第十九話「暴食のアレクシア、覚醒②~暴食を超える知恵~」
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【斗真視点】
えーと・・・。
【ジャイアントボアの毛皮】、【キラータイガーの牙】、【ラタトスクの尻尾】、【ドゥルジ・ナスの核石】、【マカラドラゴンの鱗】、【ケルベロスの爪】を糸に変えて、布に織り上げて・・・。
「トーマちゃんは私の奴隷だ、この食い道楽幼女がぁぁぁっ!!」
「トーマちゃんは私のご飯だ、この牛胸百貫デブがぁぁぁっ!!」
ドガーン!!ガシャーン!!パリーン!!
アッハッハッハ、また何か派手に壊れる音がしたなァ。
もはや後ろで僕の命とか尊厳とか人生をかけて、勝手に争いあっているカレンドーラさんとアレクシアさんの聞くに堪えない悪口や物を投げ合って壊れる音がもはやBGMのように思えてきた今日この頃。
こういう時は、現実逃避に限るよね。
まずはアレクシアさんが魔王に目覚めるために必要な魔法闘衣を完成させること。それが今の僕がやらなくちゃいけないことだ。
みんなを守りたい。
みんなの力になりたい。
僕だって【彩虹の戦乙女】の・・・一人として戦うんだ!!
「眉間にしわが寄っていますわよ~?」
「おわっ!!か、カレンドーラ様!?」
僕の隣にいつの間にか、青あざだらけになったカレンドーラ様が立っていた。後ろを見ると、ボロボロになったアレクシアさんが白目を剥いてぶっ倒れていた。どうやらカレンドーラ様が勝ったらしい。
「ウフフフ、もしかして本当に食べられちゃうと思いましたか?」
「ええっ!?」
「本音を言うと今すぐにでも食べたくて仕方がないのですけど、貴方はこの先、さらに強くなりますわ。美味しいご馳走はお預けを喰らったほうが、さらに美味しく味わうことが出来ますからね」
「・・・それなら、アレクシアさんとどうして喧嘩をやらかしたんですか」
「ウフフフ、長年ずっと宝石の中で食っちゃ寝ばかりしていたから、少し運動がしたかっただけですわ」
オアシス中の木々がへし折れて、まるで嵐が直撃したような惨状になっているのですが、これで少しの運動で片づけちゃうんですか。やっぱりこの人、ヤベエ。
「・・・貴方はとても綺麗で澄んだ魂を持っていますね」
「え?」
「・・・どんな理不尽な出来事にも屈しないで、倒れても倒れても何度でも立ち上がって前に向かって歩き続けていこうとする、強さを持っている。腐らずに、素直で純粋な心を持ち続けることが出来る。そんな貴方のような人が本当に強いということだと、私は思いますよ?」
「・・・そんな大したもんじゃないですよ。自分の弱さは悔しいほどに自分でも分かります」
もっと僕に勇気があれば、もっと僕に力があれば、そう思っても仕方がないなんて分かっているのに。
「・・・だから、僕はもっと強くなりたい。過去を変えることは出来なくても、未来を変えることが出来るようになりたいです」
「・・・貴方が”器”に選ばれてよかったですわ。貴方ならこの先、どんな苦難が待ち受けていようとも、きっと涙を流しながらも前に進むことをやめようとはしないのでしょうね。まあ、一人で何でもかんでも抱え込んでしまうのが悪い癖ですが」
「んぐっ・・・」
「でも、貴方の周りはきっと貴方が一人で突っ走ろうとしても、後から追いかけてくるでしょうね。アレクシアを見ていると分かりますけど、あの子たちは・・・自分の仲間が危険に晒されるのを黙っていられるような連中じゃありませんわ。自分が傷つくことになっても、大切な仲間が傷つくことを何よりも恐れている」
大アネキたちは・・・何よりも仲間との絆を重んじて、大切に思っている人たちだ。一人がやられたら、全員で相手を徹底的に叩き潰すことを信条としているぐらいだから。つまり、もう僕は今までのように何でも自分一人だけで解決しようとしても・・・きっと大アネキたちは僕のことを追いかけてくるのだろう。
