第十五話「”彩虹の戦乙女”救出大作戦⑬~悪鬼羅刹~」
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【三人称視点】
『三神市には”鬼姫”と呼ばれる、メチャクチャ喧嘩が強い不良がいる』。
『黒髪ショートのウルフカットヘアーで背の低い女子生徒には絶対に手を出してはいけない』。
『龍花市の長崎椿希、三神市の緋色陸、常盤天、群青海と並ぶほどの実力を持ち、たった一人で学校中の不良たちを叩きのめした、人間離れした怪力の持ち主』。
かつて、三神市には不良たちの間で【鬼姫】と呼ばれる一人の不良にまつわる伝説が語り継がれていた。
曰く、自動販売機や街灯、自動車を持ち上げて相手に投げつけるとんでもない剛腕の持ち主。
曰く、相手をたった一撃で倒す強烈な蹴りを武器とする。
曰く、普段は温厚で物静かだが、一度切れたら手が付けられないほどに大暴れする鬼のような人物。
これらの噂が飛び交い、すっかり信じ込んだ不良たちは心の底から震えあがり、彼に目をつけられないように恐喝や女子生徒に対する暴力行為などがご法度になったという。
そして、そんな伝説がいつの間にか出来て、不良たちのカリスマ的存在として祭り上げられていることなど知る由もない、平凡と普通をこよなく愛するどこにでもいる普通の高校生・・・。
それが【梶斗真】であった。
「オッラァァァァァァッ!!!」
獣のような咆哮を上げて、ツタを振り上げて襲い掛かってきたアルラウネ(男性バージョン)を、斗真は相手のこめかみにハイキックをぶち込んで、昏倒させた。斗真の足元には、急所のこめかみに強烈な蹴りを喰らって、一撃で白目を剥いて倒れこんだアルラウネたちが倒れこんでいた。
(あらあらまあまあ~、トーマちゃんが強いというのは、これまでにトーマちゃんの戦いを何度も見てきたから分かっているつもりでしたが、今日のトーマちゃんはいつもよりも・・・ずっと強い!)
アレクシアが思わず見惚れるほど、斗真の暴れぶりはすさまじかった。
アルラウネたちの大軍に飛び込んでいったかと思いきや、一瞬とも思えるほどの速さで、10体ものアルラウネたちが殴られ、蹴られて、宙に舞い上がっていた。鞭のようにしなるツタの一撃を喰らっても、もはやその程度の攻撃では斗真を止めることなど不可能だった。
一撃、一撃が重すぎるのだ。
顔面に拳がめり込むと、首がねじれるほどの勢いで吹き飛ばされる。
蹴り、頭突き、一発一発が全て本気で攻撃している上に、全身がばねのように強靭な筋肉で出来ているため、相手の急所に強烈な一撃を叩きつけられたら、人間よりも数倍は頑丈な魔物でさえも歯が立たないほどの破壊力があるのだ。
「ウフフフッ!これよ、これがずっと見たかったわ!!3年前に私の記憶に焼き付いて離れない、貴方のその暴れぶり・・・!!貴方だけが、私の苛立ちを全てスッキリさせてくれる!!」
雁野は狂気と快楽で蕩け切った笑みを浮かべて、興奮を抑えきれないといったように長剣でアルラウネたちを次々と切り裂く。目玉が飛び出しそうになるほど大きく見開かれて、アルラウネの体液や返り血を浴びながら、狂ったように笑い、喉元を的確に狙って剣を振るい続ける。
武器を持った50人以上の半グレたちに、たった一人で挑み、全員を叩きのめしたあの時の映像が鮮明によみがえり、雁野の唇の端が吊り上がり、ルージュを引いた唇を艶めかしく舐める。
「やっぱり、貴方は最高だわっ!!梶くん・・・大好きよ!!殺したいほどにねぇぇぇっ!!」
一方で、ワータイガーの姿になった光は、目の前でアルラウネを次々と殴り飛ばしていく斗真の姿を見て、困惑していた。目の前で戦っているのは、3年前に日和って仲間を捨てて逃げて、すっかり腑抜けになったはずの幼なじみのはずなのに、今の彼は3年前以前に自分と組んで、喧嘩に明け暮れていた熱い気性を持っていた昔の彼そのものだった。
どんな相手が挑んで来ようと、決して逃げださずに立ち向かっていった勇敢な相棒。
勝てる喧嘩はしないというのがお互いに掲げていた信条であり、自分よりも強いということを知っていてもなお闘志を燃やして、何度殴られても、青あざだらけになり、腫れあがった顔に笑みを浮かべて挑んでいく姿に、彼女は彼だけが最高の相棒だと心から信じ、慕っていた。
(・・・熱さを捨てたはずじゃなかったのか?ビビッて逃げ出したんじゃなかったのか?)
