第一話「キウイ樹海の異変~男の娘たちは海で語り合いたい~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!
今回より第九章「キウイ樹海編~VS木の魔神~」に入ります!
どうぞよろしくお願いいたします!
【斗真視点】
とある日の昼下がり。
僕と桜、そしてユキちゃんの3人で、海が見渡せる高台の展望台に来ていた。
たま~に、息抜きをしたり、行き詰ってどうしようもなくなったときにはここに来て、よく叫んだりしているんだよね。海に向かって「バカヤロー!」って叫ぶと、不思議と気分がスッキリする。
太陽の光が降り注ぎ、南国特有の暑さを感じるけど、吹く風が気持ちよくって心地よい天気だ。
ーふむ、今日は雲一つない、いい天気だな。お弁当でも持ってくればよかったな。-
「そう思って、さっき、通りで唐揚げを売っていたから買ってきたよ」
-おおっ!それが人間の食べ物で”カラアゲ”というものか。実に美味しそうな匂いだ。-
僕が持っていた手提げの袋を開けると、揚げたてのから揚げの香ばしい香りが漂う。
うんうん、やっぱり男同士で集まって何が食べたいかと聞かれたら、から揚げは外せないぜ!
特に揚げたての、肉汁があふれる熱々のうちに、ハフハフと火傷しそうになりながら食べるのがいい。
「・・・サンキュ、兄弟。俺が千鶴のことでふさぎ込んでいたから、誘ってくれたんだろう?」
「え・・・?えーと、その、まあ・・・」
「アハハハッ、斗真って本当に隠し事が出来ねえヤツなんだな」
-まあ、そういうところがトーマのいいところでもある。-
よかった、とにかく桜が笑ってくれて、何だか胸があったかくなってくる。
さっきまで、かなり落ち込んでいたし、暗い顔で考え込んでいたからな・・・。
桜があんな思いつめた表情になると、自分のことをとことん追い詰めていることがあるからな。
「たまには野郎だけで羽を伸ばすっていうのも、ありだよな」
「何を言っているのさ。僕とユキちゃんは男だけど、桜はどこからどう見ても美少女じゃないか」
「ユキ、コイツを今から海に突き落としてやれば、いい加減俺のことを男と認めてくれるかな」
-さあ、やってみないと分からん。-
「ちょっと待て待て待てーーーっ!!人のことを持ち上げて、マジで崖から放り投げようとするなっ!!友情というものをもっと大事にしようじゃないかっ!!そもそもこんなところから落ちたら、認める前に僕死んじゃうからねっ!?」
「大丈夫だろう、お前週に平均七回は臨死体験をしても復活しているじゃねーか」
-悪運としぶとさだけなら、世界最強レベルだろうな。-
「さすがに崖から海に放り投げられたことはないよっ!?マジで死ぬわ!!というかユキちゃん、そんな風に思っていたの!?」
全く何て連中だ!!ユキちゃんも最近大アネキたちの影響を受けているせいか、やることとか言葉遣いが似てきたような気がする。ユキちゃんは純粋無垢で、クールで大人しい性格のままでいて欲しい。
何とか二人をなだめて、地面に放り投げられた後、潮風を感じながらから揚げをつまんで食べ始める。うーん、寄せては返す波の音を聞きながら食べるから揚げ・・・美味しい!パリッとした皮とあふれる肉汁、身が締まった肉の旨味の破壊力が半端ではありませんな。
「そういえばさ、キウイ樹海に出たダンジョンのことで、変な話を聞いたんだよ」
桜が二つ目のから揚げを食べながら、話題を切り出した。
「変な話?」
「ああ、そのダンジョンに潜ったものの、命からがら何とか脱出することに成功した冒険者の話なんだけどな。何でも、そのダンジョンは2階層しかないらしい。それにも関わらず、S級ランクの冒険者が挑んでも、誰一人として攻略に成功できないほど、難易度が高いんだと」
「2階層しかないのに、誰も攻略をすることが出来ないって、相当難しいってこと?」
「ああ、その上、その冒険者は奇跡的にも脱出を成功したんだけど、他の仲間は全滅しちまった。そのうえ、ダンジョンを攻略しようと挑んだ冒険者たちは・・・彼以外は誰一人として戻ってきていない。彼の話によると、冒険者たちは一人残らず、ダンジョンで命を落としてしまったそうだ」
ダンジョンを攻略して、無事生還できる確率が・・・ほぼ0%に近いということか。
