第十三話「大団円はいつやってくる~魔導兵器、ついに完成!~」
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【三人称視点】
「・・・なるほど。よく分かった」
地の魔神ゼルザールを封印し、無事ブラオベーレの拠点に戻ってきた翌日。
状況の確認のために屋敷に訪れていたベアトリクス女王に、アイリスがこれまでの状況をまとめた報告書を挙げて、しばし目を通してから、彼女は深くため息をついた。
「・・・魔神は残り4体。そのうちの一人【風のタイフォン】はこっちに全面的に味方になるということは、非常にありがたい話だ。しかし、まさか水の勇者が【神々の黄昏】でこの世界だけではなく、他の世界まで滅ぼそうとしていたとはな・・・」
過去に、これほどまで世界に大きな影響を及ぼす事態を引き起こした異世界人はいなかったらしく、クロス王国が異世界人を召喚した儀式が原因で、クロス王国が自滅し、世界が滅亡の危機を迎えることになった現在の状況に、ベアトリクスは頭痛をこらえるようにこめかみを抑える。
「・・・何てことをやってくれやがった、あのバカどもは・・・!」
「まあ、シャルラッハロート様の話によれば、クロスとトーマたちがいた世界を繋げるためのトンネルみたいなもんは、世界中から魔力を吸い寄せて、それをエネルギー源として利用して発生しているらしいんだけど、そのうちの魔力が最も多く吸い寄せていた霊脈が二つ封印されているみたいなんだと」
「・・・タイフォンと、光の魔神ラディウスが霊脈を封印したことで、勇者も【神々の黄昏】を引き起こすことが出来なくなっているということか。そうなると、霊脈の封印を解くために、何か仕掛けてくる可能性があるな」
そうなると、つばさが封印を施した【ライムーンの塔】と、光が封印を施した【バナーヌの古代遺跡】に松本が姿を現す可能性が高い。結界が張られて、クロス王国に入ることさえできない現在の状況で、松本が結界の外に出てきてくれるというのは、襲撃を仕掛けるチャンスでもある。
「・・・確かにチャンスって言えばチャンスなんだけどよ、マツモトとかいう勇者の能力や実力が分からない以上、無策で襲撃を仕掛けていくのはさすがに無謀だよな。向こうももしかしたら、オレたちが出てくることを予想して、何か罠でも仕掛けてくるかもしれないしな」
「・・・レベッカにしては珍しく慎重な意見だが、私も同感です」
レベッカにしては珍しく慎重な意見だったが、他の隊員たちが納得したようにうなづく。
「まあ、ここで水の勇者が出てきたところを、一斉にフルボッコにするというのも一つの手かもしれないけど、勇者を倒したところで、クロスと向こうの世界のつながりがそのままだったら、こっちとあっちの世界の両方に大きな影響が出てくるかもしれないわね。まずは、トーマちゃんたちがいた世界とこっちの世界を繋ごうとしている、あの光を何とかしないといけないわね」
水晶玉に映し出された、クロス城からまっすぐ上空に向かって飛んでいる禍々しい赤色の光。
その光の先に、上下が逆さまになった状態で浮かび上がった未知の世界・・・斗真たちがいた世界が繋がっていた。
「まだ完全につながったっていうわけじゃないんだよね?」
「ああ、完全に繋がってしまった時こそ【神々の黄昏】が発動する時だと思っていいだろう」
神々の黄昏が発動する。
それはこの世界だけではなく、この世界と繋がっている別の世界も巻き込まれて、全てが無に還るという最悪の展開を意味している。
「・・・ところで、トーマとサクラはどうしたのだ?会議に出てこないなんて、何かあったの?」
ベアトリクスがずっと気になっていたことを尋ねると、全員の表情が気まずそうな表情に変わり、黙り込んでしまった。どよよん、と部屋の中が一瞬で真っ暗になってしまったことに、ベアトリクスは何かただ事ではないことが起きてしまったのかと思い、緊張が走る。
「・・・あの、それが、その・・・」
ヴィルヘルミーナが何かを言いかけた、その時だった。
「・・・遅れて申し訳ございません」
大広間の扉がノックされて、ギィィィ・・・と静かに扉が開いた。
そして、顔を出したのは・・・桜だった。
しかし、彼のいつもの面影はまるでなく、放っておいたら身投げでもしそうなほどに思いつめた表情をしており、目の焦点はあっておらず、さながら生ける屍と化していた。
「さ、さ、サクラァァァ!?い、い、一体、何があったというのかしら!?」
思わず椅子からひっくり返り、ベアトリクスが驚きの声を上げた。
「・・・どうかしましたか?」
「いや、どうかしたのは、サクラの方でしょう!?一体何があったの!?」
「・・・あたしはいつも通りですよ。ウフフフ、アハハハ」
(ヤベェ、完全に正気じゃない!!)
