第二十七話「Swearing revenge~くじけない正義~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!
今回で第九章は完結となります!
どうぞよろしくお願いいたします!
【斗真視点】
「・・・いや、お前さ、何を言いたいのか、全然分からねえよ?」
松本に対して、僕は頭の中が不思議なぐらいにキーンと静かに冷え切っているような状態で、返事をした。
驚いたね、怒りで頭の中がこんなにも冷えることがあるんだ。
結局コイツがやりたいことは、ただの自分の欲求を満たしたいがためのワガママでしかない。
英雄になりたい?世界を苦しみから解放するために、世界を滅ぼしたい?
僕のことを助けたいから、鳳や雨野、雁野、桜を利用して僕を追放して、絶望させようとした?
本当に、コイツが一体何をやりたいのか、全然分からねえよ。
世界が滅びたがっている?
自分はそれを手伝うことによって、英雄になれると思っているだって?
「・・・お前がトチ狂うのは勝手だけど、俺や仲間、関係ない人たちを巻き込むことだけは許さねえ」
(・・・斗真が完全にブチ切れてる・・・!)
「何が英雄だよ。何が救済だよ。俺みたいに、裁縫と喧嘩しか取り柄のない、どこにでもいるような平凡な悪ガキに散々計画を邪魔されまくっている間抜けなヤツに何が出来るって言うんだ?あまり、人のことを笑わせるんじゃねえよ、お前みたいなヤツは、絶対に”英雄”になれることはない」
ああ、もうコイツのことが哀れにさえ思えてくるよ。
他人を言葉巧みに操って、自分の手は汚すことがないどうしようもない臆病者。
自分自身のことを英雄と謳っておきながら、一人じゃ何もできない小心者。
自分の感情と欲望を抑えることが出来ない、わがままを言いたい放題言っている子供。
『・・・私が英雄になれない、ですって?』
「お前、何もわかってないよ。英雄って言うのはね、自分一人だけでなれるものじゃねえんだよ。自分さえ良ければ他はどうなってもいいと言い切るヤツは、誰からも英雄なんて認められることはない」
どうすれば英雄になれるかなんて、僕には正直分からない。
そもそも、自分一人だけでなれるようなものではないということは間違いないだろう。
だって、英雄というのは自分で名乗るものではなく、周りから信頼され、認められることによって初めて英雄になれるものじゃないか。
「英雄になろうとしているヤツには、英雄になる資格さえないんだよ」
自分一人だけが良ければそれでいいと思っているヤツを誰が尊敬するのだろうか。
他人の夢や命、大事なものを奪ってでも自分の欲望を満たそうとするヤツを誰が英雄と認めるのだろう。
「お前、英雄になれる器じゃねえよ。顔を洗って出直してこい」
『・・・言ってくれるね。それなら、貴方は英雄にふさわしいとでも言いたいのかしら?』
「さあね。そもそも、英雄なんて、僕、興味がないから知らねえよ」
僕が正直に言うと、松本が言葉を失って黙り込んだ。
通話口の向こうで、唖然としている松本の様子が目に浮かぶようで、少しだけおかしかった。
『・・・英雄に・・・興味がないですって?それじゃ、貴方は何のために、戦っているのかしら?』
「・・・なんのために戦うかなんて、決まってる。お前の思い通りになるのが、絶対に嫌なだけ。こちとら、右を向けって言われたら左に向く不良なんだよ。お前の言うことなんか、絶対に聞くもんか」
カッコつけるつもりなんてない。
これは、僕の人生を、僕にとって大切な仲間や家族を奪われたくないから戦うと言う悪あがきだ。迷って、悩んで、失って、たどり着いたのが「悪あがき」という答え。
何度殴られても、諦めない。
何度倒れても、また起き上がって挑んでいく。
自分が勝つまで、絶対に諦めない。
それが僕が見つけた僕だけの正義「くじけない正義」だ。
ボロボロになっても構わない。
大切なものを、絶対に守り抜いてみせる。
