第二十五話「After a week~バカたちに下される裁き~」
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【三人称視点】
「・・・それで、何か言い訳はあるか?私だって鬼ではない。せめて死ぬ前にお前らの遺言ぐらいは、聞いてやろう」
「待ってくれ姐さん、鬼じゃないって言うなら、せめてオレたちの言い分を聞いて情状酌量の余地ぐらいくれよ」
「そんなモンがお前らにあるか。私が下す判決は死刑一択、お前ら全員眉間に鉛玉をブチ込んで、はく製にしてイロモノ博物館に寄贈してやらぁ」
「・・・このバカの言い分はともかく、その言い方ではこれから私たちが話すことは全て言い訳のように思われているようですが?」
「違うというのかしら?」
アルコバレーノの整備や、船づくりに励んでいる人間や魔物たちは、作業場のど真ん中で一列に並び、正座をして叱られているレベッカたちと、玉座代わりの皮張りのソファーに座り込んで、怒り心頭のベアトリクスが説教をしているという滅多に見ることが出来ない奇妙な光景を目の当たりにしていた。見た目だけは見目麗しい美少女&美女であるレベッカたちの頭には不釣り合いに思えるほどの、見事なまでに大きなタンコブが出来ていた。
「・・・トーマちゃんを誘い出すために、どうしてアイリスのこの世のものとは思えないような悪魔の歌と、ニナのこの世のものとは思えないような暗黒物質を使おうなんて考え付いたのかしら?そのうえ、トーマちゃんに自分たちの居場所を知らせるために信号弾を使うはずが、何をどう間違えたらミサイルを全弾発射して、森ごとトーマちゃんを吹っ飛ばしたのかしら?」
そう、彼女たちはあの後・・・見事にやらかしまくった。
雁野と戦って満身創痍で倒れていた斗真は、もはや地獄としか言いようがないほどの壮絶なハプニングの連発に見舞われることになった。
一口食べただけで意識を失い、臨死体験をするほどなまでに不味いニナのクッキーの匂いと、寒気は吐き気、頭痛や意識の混濁を引き起こすほどの凄まじいオンチなアイリスの歌が同時に斗真に襲い掛かったのだ。斗真はその瞬間、体力も魔力も限界であったにもかかわらず、必死でその場から飛び上がって逃げ出した。
完全に混乱状態に陥ってしまっていた斗真は、殺人音波と毒ガスから必死で逃げるために、レベッカたちが斗真を見つけて何度も呼び掛けているにもかかわらず、とにかく逃げまくったのだ。結局、斗真を呼びつけるはずが、逆に斗真を自分たちのところから遠ざける結果となってしまったのだ。
そして、ビビアナが信号弾を発射して、斗真に自分たちの存在を確認させようと提案して、信号弾を発射しようとしたら・・・彼女は間違えて斗真に照準を定めて、アルコバレーノに積んであったミサイル弾を発射するボタンを押してしまったのだ。
その結果、斗真はアルコバレーノの全砲門から発射された大量のミサイル弾に追いかけまわされるわ、木々やありとあらゆるものを吹き飛ばすミサイルの爆発に巻き込まれてしまったのだ。
「何をどう間違えたら、信号弾と、ミサイルを間違えるのかしら!?」
「・・・・・・ビビちゃん、こう見えて結構ドジっ子なのん。きゃるん」
「そうか、お前は一番惨たらしい方法で地獄に送ってやろうかな」
「・・・24歳のいい大人が、こういう時に子供のふりをしてもイタいだけよ」
ミサイル弾が全弾打ち終えた後、キウイ樹海の一部が完全に消し飛んでしまった。
木々が吹き飛ばされて、大地ごとえぐり、吹き飛ばしまくった結果、樹海の一部だけが焦土と化した大地が上空から丸見えになり、ぽっかりと穴が空いているようになってしまったのだ。
「・・・あれだけたくさんのミサイルが爆発したのに、よくトーマは生きていたわよね・・・」
「・・・まあ、髪の毛が爆発アフロヘアーになっとったし、着ていた服がボロボロになって、ほとんど素っ裸の状態になっとったけど、あれだけの爆発に巻き込まれてかすり傷や軽いやけど程度で済むとか、ドラゴンなみに丈夫な身体やな」
普通なら塵一つ残さないまでに消し飛んでもおかしくないほどの爆撃に見舞われたにも関わらず、斗真は・・・ほとんど大した怪我をしていなかったのだ。その頑丈な身体とタフな生命力にはさすがのベアトリクスも絶句するほどであった。
そして、念のために精密検査を受けるために、一時的に魔法病院に入院することになったのだが、1週間の検査入院を受けた今日には、無事退院することになった。