「それでダンジョンについてなんだけど、どうも変な感じの仕掛けがたくさんあるらしいんだが、その仕掛けって言うのがどうにも訳の分からないものでな」
桜が言葉を濁し、こめかみを指でグリグリとしながら、どう説明をすればいい物かと悩んでいる。
「・・・変な仕掛け?」
「ああ、俺も最初に聞いたときにはどういうものなんだと思って、色々と想像をしてみたんだけど、どうにもピンと来ねえっていうかさ・・・」
桜がカーミラちゃんたちから聞いた、キウイの樹海の奥に現れたダンジョンに関する話とは、次のようなものだった。
『見たことも聞いたこともない、不思議な材質で出来ているデカいネズミのようなトロッコに乗って、急上昇や急降下を繰り返しながらゴールを目指す仕掛け』
『巨大なキラービー族の巣を改造した、巨大迷路。四方八方から怒り狂ったキラービーたちが追いかけてくるため、制限時間以内に脱出しなければ、キラービーのエサになる。蜂蜜まみれになること間違いなし!』
『古びた屋敷の中にはオバケがいっぱい!一度入ったら最後、出口に着くまで出られない恐怖の屋敷。ランプの灯りを照らして幽霊を追い払いながら屋敷の中を探索する仕掛け』
『木造りの船で地底湖を移動しながら探索していると、後ろから巨大なワニの怪物が追いかけてくる仕掛け。滝つぼ目掛けて落下する船を操作してゴールを目指す』
この4つの仕掛けをクリアしないと、奥にある出口とダンジョンボスの所にはたどり着けないらしい。
「・・・というかさ、これ、ダンジョンの仕掛けって言うよりは、遊園地のアトラクションみたいだよね?」
「・・・ああ、俺も最初は嘘だろうと思ったけど、フォグライトさんが仕入れてきた情報だからな」
しかしどうしてダンジョンの中にそんな仕掛けがあるんだろう?
まあ、大浦の時もそうだったけど、ダンジョンの中の仕掛けや内装はダンジョンマスターである魔神たちが自分のイメージを実体化させて生み出したものらしいから、おそらくこのダンジョンを仕掛けたのはそういったことが好きな魔神なのかもしれない。まあ、遊園地が好きな魔神なんてあまり想像できないけど。
「残りのダンジョンの情報についても、調べてもらっている。今のところ、新しい情報はそれだけだな」
「・・・残りの魔神は確か花房君、高森君、そして・・・光とつばさの4人だよね?」
「・・・ああ、高橋さんの話によればな。しかし、まさか花房と高森が魔神に憑依されていたとはね。花房のヤツについてはちょっと知っているけど、アイツはなかなかしたたかなヤツだね。桐ちゃんの腰ぎんちゃくをやっているようにも見えたけど、桐ちゃんや他の連中のことをどこか見下している感じだったね。まあ桐ちゃんは鈍いから気が付いていなかっただろうけどね」
「・・・したたかって?」
「アイツの実家はバーを経営しているんだけど、そこを利用する客の中には、裏の世界の人間も利用したりするんだよ。その中に自分が気に入った客を見つけると、そいつの身辺情報を調べたり、家の住所を突き止めたかと思えば、忍び込んで気づかれないように身の回りのものを盗んだりして、そいつに自分の言うことを無理矢理聞かせたり、または弱みを握ったりしているらしいんだよ。桐ちゃんたちのグループの活動資金は、花房が一任されていたみたいだよ」
ーふむ、まだ若いのに随分とやるものだな。-
「・・・もしかしてさ、花房君も僕たちのことを色々と調べ上げたり、弱みを掴んだりしているかもしれないってこと?」
もしそうだとしたら、今頃僕たちのすぐ近くに隠れていて、行動を逐一チェックをして、情報を手に入れているかもしれない。
「・・・そうかもしれないな。でも、あの造船所に関しては結界を施して、外からでは何も見えなくなているし、俺たちの気配を完全に消すことが出来る魔法陣をあの造船所付近に施している。つまり、あの造船所がいくつも建ち並んでいる港湾地帯に俺たちが入り込んでも、どの造船所に入ったかどうか分からなくなるようにしておいたよ」
「つまり、アルコバレーノについては知られる心配がないってこと?」
「まあ、今のところはな。陛下には屋敷を吹っ飛ばした罰ということで、強力な結界を張ってもらっているし、存在そのものをこの国以外の人間には探知できない様にしている」
しかし、花房君だったら何を仕掛けてくるか分からないというのが桜の見解だ。
