第十八話「暴食のアレクシア、覚醒①~暴食の魔王・カレンドーラ~」
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【斗真視点】
花房の身体はもはや人間の面影が残らないまでに、醜悪な姿へと変貌していく。
身体から生やした無数の触手でアルラウネたちの身体を捕らえると、引きずり込んで、自分の体に吸収していき、花房の皮膚が緑色に変色していき、無数の触手とアルラウネに覆われて、身体が異常なまでに膨れ上がっていった。
やがて、花房自身をも取り込んだ巨大な大木のような姿に変貌したヴァルドゥングは、枝分かれした巨大な4本の触手をまるで巨大な腕のように動かしながら、今にも僕たちに襲い掛かってこようとしている。そして、花房がいたあたりからは巨大な心臓のような内臓が露出し、ドクンドクンと脈を打っている。
-ヒィーッヒッヒッヒ・・・!!オマエタチ、ゼッタイ、許サナイ・・・!!全員、喰ッテヤル!!アタシニ、歯向カウヤツは、ミナゴロシだ!!-
「花房・・・!!」
「どうやら、完全に人間をやめちゃったみたいね」
「フン、有害な雑草ごときが私を見下すとは・・・おこがましいぞ」
「ちょうどいいぜ!これだけデカけりゃ、攻撃を外すこともねえしな!」
「・・・・・・あの心臓に魔力が異常なまでに集中している。あそこを破壊すれば、魔力を完全に失って、あのデカブツを封印することが出来る」
「まあ、そう簡単に倒されてくれるとこっちも楽でええんやけどな」
「・・・せいぜい悪あがきするといいよ。こっちだって、そう簡単にくたばっても気が済まないからね」
ヴィルヘルミーナさんがカットラスを両手に持つと、怒りの感情をむき出しにしたような恐ろしい形相をしていた。いつもは戦う時もキザなセリフや芝居がかった仕草が特徴的なのに、桜が傷つけられたことに彼女は本気で怒っていた。
大アネキたちも煮えたぎった感情をあらわにした獰猛な笑みを浮かべており、今にも飛び掛かろうと身構えている。
「・・・行くぞ、テメェら!!!トーマやサクラを傷つけてくれやがったこの大バカ野郎をブチ殺せっ!!!」
「「「「「「了解っ!!!」」」」」」
大アネキの叫びと共に、7人が一斉にヴァルドゥングを取り囲んだ。
心臓が激しく高鳴り、僕はこれから始まる最凶最悪の傭兵団の本気の戦いを前にして、瞬きさえ忘れるほどに・・・興奮していた。
まるで巨大な津波が目の前に押し寄せてくるような、全身の鳥肌が一気に逆立つこの感覚・・・!
「行くわよ!!」
まず動き出したのはニナだった。
緑色の光を全身から放ちながら、ヴァルドゥングの頭上のはるか上に飛び上がり、無数のクナイを雨のように降らし、ヴァルドゥングの”影”を縫い付けるように地面に深々と突き刺さっていく。ヴァルドゥングが触手を伸ばしてニナを追い払おうとするが、今度はそこに紫色の光を放つヴィルヘルミーナさんが飛び込んできた!
