第十七話「”彩虹の戦乙女”救出大作戦⑮~VS木の魔神・ヴァルドゥング②~」
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【斗真視点】
「・・・よ・・・よくも・・・アタシの美しい顔に傷をつけてくれたわねぇぇぇーーーっ!!!」
花房が鬼のような形相を浮かべて怒りの咆哮を上げた。目は完全に血走っており、血管が何本も浮かんで、完全に怒り狂っている。そして、花房の身体から無数の植物のツタがニョキニョキと出てくると、花房の身体を覆い尽くしていく。
「貴方たちには、アタシが直々に地獄を見せてあげるわ!!」
やがて花房は巨大なバラの花びらから、女性の姿の上半身だけが飛び出した姿・・・【木の魔神ヴァルドクング】の姿となって現れた。そして無数の巨大なバラがそこら中に咲き乱れて、鋭い棘を生やしたツタをまるで手足のように自在に操っている。バラの花に無数の口が開き、鋭い牙をぎらつかせて僕たちを威嚇してきた。
「・・・地獄を見るのは、お前の方だ!!」
ワータイガーに変身した光が、身体からまぶしく光を放つと、残像を残すほどの速さで地面を蹴り飛ばして、光線のように一直線にヴァルドゥングに向かっていく。光の爪を伸ばして触手を粉々に切り刻みながら本体に向かって次々と攻撃を繰り出す。
しかし、切り刻まれたと思われた触手がまるでビデオの逆再生でも見ているかのように目の前で再生し、ワータイガーの背後に向かって襲い掛かっていく!
「光!!」
気が付いたらもう足が動き出していた。
ワータイガーの背中に向かって大きな口を開き、鋭い牙を突き立てようとしていた花を大剣で斬り落とした。ヘルハウンド・ナイトに変身して繰り出した斬撃によって、触手が炎に包まれて激しく燃え上がる。
「一人で突っ込むな!!」
「うるさい!!今更仲間ヅラするな!!お前なんて、もうとっくに親友でも相棒でもない!!」
「・・・分かってンよ。でも、僕は勝手にやらせてもらうぜ!!」
「二人だけで楽しまないでくれる?私も・・・混ぜなさいよぉっ!!」
僕たちを押しのけて、狂気に満ちた笑い声を上げながら雁野がヴァルドゥングに向かって、剣を振り上げて襲い掛かっていく!四方八方から触手がギチギチと牙をぎらつかせて襲い掛かってくるが、彼女は退くどころか、まるで遊園地に遊びに来た子供のように笑顔を浮かべて飛び込んでいく!
「はあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ザシュッ!!ザシュッ!!ドシュッ!!
黒色の炎を放つ剣が触手を切り刻み、瞬く間に炎に包まれた触手が地面に落ちて、灰になっていく。
そして、雁野が切り捨てた触手はなぜか再生することが出来なかった。
「・・・え?ちょっと、どういうことよ!?どうして、アタシの身体が元に戻らないのよっ!?雁野、アンタ、アタシの身体に何をしたのよぉぉぉっ!!?」
ヴァルドゥングも予想外の事態に面食らい、目が完全に開き切って動揺と焦りをあらわにする。
「・・・貴方に説明をしてやる必要がある?貴方の遊びはあまり面白くない。さっさと潰してあげるわ」
雁野の身体からどす黒い炎が噴き出すと、彼女の身体中を覆い尽くしていく。そして炎が巨大なドクロの頭を持つ鳥のような形に変わっていき、巨大な炎の鳥が彼女を守ろうとするかのように見えた。
彼女の足元から氷が溶けていき、草が枯れて、地面が渇いていく。
「・・・あれは、まさか・・・”フレスベルグの黒炎”!?」
アレクシアさんが目を見開いて、いつになく動揺しているような表情になっていた。
「・・・アレクシアさん、何か知っているの?」
「・・・まさかおとぎ話だけの存在かと思っていたけど、実際にこの目で見ることが出来るとは思っていませんでしたわね。”死”を司る伝説の魔鳥”フレスベルグ”・・・”生命を飲み込むもの”と呼ばれたS級ランクの魔物」
死者の魂を喰らい、争いや不和を引き起こす風を世界中に流す”闇”の化身。
生命を吸収する”漆黒”の炎を全身に纏った”死神”。
「・・・あの子、どうやら勇者としての素質よりも、魔物の方が合っていたみたいですわね。一度死んで、まさかこのような魔物として生まれ変わるなんて・・・!」
「・・・雁野が、伝説級の魔物の力を持っている!?」
そんなことがあるのかよ・・・!?
