第二十話「”彩虹の戦乙女”救出大作戦⑯~暴食と知恵の騎士、降臨~」
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新作が書きあがりましたので、投稿いたします!
ヴァルドゥング戦、完結です!
【三人称視点】
「・・・さぁてと、イイ声上げて鳴いてくれよ?このゲス野郎」
暴食の魔王【ベルゼバブ】。
魔王の力を宿したアレクシアが、獰猛な本性をむき出しにしたような凶悪な笑みを浮かべる。
ヴァルドゥングでさえも、彼女の怒りを孕んだ笑みを見て、一瞬、心臓が激しく高鳴るほどに動揺する。
-・・・アナタ・・・生意気ヨォ~・・・!!ブッ殺シテヤルワ!!!ー
地面から太い触手が突き破って飛び出すと、一斉にアレクシアに向かって真っすぐ飛んでいく。
しかし、アレクシアは一笑すると地面を軽く踏みつけた。すると、足元から巨大な植物のツタが無数飛び出して、襲い掛かる触手を迎え撃つかのように薙ぎ払った。ツタについている無数の棘が鋭い切れ味の刃物のように、触手を切り刻んでいく。
「まさか、この程度で魔神とか言っちゃってるのかよ?ダッセェ!」
-ナ、ナ、何デスッテェェェッ!!!許サナイ!!貴方ハ死刑確定ヨォォォッ!!!-
ヴァルドゥングが大気を震わせるような金切り声を上げると、花の口から巨大なカボチャが吐き出されて、アレクシア目掛けて飛んでいく。カボチャが地面に着弾すると光を放ち、派手に大爆発を起こしていく。
(まずいよ、あれに当たったら大怪我じゃ済まない!)
「・・・トーマちゃん、そんなに日和らなくても平気ですって。私を誰だと思っているんですか?」
アレクシアが余裕たっぷりに笑みを浮かべると、手に持っている杖を振り上げて、先端の宝石が緑色の光を輝きだす。すると、彼女やレベッカたちの周りを緑色の光が包み込んでいく。
「私は暴食と知恵の魔王ベルゼバブの名を受け継いだ騎士にして」
爆弾が光の壁に触れると、緑色の光に包まれて粒子へと変わり、その粒子がアレクシアに向かって流れていくと、杖の先端に光の粒子が吸い込まれていき、光がさらに強く輝きを増した。
「いずれは貴方の本妻となる女、アレクシア・アッシュクロフトですのよ?そんな私に”敗北”とか”危機”とかそんなものにいちいちビビっていられると思いまして?」
ーア・・・アタシノ、攻撃ヲ、全テ吸収シタァァァァァァッ!!?-
「貴方の前では誰にも負けねえって誓ったんだよ!!貴方のことを心から本気で愛している!!貴方には私のことしか考えられないぐらいに惚れさせてやるから、しっかりと見ておきなさいな!!」
まっすぐな瞳。
絶対に負けられないという強い意志を感じさせる、傲岸不遜にして尊大な言葉。
しかし、彼女が杖をかざしてヴァルドゥングに立ち向かっていく姿は、斗真やレベッカたちには輝いて見えていた。
「・・・いい度胸じゃねえか。でもな、オレだって負けてられねえんだよっ!!」
「私に宣戦布告とはおこがましいにもほどがある。誰が一番強いか、見せてやろう!!」
「・・・・・・私を差し置いて勝手に盛り上がるな、小物どもめ」
「それについてはあとで話し合うと言うことで、とりあえずまずはコイツをさっさと片付けるわよ!」
「「「賛成!!」」」
レベッカが炎を纏った大剣を振り上げて、ヴァルドゥングの頭上に向かって高く跳び上がるとそのまま急降下して、大剣の刃をヴァルドゥングの本体に突き刺し、一気に振り下ろした。心臓が炎に包まれると、身体中に炎が燃え広がって、ヴァルドゥングは悲鳴を上げてもだえ苦しむ。
