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第九話「ハイデルベーレ要塞防衛戦➀~使い魔が出来ました!~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。

新作が完成しましたので、投稿いたします。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

 『クロスの勇者軍が、いきなり友好国だったはずのブラオベーレの王都ミルティユに襲撃を仕掛けてきた』


 テントで眠っていた僕たちの元に、真っ青な顔をして飛び込んできたタラスク族の見回りの人から話を聞かされた僕たちは一気に目が覚めるほどのショックを受けた。


 聖霊石をこれまでずっと提供してきた友好国に突然掌を返すかのような裏切り行為である。


 「おそらく鎌田さんを取り返しに来たんだと思う。でも、まさかここまで考えなしで行動するなんて!」


 「友好国とのつながりがなくなるということが、どれほどの被害を受けることになるのか分かっていないのか。その勇者というのは、随分と頭の中がお花畑のようだな」


 本当におめでたい頭をしているものだと思うよ。

 いくらバカな僕だって、これはさすがにまずいということは分かるさ。

 だって、これはどう見てもクロス王国がブラオベーレ王国に戦争を吹っかけているとしか思えない。


 「・・・これさ、本当に勇者軍が仕掛けたものかな?もしかしたらよ、誰かが勇者軍に入れ知恵したとか考えられねえ?」


 そこで、レベッカさんが冷静に言った。


 「つまり、お前はクロス王国の中にクロスを追い込もうと画策しているものがいて、勇者軍を利用して今度の騒ぎを起こしているのではないかと思っているのか?」


 「ああ、いくらその勇者がバカだったとはいえ、トーマが言っているような今まで戦いや戦争を経験したこともない素人がいきなりこんな大それたことを思いつくとは思えねえだろう。もしかすると、もうクロスの内部にはクロス王国が滅亡するためにどこかから密偵が送り込まれているのかもしれない」


 「なるほど。具体的な計画を立てたり、勇者に『ミルティユはクロスと友好を結んでいるが、その裏では魔族と手を組んでクロスを乗っ取ろうとしている』などと吹き込んだりすれば、勇者たちは当然ミルティユを敵として認識するだろうな。しかし、それだけではまだ疑惑を持たせるぐらいでしかないだろう」


 「その密偵が女だったらどうするよ?例えばさ、こう、誘惑とかしてよ。そもそも、勇者が高潔で正義感にあふれる人間だけが選ばれるっていうこと自体、オレは信じられねえんだよ。だってそれなら、どうしてトーマを殺そうとするんだよ?」


 「・・・ああ、なるほどな。それなら納得だ。所詮はその程度の俗物に過ぎなかったということか」


 レベッカさんの話をまとめると、クロス王国の内部、それも勇者軍と接見を図る事が出来る立場に置かれている人の中に、クロス王国を窮地に追い込もうとしている密偵がいるかもしれない・・・ということらしい。きっと鳳も、その密偵にそそのかされて今度の計画を思い立ったのだろう。


 まあ、確かにそう考えれば納得がいくよね。


 つい最近まで普通の高校生をやっていたというのに、いきなり他国の王都に襲撃を仕掛けようなんて考え付かないよね。


 「とりあえず、今はミルティユに急ぎましょう!まずは勇者軍を全員捕まえて話を聞き出さないと!」


 もちろんこの時点で、あの連中が大人しく話してくれるとは到底思っていないけど、その時はその時さ。

 まずは、ミルティユに攻め込もうとしている勇者軍を何としても止めないと!


 「ここからどのぐらい時間がかかる?」


 「ここから早馬を使っても、山一つを越えなければなりませんから、2時間はかかるかもしれません!」


 「・・・ううん、これを使えばもっと早く行けるかもしれません!」


 「え?」


 僕は懐から黄色の聖霊石、アイリスさんが封じ込められていた魔石を取り出すと、魔石に力を込めて瞳を閉じ、意識を集中させる。






 「裁縫、開始!!」






 黄色の聖霊石から放たれる光を指でつまむと、まるで光が糸のようにほどけていく。

 僕は雷のように神々しく光る糸を手で持つと、意識がどこか遠くに飛んでいくような感覚に襲われる。


 想像しろ。

 自分が生み出すものの、イメージをもっと強く、もっと鮮明に、集中して創り出せ。

 想像を止めるな!!


