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第二話「Far past~嵐の前触れ~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!

新作が書きあがりましたので、どうぞよろしくお願いいたします!

 【斗真視点】


 『・・・全くお前たちは、いつもいつも言っているけど、毎日のようにギャンギャン騒いで、掴みあいや取っ組み合いをするのはどうかと思うぞ?』


 『『コイツが悪いんだよ』』


 『だから、どうしていつも一人ですぐに突っ走るんだよっ!!いくら何でもたった一人で、6年生の集団に挑んでいくなんて無茶にもほどがあるだろうが!』


 『うるせーな!!小学6年生のくせに、下級生を泣かせてカツアゲなんかしているのを見て見ぬふりなんで出来るか!!』

 

 『だから、殴り込みをするときには、まず僕たちに相談ぐらいしてからにしろって言ってるの!!』


 『・・・はあ、全くお前たちと来たら』


 僕と光はこんな感じで、毎日のように喧嘩に明け暮れていた。

 光は正義感が強すぎるというか、頭に血が上りやすいため、弱い者いじめをしてるところを見ると、たった一人で大勢に挑んでいくものだから、僕がしょっちゅう光が無茶をしない様に加勢していた。

 

 終わったら光に無茶はするなと注意するのだが、光は聞き入れず、結局は怒鳴り合いになって、そしてそのままつかみ合いの取っ組み合いに発展することも珍しくはなかった。


 『・・・もうその辺にしておけ。ほれ、これを3つに分けて仲直りするぞ』

 

 そういって三色パンを買ってきて、僕たちをなだめてくれるのが、つばさだった。

 学校の近くの駄菓子屋さんで売っている、おばあちゃんの手作りの三色パンは僕たちの大好物だった。

 それを3人で分けて食べていると、いつの間にか何で喧嘩をしていたのか、忘れてしまっていた。


 『3人で分けるぞ。ほれ、これで3人分だ』


 たった一つの三色パン。

 

 チョコレート、カスタード、イチゴジャムのパンを三等分に分けて、一人三個ずつ分けて食べた。

 

 そして、僕と光はお互いに腫れあがった顔を見合って、笑いながら言うんだ。


 『・・・ワリ、斗真』


 『こっちこそ、ごめんね。光』


 『・・・フッ、単純な奴らだ』


 それが僕にとっては、まだ両親が僕を捨てて海外に不倫相手と逃げたことも、世間の冷たい風も、何も知らずに、笑って泣いて怒って、夕暮れまで3人で泥まみれになって遊びまわっていた、楽しい思い出だった。


 ずっとこんな日が続くと思っていた。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 「・・・小学生の時は、まだ光やつばさとも仲が良くってさ。時々、光とは喧嘩をすることもあったけど、アイツには一回も勝てなかったなぁ」


 「トーマが勝てないほど強いのか、ヒカルって?」


 「・・・うん、僕に喧嘩や空手を教えてくれたのは光だったからね」


 この時から光は、通っていた空手教室の門下生の中でも抜きん出て強くて、わずか3年ほどで黒帯になったぐらいだ。空手の全国大会や世界大会でも優勝を何度も果たして、今では【超高校級の空手家】と呼ばれて、世間からも注目されるようになっていた。


 「でもすごく熱くなりやすくてさ、考えるよりも先に身体が動いちゃうバカなんだよ。女だからって理由でバカにされるとすぐに相手を殴り飛ばしちゃうし、曲がったことが大嫌いで、一人で集団にも突っ込んで行っちゃうところがあってね。怖いもの知らずにも程があるよ。僕とつばさはしょっちゅう光に振り回されていたんだ」


 「熱血バカなんだな。トーマにそっくりだ」


 「・・・大アネキだけには言われたくないよ」


 それで光が無茶をしないように説得をしたり、説教じみたことを言うと、光が反発して僕と言い争いになり、そのままルール無用の掴みあい、殴り合いに発展するということがしばしばあった。