さらにアイリスが雷の矢を放ち、ニナの放った無数のクナイ、ビビアナが放った尖った巨大な氷の塊を喰らい、弱点の心臓の部分が倍以上に膨らんだ。
そこを狙って、アレクシアが杖の先端を向けると彼女の前に極彩色の光がまるで巨大な花のように展開し、ゆっくりと回り出した。その中心にいるアレクシアが杖をヴァルドゥングの心臓に向けると、杖の先端にまぶしい光が集まり出して、見る見る大きく膨らんでいく。
「・・・お前はトーマちゃんには一生勝てねえよ」
-ヒィッ!!?ソ、ソンナ大量ノ魔力ヲ打チ込マレタラ、アタシ、死ンジャウジャナイッ!!?ヤメテッ!!アタシ、マダ、死ニタクナイ!!!-
「・・・命を懸ける覚悟もねえ、負けられない理由もねえ、戦いと遊びの区別もついていねえ」
-ヤメテ、ヤメテヤメテ、ヤメテヤメテヤメテーーーッ!!!ゴメンナサイ!!謝ルカラ、許シテ!!チョ、チョットシタ、オ遊ビナノニ、ソンナニ、ムキニナラナクテモ、イイジャナイ!!ー
「・・・命の重みも分からねえ。そんなヤツに、トーマちゃんや私たちが負けるわけにはいかねえんだよっ!!!」
限界まで膨らんだ巨大な光の玉に向かって杖を構えると、アレクシアがヴァルドゥングに目掛けてビリヤードのように突き出した。
「文殊知恵!!植物魔法・暴食王の宝杖!!」
光の玉が無数の光の帯に変わって飛び出し、ヴァルドゥングの身体や触手、心臓に次々と着弾し、魔力を吸い上げながら高熱の光の玉がはじけて吹き飛ばしていく。ヴァルドゥングの悲鳴さえもかき消すほどの強烈な爆発が次々と起こり、やがてヴァルドゥングの身体が散り散りになって地面に落ちていく。
-・・・イヤァァァァァァァァァッ!!!・・・アタシはまだ・・・死にたくない・・・!!-
(アレクシア!)
「・・・最期まで醜いわね。悪役張るなら、散る時の潔さぐらい持ち合わせておきなさいな」
アレクシアが放った霊符がヴァルドゥングの身体に突き刺さると、光に包まれて、ヴァルドゥングが吸い込まれていった。そして、全てを飲み込むと霊符がふわりと舞い上がり、アレクシアの手の中に戻ってきた。
木の魔神ヴァルドゥング・・・花房青龍を封印することに、成功したのだ。
「・・・やったぜ!!」
「・・・あ~、結構今回はシンドかったわぁ・・・!」
「全く、私たちを子供の姿にするなど随分と好き勝手やってくれたものだな」
「・・・あらあらまあまあ、裏路地でトーマちゃんたちの隠し撮り写真を競り落とすのに夢中になって、相手の術中にハマってお間抜けな姿を晒したのは、どこのどちら様でしたっけ?」
アレクシアの笑顔で言い放った毒舌に、レベッカを除く全員が「うっ」と言葉を詰まらせた。さすがに今度の失態については、自分たちが油断していたことが要因であることを自覚していたようだ。
「オレたちだな!ニャハハハ!」
「・・・団長、貴方に皮肉が通用するなんて思っていた私がバカでしたわ」
しかし、そんな彼女の嫌味や毒舌もレベッカという天然記念物レベルのバカには全然効いていなかった。いつものように晴れやかな笑みを浮かべている彼女に、大物の素質さえ感じてしまうアレクシアだった。
その時、空間にひびが入り、ダンジョン全体が揺れ出した。
それは花房を倒したことによって、ダンジョンが崩壊する合図だった。
「ヤバい、急いで脱出しないと巻き込まれるわよ!」
「急いで脱出するぜ!!」
レベッカたちが走り出そうとしたその時、ダンジョンの奥・・・入口の方から何か高い音が聞こえてきた。ピィーっという高い警笛のような音と、地面を揺るがすほどの力強い音がどんどん強くなっていく。
そして、木々を突き破って飛び出してきたのは・・・!