 「ま、魔石をまるで糸のようにほぐしているなんて・・・!!」


 「すげえだろ?でも、まだまだこんなもんじゃねえぜ!」


 「・・・見事な動きだ。魔石の糸を集めて布地を仕立て上げて、その布を加工していく一つ一つの作業に無駄な動きが一切ない。これほどなまでに美しい仕立ての技術は見たことがない・・・!!」


 アイリスさんが封じ込められていた黄色の魔石から感じられる、暗闇を切り裂いて迸る【雷】の力。

 雷の力を帯びた翼で闇夜を照らし、羽ばたく、鋭い目を持つ猛禽類の姿が浮かび上がった。


 「これで、完成!!」


 気が付くと、僕の手の中には雷の魔石で作られた黄色い【フクロウ】のぬいぐるみが出来上がっていた。

 そして、フクロウのぬいぐるみの目にはちみつ色の光が宿ると、ひとりでに浮かび上がって外へと出ていく。


 「お、おい!!」


 「ぬいぐるみがひとりでに動き出しただと!?」


 テントを出ていくと、フクロウのぬいぐるみが全身から黄色の光を放ち、見る見る大きくなっていく。


 -ピギャアアアアアアアーーーッ!!-


 そして、全身からバチバチッと電撃を迸らせながら、フクロウのぬいぐるみは巨大なフクロウのような姿へと変わっていた。口からは電撃のように空気をビリビリと震わせるような咆哮を挙げて、大きな翼を広げた。


 「これは、使い魔か!?使い魔を魔石から作り出すなんて、そんな技術など聞いたことがないぞ!?」


 「魔石を加工するだけでも相当な技術と魔力が必要だというのに、こんな短時間でこれほどなまでの強力な魔力を発する使い魔を生み出すなんて・・・!!」


 「ひゃーっ!!すっげえ!!トーマ、なかなかやるじゃねえか!!」


 レベッカさんが飛び上がるほどに喜び、僕に抱き着いてほっぺたに何度もチューをしてくる。

 アイリスさんは驚きのあまりに固まっているし、ブルーベルさんはその場で腰を抜かしていた。


 いや、その、まさか、僕だってこんなにすごいものが作れるなんて思っていませんでしたよ?


 僕が巨大なフクロウに近づくと、フクロウが鋭い目を僕に向けたかと思うと、目を細めて僕の顔に巨大な顔を近づけて頬ずりをしてきた。うわあ、すごくフカフカで暖かくて気持ちいいや。それに、最初は驚いたけど、よく見るとこのフクロウ人懐っこくて可愛いじゃん。


 「よしよし♥可愛いなぁ、お前」


 -キュルルルルルル♥ー


 うんうん、僕の言葉が伝わったのか、嬉しそうな声を上げている。


 「君の瞳は蜂蜜のように柔らかくて優しい色をしているね。そうだ、君の名前は【メル】にしよう!」


 ラテン語で蜂蜜のことをそう呼ぶんだよね。

 僕が名付けると、メルは嬉しそうに鳴き、僕に顔を何度も何度もこすり付けてくる。


 ーキュルルルルルル!キュルルルルルル!-


 「メル、今から僕たちどうしてもミルティユに行かなくちゃいけないんだ。悪いんだけど、ミルティユまで僕たちを運んでくれる?」


 -キュルルルルルルゥゥゥーッ!!-


 『任せておけ』と言ってくれているかのようにメルが僕の服をくちばしでつまみ上げると、肩まで運んでくれた。同じようにレベッカさんやアイリスさん、ブルーベルさんも肩に乗せるとメルはひときわ高い声で鳴き、翼をはばたかせて夜空に浮かび上がった。


