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第二十一話「憎しみの終わりへ①~歪み切った悪意~」

70万PVもいただき、本当にありがとうございます!

皆様には心から感謝とお礼の言葉を申し上げます!これからも頑張っていきます!!

新作が書きあがりましたので、投稿いたします!


(今回鬱になる表現や暴力的表現があるので、苦手な方はお気を付け下さい)

 【斗真視点】


 チクショウ・・・!


 今度ばかりは、マジでヤバいかもしれない・・・。


 アレクシアと合体して魔王の力を使った反動で、身体がまるで自分のものとは思えないほどに重くて、指一本まともに動かすことが出来ない。そのうえ、魔力もほとんど使い切って、わずかな量の魔力しか残ってない。さっきから何とか不意打ちの一発を狙って、そのスキを突いて逃げようとしているんだけど、コイツが僕のことを見逃すとは思えない・・・。


 「・・・嬉しいわ、やっと二人きりになれたわね。今までは色々と邪魔が入ったけど、もうその心配はない。だって、もうすぐ”決着”が着くんですから・・・」


 雁野は嬉しそうに、高揚した笑みを浮かべている。もはや興奮を抑えきれないと言った様子で、潤んだ瞳には狂気の光が爛々と輝いていた。


 「・・・そこまで、僕のことを殺したかったのか。まあ、一度は僕に殺されているわけだから、恨まれていても仕方はないんだろうけどね」


 「・・・恨む?私が、梶くんを?」


 雁野は意外そうに目を丸くすると、おかしくてたまらないと言ったようにクスクスと笑いだす。


 どういうこと?どうして、彼女は笑っているんだ?

 まるで、僕がおかしなことを言ったみたいじゃないか。


 「・・・私はね、梶くんに昔も今も、恨みや憎しみなんて言う感情は持った覚えがないわよ」


 「・・・え?」


 「他の奴らとは違って、貴方だけは私のこの手でどうしても殺したい。それだけよ」


 どういうことだ?彼女は一体何を言っているんだ!?僕がバカなのか、雁野が何を言いたいのかさっぱり分からないんだけど。


 「・・・殺し合う前に、少しだけお話してもいいかしら?」


 雁野は意図を感じさせない不気味な笑みを浮かべて、一方的に話し出した。話をしている間に、僕が魔力を回復させて、不意打ちを仕掛けることはないと思っているのか?


 「・・・私はね、私を取り巻く世界の全てが憎い。一方的に【これは正しい】、【それは間違っている】という認識を押し付けてくる世界も、自分以外の世界を見ようともせずに他人に自分の価値観を押し付けてくる人間も、全てが・・・憎い」


 雁野は何か嫌なことを思い出しているかのように、遠くの方を憎々し気に睨みつけていた。


 「”人を殺してはいけない”。本当に、そうなのかしら?どうして、人を殺してはいけないのかしら?そいつを殺さなかったら、自分が殺されるとしても、いけないことなのかしら?」


 憎悪の炎を目に宿らせて、声の端々から怒りや憎しみが伝わってくるようで、思わず吐き出しそうになる。


 「”法律で定められているから”?”それが正しいことだから?”正しいって何よ?強いヤツが弱い人間を一方的に虐げて、傷つけて、何もかもを奪って生かさず殺さずのまま、一生嬲られ続けることになっても、そいつを殺したら私が悪になることが正しいことなのかしら?そいつよりも強くないのなら、ずっと虐げられ続けても仕方のないことかしら?」


 雁野の瞳にはもはや光はなく、真っ暗な闇が果てしなく広がっていた。


 そんな雁野の姿を見て、身体が凍り付きそうな異様な寒気に襲われたとき、僕は桜から過去に聞かされていた雁野の凶行が頭によぎった。


 -幼い頃に両親が離婚して、母親に引き取られたが、母親は子育てをするつもりなどなく、内縁の夫と毎日のように遊び歩いて、雁野にロクな食事も与えていなかったこと。気に入らないことがあると、雁野を殴ったり蹴ったりしていたそうだ。-


 -そして、とうとうある日。酒に酔った母親に包丁で殺されそうになり、抵抗をした時に母親を誤ってやってしまったこと。そして、同じく泥酔していた激昂した内縁の夫に襲われて、そのまま母親を指した包丁で・・・。-


 『そいつは俺の組からも多額の借金をしていてね。金を取り立てに行った組の奴らが雁野を見つけたときには、雁野は手に包丁を持ったまま、両親の遺体の前で呆然としていたらしい。身体はやせ細っていて、あと一歩遅かったら栄養失調で死んでいたらしい。身体中には殴られてできたあざや包丁で切り付けられた傷があったそうだ』


 ーその後、雁野は正当防衛が認められたものの施設に入ることになった。しかし、雁野は施設に入っていることを学校のクラスメートにからかわれて、毎日いじめられていた。そんな雁野のことを、担任の教師とクラスメートの一人の女の子だけはずっと味方になってくれていたらしい。ー


 しかし・・・。


 「優しいふりをして、自分の欲望を満たすために人の身体を平気で食い物にしようとするヤツも、友達のふりをして私が苦しんでいる姿を裏で笑って、私を傷つけておきながら自分だけが私の味方だと言い放って、自尊心を満たすためだけの友情ごっこを楽しむようなヤツでも、殺したら私が悪。私がいくら違うと言っても、親を殺した人殺しの話なんて、誰もまともに聞いてくれるはずもない。それが、この世界における正義というものだから。それが正しいと思っているから、誰もが私を責め立てる。私が全て悪いんだってね」