でも、いくらでも再生することが出来るヴァルドゥングの触手が再生出来なくなったことが、あの黒い炎に宿る恐ろしい力を証明している。
「あ、あ、貴方・・・生意気よぉぉぉーーーっ!!」
ヴァルドゥングが・・・怯えている!?雁野の頭上に巨大なカボチャのようなものを生み出すと、それを次々と雁野目掛けて落下させていく。カボチャは地面に落ちると鈍い音を立てて、地面にめり込んだ。あんな重いものが頭に直撃でもしたら、無事じゃ済まない!!
僕はカボチャからカボチャの上を飛び移って、ヴァルドゥングに迫ると、同じようにカボチャを飛び移ってきたワータイガー、雁野が僕の隣に並んだ。
「考えることは一緒ねぇ。やっぱり梶くんと私は似た者同士ってことで、気が合うのかしら?」
「お前と一緒なんて、死んでもゴメンだ!!」
「お前たちは私の邪魔をするな!!」
ヴァルドゥングの無防備の本体を射程範囲に捕らえると、僕が大剣を頭上に振り上げて、雁野が長剣を思い切り振りかぶり、ワータイガーが爪を×の字になるように両手を重ね合わせる!
「業火絢爛・・・!!」
「蹈節死義・・・!!」
「光焔万丈・・・!!」
「ひっ・・・!!!」
「狼の裂爪!!」
「告死鳥の炎剣・・!!」
「猛虎の光刃!!」
ヴァルドゥングの本体に真っ赤な炎を纏った大剣の一撃が、黒い炎を纏った長剣が、まぶしい光を放つ爪の斬撃が次々と繰り出されて、ヴァルドゥングの巨体がよろけてとうとう支えきれずに倒れこんだ。
「う・・・嘘よ・・・!!アタシは、神になったはずなのに・・・!?」
黒い炎がヴァルドゥングの身体にしみこんで、真っ白な肌に徐々に黒いシミが浮かび上がって侵食していく。そして、彼の身体の一部のツタや花も黒いシミが侵食していくと、ボロボロと茶色に腐り果てて崩れていく。
「さ、再生が出来ないぃぃぃっ!?どうして!?どうしてよぉっ!!?」
「”死んでいく”からでしょうね。私の黒い炎はどんなものにも死を与える。たとえそれが不死・・・アンデッドと呼ばれるものであっても、その概念さえもひっくり返して確実に消滅させる」
アンデッドでさえも殺すことが出来る、フレスベルグの炎だって?
そんな厄介な能力を身に着けていたなんて・・・!