「・・・私から判決を言い渡す!オリヴィア、アイリス、ニナ、ビビアナ、お前たちはトーマちゃんを傷つけた罰として、今月の給料は75%カットの上にアルコバレーノの整備、清掃、造船所の雑用業務をやること!!そして、オリヴィアはトーマちゃんやサクラちゃんの写真集やグッズを全部没収させてもらうわ。儲けたお金も全額徴収すること!そして、1か月間、任務の時以外に、プライベートではトーマちゃんとサクラちゃんとの接見を一切禁止する!!」
「そ、そ、そんな~っ!!せっかく、儲けたのにぃ~・・・!これじゃウチ、大赤字やないか~!」
「・・・あらあらまあまあ」
「そ、そ、そんなぁぁぁっ!?愛する弟と、一緒にお風呂に入ったり、一緒に添い寝をしたり、子作りをしてもいけないということなのかっ!?・・・私の人生の楽しみが・・・人生の全てが・・・!!」
「・・・いや、アンタ、結構メチャクチャなことをやらかそうとしていたのね。少しは自重しなさいよ」
「・・・・・・排卵日を狙って、夜這いを仕掛けるつもりだったのに・・・・・・!」
「・・・アンタはアンタでもっとヤバいことをやらかすつもりだったのね」
既成事実を作ろうとしていたビビアナに対して、ニナは「コイツはマジでヤバい」と思い、表情が引きつった。
「そして、レベッカとアレクシアは給料半額カットの上に、オリヴィアたちの監視の名目で、造船所でタダ働きの刑に処す!!購入したトーマちゃんたちのグッズやエロ本も全部没収!!」
「ウッソだろぉぉぉっ!?オレ、まだトーマのエロ本、読んでねえのに・・・!う゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ん・・・!!」
「・・・これはマジ泣きですわね・・・」
アレクシアを除いた全員がその場に崩れ落ちて、涙を流し、放心状態となり、この世の終わりを目の当たりにしたような顔になっていた。アレクシアはベアトリクスに気づかれないように、顔をうつむいたまま、ニヤリとほくそ笑んだ。
(・・・まあ・・・お預けが長ければ長いほど、燃えてくるってモンだけどな。トーマちゃんは私にとっては人生で最高のメインディッシュだ。心行くまで味わって、骨の髄まで私の虜にさせてやるよ。トーマちゃんは・・・私だけのものだ。誰にも渡さねえよ)
朗らかな笑顔の仮面を捨て去り、獰猛にして凶暴、野性的な本能をむき出しにして、アレクシアは唇の端を釣り上げた。どうやら、全く懲りていないようだった。
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【斗真視点】
「ふわあああ・・・」
一週間ぶりに、娑婆の空気を思い切り吸い込んで、僕は地面に寝ころんだ。
はあ、全く本当にあの時はマジで死ぬかと思ったよ。わずか17年の人生の間で、二回もバ〇ターコールのような集中砲火の絨毯爆撃に見舞われて、ほとんど無傷で済んだのが奇跡って言う感じだ。
今頃、ベリス姉さまが大アネキたちのことをものすごく怒っているんだろうな。
まあ、僕もほとぼりが冷めたら、給料カットは免れないかもしれないけど、僕との接見は何とか許してもらえないか、姉さまに掛け合ってみようかな。ストレスをため込んだら暴発して、何をやらかすか分からないしね。
「しかし、お前本当によく擦り傷や軽いやけど程度で済んだよな。マジでバケモンって感じだぜ」
「桜、それが兄弟分にかける言葉か?身も心もボロボロになっているんだから、追い打ちをかけるのは勘弁してよ・・・。本当に死ぬかと思ったんだから」
「まあまあ、そう言う風に言い返せるだけ、元気になったってことでいいでしょう?」
そういうもんかね。
まあ、桜だって重傷を負っているのに、僕の身の回りの世話や看病をしてくれていたらしいから、感謝しないといけないな。
「・・・それでさ、皆の所に戻る前に、俺に話したいことがあるって何だ?」
「・・・うん、雁野ってどんな奴だったのかなって思ってさ」
「・・・はあ?」
桜が怪訝そうな顔になる。僕も自分でもおかしいと思うようなことを言っているのは分かる。
でも、どうしてもそのことが気になって仕方がなかったんだ。
「・・・雁野を完全に倒した。それなのに、アイツのことを考えるとさ・・・震えが止まらないんだ」
「・・・斗真」