「お前だけは・・・絶対に許さない!!」
触手の上を素早く駆け下りながら、襲い掛かってくる触手を次々と切り刻んでいく。彼女を阻もうとしても、紫色の風を纏う彼女の攻めを止めることは不可能だ。そして、花房の本体・・・心臓に狙いを定めると大きくカットラスを振り上げて横なぎに斬撃を放ち、心臓の表面をえぐり取る。
-グオオオオオオオオッ!!!コ、コ、コノ虫ケラガァァァーーーーーーッ!!!-
「じゃかあしいわ、ボケェ!!」
ヴィルヘルミーナさんとすれ違いに飛び込んできたオリヴィアさんが、藍色の光を放つ槍を目に留まらない速さで次々と突き出し、心臓を守ろうとしていた花を吹き飛ばしていく。そして槍を回転させながら横に大きく薙ぎ払うと、ヴィルヘルミーナさんが傷つけた部分に重なるようにして強烈な斬撃が炸裂する。
「花房の身体が・・・石になっていく!?」
ヴァルドゥングの足の代わりの触手が、見る見る灰色の石に変わっていき、身動きが取れなくなる。ヴァルドゥングは必死で触手をやたらめったらに振り回しまくっているが、完全に足が動かなくなってしまったために、まるで駄々っ子のように暴れ狂うことしかできなくなっていた。
「これでもう逃げることは出来んよなぁ!!」
「・・・・・・次は私の番!」
ビビ姉がパワードスーツを駆り、水色の光を全身から放ち、巨大な氷の塊をヴァルドゥングの頭上にいくつも生み出し、一気に振らせる。鋭くとがった氷の塊が触手を押し潰し、氷から放つ冷気が触手を凍らせて、固めていく。
「・・・・・・トーマを傷つけたことは万死に値する!!」
ーグウウウウウウ・・・!!次カラ次ヘトォ・・・!!-
「ビビアナ、私にもやらせろ。これは命令だ」
「・・・・・・それじゃあ、一緒にやる?」
「いいだろう。よくも私の最愛の弟であり、未来の伴侶を傷つけてくれたな。貴様は私たちの逆鱗に触れたのだよ。覚悟しろ!!」
アイリスが黄色の光を放つ電撃の矢を無数放ち、心臓や蠢く触手を正確に貫いた。心臓が大きく鼓動し、ヴァルドゥングの巨体が大きく何度も痙攣しているかのように震えだす。
「・・・すごい・・・!!」
これが、最凶最悪の傭兵団と呼ばれていたみんなの戦い・・・!!
普段はいい加減なのに、連携がしっかり取れていて、相手に一瞬のスキも見せないまま、一方的に追い込んでいく。合図を取っているわけでもないのに、無駄な動き一つ取らずに何度も練習されてきたかのようにお互いをサポートしている・・・!
「トーマちゃん?」
「アレクシアさん!?」
「どうやらそろそろ決まりそうですし、私の魔王としての力、目覚めさせていただけませんか~?私の魂の魔王が、私のことを呼んでいるんです~」
そう言って、オレンジ色の魔石を取り出すと、宝石がまぶしく光り出した。
僕たちのことを呼んでいる。
七大罪が一つ【暴食】を司る七大魔王が・・・!
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
目を開くと、僕たちは以前オランジーナに来た時に見たことのある、黄金の砂の海に君臨する豪奢な宮殿の中にいた。太陽が照り付けているけど、不思議と熱さを感じない。そして、宮殿の奥には立派なオアシスがあった。
コンコンと湧き出る透明度の高い綺麗な水、青々と生い茂る木々には無数の果実がなっており、そんなオアシスに囲まれるようにして、玉座に誰かが座っていた。
それは、僕よりも頭一つ程背丈が小さい、オレンジ色のウェーブがかかったロングヘアーを縛り上げ、あどけなさを感じさせる可愛らしい顔立ちをした少女だった。頭からはブタのような耳を生やし、虎のように鋭い眼光を放つオレンジ色の瞳を時折覗かせているが、穏やかな笑みを浮かべているその姿は、どことなく子供の姿にされてしまっていたアレクシアさんの面影を感じる。
そして、彼女は自分の顏ほどの大きさもある骨付き肉をムシャムシャと食べていた。
「・・・あら、ようやくここまでたどり着けましたか」
肉を綺麗に平らげて、肉片一つついていない綺麗な骨をテーブルに置き、グラスになみなみと注がれたワインを一口飲み、彼女はナプキンで口元を拭いてから、僕たちに微笑みかけてきた。
「お食事中失礼いたしますわ~。貴方が私のご先祖様に当たる魔王様でしょうか?」
「・・・アレクシア・アッシュクロフトですね?ええ、そうですよ。私が【暴食】の大罪を司る【カレンドーラ・フォン・ベルゼバブ】です。お会いできてうれしいですわ」
トテトテと笑顔で歩いてくる姿は可愛らしいけど、やはり魔王様としての威厳や雰囲気はひしひしと感じる。身体中の鳥肌が立つほどに、強大な魔力を放っていることから、彼女の見た目だけで油断してはいけないと本能で危険を探知する。
「・・・そして、貴方が”カジ・トーマ”くんですね?他の魔王たちから、テレパシーでお話はうかがっておりますわ。私たちの生まれ変わりが大変お世話になっておりますわ」
「え、あ、その、こちらこそ、お世話になっております」
カレンドーラ様が僕に近づいてくると、彼女は上目遣いで花のように微笑む。
「ねえねえ、食べてもいい?」
え・・・?
