夏休み特別幕話➂「あざとくって何か文句あるのかゴルァ」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!
新作が書きあがりましたので、投稿いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。番外編はあと3回で終了予定となっております!
【斗真視点】
「へへへ、お姉さんたちなかなか可愛いねえ。俺たちとちょっとお茶しない?」
僕たちに話しかけてきたのは、鍛え上げられた屈強な身体つきをしている、冒険者のような装いをした男性の集団だった。リーダーらしき金髪の男は背中に大剣を背負い、スキンヘッドでひときわ立派な筋肉を持つ日焼けした浅黒い肌を持つ男性は巨大な戦斧を背負い、細身でチャラチャラした雰囲気の赤い髪の男は槍を持っていた。傍らには顔をすっぽりと隠すようにフード付きのマントに身を包んだ小柄な男がいる。
「俺たち、冒険者パーティーの【羊很狼貪】って言うんだけどさぁ、知らないかい?」
知るかそんなもん。
彼らはこっちが黙っていることをいいことに、自分たちからペラペラと自慢話を続ける。
あー、早くどこかに消えてくれないかな。昔、こういう連中に一日中追いかけまわされていたことを思い出すと、何だかすごくムカついてきたんですけど。
(・・・・・・【羊很狼貪】。B級クラスの冒険者グループ。全員が【オランジーナ】の出身で、評判が良くない。冒険者とは名ばかりのゴロツキ集団として、犯罪者ギルドから目を着けられている)
ビビ姉とアイキャッチで会話をして、彼らの素性を聞かされた。
何でも腕は立つが、素行が最悪で【オランジーナ】の冒険者ギルドでは厄介者として評判が最悪だった。自分よりも下のランクの冒険者たちにカツアゲ、暴行、女性メンバーに対する乱暴、報酬を横取りするなどあまりにもやり過ぎたために冒険者ランクをはく奪される直前で、オランジーナを抜け出して、世界中を旅してまわっている無法者集団らしい。
(・・・・・・”闇のギルド”と呼ばれている【懸賞金ギルド】では、彼らも賞金首に挙がっている)
(つまり、何かされそうになったら遠慮なくやっちゃってもいいわけだ)
(・・・・・・トーマ、目つきがまるで狼のように鋭くなっている。アイツの影響を受けた?)
そんなことはない。あんな二重人格者みたいな芸当、僕に出来るわけがないじゃないか。
「なあ、オレたちこの街に初めて来たんだけど、どこか、面白そうなところとかねえかなぁ?」
「案内してくれよ、カワイ子ちゃん」
そういって、いきなり僕の腕を掴み、肩に手を回してきた赤髪のチャラ男。そして、逃げられない様にスキンヘッドと金髪の二人が挟み込んでくる。さらに、背の低いフードの男が僕のことをいやらしそうな目でにやけている。
その視線の先は・・・豊満なこのメロンとお尻だ。フッ、哀れなヤツよ。まさかこの美女がただのちんちくりんの黒髪の男の子などと知ったら、どれだけ泡喰らうことだろう。
「結構エロそうな恰好をしているじゃねえか。もしかして、こういう風に誘われるのを待っていたとか?」
「・・・フッ、そうだね。いいだろう、このボクが君たちをとても楽しい体験が出来る場所に案内しようじゃないか」
ヴィルヘルミーナさんの喋り方ってこういう感じでよかったのかな?
あまり演技とかやったことはないから自信がないけど、頭の中でイメージしたヴィルヘルミーナさんのキザな言動や芝居がかった振る舞いをすると、彼らの鼻の下は一気に伸びていた。
「へへへ、それじゃあ、ちょっとこのお姉さんを借りていくぜぇ?おチビちゃん?」
「なあ、どうせならこの子も一緒に可愛がって・・・いや、楽しいことをして遊ぼうじゃねえか」
「お前そういうタイプが好みだもんな。でもこの間みたいにやり過ぎて、ぶっ壊したりするなよ?」
「ゲヘヘヘ、その時にはまた始末しちまえばいいだけさ」
男たちが下卑た笑みを浮かべて、胸糞が悪くなる会話を楽しそうにしているのを聞いて、僕とビビ姉の機嫌が一気に最悪なまでに下がっていく。うん、あまりの寒さで身体中の鳥肌が立つほどの悪意を感じるね。これはもうやっちまってもいいよね。
その時だった。
「いらっしゃいませぇ~。今、観光をされているとおっしゃっていましたよねっ♪実はぁ~、この先に新しく出来たいい感じの飲み屋さんがあるんですよぉ~♪あたし、そこのお店の売り子をしているんですけどぉ~♪」
さ、さ、桜ぁぁぁっ!?