 『・・・中学に上がった後に、雁野は信頼していた親友と教師に裏切られた。雁野に対するいじめは、実は彼女が唯一信頼していた親友が裏でいじめっ子たちに指示を出していたんだ。そいつのことは俺も聞いたことがあるけど、一見面倒見が良くて優しそうな顔をして困っている人に近づいて、助けてやろうかって話しかけていくんだ。それで、すっかり信じ込んで自分だけしか味方がいないと思い込ませて、それを利用して金銭を要求したり、奴隷のように言うことを聞かせるような最低の女だったな』


 『教師のほうはもっと最悪だ。雁野に身体の関係を迫ってきたんだ。他にも女子生徒に手を出していて、親や他の教師にチクったら盗撮した写真を学校中にばら撒くと脅しているようなヤツだったらしい。雁野に同情するわけじゃないけど、アイツには、誰一人として本当に向き合ってくれるヤツがいなかったんだな・・・』


 その結果、雁野は・・・クラスメートと教師も手にかけてしまったらしい。


 『・・・親も、教師も、信頼していた友人も、全員が敵。世間も、社会も、自分のことをどうしようもない悪として責めてくる。アイツがいつも「イライラする」って言うのも、常に自分が誰かに敵意を向けられていると思っているからかもな』


 「イライラするのよ。私のことなど何も知らないくせに、知った風な正義を押し付けてくる世界の全てがね。理由がなかったら人を殺してはいけない?理由があればいいのかしら?そうではないでしょう?私のことを化け物と罵い、否定して、責め立てることにも連中には理由などありはしない。他の誰かが言っている正義に便乗して、正義の味方にあった自分に酔って、自分は正しいと言わんばかりに正義を押し付けてくる奴らの全てが憎い。そんな奴らに、私の人生を奪われてたまるものですか」


 雁野が右手に黒い炎を発して、ドロドロと燃え上がる怨念のような炎を僕に見せつけながら、顔を近づけてくる。僕に額をくっつけて、あともう少しで顔と顔がくっつきそうなほどに近づけてくる。


 「だから、殺すのよ!奪われる前に奪ってやる!私はどうせ悪なんでしょう!?だったら、悪らしく悪を滅ぼそうとするクソッタレな正義を全部壊してあげる!戦って、相手を倒して、くだらない正義を叩き潰す時だけが頭がすっきりする!邪魔なものなんて、みんな排除してしまえばいい!世界が私を邪魔者として消そうとしているなら、私だって悪あがきさせてもらうわ!私のことを助けてくれなかったくせに、世界を守ろうとする正義なんて、全部叩き潰してやる!」


 怒り、憎しみ、そして・・・悲しみに満ちた叫びが聞こえたような気がした。


 正義に絶望し、自分自身を守るために目に着いたものを全て傷つけて排除しようとする。

 それが雁野に唯一残された、防衛手段だったのだろう。


 人間らしい感情や心を憎悪の炎で焼き尽くされて、全てを破壊することでしか救われることのない悪魔に変わり果てた雁野の姿は・・・哀れだと思えてきた。


 「・・・それで、僕も殺すの?」


 「・・・ええ、でも、私が貴方を殺したいのはそんな理由じゃないわ」


 雁野は蕩けそうな笑みを浮かべながら、ゆっくりと顔を近づけてくる。


 そして、僕のほっぺたをペロペロと舌で舐めながら、熱い吐息を吹きかけてくる。

 見た目だけなら黒髪の美少女である雁野にここまでされたら、一般的な男子高校生なら発狂するほどに喜ばしいものだろうけど、正直僕は人生で一番ビビっている。


 「・・・貴方は、私と”同じ人種”なんですもの」


 「・・・え?」


 「・・・家族や他人に裏切られて、たった一人きりで戦い続けている人。自分の敵となる存在を自分の拳で叩き潰し、戦いの中でしか自分が生きているという実感を感じられない人。私は貴方を初めて見た時から、ずっと思い続けてきた。私と同じ人間についに巡り合えたって・・・!」


 そういって、雁野は僕の耳元に唇を押し付けて、囁いてきた。


 「貴方のことが・・・好きなのよ。生まれて初めて、こんなにも人のことを好きになったことはないわ」


 はい・・・?


 いや、ちょっと待って?今、この人、何て言いました?


 「誰にも渡したくない。私と同じ人間に会えるとは思わなかった。貴方は私のことを否定しない。私も貴方の暴力を否定しない。私たちはずっと何かと戦い続けることでしか、生きられない運命なのよ。レベッカとか他の女なんかには渡さない。梶くん・・・斗真くんは私だけのものよ!!」


 唇に無理矢理柔らかくて生暖かいものが押し付けられる。

 吐息、湿った感触、にゅるりとした肉が生き物のように僕の口の中に入り込んでくる。


 僕の喉が流れ込んできた液体を意志とは関係なく飲み込んでいく。


 そして、僕の唇から雁野は自分の唇を離すと、蕩け切ったような笑みを浮かべていた。


 「・・・だから、殺すの。貴方の命を全て私だけのものにするのぉ・・・」


雁野と斗真、初めてのキス。

ついにざまぁ対象の勇者からまで求愛されてしまいました。ただし、その愛し方はヤンデレ一直線。

レベッカたちのようなバカに好かれるのがいいのか、雁野のようなヤンデレに好かれるのがいいのか。

斗真の女難は果てしなく業が深い模様です。


次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヤ(病/殺)ンデレか... 主人公は1度お祓いか解呪方法を探すとか した方がいい
[一言] ブロンズ・ルド「なんなのこいつは!?」 シルバーン「危ないやつだ!!」 首領・ゴールド「悍ましいことこの上ないぜ こんなやつは存在してはいけない生き物だ その生命を終わらせるしかない!!」 …
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