
「まあ、それはちょっとカッコ悪いからねぇ。でも、君の覚悟を聞いて安心したよ」
「5日後には邪眼一族をブッ飛ばして、アンタの元相棒を連れ戻す。言いたいことがあったらとことん言い合って、喧嘩をするのも良し。そのためにも、まずは全力で邪眼一族に勝つわよ!」
「トーマちゃん?私たち、弱音や甘えだけしか言わない腰抜けのガキは大嫌いですけど、筋を通す、気合と根性が入った暑苦しいガキの味方ならいくらでも手を貸しますわよ~?」
「思い切りヒカルとぶつかって、とことん殴り合うなり何なりやり合えばいいじゃねえか!!潰すか潰されるかの、一世一代の大喧嘩だぜ?難しいことばかり考えていても仕方がねえ!!」
そうか、そういうことなのか・・・!
斗真はみんなを自分のワガママに巻き込みたくないというのは「光を助けたい」「でも自分だけじゃどうすればいいのか分からないから、助けてほしい!」という思いが自分の甘えでしかないと思ったから、寅若さんと本気でぶつかり合って、彼女を負かして連れ戻すという行動に出ることにしたんだ。
痛みを恐れて、仲間がきっと力を貸してくれるだろうと言う甘えや弱さでみんなを振り回すことは出来ないという自分自身の弱さに対する戒め、自分が傷つくことになっても構わないという強い意志と覚悟を感じ取ったからこそ、斗真は寅若さんと戦うという選択肢を選んだんだ。
そして、それをみんなが認めてくれた。
それによって、みんなの士気が一層高まり、チーム全体が一つにまとまったような気がした。
全く、大したもんだよお前は。
俺は・・・まだまだだな。
改めて、お前のデカい背中と覚悟を見せつけられて、自分自身がまだまだ斗真には及ばないということを思い知らされる。コイツの隣に並ぶためには、そういう思いをくみ取れるようにならないとな。
「・・・ベリス姉さま、ごめんなさい。俺、ワガママですかね?」
「レベッカたちのあのやる気に満ちている表情が答えだと思うわよ?私も、俄然燃えてきたしね」
さっきまで憔悴していた陛下の瞳に炎が宿り、憂いや疲労感が吹き飛び、いつものように優雅でかつ獰猛な笑みを浮かべていた。陰鬱としていた空気や張り詰めていた緊張感が吹き飛び、前向きな気持ちになっていく。
「オレたちはお前の味方だぜ?とことんやりたいように、全力で突っ走れよ!」
「・・・みんな、ありがとう・・・!」
斗真の頬に、光るものが一筋こぼれて落ちていく。
それなら、俺もお前にとことんついていくしかないじゃないか。
杯を交わし合った兄弟なんだから。
「それじゃあ、種目を発表するわよ!まず第一種目は【強欲なる狩人たちの狩猟会】!これには、オリヴィアに出てもらうわ」
「あの【強欲なる狩人たちの狩猟会】かい!腕が鳴るよって」
1人目はオリヴィアさんが決まった。
「第二種目は【暴食なる竜たちの晩餐会】!これは、アレクシアや冥界の猟犬からの推薦で、サクラちゃんに出てもらうわ!」
「お、俺が!?」
おいおい、まさか、二人目が俺かよ!?つか、【暴食なる竜たちの晩餐会】って何だよ?
「そして第三種目の【憤り怒る狂戦士の血戦】には・・・トーマちゃんに出てもらうわ!」
「はい!!」
つまり、これでオリヴィア、俺、斗真が邪眼一族と対決することが決まったってわけか。
「先に二勝しても、第三種目まで全部やるから、全員死ぬ気で臨むこと!!」
「ウチらが選ばれたからには、ハンパな戦いは見せられへんよってな!」
「ルールってどうなっているんだ?」
「そうね、まずはルールについて説明するわね。えーと、まず【強欲なる狩人たちの狩猟会】は10分間の制限時間内に、フィールドの中に現れる財宝や魔道具などの景品を、特殊な銃の魔道具を使って撃ち落とすのよ。そのアイテムについているポイントの合計が高い方が勝ちよ」
え・・・?
もしかして、それは「射的」というヤツではありませんか?
「【暴食なる竜たちの晩餐会】というのは?」
「これも制限時間10分の間に、巨大な鉄板の上を走り回りながら指定された料理を次々と作り上げて、審査員であるドラゴンの口の中に放り込んでいくのがルールよ。これはただ早くやればいいと言う分けではなく、生焼けだったり、焦げたりしたら減点になるわ。この中で料理の腕前が一番上手なサクラちゃんだから任せられるというわけよ」
何だか、すごく嫌な予感がしてきたんですけど?
「【憤り怒る狂戦士の血戦】って・・・?」
「制限時間10分以内に、フィールドの中に空いている穴の中から飛び出してくる【ビーストノーム】という魔物をハンマーでたたいて、より多くの魔物を叩いてポイントを稼いだ方が勝ちとなるわ。ああ、フィールド内では相手の邪魔をすることも出来るけど、使用できる武器はハンマーと、ビーストノームを倒して手に入れたアイテムだけよ」
射的。
鉄板焼き。
モグラ叩き・・・。
こんなもんで、マジで俺たちの傭兵団の存続をかけて戦うんかいっ!?
斗真も腹をくくり、光を連れ戻すために戦う覚悟を決めました。
レベッカたちも応援すると言って盛り上がるさなか、発表された種目に桜はアゼンボーゼン。
一見ただの遊びのようにしか見えませんが、傭兵団の存続をかけた戦いにふさわしいバトルシーンが書けるように頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします!




