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第二十二話「憎しみの終わりへ②~斗真、覚悟の七変化~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!

新作が書きあがりましたので、投稿いたします!

どうぞよろしくお願いいたします!

 【斗真視点】


 全く・・・随分と勝手なことを言ってくれるもんだね。


 お前がこうして話してくれたおかげで、少しだけ体力を回復させることが出来た。

 僕は両手に力を込めて、大木に背を預けながら、ゆっくりと立ち上がった。


 「・・・ようやく、やる気になってくれたのかしら?」

 「・・・上等だよ。お前とはここで決着をつけてやる」


 体力はもうほとんどない。


 魔力はゼロに近い。


 身体中のあちこちが痛くて、今にもぶっ倒れそう・・・。


 そのうえ、相手はあの雁野ときたもんだ。


 なぜだろう。


 マジで死ぬかもしれないっていう状況なのに、それでも立ち上がって戦おうとするこの状況が・・・。


 「・・・クッ、クックック・・・」


 「・・・何がおかしいのかしら?」


 「・・・いや、この状況があまりにも絶望的過ぎるからさ。絶望通り越して、笑えて来た」


 ガクガクと小刻みに震えている膝を気合で抑え込んで、腰にバックルを巻き付けて、宝箱を取り出した。


 「・・・喧嘩上等だよ。”俺”はお前なんかに殺されたりなんてしねぇよ・・・!!」


 昔の口調に戻り、今まで押さえつけていた荒々しい感情をむき出しにすると、僕は唇の端が吊り上がっていた。死ぬことや傷つくことに対する恐怖をわずかに上回る、心の中で何かが熱く燃え上がっている何かを感じる。


 「・・・その顔が見たかったわ。あの時、たった一人で半グレを100人倒した時の、鬼のように強かった貴方が今でも私の記憶に焼き付いている。あの日から、私はずっと貴方のことをリスペクトしてきた!」


 100人?10人ぐらいしか殴った記憶がないんですけど?まあ、そんな過去のことなんてどうでもいい。


 「そんな貴方を私の手で倒せるなんて、今日ほど最高の日は・・・ないわ!!」


 「・・・抜かせよ。最初で最後の、人生最悪の日にしてやらぁ」


 宝箱をバックルに押し込んで、鍵を回すと雁野を吹き飛ばすように回転しながら、藍色の甲冑が目の前に現れた。そのまま甲冑が僕の身体に飛び込んで、魔法闘衣に展開して装着される。


 『黒翼こくよくのスナイパー!!バズヴ・ナイト!!ドレスアップ!!』


 僕の姿は今までよりも比較的胸が控えめな女の子の身体つきになり、ボンテージのような衣装を身に纏っていた。背中からはカラスをイメージした翼を生やし、手の中にカラスの魔物【バズヴ】をイメージした大型のハンドガンが現れた。


 「はああああああっ!!」


 雁野に照準を定めて引き金を引くと、銃口からまるでマシンガンのように、無数の黒曜石の弾丸が打ち出された。雁野はニタァっと微笑むと、手に持っている長剣に黒い炎を纏い、大きく振り上げる。


 「アハハハハハハッ!!」


 黒い炎の斬撃を浴びた弾丸が空中で動きを停止すると、真っ白に固まってひびが入り、砂のように崩れていく。しかし、僕は反撃のスキを与えないように、さらに打ち出していく。

 

 「無駄よ!私の属性は”死”!この冥界の炎は、あらゆるものを死に至らしめることが出来るわ!」


 「・・・あんまりイキるなよ。弱く見えるぜ?」


 あらゆるものを死なせることが出来る?それがどうした?相手が本気で殺すつもりでやってくる時点で、こっちはどんな攻撃だってまともに食らってやる理由なんてないんだよ。


 「敲金撃石こうきんげんせき!土魔法・烏の魔弾クリスタル・クラッカー!」


 無数の棘がついた黒曜石の銃弾を次々と打ち出すと、銃弾と銃弾がぶつかり合い、まるでビリヤードのように弾きながら不規則な弾道を描いて、雁野に襲い掛かっていく。銃弾をまとめて攻撃しようとしても、銃弾は当たると分裂して、雁野の周りを黒曜石の銃弾が飛び回る。


 「この程度で、私が倒せると思っているのかしら?」


 雁野が全身に黒い炎を纏い、背中から巨大な炎の翼が飛び出した。

 そして、瞳には人間のそれとは思えない禍々しい赤色の光が宿り、彼女の瞳の黒い部分と白い部分が入れ替わっていき、顔や体に黒い紋様が浮かび上がっていく。


 「私をあまり甘く見ないでほしいわね!!」


 剣を振ると、彼女の周りを炎が覆い尽くし、取り囲んでいた弾丸を全て取り込んで焼き尽くしていく。 真っ白な砂と化した弾丸は地面に落ちていき、雁野は再び剣を構え治すと、こっちに向かって飛び掛かってきた。僕は地面に向かって銃弾を撃つと、雁野がものすごい勢いで飛んでくる方向に巨大な水晶の壁を生み出した。


 「だから、この程度では私は止められないわ!!」 

 

 「次はコイツだ!!」


 オレンジ色の宝箱を取り出してバックルに押し込み、鍵を回して宝箱が開いた。そして、飛び掛かってくる雁野をカウンターのように吹き飛ばすと、オレンジ色の魔法闘衣が飛び出して、僕の身体に装着する。


 『密林のアマゾネス!!アメミット・ナイト!!ドレスアップ・・・!!』


 僕の身体が今度はアレクシアさんのようなボリューム満点な巨乳と引き締まった腰つき、筋肉が程よく着いた身体つきに変わり、ワニをあしらったオレンジ色の甲冑を纏い、日焼けしたような肌にはワニをイメージした紋様が浮かび上がった姿に変貌した。


 そして、僕の武器として現れた巨大な戦斧を持つと、吹き飛ばされた雁野に向かって思い切り斧を振り下ろした。すると、地面から巨大な植物のツルが飛び出して、雁野の身体や腕、脚を縛り上げていく。


 「この植物、体力や魔力を吸収している・・・!?」


 さすがはアレクシアの魔力が込められた宝箱。

 攻撃するだけじゃなくて、相手から魔力や生命力を吸収する【暴食】の大罪の能力を発揮している。あの人の性格と底意地の悪さが、武器や魔法になって現れたみたいだ!