「だから、もう何かに巻き込まれそうになって、一人でどうしようもなくなったら、あの子たちに助けを求めなさい。散々振り回され続けてきているんだから、貴方がワガママを言っても、罰は当たらないと思いますわよ?」
「そうですわね~。トーマちゃんはいつも一人だけで何とかしようとして、何でもかんでも抱え込むから、人の倍以上に気苦労が絶えないんですわ~」
右目にパンダのようなブチを作り、ボロボロの姿になったアレクシアさんが微笑みながら話しかけてきた。う、うん、そうやってご先祖様と盛大に殴り合いをおっぱじめたり、目を離していると何をやらかすのか分からないから、そう言った意味では一番気苦労の原因になっているのは貴方たちなのではないだろうか。
そう言いたかったけど、でも、僕にはその言葉の意味が分かる。
僕も、みんなのことがすごく大好きで・・・。
みんなでバカなことを言い合って、騒いでいる間が、人生の中で一番楽しいと思えるようになっていた。
「・・・言いたいことは分かるよな、トーマ」
「・・・うん」
「トーマはもう、私たちの家族なんだよ」
「・・・アレクシア、さん」
「・・・アレクシア、でいいよ。トーマちゃんとサクラちゃん、ユキちゃんだけだぜ?だから、トーマちゃんが今何をやりたいか、言ってみな」
アレクシア・・・は僕がこれからどうすればいいか悩んでいたことを見抜いていたんだ。
僕がどうしたいか、周りに言われて決めるものではなく、自分でこうしたいと思う気持ちを整理することによって、僕が少しでも楽になれるようにしてくれている。
「・・・僕は・・・松本千鶴をブッ飛ばしてやりたいっ!!!」
「・・・他には?」
「・・・光をブッ飛ばして・・・アイツを・・・止めたい!!!」
僕に喧嘩を教えてくれた、唯一無二の親友。
敵同士として戦うことが逃れられないということが分かっていても、それでも、この思いは捨てることが出来なかった。アイツがこのまま怒りと憎しみに捕らわれて、誰かを傷つけてしまう前に何としても止めたい。もう仲間に戻れなくてもいい。それでも、アイツが取り返しのつかないことになってしまう前に、怒りや憎しみを全て僕にぶつけてくれてもいいから、アイツを解放してやりたい。
「・・・そして、みんなと一緒にこれからもずっといたいですっ!!!」
僕の心からの願い。
アレクシアは、涙と鼻水まみれになった僕の頭を優しく撫でながら、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「・・・トーマからの依頼、確かに聞いたぜ。私から、団長や皆に掛け合ってみますわ。トーマちゃんの心からの願い、私たち最凶最悪の傭兵団が必ず叶えて差し上げますわ」
「・・・そう、そして貴方もただひたすら強くなるために力を求め続ける”暴食”を超える【知恵】を身に着けることが出来たみたいですね、アレクシア」
カレンドーラ様が慈愛に満ちた笑みを浮かべながら、掌をアレクシアに向かって開くとオレンジ色の光が放たれて、アレクシアの身体の中に流れ込んでいく。
「満たされない感情を食べ物や力で満たそうとしても補えるものではありませんわ。どう解決すればいいのか、適切なアドバイスだけではなくて、その人の心の苦しみや悲しみを理解して、共に答えを探し求めていこうとする”知恵”こそが、暴食を超えて抑えることが出来るのですよ。人は知ることで傷つくこともあるかもしれないけど、それを乗り越えていく方法を求めていけば、手繰り寄せることが出来る」
僕の心の中でずっと溜めていた思いを吐き出させてくれたように、アレクシアがただ一人だけで溜め込むのではなく、誰かに思いをぶちまけて気持ちの整理をつけることの大切さを教えてくれた。
「・・・アレクシア・アッシュクロフト。貴方に、暴食を超える知恵を身に着けていることを認め、新たなる暴食の魔王の力を授けましょう。貴方がこれから仲間たちと共にトーマちゃんを導いてあげなさい。ずっと一人で戦い続けてきたんだから、彼には心の支えに慣れる仲間や家族が必要ですわ」
カレンドーラ様・・・!