まあ、ウチのクラスメートのほとんどが何を考えているのか分からない連中ばかりだしな。とにかく、正攻法で挑んでくるのは・・・いないだろうな。
「いずれにせよ、高橋さんの話によれば、残っているクラスメートは魔神を含めて花房、高森、寅若さん、高橋さん、そしてまだ確認が取れていないシエル・アンダーソンさんと、鮫島さん、そして・・・雁野と千鶴だ」
「・・・雁野美月、アイツは絶対に僕たちの前に現れるよね」
「だろうな。まあ、次に会った時には確実に倒さないといけないな」
「・・・うん、今度は1000倍返しなんて言っている場合じゃない。—確実に・・・”殺す”」
雁野に対する感情は怒りや憎しみというものなどなく、ただやらなくちゃいけないことだと認識している。僕たちの存在を脅かす存在なら、もう潰す以外の選択肢などない。
それが、戦う覚悟ともいえるのかもしれない。
その後も他愛もない話をして思い思いの時間を過ごした。
そして、どれぐらいの時間が流れたのか、そろそろ造船所に戻ろうとユキちゃんが切り出し、僕たちもお開きにすることにした。
大通りを歩いていると、何やら人だかりが出来ていた。
「・・・どうしたんだろう?」
「行ってみるか」
-そうだな。-
僕たちが人込みをかき分けて、噴水の近くに行くとそこにはカーミラちゃんとラムアさんがいた。
「・・・あ、サクラ様、トーマ様!大変です!!」
「カーミラ、ラムア、何があったの?」
「・・・これを見てください!」
カーミラちゃんが僕たちに見せてくれたのは・・・大量の衣服や下着だった。しかもこれ、全部女性のものばかりじゃないか。それに、この服どこかで見たことがあるような・・・。
「・・・なあ、これ、レベッカさんたちの着ていた服じゃねえか?」
-ああ、間違いない。この服から、アイツらの匂いと魔力を感じるぞ。-
「いや、ちょっと待って!?どうしてここに、大アネキたちの服が脱ぎ捨てられているの!?」
まさか、ニナが作った暗黒物質を食べて、頭がパッパラパーになって服を脱いで全裸ダッシュでもやっているのか?いや、アレクシアさんの逆鱗に触れて、着ているものをはぎ取られて、そのままの姿で追いかけまわされている可能性もあるな。もしくは、昼間からお酒を飲んで酔っ払って何かやらかしたとか?
「・・・トーマ様、どうして瞬時にそんなろくでもないというか、レベッカさんたちの自業自得な展開ばかりを思いつくことが出来るんですか」
「日常茶飯事だから」
「・・・いや、自分の恋人なんだから、少しは信用してやれよ・・・」
そんなことを言われても、しょっちゅうそういうことをやらかしているんだから仕方がない。
その時だった。
クイクイ。
うん?僕のズボンを誰かが引っ張っている?下を見ると、そこにはオレンジ色のウェーブがかかったロングヘアーにエルフのような尖った耳、そして片方の耳だけに着けているカフスが特徴的な可愛い女の子が立っていた。しかし、その女の子は身体を覆って隠すように大人のサイズの白衣を纏っていた。
あれ・・・?
この子、どこかで見たことがあるような気がするんですけど?
えーと、でも、もしかして・・・?
「・・・ウフフフフフフ、トーマちゃん、いい度胸ですわね~?あのバカ共ならまだしも、私のことまでそんな風に思っていたなんてぇ・・・心外ですわよ~?」
「アレクシアさんっ!?」
間違いない。
この朗らかな笑みを浮かべているけど、どす黒い殺意と怒りがにじみ出ている感じは、アレクシアさん以外に出来るものなどいない!というか、どうしてアレクシアさんが子供の姿になっちゃっているの!?
「・・・トーマちゃん、サクラちゃん、申し訳ございません。やられてしまいましたわ」
今のアレクシアさんはムチムチワガママボディーの大人の色香が漂う姿ではなく、ビビ姉のように胸がペッタンコで、僕の背丈の半分ほどしかない子供の姿になっていた!
今回のメインヒロインはアレクシアです!
そして、序盤の不幸な目に遭ったのが、斗真ではなく、まさかのレベッカたち。
日頃好き勝手やっている彼女たちについに天罰が下ったのか、今度の被害者はアレクシアたちになります。
次回、斗真の頭を悩ませる、新しいキャラクターが登場します!
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!