あの、今、僕は何か聞き間違えたのかなァ?
今、魔王様が僕のことを「食べてもいい?」って聞いたような気がしたんだけど?
「・・・あの、僕のこと、今、食べてもいいかって・・・?」
「ええ」
満面の笑顔で言い切りやがった。
そして、僕の手を白魚のような白くて小さな手で、がっしりと握りしめてきた。
え?嘘でしょう?この子、メチャクチャ力が強いんですけど!?
「貴方みたいに全属性なんていうレアな魔力を持っている人間なんて珍しいわ。しかも、七大魔王の封印を解放することが出来るなんて、貴方本当にただの異世界人なのかしら?貴方のことをもっと知りたいの。そのためには、まず私が美味しく食べて、身も心も一つになれば手っ取り早いと思いませんか?」
うわーい、この魔王様、今までに会ってきた魔王様の中でも一番可愛いけど、怖いよー。
よく見たら、彼女の目は僕のことを獲物を見るような目で睨みつけているし、口元にはよだれが垂れていた。逃げようとしても腕が掴まれていて、ビクともしない!
「いいじゃないですか~。だって、アレクシアには何度も食べられちゃっているんでしょう?こんなに可愛くて美味しそうな男の子を前にして、ずっとお預けをくらっていたんですから・・・もう我慢が出来なくても仕方がないですよねぇ?」
「あの、その、僕きっと食べても美味しくないと思いますよ。煮ても焼いても食えないヤツだってことぐらい、自分でもよく分かっていますし、きっと食べたらお腹を壊してしまうかもしれませんから」
「大丈夫です。私、丸飲みしてからお腹の中でじっくりとご飯を味わう主義ですから」
食べるって、やっぱりそういう意味かーいっ!!ヤバい、僕、魔王様に食事として認定されちゃったの!?
「人の獲物に何迫ってやがんだ、このバカタレ」
バーーーーーーンッ!!!
アレクシアさんがフライパンで思い切り魔王様の脳天を殴りつけた!
ちょっと待て、アンタ一体何をしてくれてんのぉぉぉっ!?一応、魔王様でアンタの前世だろうが!?
フライパンがへこむほどの強烈に殴られて、頭にデカいタンコブを作ったカレンドーラさんは目に涙を浮かべて、恨みがましい目つきでアレクシアさんを睨みつけている。
「・・・テメェ、やってくれるじゃねェか。生まれ変わりとはいえ、オークとエルフのハーフに引けを取るほど、私は耄碌してねーぞ・・・?」
「あ゛ぁ゛ん?魔王様だろうと神様だろうと上等じゃねーか。トーマちゃんは私のオモチャなんだよ。せっかく唾つけて私にしか興味が持てない様に、たっぷりと奴隷としての調教・・・教育を施して、私にメロメロにさせて、いずれは結婚して幸せな家庭を築き上げようとしているのに、邪魔するんじゃねえよ」
おい、調教とか奴隷とか、僕の人生を一体どうするつもりだ。
「トーマちゃんは私が食べるんだ!!」
「トーマちゃんは私の奴隷にするんだ!!」
何このどっちを選んでもバッドエンド確定な不毛な争いは。
「あの、今はそんなことを言い争っている場合じゃないですよ!他の仲間たちが大変なんですから!」
「「アイツらどうせ死なねえから、放っておけ!!」」
一言一句、ろくでもねえ。
ああ、間違いない。この二人、間違いなく”同類”だわ・・・。
今までに会ってきた魔王の中で、斗真にここまでの恐怖を感じさせたものはいなかったほどに性格がぶっ飛んだカレンドーラはいかがでしたか?アレクシアの前世だけあって、性格は外道だし、天上天下唯我独尊を地でいく性格です。
次回、アレクシアは魔王として覚醒できるのか・・・?
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。




