表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
222/300

第二十六話「英雄になるために~徹底的な正義~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!

新作が書きあがりましたので、投稿いたします!

今回は松本千鶴視点の話になります。


 【松本千鶴視点】


 「・・・鳳桐人くんですね?私は3組の松本千鶴と言います」


 「へっ?俺に何か用?(うわ、同い年とは思えねえぐれえ、胸デケーな・・・)」


 鳳くんと初めて出会ったのは、中学一年生の時だった。

 当時の彼はどこにでもいる普通の中学生で、髪を染めて不良っぽい恰好をしていたけど、派手なのは見た目だけで本当は少し臆病で自分に自信が持てない小心者だった。


 「・・・梶くん、目の上のたん瘤ですよね。腕っぷしも強いし、クラスメートからも一目置かれているけど、ちょっと調子に乗っていますよね」


 「・・・まあ、それは仕方がねえよ。俺も梶くんみたいに強くなりたいけど、腕っぷしだって強くねえし、度胸だって・・・ねえし」


 「大丈夫ですよ。鳳くんなら梶くんに追いつくどころか、梶くんを追い越して、もっと大きな存在になれる。私が・・・少しだけ、お手伝いをしてあげますよ」


 「・・・・・・!」


 私の誘いに、鳳くんはあっさりと乗ってくれた。


 それから、私は少しだけ彼にアドバイスをしてあげた。その結果、彼は表向きはみんなのムードメーカーでサッカー部のキャプテンにまで上り詰めて、学校中の生徒や教師から憧れの存在として注目を浴びるようになった。その裏では、自分よりもサッカーが上手い先輩や部員をバレない様に闇討ちしたり、クラスで一番美人で派手な女子をあらゆる手段を用いて脅して、無理矢理奪い取らせた。


 これで、まず一つの「駒」が出来た。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 「辛いですよね。貴方は本気で梶くんを思い慕っているのに、こんなにも無碍にされたら、許せないですよね」


 「・・・梶・・・なぜ、俺の愛を受け入れてくれないのだ!?上級国民であるこの俺の筋肉と愛をどうして受け入れてくれない!?」


 雨野くんと出会ったのは中学二年生の時だった。

 彼は毎日のように梶くんに告白をしては、殴られ、蹴られ、ボコボコにされていた。梶くんに対して歪んだ愛情、自分は他の誰よりも優れていると信じて疑わない傲慢な性格、彼をそそのかして、操り人形に仕立て上げるのは簡単だった。


 鳳くんといい、雨野くんといい、どいつもこいつもバカばかり。

 やはり、私が【徹底的な正義】をもって、彼らのような愚か者たちを世界ごと救済する以外、この世界に未来はない。自分勝手で、わがままで、愚かな人間たちなどこの世には存在していてはいけない、地球を食い荒らす害虫でしかないのだから。


 「私が梶くんを貴方のものに出来るように、少しだけお手伝いをして差し上げますよ」


 「・・・フンッ、女の手を借りるなど不本意だが、今回だけは貴様の手を借りてやろう。梶を手に入れるためなら、俺は手段など選ばぬ!」


 こうしてまた一つ「駒」が出来た。


 その結果、彼は私のアドバイスに従って、不良集団に大金を積んで梶くんを襲わせるように仕向けた。まあ、まさか雇った不良集団の一つがヤクザと付き合いがあって、梶くんの親友を殺してしまったのは、正直想定外の事態だったけど、まあ、私が英雄になるためならこのぐらいの犠牲は仕方がないことだ。


 雨野くんがその後、梶くんにこっぴどく振られたショックで頭がおかしくなり、梶くんによく似ている黒髪ショートヘアーの女の子ばかりを狙う殺人鬼に変わり果ててしまったけど、それもどうでもいいことだ。雨野くんが勝手に壊れて、落ちるところまで落ちていったのだから。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 『・・・今更、何の用だ。桜にまた何か仕掛けてくるつもりなら、マジで殺すぞ』


 ふふっ、梶くん本気で怒っているね。

 貴方がここまで本気で誰かのために熱くなれる人間だって言うことは知っていたけど、そう言うところ、嫌いじゃないよ。


 「・・・桜くんなんて、もうどうでもいいよ。雁野さんを倒したみたいだね。これで残っている勇者は私と桜くんだけ。それで、次に狙っているのは私かなって思って、気になったから電話してみたの。私、梶くんの連絡先知らないし」


 『・・・別に俺はお前と話すことなんかない・・・と言いたいところだけど、雁野から聞いたんだけどさ、今度の追放の計画、お前が考えたんだって?』


 ふうん、雁野さんそこまで話しちゃったんだ。

 まあ、どうでもいいけどさ。


 「・・・うん、そうだよ。私が梶くんを救済してあげたかったからね」


 『・・・救済?』


 いきなりそんなことを言われても、梶くんにはピンとこないかな?