3年前、自分や仲間を見捨てて、日和って逃げたはずなのに。
自分たちの前から姿を消して、久しぶりに自分たちの前に姿を見せたときには、昔の熱さや輝きなど感じられない、テンションに流されることを嫌う根性無しに変わり果てたはずじゃかったのか。
まだ、そんな誰かを守るために自らを奮い立たせる熱さが残っているなら。
「・・・どうして、私たちを見捨てたんだ!!」
苛立ちと怒り、殺意の感情が制御出来ず、自分に攻撃を仕掛けてくるアルラウネたちの首を力任せに爪で引き裂いた。そして、身体を”光”に変えると、両脚がまぶしく光り輝く光の粒子に変わっていく。そのまま飛び上がり、バック転をしながら蹴りを放つと、無数の光の刃が足から放たれた。
「極光の脚!!」
光の刃がアルラウネたちを吹き飛ばし、目にも止まらない速さで飛んでくる光の刃は次々とアルラウネたちの身体を切り刻み、高熱で塵一つ残さないまでに焼き払っていく。
(お前のことは絶対に許さない!!)
(お前のせいで、明は死んだんだ!!)
(お前を殺さない限り、私の復讐は終わらないんだ!!)
斗真に対する怒り、憎悪が理性を上回っていき、血走った瞳から光が消えていく。
額に浮かんだ無数の血管、震えるほどに拳を握りしめるとワータイガーは血に飢えた獣のように、自分に襲い掛かってくるアルラウネたちを虫でも追い払うかのように、乱暴に殺していく。
3人に対して(アレクシアは子供の姿に変えられているため、斗真に隠れているように言われていた)アルラウネは100人以上はいたはずだが、戦いが始まってわずか数十分で圧倒的に戦況がひっくり返っていた。
「・・・これを使うか!」
斗真が懐から水色の宝箱を取り出すと、起動スイッチを押した。
『闘衣召喚!!アイスフェニックス!!』
「変身!!」
鍵を回して、宝箱が開くと斗真の全身を猛烈な冷気が包み込んだ。
地面が見る見る凍り付いていき、木々が一瞬で氷漬けになるほどの冷気を全身に纏った斗真の背中から、巨大な氷の翼が大きく広がり、その姿はまるで不死鳥のような荘厳さと美しさを感じさせるものだった。
『絶対零度の不死鳥!!フェニックス・ナイト・・・ドレスアップ!』
ウェディングドレスのようにも見える純白のドレスを身に纏い、背中から冷気を放出して生み出した巨大な氷の翼を広げて、黒色の瞳が神秘的な水色に変わっていた斗真は透き通るような透明の刃を持つ大剣を構えた。
「アレクシアさん、光、巻き込まれたくなかったら”思い切り跳んで”!!」
斗真が叫ぶと同時に大剣を地面に深々と突き刺し、斗真の身体を中心に冷気が渦を巻き始めた。アレクシア、雁野、そしてワータイガーは身の危険を感じ取り、地上から高く跳び上がった。
そして、斗真は大剣に集めていた膨大な量の冷気を一気に開放した。
「冷炎清美!氷魔法・不死鳥の息吹!!」
大剣に集められた冷気が地面を伝って放出されると、アルラウネたちの身体が一瞬で氷漬けになり、やがて凍り付いた肉体の原子崩壊が起こり、キラキラと光り輝くダイヤモンドダストとなって崩れ去っていく。圧倒的な冷気の蹂躙に、1000体以上はいたと思われるアルラウネたちが氷の像と化した。
そして、冷気は地面を伝って巨大な氷の刃を生やしながら木々をへし折り、地面を割り、奥にある巨大な洋館・・・花房の拠点に向かって突き進んでいく。壁という壁にツタが生い茂り、無数の薔薇が咲き乱れる、自然と退廃的な雰囲気が組み合わさったような不気味な洋館の壁に冷気がたどり着いた瞬間。
壁が、窓が、ツタが真っ白に凍り付き、冷気に侵食されるかのように洋館全体がたちまち凍り始めたのだ。
「ちょっと、いったい、どうなっているのよこれはぁぁぁっ!?アタシのお家がどうして凍っちゃっているのよぉぉぉっ!?」
さすがの花房もこの緊急事態には目玉が飛び出さんばかりに驚き、寝間着姿のままで屋敷から飛び出した。そして、彼が屋敷から出た瞬間、彼自身が外装を手掛けた自信作でもあった洋館は無残な姿へと変わり果てていた。
「い゛や゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ーーーっ!!?」
