第十一話「”彩虹の戦乙女”救出大作戦⑨~凶刃~」
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新作が書きあがりましたので、投稿いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
【桜視点】
まずは一体・・・!
まさか俺が本当に”仁美”を殺すとは思っていなかったのか、奴ら、かなり動揺してやがるな。
でもな、その油断と思い上がりが・・・命取りだったってことを、教えてやるぜ!
【Gecko Power!】
刀の刃が黄色の光を放つと、俺は地面を蹴り飛ばして飛び上がり、アサシンに斬りかかっていく。
アサシンがとっさに十字手裏剣で防いで俺を弾くと、そのまま身体を回転させて十字手裏剣に次々と刀で斬りつける。
「な、何だよっ、これ!?」
アサシンが休む間もなく斬りつけてくる攻撃に、思わず悲鳴のような声を上げる。
その瞬間、隙が出来た。
一瞬だけしかない、相手の急所ががら空きになったこの瞬間を待っていた。
「竜刀・・・矢守の型!!」
ザシュッ!!
身体を回転させた勢いを失うことなく、そのままアサシンの急所を切りつけて、身体を袈裟懸けに切り結ぶ。肉を切り、骨を断つ一撃を受けてアサシンの上半身が下半身と切り離されて、血だまりの上に落ちた。
「・・・ひっ!?」
スペクターが脅えた声を上げて、後ずさりをする。
その巨大な双眸には、身体中に返り血を浴びて、刀を手に無表情を浮かべて立っている俺の姿があった。
相手に一切ナメられることがないように、全ての思考回路を殺意と怒り、憎悪だけにして、握りしめる刀に力が再び込められる。アイツらの姿を騙ったことは絶対に許さない。決して生きては帰さないと誓った以上、お前らにはここで消えてもらう。
【Chameleon Power!】
刀が青い光を帯びると、精神を集中させて長く息を吐く。
仁美の力が【体】を重視した、パワーと身体能力を爆発的に上げるもの。
忍の力が【技】を重視した、流れる舞のような変幻自在の技の威力を上げるもの。
そして麗音の力が【心】を重視した、強い意志と折れない心が引き出す速さを上げるものだ。
一歩、足を踏み出した瞬間。
目の前に立つ獲物の急所を狙い、一点に向かって走り出した。
心の中でイメージしながら、決して外さないという強い意志を持って、切っ先を突き出した。
(速すぎて・・・見えない・・・!?)
「竜刀・避役の型・・・!」
ドスッ!!
切っ先がスペクターの喉元を刺し貫き、そのまま身体を壁に叩きつけていた。
あまりの衝撃で壁が崩れて、白目を剥いて口から長い舌をだらりと垂れ下がったスペクターが崩れた壁の瓦礫に押しつぶされた。
「・・・ふう」
身体から力が抜けていき、その場で崩れ落ちそうになるほどの虚脱感を感じる。
やっぱり、偽物とわかっていても”アイツら”と背格好が同じ奴らを倒すのは、気分が悪い。
心のどこかで思っていた、自分の弱い一面を見せつけられた気分になり、自己嫌悪する。
もう二度と会えない。
でも、もし会えるなら会いたい。
死んでしまったのだから、もう会えないと言うことは分かっていても。
心が、まだ追いつかねえ。
でも、これでよかったんだよな。
アイツらは最後まで、アイツららしく生きて、生きて、生き抜いた。
だから、アイツらを騙る存在だけは絶対に許せなかった。
アイツらの思いを踏みにじられたような気がしたから。
頬を熱いものが伝って流れる。
目頭が熱くなり、視界がぼやけていく。
それを腕で払って、改めて自分自身の情けなさに苦笑してしまう。
行くよ。
まだ、心の弱い部分がアイツらのいない世界に慣れずに、悲しくて苦しくて涙を流しているけど。
そんな弱い自分も背負って、目の前の助けたいと願った仲間たちを必ず助けてみせる。
「・・・ミーナ、今、助けるぜ」
そう思って、檻の方を見た。
ドスッ。
身体に何かがぶつかった衝撃。
え?
ミーナ?
子供の姿にされて、檻の中に閉じ込められていたはずのミーナの姿が目の前にいた。
腹部に、鈍い痛みと熱が生じる。
「・・・え?」
ミーナの剣が、俺の腹に深く突き刺さっている。
刺された?
俺が?
ミーナに?
訳が分からねぇ。
どうして?どうして?どうして?