「・・・アイツは・・・たった一人で僕やみんなのことをここまで追い詰めたんだ。たった一人で、あれだけ多くの人間や魔物を手にかけて・・・僕のところまでたどり着いた。今までに戦ってきた敵の中でも、あそこまでやってのけたヤツはいないと思う。アイツには・・・僕ももしかしたら負けるかもしれないって思った・・・」
空を仰いで、手を開き、まぶしい太陽の光を隠す。
瞳を閉じると、最後に消えていったアイツの姿が、最後の笑顔が、鮮明によみがえる。
「・・・雁野美月。アイツは・・・強敵だった・・・」
「・・・そうか・・・」
桜が僕の隣に座って、遠くを見つめながらため息をついた。
「まあ、俺から見たら、雁野なんて頭がイカレた殺人鬼にしか思えねえけどよ。お前がそう思うなら、それでいいんじゃないか」
「・・・あのさ、桜。雁野や、他の勇者たちのことなんだけど、雁野が変なことを言っていたんだ」
僕は雁野が言っていた言葉をゆっくりと思い出しながら、一つずつ、言葉を選びながら話を切り出した。自分でもまだ考えがまとまっていないし、どういう風に話せばいいのか分からない。
ただ、これまでにも何度かおかしいと思っていたことが、雁野から聞かされた話によって、バラバラだったピースが一つのパズルとなって、少しずつ完成していくような気がしていた。
「・・・千鶴が、桐ちゃんや雨野、雁野に、お前を襲うように持ち掛けていただって・・・!?」
「・・・うん、第三王子も松本にそそのかされて、僕を追放しようとしたんだって。証拠もないから、本当に松本がそんなことをやったのかは分からないけど、でも、雁野に松本が僕を倒すために色々と干渉をしていたことだけは間違いないみたい。雁野にフレスベルグの力を与えたのも松本だったから、雁野がデタラメを言っていたとは、どうしても思えなくって・・・」
桜は険しい表情を浮かべて、何かを考え込んでいるようだった。
「・・・松本の目的は・・・この世界を苦しみから解放するために、世界を滅ぼすこと。そして、自分が世界を苦しみから解放する英雄になる事だって言っていた。そして、僕を苦しめて、絶望させて、僕を倒すことで全ての苦しみから解放させるためにやっているんだって言っていた」
「お前を?」
「・・・うん・・・どうして僕を狙ったのか、そこまでは分からない。でも、雁野の言葉がどうしても気になるんだ。もしかしたら、雁野の言葉が今までに起きた事件の全てを解き明かす手掛かりになるのかもしれない」
その時だった。
どこからか、この世界では聞くことがほとんどない電子音が流れていた。
それは桜のスマホの着信音だった。
「・・・なっ!?」
桜が画面を見て、目が大きく見開かれ、表情が固まった。
僕はただ事ではないと思い、スマホの画面を見る。
【松本 千鶴】
松本からの着信だった。
どうしてこのタイミングで、桜のスマホに松本から連絡がかかってきたのだろうか。
心臓の鼓動が激しく高鳴り、血の気が引いて、寒気が身体中を駆け巡る。
桜は震える手で、スマホの受信ボタンを押した。
「・・・もしもし・・・」
『・・・久しぶりだね、桜くん。そこに、梶くんもいるんでしょう?』
「・・・!?」
どうして、僕と桜が一緒にいることを知っているんだ?
辺りを見回してみたけど、どこにも松本の姿は見当たらなかった。
『・・・まさか、花房くんまで封印するなんて、思っていたよりもやるんだね。そして、雁野さんも倒すなんて・・・』
「・・・お前・・・どうして・・・?」
『・・・雁野さんが梶くんに何か話したみたいだから、教えてあげようかなって。知りたいんでしょう?私がどうしてこんな計画を思いついたのか・・・』
その言葉は、計画の全てを裏で仕組んでいたのは・・・自分自身であることを認めるものだった。
斗真、やはりあの後無事では済まなかった模様。
アルコバレーノに搭載されていたミサイル全弾の絨毯爆撃の直撃を喰らった割には、髪の毛が爆発アフロヘアー&服がボロボロになったというドリフの落ちのような結末を迎えましたが、かすり傷と軽いやけど程度で済みました。ドラゴンと同じぐらい頑丈な身体をしています。そしてキウイ樹海の一部が焼失、斗真の許可なくエログッズを売りさばいていたオリヴィアたちにも天罰が下りました。
次回、松本から計画にまつわる話が語られます。
鬱な描写をいくつか入れていこうと思いますので、苦手な方はどうかお気を付け下さい。