 あの頃は、光のことを女の子として意識していなかったからなぁ。

 髪も短いし、言葉遣いも男の子みたいだったし、僕よりも力が強かったからな。


 「喧嘩しても、三色パンとか、タイヤキとか、3つに分けて3人で食べて気が付いたら仲直りしていた。今でも、アイツは僕にとってはものすごく大切な親友なんだ」


 それなのに、今はもうあの時には二度と戻れないような気がするほどに、険悪な関係になってしまった。どうしてこんなことになってしまったのか、あの頃に戻ることが出来たらと何度思ったことだろう。


 でも、もうそうやって逃げていても、答えなんてきっと見つからないままだ。


 「・・・でも、もう今度ばかりは仲直りは出来ないのかな。本気でやり合うしかないのかな」


 「・・・トーマ」


 もうあの時には戻れない。

 光が徹底的に僕のことを憎み、僕のことを倒そうとしているなら、僕も本気で戦うしかない。


 僕だけが犠牲になるのならそれでもかまわないけど、大アネキや他のみんなにももし危害を与えると言うのなら話は別だ。それなら、いっそのこと、自分の手で光と決着を着けて、彼女を封印するしかない。


 「・・・トーマ、めっ!」


 「ぶふっ!?」


 僕のほっぺたを、大アネキが両手でぶにっと挟み込んだ。

 ちょ、いきなり何をするのさ!?僕は真剣に話をしているのに!


 「お前、また自分一人で何でもかんでも解決しようとしていただろうが。すぐに視界が狭くなるのは、お前の悪いクセだぞ?」


 「・・・へっ?」


 「どうせ、自分一人だけが恨まれているならヒカルに倒されてもいいなんて考えていたんだろうが。お前は、もうオレたち【彩虹の戦乙女】の大切な仲間なんだから、今更一人でやろうなんて水くさいじゃん」


 「・・・で、でも、僕、一体どうしたらいいのか」


 「そう言う時こそ”彼女”のオレたちに頼れっての!!お前がやられたらオレたちが黙っているわけないじゃん。そういうことも、ちゃんと覚えて置けっての。バカだな」


 大アネキは僕の頭をポンポンと叩いて、優しく微笑んだ。


 「・・・そういう時はもうお互いに言いたいことを言い合って、とことん気が済むまでやり合ったらいいんだよ。トーマも、ヒカルも、いつまでもいがみ合っているぐらいなら、一度面と向かって思い切り喧嘩すればいいじゃん」


 「へっ!?い、いや、どうして・・・」


 「自分が犠牲になってもいいなんていうのは思いやりじゃねえ、ただの自己満足さ。トーマもヒカルも、面と向かって自分が抱えている思いをぶつけあってこなかったから、どんどん話がこじれていくんじゃないか?だったら、一度ぐらい思い切りぶつかり合ってみるのもいいじゃん。怒鳴り合って、ドツきあって、二人ともボロボロになるまでやり合ってみろよ」


 脳筋にもほどがあるような考えだけど、大アネキの言葉に、僕は胸をえぐられたような気がした。


 光とここまでこじれてしまったのは、なんだかんだ言って、光と向き合うことから逃げてしまったからだ。「光のために」って思ってきたけど、それはただの自己満足でしかなかったのだろうか。光が僕に伝えたいことがたとえ憎しみだとしても、憎まれることを心のどこかで恐れて、光を避けるようになってしまったから、ずっと過去を引きずったままではないのか。


 そうか、今のまま、ずっとウジウジ考えていたって結局は何も変わらないんだ。

 それなら、勇気を振り絞って、自分の思いをちゃんと伝えなくちゃいけない。


 例え、それが無駄だったとしても。

 例え、光をこの手で封印するしか、他に方法がなかったとしても。

 例え、もう光が、僕の知っている昔の光ではなかったのだとしても。


 「・・・ありがとう。気合が入ったよ。もう後先なんて考えるのはやめた」


 「・・・ヒカルとやるんだな」


 「うん、僕は・・・光をブッ飛ばす。アイツの憎しみや思いを全て受け止めたうえで、僕の思いも全てアイツに一つ残らずぶつけてみる!」


 そう、これは3年前からずっと引きずってきた過去と決着を着けるための・・・自分自身に対するリベンジだ。


 あの時のように笑いあえる仲に戻れなくても、今、3年前の過去の全てに決着を着ける。


 誓うように突き出した拳は、力強く握られていた。


 また一つ、前に進むための道しるべになっているように僕は思った。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 【三人称視点】