「・・・だるいわ。貴方のような小物なんて、遊び相手にもならないわ」
雁野はもはやヴァルドゥングに興味をなくしたのか、まるでゴミでも見るかのような冷たい目つきで見下ろしていた。それとは対照的に、ワータイガーは鬼気迫る表情で、両手の拳が震えるほどに握りしめて、ヴァルドゥングに近づいていく。
「・・・花房ぁ・・・貴様だけは・・・許さない・・・!!」
「・・・ひっ!!?ちょ、ちょっと待ってよ!?あ、あれは、その、冗談というか・・・!!」
「・・・私の弟を殺したのも、冗談だと言いたいのか・・・!?」
「あ、アタシ、もうこの通り身体がボロボロなのよぉ?まさか、そんな相手にこれ以上何かをしようとするなんて、格闘家たるものがそんな無慈悲なことを平気でするのかしら?」
見苦しいまでの命乞いに、ワータイガーの怒りがさらに高まってもはや無表情になっている。雁野に至っては興味を完全になくしたのか、あくびまでしている始末だ。
「ど、ど、どうか命だけは・・・!!アタシだって、松本さんに言われて仕方なくやっただけなのよぉ。アタシだけじゃないわ、鳳くんや雨野くんだって、松本さんにそそのかされて、無理矢理やらされていただけなのよぉ・・・!!そう、悪いのは全部松本さんなのよぉ!!」
「・・・松本が、お前に何を吹き込んだというのだ」
「そ、それは、あの時、不良たちをけしかけて貴方の弟を襲うように仕向けたのも、あの子だからよぉ!寅若さんが、あの不良グループたちから恨みを買っていたことを知っていた彼女が、彼女の弟を拉致して人質に取れば、寅若さんたちに一泡吹かせることが出来るって計画を持ち掛けたのよぉ・・・!」
松本がそんなことを・・・?
でも、どうして松本が裏でそんなことをやっていたんだ!?
「・・・今回の計画にしてもそうよ。鳳くんや雨野くんに、梶くんを襲うように焚きつけたのも彼女なのよ!」
ー”鳳くん、梶くんに昔こっぴどくやられたことがあるんですよね?許せないですよね。ですが彼は何の役にも立たない裁縫師のスキルに選ばれた。そんな役にも立たないスキルを持っている彼が、いつまでも貴方にとっての目の上のたん瘤のままでいいんですか?”-
-”雨野くんの思いはすごくよくわかりますよ。貴方はただ一途に梶くんのことを思い続けていただけなのに、彼はその思いを踏みにじったばかりか、貴方の人生までもメチャクチャにした。このままでは貴方の人生はずっと梶くんのせいで真っ暗なままですよ?”-
何だって・・・?
松本が、鳳や雨野にあの時の追放の計画を持ち掛けていたって・・・!?
「雁野さんもそうでしょう!?」
「・・・今更昔のことなんてどうでもいいわよ。まあ、アイツが色々とうるさかったけど、私は私の意志で梶くんを殺すことに決めたのよ。今更松本のことなんて、どうでもいいわ。まあ、あとで必ず殺すつもりだけどね」
そういえば、桜もセルマから、僕を襲わなかったら仲間に危害を加えると脅されていた・・・。
まさか、それもセルマを利用して、松本が仕掛けていた罠だったのか?
「・・・でも、それって別に今から貴方が死んでいくことと、どう関係があるのかしら?」
ここに来て、まさか雁野からそんな言葉が聞けるとは思わなかった。
「・・・ああ、斗真が追放されたことなど今はどうでもいい。お前をまず、どうするかだな」
ヴァルドゥングが脅え切った様子で後ずさりをする。
しかし僕は見えてしまった。
ワータイガーの背後の地面が盛り上がり、そこからもう一人の”花房”が鋭くとがった触手を腕に巻き付けて、彼女の背後に迫って・・・笑っている姿を。
まさか、僕たちを油断させて、不意打ちを仕掛けるつもりか!?
「光、後ろだ!!」
「もう、遅いわっ!!死ねぇぇぇっ、虫けらァァァッ!!」
花房がツタを、ワータイガーの背中・・・急所である心臓目掛けて突き出そうとした、その時!!
「人のダチに・・・何してくれてンだぁぁぁっ!!!」
ゴシャアッ!!!
風を切るような速さで茂みから飛び出してきた黒い影が、花房の顔面に強烈なドロップキックを炸裂させた。花房の顔面が歪み、歯が数本折れて吹き飛び、そのまま地面に滑り込みながら倒れこんだ。
「・・・え!?」
そこにいたのは・・・大アネキだった!!