 『桜、救済って何?』


 『・・・救済の意味が分からなかったのかよ。お前のことを救いたいってことだよ、バカ』


 『仕方ねえだろ、国語と英語はどうしてもわからないんだから!』


 『国語じゃない。高校では【現代国語】と【古典】に分かれているよ、バーカ』


 『・・・そうだったっけ?』


 『まずそこからかよ!?よくそれで進級が出来たな!?マジでバカだろ!?』


 『バカって言うな!泣くぞ!?』


 私を置いて、二人で漫才をするのはやめてほしいな。

 

 ああ、そういえば梶くん理系の成績は学年トップだけど、文系の成績は最下位から数えた方がいいほど、成績の偏りが極端だったっけ。それに現代国語と古典と英語の授業中はいつも爆睡していたし。


 『・・・意味が分からないんですけど。僕を救いたいから、僕を追放したり、とことん追い詰めてきたりするとか、言っていることとやっていることがメチャクチャじゃないか』


 「・・・君は分からなくてもいいんじゃないかな。私の正義は誰にも理解なんてしてもらえない。だって、私は”英雄”になるから。凡人には英雄の考えている正義も信念も、理解できないと思っているから」


 そう、私は英雄になりたい。


 この世界は苦しみと悲しみ、憎しみと怒りに満ちている。

 私はそんな汚れ切っている世界を滅ぼすことで、この世界を苦しみから解放してあげたい。

 一時しのぎの救済じゃダメなんだ。いくら目の前の人を救っても、焼け石に水でしかない。


 「この世界も、あっちの世界も、結局は滅びたがっているんだよ。だから、争いがなくなることがない。悲しいけど、世界は滅ぶべきなんだ。私はそのお手伝いをするだけだよ」


 『・・・狂ってやがる』


 「褒め言葉として受け取っておくよ。そして、貴方のことも救いたい。貴方の周りには貴方を苦しめるものしかいない。理不尽な悪意、親友の裏切り、貴方が人知れずどれだけ傷つき、どれだけ苦しんできたか、私には分かっているつもり。貴方だって、本当はもう全部終わりにしたいんでしょう?貴方自身も、貴方を寄ってたかって傷つけてくる世界も、何もかも」


 初めて、貴方と会った時からずっと貴方のことを見てきたから知っているんだよ。


 私がいじめっ子からいじめられている時、自分たちよりも身体が大きい上級生に果敢に挑んでいき、私のことを助けてくれた時のこと、今でも昨日のことのように覚えているんだ。小学2年生なのに、上級生を5人も叩きのめして、彼はこう言った。


 『今度、俺たちの目に映るところで、上級生のくせに下級生の女の子を数人がかりでいじめるなんてダサいことをやってみろ?お前ら全員マジでぶっ潰すからなっ!!!』


 その姿は、まるでアニメでしか見たことがない”ヒーロー”のようだった。

 その時から、私の心は貴方にくぎ付けになっていた。


 でも、人前ではいつも太陽のようにまぶしく笑って、明るく、暖かい優しさで他人を包み込んでくれる貴方が、本当はずっと孤独と戦っていたことを私は知っているよ。


 両親に捨てられて、小学生の時から、両親からの罪滅ぼし程度の仕送り金を受け取って、一人で生活をしていたことも。


 見た目が女の子のように見えることから、クラスメートからはそのことで弄られたり、大の男たちに襲われそうになっていたことも。まあ、その連中は全員返り討ちにしていたみたいだけど。


 貴方が懸命に生きようとしているのに、それを世界は理不尽な悪意で貴方を苦しめ続けている。


 私が救ってあげなくちゃいけないと思った。

 貴方がこの先、生きていてもきっといいことなんてない。

 もっと辛くて苦しい思いを味わって、全てに絶望して、一人寂しく死んでいく未来しか見えない。


 だから、私は貴方にあえて絶望を味合わせることにした。


 貴方が一握りの希望に縋り付いて、必死で生きていく姿が哀れで見ていられないから。


 仲間なんて、いつか平気で貴方を裏切るよ。

 恋人なんて、いつは平気で貴方のことを捨てるよ。

 だって人間なんて、結局は自分一人だけが可愛いんだから。


 貴方が自分から希望を投げ捨てて、絶望に堕ちていこうとした時、私が手を差し伸べるの。


 「私が、貴方を楽にしてあげられる”最後の希望”になりたい」


 そのためなら、世界を徹底的に滅ぼさないといけないよね?

 やるからには徹底的に、それが英雄のやるべきことだよね?


 だから、クラスメートを魔人に強化改造することも、彼らを手駒として利用することも、魔神を復活させて世界を恐怖のどん底に叩き落すことも、私は決して迷わない。


 「人間や魔物には生きる場所なんて与えられるべきじゃなかった。苦しみや悲しみ、終わりのない争いを生み出すために存在するのなら、生かしておくべきじゃない」


 向こうの世界とこっちの世界が繋がったのは私でも予想がつかない、偶然の出来事だった。

 でも、これは私にとっても好都合だ。

 元々、あっちの世界では将来は大勢の人間を指導して、世界を破滅に導くような指導者になりたかったから、やりたいことが前倒しになっただけのことだ。


 「だから、私はこの世界とあっちの世界をぶつけ合わせて、二つの世界を消滅させる。そして、梶くんを二度と這い上がれない絶望に叩き落して、私が貴方の命を奪うという形で救済する」


 これが私が描いた完璧なまでの救済の計画だ。


 しばらくの間、沈黙が続いている。

 私の話を聞いて、打ちひしがれているのかしら?




 『・・・いや、お前さ、何を言いたいのか、全然分からねえよ?』




 しかし、返ってきたのは呆れたような言葉だった。


千鶴の目的は「世界が滅びたがっているから世界を滅ぼすことで、英雄になりたい」と「昔いじめっ子から助けてくれた彼を苦しみから解放したいから、恩返しとして彼に絶望を与えて、彼を殺すことで苦しみから解放してあげたい」というもの。うん、人間の心が欠落しているサイコパスをイメージして書いてみましたが、いかがでしたか?


次回は第九章の最終話となります。

千鶴の「徹底的な正義」に対抗する、斗真の答えとは?


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