 「あの~、すみません。みなさん、少々よろしいでしょうか?」


 説教から解放されて、テントの休憩室でへばっていたアイリスたちに、アレクシアが神妙な顔つきで話しかけてきた。


 「・・・何だ?私たちは説教地獄から解放されたばかりで、お前の八つ当たりに付き合えるほどの体力はないぞ」


 「・・・・・・悪霊退散」


 「人のことを何だと思ってやがるのですか。あの、この薬なんですが、誰が服用しているか教えていただけませんか?」


 アレクシアが差し出したのは、カプセルの錠剤だった。

 

 「知らんな。これがどうかしたのか」


 「・・・アルコバレーノの車内に落ちていたのですが、この薬は、ちょっとヤバい薬なんですの。かなりの量を服用されているようですので、医者としてこの薬がどういうものなのか、その人の身体がどのようなことになっているのか、診察をしなければいけないと思いましてね」


 「・・・あ、それ、あの”ヒカル”とかいう姉ちゃんが飲んどったヤツやんけ」


 オリヴィアが思い出したらしく、その薬が光のものであることを伝える。


 「それ、どういう薬なのよ?」


 「・・・精神強化薬、ですわね。この薬を飲めば、身体能力や五感、神経系が通常の数十倍、数百倍にまで強化されるようになり、病気や怪我を負っている状態でも、健康的な身体と同じように動けることが出来ます。ですが、この薬は・・・副作用が起きると、命の危険に及ぶ可能性が高く、飲み過ぎると精神が破壊されて、廃人になってしまう恐れがあるのです」


 あまりにも危険すぎるため、調合の方法などを記した医学書などは全て処分されて、薬は全世界の医療ギルドが回収し、使用を禁止していた【劇薬】に認定されている薬物だという。


 「相棒、ヒカルっていう子はこれを本当に飲んでいたのかい?」

 

 「ああ、紅茶のミルク代わりにしとったし、一日に同じ薬を何度か飲んどったわ」


 「何ですって!?まずいですわね、そんなに乱用していたらいつ副作用を起こしてもおかしくはありませんわ!ヒカルさんはどこにいるのですか?」


 「それがな、ここに着く前に何度か休憩しとったやろ?気が付いたときには、もう姿はどこにもなかったわ。多分、途中で下りたと思うんやけど」


 「そういえば、あの子”バナーヌ遺跡”に向かうとか、言っていたような気がするわ。もしかしたら、そこにいったのかな?」


 「それはないと思うで。今、レオノール大陸に向かう船は全部運航停止になっとるからな」


 その時だった。


 メイド服姿のユキが、お茶を乗せたお盆を運んで部屋に入ってきた。


 -失礼する。お前たち、ツバサはどこにいるか、知らないか?-


 「ツバサがどうかしたの?」


 ー部屋に行ったら、いなかった。造船所やテントを探し回ったのだが、どこにもいないのだ。-


 「さっき、ツバサさんになら、テラスで会いましたわよ~?そういえば、この薬を見せた時、どんな薬なのか聞かれたから教えてあげたら、ツバサさんの顔色が真っ青になっていましたわね」


 「・・・ツバサを探したほうがいいわね」


 「・・・ねえ、何だかボク、ものすごく嫌な予感がするんだ。よく分からないけど、胸騒ぎがするの」


 ヴィルヘルミーナのこの時の胸騒ぎは、この数日後に最悪な形で的中することになる。


 



 


 斗真が”いなくなる”まで、あと7日。

斗真に迫る、最大最悪の絶望の時。

第10章では、斗真や仲間たちにとっても大きな転機となる重要な出来事が起こります。

そして、斗真に待ち受ける”最悪の未来”とは?


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

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