誰かに認めてもらえなくてもいい。
これは、僕が自分で決めた答えなんだからな。
「・・・悪あがきねぇ、まあ、結局はそうなるよな」
「桜?」
「・・・千鶴、1か月間だけだったけど、お前はあたしが生まれて初めて本気で好きになった女性だった。お前にとってはお遊びだったのかもしれないけど、俺は・・・お前と付き合うかとが出来て、本当にうれしかった。ありがとう」
松本からの返事はない。
そして、桜の声のトーンが一気に下がって冷たくなった。
「でも、俺の仲間を利用して、魔人に改造したお前のことは絶対に許せない。極道としてのけじめはしっかりとつけさせてもらうぜ。今日限りで、お前は俺の”敵”だ」
松本に対する決別宣言。
桜の瞳には、強い信念と決意の炎が宿っていた。
『・・・駒にする価値もなかったみたいね。女性を見る目がないから、使い勝手がよさそうだと思っていたのに。貴方も和田さんたちと同じ、つまらないクズだったわね』
「・・・ああ、家族を守ることが出来なかった、どうしようもねえ間抜けだ。でもな、間抜けには間抜けなりの意地と信念があるんだよ。俺も徹底的に悪あがきをさせてもらうぜ。慰謝料代わりに、お前の計画も野望も、全部潰してやるよ」
「そういうこと。僕も桜も、悪あがきだけなら誰にも負けない自信があるんだよ」
その時だった。
「おいおい、お前たちだけで盛り上がるなよ。オレたちだっているんだぜ?」
「全く、私たちも混ぜてくれないと、お姉ちゃんは泣いてしまうぞ?」
「・・・・・・仲間外れは良くない」
後ろを振り返ると、そこには・・・。
下着姿の大アネキ、アイリス、ニナ、ビビ姉、オリヴィアさん、アレクシア、そして・・・なぜかヴィルヘルミーナさんまで下着姿のままで立っていた。
「はあっ!?ちょ、どうして、下着姿で外を出歩いているんだよっ!?」
「・・・陛下の説教に耐えきれなくて、団長がプッツンしたのよ。とりあえず、着ていた服を脱いで走れば、逃げ足が早くなるってアレクシアが言い出したから、服を脱ぎ捨てながら全力疾走して、そのまま宛てもなく町中を逃げ回っていたら、貴方たちのことを見つけたってわけ」
アレクシア、そんな大嘘をつくんじゃない。そのせいで、さらにヤバイことになってますがな。
「・・・ボクは関係ないのに、ビビちゃんに無理矢理脱がされて、仕方なく一緒に逃げてきたってわけさ」
「・・・・・・死なばもろとも。コイツだけが無事だなんて、私は許さない。みんな仲良く道連れだ」
「ビビ姉、アンタは鬼か!?」
正真正銘のバカだ、アンタたちは。
ヴィルヘルミーナさんも無理矢理巻き込まれるなんて、本当についてないな。まあ、彼女の場合はしょっちゅう服を脱いで桜に迫ったり、誘惑したりしているから、さほど珍しくない姿なんだけど。
「まあ、考えることは一緒やったちゅうヤツやな。アイキャッチもせんと、皆が同時に服を脱いで、トンズラしよったからな」
「昔からよくこうやって、陛下のお説教から逃走をしていましたからね」
300年間、全く成長をしていないと言うことだけは分かった。
「だからって下着姿で町中を走り回るな、この痴女どもが!!」
「だって仕方がねえだろ!!正座して2時間も説教された上にお仕置きされるなんて、もう我慢の限界だってえの!!とりあえず、その”すまほ”貸して!」
僕からスマホをひったくると、大アネキは通話口に向かってけんか腰でまくし立てる。
「おい、このヘラヘラ女!!よくも散々好き勝手やって、トーマやサクラにちょっかいをかけてくれやがったな!!」
「ヘラヘラではなくて”メンヘラ”だ、バカ」
「似たようなもんだろ!」
全然似てません。
「・・・お前はオレたちの家族を傷つけた。これはオレたち”彩虹の戦乙女”に対して、喧嘩を売ったと言うことだ。オレたちはな、仲間の一人がやられたら、全力でそいつも、そいつのいる戦力の全てもぶっ潰すのがモットーだ」
大アネキは、空気がビリビリと震えるような、憤怒を孕んだ声で勇ましく言った。