「・・・アルコバレーノだぁぁぁっ!!」
汽笛を鳴らし、煙を噴き上げて力強く大木をものともせずに吹き飛ばしてきたのは魔砲特急アルコバレーノだった。運転席には、頭や身体中に包帯を巻きつけている桜がいた。
「サクラちゃんっ!!無事なんか!?」
「・・・無事なわけねーだろ。死ぬほど痛いよ!!早く乗れ!!ダンジョンが崩壊する!!」
客室のドアが開くと、そこに向かってレベッカたちが走り出し、飛び込んだ。
そして次々と車両の中に飛び込んでいき、最後のニナが滑り込むのを確認してから扉が閉まった。
光で作り出された線路を爆走し、崩れ行くダンジョンから抜け出すと、樹海に作り出された悪夢のような世界が瞬く間に崩れて消えていった。
「・・・いやあ、もう子供の姿なんて懲り懲りよ・・・」
「・・・でもよ、子供の姿のままだったら、どんなにトーマにエッチなイタズラとかしても、子供のイタズラってことで許してもらえたんじゃねーの?」
レベッカがポツリと言うと、アイリス、ビビアナ、アレクシアが固まった。
「「「その手があったか・・・!!」」」
「・・・アンタら最低やな」
「トーマ君が聞いたら、泣くよ?」
ヴィルヘルミーナがため息をついて客室を見回す。しかし、そこでおかしなことに気づいた。
「・・・・・・あれ?トーマ君はどこにいるんだい?」
「トーマちゃんなら、ちゃんとここにいますわよ~?私から離れた時、ちゃんと抱きしめて連れてきましたもの・・・」
そう言って、アレクシアがボリューム抜群なおっぱいに顔を押し付けるようにして抱きしめていた斗真に話しかけようとした瞬間、アレクシアが笑顔のまま・・・凍り付いた。
「・・・トーマちゃんの身体が、石のように冷たいですわね」
「・・・そりゃ”お地蔵様”だからな」
「・・・トーマちゃんの身体が、石のように重いですわね」
「・・・そりゃ”お地蔵様”だからね」
「・・・トーマちゃん、にっこりと微笑んだまま、ピクリとも動かないのですが」
「・・・そら”お地蔵様”やからな」
「・・・お地蔵様と、トーマちゃんが入れ替わってるぅぅぅっ!!?」
「気づくのが遅いわ、この大バカ者ォォォッ!!!」
アレクシアが大事に抱きしめていたのは、森の中に転がっていたお地蔵様と呼ばれる石像だった。
「まさか、お地蔵様とトーマを間違えて持ってきたって言うの!?」
「・・・・・・ニナ、落ちつけ。団長ならやりかねないけど、アレクシアのような一度獲物を掴んだら二度と離さないようなヤツが間違えるとは思えない」
「おいおい、オレのことを褒めてくれるのは嬉しいけど、そんなことを言っている場合じゃねーぞ!?まさかトーマのヤツ、まだあの森の中にいるのかよ!?」
「・・・ねえ、さっきまで一緒にいたあの”カリノ”とかいう勇者もいないんじゃないかい?」
ヴィルヘルミーナが不安そうに言う。
レベッカたちが車内を見回すと、そこには自分たちとルカードが率いる虫人族、たまたま偶然乗り合わせた寅若光の姿があったが・・・いつの間にか雁野の姿は消えていたのだ。
いや、最初から乗っていなかったと考えたとき、全員の脳裏に最悪な予想が浮かんだ。
「・・・まさか、トーマちゃん・・・カリノと一緒にあの森の中にいるんですの・・・!?」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【斗真視点】
「・・・最悪だ・・・」
どうやら、ここはダンジョンの中ではなさそうだけど、どこなんだろう?
電車に乗り込もうとしたら誰かに引っ張られて、その後、木に頭をぶつけたところまでは覚えているんだけど・・・。
どうやら気を失っていたみたいだな・・・。
ぼやける視界で辺りを見回しても、アルコバレーノはどこにもない。
おそらく、さっき誰かが僕のことを引っ張ったせいで、僕だけが乗り遅れてしまったのだろう。
とりあえず、皆に連絡をしないと・・・。
そう思った時、僕の動きは止まった。
「・・・やっと二人きりね、梶くん?」
オイオイ・・・。
いくら何でも、魔力切れを起こしている時に・・・。
雁野と二人きりで、森の中とか・・・。
マジで・・・シャレにならねぇよ・・・!!
木の魔神ヴァルドゥングを撃破、封印に成功したと思いきや・・・。
斗真、絶体絶命のピンチを迎えております。
次回から、雁野との決着をつける戦いのパートを書きます!
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!!