「ヒカル!それに、トーマ!?お前ら、無事だったか!!」
身体に何も纏っていない、生まれたままの姿で大アネキは仁王立ちをしていた。
い、いや、ちょっと待って!?ダメだ、さっきまでこらえていた鼻血が復活して・・・!!
「・・・お・・・大アネキ・・・!?(ぶしゃっ)ど、どうして(ぶしゃっ!)、そ、そんな姿に!?」
「トーマちゃん!?顔が赤くなったり、青くなったり、えらいことになっていますわよ!?」
「すげえ血が出ている・・・!まさか、あのオカマ野郎にやられたのか!?」
いいえ、貴方のせいですよ?頼むから、たわわな胸を人に生で押し付けるのは勘弁してください!
「レベッカ、アンタは何をしてるのよーーーっ!!」
ニナがフライパンで思い切り大アネキの頭をどついた。頭にデカいタンコブを作り、彼女が恨みがましい目つきで睨みつける。
「・・・な、何をするんだよ!?」
「せめて殴り込みに行く前に、服を着てから行きなさいよ!!どこの世界に素っ裸で敵陣に殴り込みにいくバカがいるのよ!?」
「ここにいるぞ!」
「ああ、そうだったわね、この天然痴女!!」
そして、後ろから次々とやってきたのは・・・!
「全く、お前は恥じらいというものが頭にないのか、大バカ者が」
「・・・・・・そんなものを団長に期待する方が間違っている」
「せやけど、少しはそういうことにも気ィ使ってほしいわな」
アイリス、ビビ姉、オリヴィアさん・・・!!
みんなが元の姿に戻っている!!
「アイリス、ビビ姉、オリヴィアさん!!」
「トーマ、心配をかけてすまなかったな」
「ビビちゃんはまだ子供の姿のままやないか?」
「・・・・・・これでも元の姿に戻っている。喧嘩売ってンのか糸目」
ああ、何だろう。
この人たちが揃うと、無駄な力が抜けていくっていうか・・・。
この勝負、絶対に負ける気がしないって思えてくる!
「・・・これでようやく、役者がそろったね」
そして、茂みをかき分けてやってきたのは・・・ヴィルヘルミーナさんだった。
よかった!みんなが元の姿に戻った!!
「さてと、よくもまあボクたちをここまでおちょくってくれたものだねぇ?挙句の果てに、桜までやってくれたことは、君の命ごときじゃとてもじゃないけど贖えるものじゃないよ?」
ヴィルヘルミーナさんが絶対零度の怒りを孕んだ声で、花房を圧倒する。
そして、彼を大アネキ、アレクシアさん、アイリス、ニナ、ビビ姉、オリヴィアさん、そしてヴィルヘルミーナさんが取り囲んで、鬼のような形相で睨みつけて、獰猛な笑みを浮かべていた。
花房・・・。
この世界に来て、一番悲惨な死に方を選んでしまったみたいだね。
僕たちだけではなく、まさかあの伝説の【最凶最悪の傭兵団】のメンバー全員を本気で怒らせるなんてさ。
「・・・ま、まだ、アタシは死ぬわけにはいかないわ・・・!ヒヒッ、こうなったら貴方たちを養分として吸収して、生き残ってやるわ!!」
そう言うと、花房の身体に”変化”が起こり始めた。
花房に死亡フラグが立ちまくり、絶対不可避の状態に。
レベッカたちが全員元の姿に戻り、花房を倒すために集結しました。
次回、花房との戦いに決着が着きます!!
斗真、レベッカのせいでシリアスモードが無理矢理断絶されました。
レベッカは別に悪ふざけをしているのではなく、元々全裸で動き回っても平気というズボラというか開放的な性格な上に、光や斗真を守るために服を着るということさえも忘れるほどに集中していたんです。
痴女とかじゃなくて、ただ単に本当のバカなんです・・・!!
次回もよろしくお願いいたします。