屋敷中のあっちこっちから巨大な氷の棘が突き破って穴だらけになるわ、屋敷の中に控えていた警備のアルラウネたちが次々と目の前で氷漬けになって動かなくなるわ、まるで悪夢のような光景に花房はついに絶叫して、屋敷から飛び出した。
「・・・・・・トーマ、グッジョブ」
「行くぞ」
まさかもぬけの殻となった屋敷の中に、隙をついて、アイリスとビビアナが忍び込んだことも、彼女たちから奪った”年齢”や”魔力”を屋敷に置いてきたことも、花房は全く気付かなかった。
アレクシアがボートを操縦して(暴走させてが正しいかもしれないけども)拠点に突撃する直前、斗真はビビアナたちに自分たちが突撃した後に、花房が待ち構えている拠点に忍び込んで元の姿に戻るために必要なものを探し出してほしいと指示を出したのだ。
出来る限り戦力はそぎ落として置くという約束の通り、もはや花房の配下である虫人たちは斗真たちがアトラクションをクリアしたことによって洗脳が解けて、アルラウネたちは斗真たちによって倒されたため、実質花房のもとには部下はほとんどいない状態となっていた。
「・・・・・・まさかここまでやってくれるとは思わなかった」
「さすがは私の最愛の弟だ!」
「・・・・・・私のダーリンの間違いだ」
氷漬けとなった洋館の中を、アイスドワーフで寒さにはめっぽう強いビビアナがいつもより機敏な動きで歩き回って探索する。すると、ビビアナのアホ毛がある部屋のドアから何かを感じ取ったかのように、ビシッとまっすぐ伸びた。
「・・・・・・この部屋に、私たちが元の姿に戻るための魔力がある」
「・・・お前のアホ毛はレーダーか何かか」
部屋に入ると、厳重に結界が施された金庫があった。
「ちっ、やはり結界を仕掛けてあったか」
「・・・・・・今からあのドケチを呼ぶ?」
その時だった。
「誰がドケチやねん。ウチやったらここにおるっちゅうねん」
後ろには、オリヴィアが立っていた。
「・・・・・・どうしてここに?」
「ウチらのメンバーバッジには確かトーマちゃんが言うとった【じーぴーえす】とか言うのがあるやろ?それでみんなの居場所を調べて、ここに来たんや」
「サクラの具合はどうなんだ?」
「・・・あー、もう大丈夫や。あとでウチらに説教をかますためにも、何が何でも生き延びてやるとか言うとったわ。今はミーナが付き添っている」
そして、おきつね商会で斗真たちの隠し撮り写真やグッズを販売していたことがバレたことを告げると、アイリスとビビアナの表情から血の気が引いて真っ青になった。
「・・・そうか、やはりバレたのか」
「今度はもっとバレへんように、さらに気を付けて店を開かんとな」
「お前には反省とか、店を畳むという選択肢はないのか」
「それやったら、今後トーマちゃんやサクラちゃんの生写真が手に入らなくなるけど、それでもええんか?」
「「絶対ダメだ。あれがなくなったら、もはや死ぬしかない」」
この連中にはどうやら、斗真たちの盗撮や、怪しげな商品を裏で売買するという犯罪まがいの行動を止めると言う選択肢はハナッからないようだ。斗真たちが聞いたら怒りのあまりに倒れそうなやり取りである。
オリヴィアが金庫を解除すると、宝石箱が置かれていた。
それを開くと、そこには赤、オレンジ、黄、緑、青、藍、紫の7つの宝石が美しく収まっていた。
「この石を思い切り割るか壊すかすれば、元に戻ることが出来るみたいやな!」
「・・・・・・それなら、さっさと元の姿に戻るとしよう」
そう言って、ビビアナたちは自分たちの魔力が詰め込まれている宝石を掴むと、思い切り地面に叩きつけた。宝石が粉々に割れると、中から魔力があふれ出して、ビビアナたちの身体の中に戻っていく。
「・・・・・・あ」
「どうかしたのか、ビビアナ?」
「・・・・・・私たち、今の状態で元の姿に戻って大丈夫?」
「どういうことだ?」
「・・・・・・私たち、今、大人の時の服を持っていない」
次回、ハプニング確定。
まあ、これがレベッカたちにとっては隠し撮りをしていたことに対する罰となるかもしれません。
斗真の二次災害の被害も起きるかもしれませんが。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!