 そして、ものすごい勢いで翼をはばたかせると、風を切り、目にも止まらない速さで飛んでいく。


 しかし、不思議なことに僕たちには風が当たらないし、振り落とされることもないように安定している。まるでメルが強風や衝撃、揺れから僕たちを守ってくれているようだ。


 「よっしゃあ!!これでミルティユまでひとっとびだぜ!!勇者軍の連中、今度という今度はギッタギタのメッタメタにしてやんぜ!!」


 「ああ、勇者が何をやっても許されるなどとという愚かな思い込みを徹底的に叩き潰してやらねばな」


 「そうだ、アイリスさん、今さっきこれが完成したんですが、これってアイリスさんの武器に使えますか?」


 それはついさっき、聖霊石の魔力が武器全体に行きわたってようやく仕上がったばかりの【弓】だった。


 アイリスさんが封印から解放された後に、レベッカさんの大剣と同じように魔石に宿る記憶を頼りに作り上げたものなのだが、魔石に宿る雷の力があまりにも強すぎたため、魔力が完全に武器に一体化して落ち着くまで、宝箱の中に保管しておいたものがようやく完成したのだ。


 腕を守る籠手が付いた黄色の魔石が埋め込まれている弓を渡すと、アイリスさんが興奮を抑えきれないような笑みを浮かべた。


 「・・・間違いない!これは、私が300年前に使っていた武器と同じ魔力を帯びている。手に持った感覚も、魔力の波動も懐かしい!!私の記憶を再現して、これほどのものを作り上げるなんて・・・!!」


 「・・・気に入っていただけましたか?」


 「ああ、お前はやはりすごい。お前が私の弟分であることが実に誇り高くて、心強くて、頼もしい限りだ。トーマ、お前は私が認めてやろう。お前は私にとって世界一の魔法裁縫師であり、最愛の弟だ!!」


 「うわっぷっ!?」


 あ、アイリスさん!?


 喜んでくれるのは嬉しいですけど、その、爆乳おっぱいに僕の顔を押し付けて強く抱きしめられると、い、息が出来ないんですが・・・!?


 「ああ、可愛いぞ♥私の心はもうお前に首ったけだ♥お前はクロス王国になど渡すものか。お前は私たちの可愛い可愛い弟分だ。私のことはお姉ちゃんでも、お姉さまでも、好きなように呼ぶといい!!血よりも濃い、魂と魂で結ばれた姉弟の絆は誰にも奪わせはしない!!」


 「そうだそうだ!!トーマはもうオレたちの大切な家族で、可愛い弟分だぜぇ♥ぜーったいに、お前のことを殺そうとするような連中の所には渡さねえからな!!姉ちゃんたちが守ってやるぜ!!」


 う、嬉しいことを言ってくれるのは分かるのですが・・・。


 二人で僕の頭をおっぱいで挟み込んだままサンドウィッチするのは、やめて・・・?


 い、息が、出来ない・・・。

 

 誰か・・・助けて・・・。

作中で出てきた【ブラオベーレ王国】がこのマリブを治めている大国で、王都が【ミルティユ】となっております。ガラパゴの村もブラオベーレ王国の領地の中にあります。つまり、もうすでに勇者軍は手遅れでした。


主人公、勇者軍と戦う前に窒息死寸前に。

ついているのかついていないのか、とにかく不運とハプニングに見舞われやすい星の下に生まれ付いたようです。女難と女装からは逃げられない運命に置かれています。


次回、アイリスの能力とステータスが明らかになります。


次回もよろしくお願いいたします!!

ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。


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[良い点] さくさく読めて面白い [気になる点] ハートを使いすぎ。しかも色つきでだから読む側としては違和感がある。 [一言] 変なのを付け加えなければもっと集中して読めます。ハートを使うなとは言いま…
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