アンタ、一体何をしているの!?そんなエロい恰好で!!
桜は何とバニーガールの姿に変装をしていた。
バニースーツの胸元を強調して、豊満な巨乳の谷間を見せつけるようにして、上目遣いで男たちを見つめながら、甘えた子猫のような声で話しかけてくる。
「・・・オオッ、コイツは」
「・・・へへへ、極上の美人じゃねえか」
「いい感じの飲み屋だぁ?おいおい、本当に満足させてくれるんだろうなぁ?」
そういって、金髪の男が下卑た笑みを浮かべて、桜の肩に腕を回して抱き寄せた。
その視線の先は、たゆんたゆんと揺れる豊満な胸の谷間に集中している。
(殺すか)
(・・・・・・トーマ、落ち着け)
(僕の相棒にそんないやらしい目で見るようなクズなんて、今すぐに電気椅子にかけて高圧電流を流すというお仕置きをしなければいけないんだ)
(・・・・・・それはもはや処刑)
(桜には指一本触れさせねえぞ、ゴルァ)
(・・・・・・最近、トーマがサクラに対して友情以上の感情を抱いているような気がする、不安な今日この頃)
過去に色々と遭ったし、殺されかけたこともあるけど、今では桜は唯一無二の相棒にして、人生において生まれて初めて出来た同性の親友と呼べる存在だ。そんな彼に対して良からぬことを企むなど、天が地が人が許しても、この僕が許さない。友情以上の感情だって?何それ、美味しいの?
とりあえず、まずは10万ボルトまで最大出力で出るスタンガンを、コイツらの急所に押し当ててフルで電流を流し込んであげようかな?
そして、彼らの腕を引いて、立ち去る瞬間・・・。
桜はこっちを視線だけ一瞬向けた。
その全身が凍り付くような、光が消え失せている瞳から感じたもの。
それは、想像をはるかに超えるほどの怒りと殺意、そして、狂気そのものだった。
”あとは任せて置け”
そう言って、桜が連中に気づかれない様に獰猛な笑みを浮かべていた。
「・・・・・・あの連中、終わった」
「・・・うん、五体満足では帰れないだろうね」
「・・・・・・あとを追う?」
「そうだね、とりあえずは衛兵さんたちにこのことを伝えておこう」
もしやり過ぎたとしても、彼らの素性やこれまでにやってきた悪事の証拠となる、さっきまで会話していた過去にやってきた悪事を録音したレコーダーを差し出して、桜が情状酌量の余地があるということを証明しなくてはならない。
しかし、どうしてあそこまで桜は本気で怒っていたのだろうか。
「・・・・・・ヴィルヘルミーナが襲われていると思って、本気で怒ったんだと思う」
「あ、そうか。でも、それなら、本物のヴィルヘルミーナさんをボコボコにしちゃったビビ姉も、あとでそのことを知られたら・・・ヤバいんじゃない?」
「・・・・・・ヴィルヘルミーナの姿を騙って、私とデートをしていたことを知られたら、トーマだって無事では済まない」
二人そろって、顔色がものすごく真っ青になっていく。
ヤバい、これ、もし桜にバレたら僕たちも命の危機を迎えるレベルのお仕置きをされる可能性が高い。
桜はああ見えて一度惚れた相手に一途でとことん尽くすタイプだから、ヴィルヘルミーナさんをボッコボコにしたビビ姉はもちろん、脅かされたとはいえ、彼女に加担してヴィルヘルミーナさんに変装をして誤魔化そうとする作戦を手伝ったなんてバレたら・・・本気でマズイ!!