温かい言葉に、僕の目頭が熱くなってきた。
「・・・え~、私だけで大丈夫ですわ。だって残りのメンバーなんて、レベッカとアイリス、ニナにビビアナに、ヴィルヘルミーナとオリヴィアなんですのよ~?まともな人間と言えば私しかいないじゃないですか~」
僕の感動を返せ、この腹黒。
「・・・トーマちゃん、こんなどうしようもないダメ人間たちの集まりだけど、どうか見捨てないであげてくださいね?」
「・・・・・・ウン、ボク、ガンバリマス」
こんな女性に魔王の力を与えて本当に大丈夫なのだろうかと、改めて不安になってきたけど。
でも、きっと・・・大丈夫!
根拠がないけど、心でこの人たちのことを信じると決めた。
それだけでもう十分だ。
「・・・それでは、行きましょうか。トーマ」
「・・・行こう、アレクシアさ・・・アレクシア!!」
僕とアレクシアが手を取り合って、顔を見会って笑いあう。
そして、僕たちがいた空間に亀裂が生じると、再び僕たちは光に包まれていった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【三人称視点】
「騎虎之勢!光魔法・猛虎の斬撃!!」
「・・・生死妄念・炎魔法・告死鳥の焼夷弾!」
ワータイガーの光の刃がヴァルドゥングの触手を切り離し、さらに雁野が放った漆黒の炎を浴びた触手や身体が見る見る石化していく。ヴァルドゥングはもはや死に体といった状態だが、まだあきらめずに触手を振るって応戦していた。
ーシツコイ虫ケラネェッ!!アタシニ歯向カウモノハ、全テ消シ去ッテアゲルワァァァッ!!-
その時だった。
オレンジ色の光が突然辺り一面を明るく照らした。
まぶしい光を浴びて、ヴァルドゥングは思わず目をふさぐ。
ーナ、ナニヨ、コノ光ハァァァァッ!!?ー
「トリは私が務めさせていただきますわ」
そして、ヴァルドゥングたちの前に現れたのは・・・アレクシアだった。
しかしその姿は先ほどのものではなく、豊満なナイスバディをわずかな布面積しかない黒色のボンテージビキニを着て、身体にはオオカミをあしらった入れ墨が浮かび上がっていた。右足に棘が着いたリングがついたブーツを着込み、左肩に鋭く太い牙を二本生やしたジャイアントボアの頭部がついた毛皮のマントを着込んだ姿は、荒々しい彼女の本性を露わにしたようなセクシーな姿だった。
アレクシアは、手に持っている杖の先端をぺろりと舐め取り、嗜虐的な笑みを浮かべていた。
「アレクシア!」
「この魔力、お前も魔王の力が目覚めたのか!」
「・・・・・・今までの感じとは全然違う」
「・・・何や、もう取り繕うことをやめて、開き直ったっちゅう感じやなぁ」
「・・・トーマちゃん?これが私にとってよく似合う騎士の衣装なんですの?」
(・・・い、いや、まさかこんな衣装が出来上がるとは思わなかったというか、何というか)
「うふふふ、怒っているわけじゃないからいいのですよ。結構気に入りましたから。あとで、たっぷりと可愛がってあげますわ。・・・女王様と呼びたくなるまでなァ」
サディスティックな本性をむき出しにした笑みを浮かべると、アレクシアはヴァルドゥングに向かって手に持っていた杖を突き出した。
「暴食と知恵の騎士、アレクシア・アッシュクロフト・・・参上。さあ、借りを数百倍にして返してやるぜ、雑草野郎」
アレクシアが魔王・・・というか女王様風のボンテージビキニ&入れ墨を入れた姿で覚醒しました。彼女の荒々しい本性を表に引き出した言動が、魔王の時にはメインとなります。次回、ヴァルドゥング戦に決着が着きます!!
次回もどうぞよろしくお願いいたします。