「お前は絶対にオレたちがぶっ潰す!!首を洗って待ってやがれ!!」
これだ。
僕を絶望から引き上げてくれたのは、この人の誰かのために本気で怒ることが出来る”憤怒”だ。
僕の心をがっちりと掴んで離さない、心の奥から燃え上がるような熱い怒り。
あの時から、僕はこの人にどこまでもついていこうと決めたんだ。
「・・・顔を洗って、とは今度は言わなかったな。及第点だ」
アイリスのどんな相手に対しても、自分らしさを見失わない”傲慢”も。
「私たちに喧嘩を売ったことが、どんなことになるのか、きっちりと教えてあげるわ」
ニナのどんなに強大な相手が敵であろうと、執念深く諦めない”嫉妬”も。
「・・・・・・面倒くさいけど、こうなったらやるしかない」
ビビ姉の程よくリラックスすることで、自分自身を見失わないための”怠惰”も。
「まあ、ウチら勝てる喧嘩はしない主義やさかいな。やるからにゃ、相手がデカけりゃデカいほど、燃えるっちゅうもんや」
オリヴィアさんの勝利を貪欲なまでに追い求めていく”強欲”も。
「・・・たっぷりと後悔させて差し上げますわ。私たちにここまで喧嘩を売ってくるようなおバカさんには、お薬が必要みたいですからねぇ」
アレクシアの時には自制心を外して、心が思うままに自由に戦ってもいいという”暴食”に似たような思いも。
「フフフッ、サクラとトーマ君が惚れ直してしまうような働きぶりを見せてあげないといけないね」
ヴィルヘルミーナさんの、仲間を心から大切に思いやり、愛し合う気持ちを忘れてはいけないという”色欲”も。
全ての大罪が、僕の弱り切っていた心を奮い立たせてくれる。
何度倒れそうになっても、僕が自分自身で立ち上がらせてくれるように、力をくれる。
「・・・松本、お前がどんなことを仕掛けてきても・・・俺たちは”絶対に負けねェよ”」
「・・・負ける気がしねえな、確かに」
僕も桜も、気づいたらお互いに顔を見合って・・・笑っていた。
唇の端を釣り上げて、不安や脅えが吹き飛ぶような獰猛な笑みを浮かべている。
『・・・もういいわ。君たちには、いずれ私の救済が必要になる時がきっとくると思うから。その時を楽しみにしているといいよ』
そう言って、松本が電話を切った。
「さてと・・・どうすっべ、これから?」
「え、考えもなしであそこまで言いきったの!?」
「そう簡単に思い付くわけねーだろ!」
あ、呆れてものが言えん。まさか、無策であそこまで自信満々に宣戦布告するとか、アンタある意味大物だな!?
「そもそも、そんなことを期待する方がバカだろう。ああ、トーマはバカでも可愛いぞ?」
「さりげに僕をバカにするな!」
とりあえずこれから何をするか、僕にはまず最初にやらなくてはいけないことが思いついた。
「この近くに、下着姿で町中をストリーキングしている痴女が七人いるぞー!探せー!」
「お前らいい度胸だなぁぁぁ!!今日という今日は絶対に許さねぇ!!ロケットランチャーで灰塵に還してやらぁぁぁ!!」
今すぐここから逃げ出して、安全な場所に隠れてほとぼりが冷めるまで大人しくしていることだ。
「全員、逃げろぉぉぉ!!」
ああ、シリアスな空気が本当に長続きしない。
でも何故だろう。この人たちが仲間だからこそ、いつでも自分を見失わずに、大切なものを守りたいという願いを叶えるためにまっすぐでいられる。
この世界に来て、この人たちと出会えて、本当によかった。
その後、斗真たちは3時間もの間、衛兵たちやロケットランチャーを撃ちまくるベアトリクスとの地獄の鬼ごっこ&かくれんぼが続いたそうな。
そして、結局全員捕まり、ヴィルヘルミーナも給料三割カット&斗真と桜は一ヶ月間メイド服かミニスカチャイナドレスで勤務をする羽目になったとさ。
次回から第十章に入ります!
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!