「・・・・・・今のうちに、遺書を書いておいた方がいいか?」
「首を洗っておいた方がいいかもしれないね」
「・・・・・・何が何でも、命がけでバレずに乗り切ろう」
「うん、そうするしか他に生きて帰る道がないね」
ビビ姉に無理矢理巻き込まれたせいで、僕まで桜に命を狙われる可能性が出てきたんですけど。
そんなことになったら、夏休みがパァになるどころじゃない。この先の人生の全てが真っ白に消えてしまう。
「・・・今日一日、絶対にバレない様にしようね!」
「・・・・・・アイアイサー」
ビビ姉が真っ青な顔で震えながら敬礼をしている。
まさか、こんなことになるとは夢にも思っていなかったのだろうね。僕だって、どうしてこんな生きるか死ぬかの瀬戸際を迎えなくちゃならないのか、そう考えると悲しくなってきたわい。
「とにかく、まずは衛兵さんたちに報告をして、それからお昼に行こうか」
「・・・・・・了解」
ビビ姉もさすがに桜のお仕置きが怖いのか、ガタガタ震えながら頷いた。
どうか、桜にはバレませんように・・・!!
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【三人称視点】
一方、彼らはというと・・・。
「なあ、本当にこんな裏路地に酒場があるのかよ?」
「・・・ええ・・・ありますよ」
「それよりも、俺たちと一緒に楽しいことをして遊ぼうぜ?」
「ああ、たっぷりと楽しませてやるからよぉ・・・へへへ」
人気のない裏路地に連れ込まれてきた彼らが下品な笑みを上げると、桜の足がぴたりと止まった。
「ええ、たっぷりと楽しませてあげるわ。-涙が枯れるまでとことんな」
桜が振り返る。
それと同時に、フードの男の顔面に鞘に収まった状態の刀が突き出されて、強烈な突きが男の額に直撃した。男の身体が吹き飛ばされて、そのまま廃墟の壁にめり込むほど強く叩きつけられた。
フードの男は白目を剥いて、泡を吹いて気絶をしていた。
「なっ・・・!?」
「その男が魔法を使って、相手の身動きが取れなくする。そして、アンタらが乱暴をするってことか。そう言う手口で、これまでどれだけの女性を泣かしてきたんだろうなァ?」
さっきまでの猫なで声とは一変して、地の底から響くようなドスの利いた低い声からは怒りがにじみ出ている。全身から発する恐ろしい気迫に、男たちは圧倒された。
「な、何だ、テメェは!?」
「・・・あたしは【彩虹の戦乙女】下っ端構成員【幕ノ内桜】。お前ら、よくも俺の愛する人にちょっかいを仕掛けようとしたよなァ?覚悟してもらうぜ、このチンピラ以下のクズどもがよぉ・・・!!」
「ひっ!?ぐ、彩虹の戦乙女って、今、最も喧嘩を売ってはいけないと言われている、極悪非道の傭兵集団・・・!?」
「ううう・・・マジかよぉ・・・!?」
「・・・命乞いなんてしても無駄だからな。耳障りでしかねぇからよ。心配しなくてもすぐには殺したりしねぇよ・・・両手両足の骨を砕いて、ふくらはぎを切って、それから・・・へへへ・・・」
「じょ、冗談じゃねえかよ。な、なあ、勘弁してくれよ!!」
「冗談?・・・遊びじゃねえんだぜ?こっちはハナから喧嘩のつもりだったんだけどよ。喧嘩をするときには、相手を最初から殺すつもりでやるのが・・・俺の流儀なんだよ」
「チ、チクショウ!!こうなったら、やってやらぁぁぁっ!!」
男たちが動き出した瞬間。
銀色の光を放ち、鞘から抜身の刀が飛び出した。
桜が鬼のような形相でニヤリと笑い、男たちに向かって飛び掛かった!!
「ひぃっ・・・!!」
「思い切り、派手に泣かせてやるぜ!!」
「「「う、うぎゃああああああーーーーーーっ!?」」」
裏路地から、野太く汚い男たちの悲鳴が響き渡った・・・。
【悲報】斗真、ビビアナ、桜の逆鱗に触れる。
まずいことになりました。ヴィルヘルミーナがボコボコにされたこと(ビビアナ)、ヴィルヘルミーナに変装してビビアナに加担していたこと(斗真)がバレたら、世にも恐ろしいお仕置きを迎える羽目になります。
そして、彼女が襲われていると思い、瞬時に助けに向かう桜。
言動は軽いですけど、一度好きになった相手のためなら身体を張る熱い男をイメージして書いてみました。チンピラたちの末路については・・・次回明らかになります。
次回もどうぞよろしくお願いいたします!