頭の中でいろいろな考えがごちゃごちゃになって、訳が分からなくなる。
そして、ミーナは俺の顔を覗き込んで、にぃっといたずらっ子のように笑った。
「ねえねえ、どんな感じ?命がけで、自分の仲間の偽物を倒して、助けに来た仲間に刺される気持ちって、どんな感じ?」
あー、やっと分かった。
コイツ、偽物じゃん。
考えてみれば、ミーナが捕まったまま大人しく俺が戦っているところを見学しているだけなんて、あり得ねぇよな。檻をぶっ壊そうとするなり、必死で抵抗したりするよな。
アイツらと戦って、仲間に擬態したあの連中にいい様に甚振られているところを見て、きっとほくそ笑んでいたのだろうな。どうして、こんな醜く歪んだ笑みを浮かべるようなヤツのことを、ミーナじゃないということを見抜けなかったのだろう。
(・・・惚れた女を助けることで頭がいっぱいになって、それで不意打ち喰らってりゃ、世話ねぇよな)
膝から地面に崩れ落ちて、蜂蜜と自分の血液で出来た血だまりに沈み、身体からどくどくと熱いものが流れていくのが分かる。意識がもうろうとして、視界がぼやけてくる。
「アハハハハハハ!!バカみたい!!バッカみたーい!!」
『オーッホッホッホッホッ!幕ノ内ちゃんはどうやらそこまでのようねぇ!やっぱりお仲間と好きになった女の子には弱かったわねぇ!人生って言うのはねぇ、自分以外、誰も信じちゃダ・メ・よ!他人なんて所詮は自分の手駒として利用できるか、踏み台として利用できるか、そんな価値さえない虫けらかのどっちかよぉん!仲間も家族も恋人も、自分が引き立つための替えの利くアクセサリーのようなものよ!いらなくなったら、すぐにポイしちゃえばいいのに!』
「そんなものに固執しているから、死んだ仲間のことをまだ忘れることが出来ないのさ!惚れた女のために命を張るなんてダサいことをやって、こうして不意打ちを喰らっちゃうんだよ!キャハハハハハハ!」
花房と偽物のミーナの嘲笑が聞こえてくる。
ああ、本当に俺はどうしようもねぇバカだよ。斗真のことを悪く言えねえな。
でも、アイツならきっとコイツらに対して・・・こう言うんだろうな。
『仲間や家族、大切な人のありがたみが分からねぇクズが、桜を笑うんじゃねえ!!』
アイツ、結構熱血なタイプだからな。
アイツと長く付き合っているうちに、そう言うのも悪くねえと思えてきたよ。
誰一人信じられず、自分さえ良ければそれでいいと言い切る、一人だけの世界こそが自分にとって理想の世界だと思い込んでいる奴らにはきっと理解してもらえない。
毎日毎日バカ騒ぎに明け暮れて、笑って、泣いて、喧嘩して、仲直りして・・・。
そんな何気ないことを喜び合える、最高の仲間がいてくれる世界を。
斗真が教えてくれた。
ミーナ、オリヴィアが教えてくれた。
『彩虹の戦乙女』が教えてくれた。
悔しいなぁ・・・。
コイツらに一発、殴りつけてやりたいのに身体が動かねえ。
「きゃははは・・・え・・・ごぶしゃっ!?」
そう思っていた時だった。
ミーナの偽物が、飛び込んできた何かに思い切り顔面を殴られて吹き飛んだ。
頬に拳がめり込み、首がねじれるほどの勢いでミーナの偽物が転がっていく。
薄れゆく意識の中で、ミーナの偽物を殴り飛ばした相手の姿が飛び込んできた。
「・・・ミーナ、オリヴィア?」
ミーナが見たことのない、ものすごい形相を浮かべて、偽物の頬に一発ぶち込んでいた。
唇が破けて、血が流れるほどに歯を食いしばって必死で意識を繋ぎとめる。
そして、そこにいたのは・・・。
「サクラッ!!!」
「サクラ、ちょっと待っとってや!!絶対に死ぬな!!」
間違いない、アイツらだ・・・。
二人とも、もう目から涙が流れているじゃねえか。
情けねえな、最凶最悪の傭兵団の特攻コンビが締まらねえぞ?
「・・・死なねえよ、バカ」
おかしくて、笑いが込み上がってくる。
傷口の痛みを必死でこらえて、身体中から噴き出す汗の玉と血液で服がじんわりと肌にへばりつく。
その感覚に舌打ちすると、喉で引っかかっていた血の塊をつばと一緒に吐き出す。
視界がぼやけるけど、俺たちのことを取り囲んでいる大勢の人影が見える。
3VS数百体といった、絶望的な状況なのに。
「・・・俺たちは・・・”彩虹の戦乙女”だ!!絶対に負けねえんだよっ!!」
勇者の称号よりも、はるかに胸を張って名乗ることが出来る勲章。
人生のこれまでにないほどの高揚感と、ゾクゾクと身体中の鳥肌が立つような得体のしれない感覚。
力が湧き上がってくる・・・!!
「・・・!!ああ、その通りさ!!」
「ウチらはその中でも、負け知らずの特攻隊じゃあっ!!」
絶対に死ぬかよ。
流れる血液を抑えて、薄れゆく意識を必死で抑えて、俺は震える足で立ち上がった。
桜、刺される・・・!
次回、ヴィルヘルミーナとオリヴィアの怒りが大爆発!!
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!