 「・・・こざかしいことをするわね!!」


 雁野の全身が再び激しく燃え上がると、植物が炎に包まれて灰に変わっていく。雁野を拘束していた植物が全て地面に落ちていく。


 「斗真ぁぁぁぁぁぁっ!!」


 「雁野ぉぉぉぉぉぉっ!!」


 「ブッ飛ばす!!」

 「殺してあげる!!」

 

 ガキーン!!ガキンッ!!ガキンッ!!


 戦斧と黒い炎を纏った長剣が激しくぶつかり合い、高い金属音が響き合い、腕から全身がしびれそうな衝撃が伝わってくる。僕は歯を食いしばって耐えながら、雁野の剣戟をとにかく防ぎ続ける。


 「アハハハハハハハハハ!!楽しい!!最高に楽しいわ!!こんなにも楽しくて楽しくてたまらない戦いは他の相手じゃできないわ!!やっぱり貴方だけが私のイライラをスッキリさせてくれる!!もっとよ、もっともっともっと、激しく愛し合って、殺し合いましょう!!」


 「・・・テメェのトチ狂った遊びにこれ以上付き合ってられるかよっ!!」


 「遊びィ?遊びなんかじゃないわっ!!私はあの日から、ずっと貴方だけを見てきた!!」


 剣と戦斧のせめぎ合い、どちらかが一瞬でも気を抜いたら死が訪れる状態で、雁野は狂った笑みを浮かべてまくし立てる。


 「・・・貴方が私にとっての”希望”になった!貴方がたった一人で何十人もの相手を叩き潰している姿が、私に”暴力”の”正当化”を教えてくれた!!」


 どういうことだよ!?全く意味が分からないんですけど!?


 「自分でも分かっていたわ。私が普通の人間ではないことも、人間らしい感情がどういうものなのかどうしても理解できないことも、他人や世間には受け入れてもらえない異質な存在だってね!!」


 雁野の長剣を斧で振り払い、距離を置いて身構えると、再び雁野が地面を蹴り飛ばして斬りかかってきた。


 「だって、誰も教えてくれなかったんですもの!!貴方たちが言っているような人間らしいことなんて、何ひとつも教えてくれなかった!!」


 剣の刃が斧とぶつかり合い、目を血走らせた雁野が口から血液交じりのつばを吐きながらまくし立てる。


 「殴るか、殴られるか!!それしか私の人生にはなかったわ!!殴られる前に殴らなくちゃ、私が死ぬ!!いくら叫んでも、助けを求めても、私の声なんて誰にも届きはしない!!それなのに、私には人間らしい感情がないことを責めてくる!!どいつもこいつも身勝手な奴らばかりじゃない!!」


 口先だけの優しさ、自分の欲望を満たすことしか考えていないいやらしい笑み、自分を道具として利用することしか考えていない浅ましく愚かな感情、そして誰が言い出したかもわからない正義を絶対的なものとして信奉し、その思いが理解できない自分を人間ではないと断定されて、社会からも、世間からも「はみ出し者」として冷たい目で見られ続けてきた。


 彼女の苛立ちは、汚いものを見て見ぬふりをして、自分だけは綺麗であり続けようとする【世界】そのものに対するものだった。


 「・・・だから、殴られる前に殴って、奪われる前に奪ってやる。もうこれ以上、私の人生を奪われてたまるものですか・・・!!」


 敵意をずっと向けられ続けてきて、誰も頼ることも出来ず、信じることも出来ない。自分の身は自分で守るしかない。だから、彼女は目に映るすべてのものを敵視し、憎悪の対象とするのだ。


 「・・・でも、貴方の姿を見たとき、生まれて初めて誰かに執着した!誰よりも激しく、荒々しく、たった一人でも大勢の敵を殴り倒していく貴方は、私のことを正当化してくれるように見えた。自分の大切なものを守るためなら、邪魔な奴らはみんな排除してしまえばいいんだって。誰かを守るために戦う貴方と同じように、自分を守るために戦うと決めた私だって間違ってなんていない。私は間違ってなんていないんだ・・・!」


 「・・・そうやって、ずっと俺のせいにして、自分の気持ちから目を背け続けているってことか?」


 「・・・何ですって?」


 ああ、何となく分かった。

 不思議なぐらいに、雁野が本当は何を願っているのか、すんなりと理解することが出来た。

 コイツが本当に願っている願い、それは・・・。


 その願いは、昔の僕が何度か願ったものと同じだったから。


 全てを失い、絶望して、もうどうにでもなれっていう感じで過ごしていたあの頃に抱いていた願い。


 


 「・・・お前は戦いたいんじゃない。お前は・・・本当は・・・”死にたい”んだな」


 


 雁野の表情が凍り付いた。

斗真が見抜いた、雁野の本当の願いとは・・・?


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

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