唇の端を釣り上げて、虚空を見つめながら乾いた笑みを浮かべている姿は、もはや不気味でしかない。桜の変わり果てた姿を目の当たりにして、ベアトリクスは思わず息をのんだ。
「・・・実は、ついに魔導兵器が完成したので、皆さんにお披露目したいと思いましてね。造船所に斗真もいるので、もしよければ、これから皆さんで見に来てくれませんか?」
「・・・そういう話は、もっと盛り上がるような表情で言ってほしいのだがな」
「と、とにかくそこに行けば、トーマちゃんもいるってことね?」
ベアトリクスは桜の案内で、造船所に向かうことにした。
なぜ桜がここまで追い込まれてしまったのか、そして斗真は一体どうなってしまっているのか、せっかくのクロス王国の結界を破壊する唯一の希望である魔導兵器が完成したというのに、一同はお通夜のような空気で、すっかり黙り込んでしまい、盛り上がる様子などまるでない。
(・・・ヴィルヘルミーナ、今なら足に重りをつけて海に沈めるだけで許してあげるわ。一体、何時間ぶっ通しでヤリまくったのかしら?それとも、オリヴィア、貴方もしかしてまたサクラの恥ずかしい写真をこっそり売りさばいたのかしら?電気椅子の刑で許してあげるから、白状しなさい)
(いやいやいや、それ、ボク死んじゃいますからね!?それに、今回はボクのせいじゃないですよ!)
(電気椅子の時点で、処刑やないですかい!!今回はウチでもありまへん!!ウチらそんなに信用がないんか!?)
(うん)
((断言しないでください!!泣きますよ!?))
常識があるかないかということに関しては、ベアトリクスがレベッカたちに向ける信頼はゼロである。
よくこんな信頼関係が皆無に等しいのに、最凶最悪の傭兵団と謳われるほどの凄腕の傭兵集団を直属の部隊として抱えているものである。(ベアトリクスも破天荒な性格に関しては、人のことは言えないのだが)
そして、海岸線に面している魔導兵器の開発を行っている元造船所の中に入ると、そこではオークやコボルト、オーガといった魔物たちや人間が汗水を流して一生懸命働いていた。クロス王国の理不尽な侵略まがいの謀略によって住処を失い、行く宛てのない魔物たちを桜の提案で引き取った彼らは、ブラオベーレの人間たちと協力して、クロスに一矢報いるために魔導兵器の開発に取り組んでいる。
「ベアトリクス陛下がお見えになられたぞ!!」
「一同、集まれ!!」
ベアトリクスを出迎えるように、作業を中断してみんなが一斉に並び、跪いた。
「ああ、楽にしていてくれ。急に押しかけてきて悪かった。みんな、ご苦労様」
造船所の中を見渡し、この中だけだが、確かに自分たちの理想である”人間と魔族が共存共栄を果たしている”平和な光景が確かにあった。協力して働き、食事をともに楽しみ、談笑をして笑いあうことが出来る打ち解けた彼らの姿に、ベアトリクスは感動で胸が熱くなる。
そして、ドッグに置かれている巨大な乗り物のようなものが見えてきた。
「・・・おお、これは!!」
「すっげえ・・・!!」
「まさか、このような巨大な魔導兵器を本当に作り出すとは・・・!」
「・・・・・・どんなもんだ、このビビアナ様を甘く見てもらっては困る。ふんすー」
「結構焦らしとったけど、まさか、こんなにドえらいもんを作っとったなんてな・・・!」
「あらあらまあまあ~、これはさすがに私もビックリですわ~」
「これが、新しい魔導兵器・・・!」
ベアトリクスたちは思わず驚きの声を上げる。
設計と開発に携わったビビアナも、これまでの発明の中でも1・2位を争うほどの自信作であり、鼻息を荒くして胸を張った。
そこに置かれていたのは、重厚な蒸気機関車を模した魔導兵器だった。
オリハルコンを溶かして鉄と混ぜて作った特殊な鋼のボディは、大砲の直撃を受けてもビクともしない頑強さを誇り、外装から車輪に至るまで惜しみなく使用されている。炭水車を模した魔力供給用のタンクでは、空気中から魔力を無尽蔵に吸い込んで、短時間で強力なパワーに変換する強力なマギエンジンに流れ込み、無公害な煙と共に煙突から排出される。
大型のガトリング砲、4門のミサイルポッド、長距離用のロングレンジライフルが搭載されており、強力な火力で一斉に攻撃を仕掛ければ、大型の魔獣でさえも圧倒するほどの破壊力を誇る、動く要塞ともいえる。
「これが、クロスの結界を破壊するための切り札・・・”アルコバレーノ”さ」
ボディの側面を見ると、そこにはレベッカたちの名前が刻まれて並んでいた。
Rebecca
Alexia
Iris
Nina
Bibiana
Olivia
Wilhelmina
大文字の頭文字だけを縦から読むと、「RAINBOW」=虹を意味する単語になっていることから、名付けられたという。
「現在と未来を繋ぐ希望の架け橋、世界を照らす光の象徴という意味でつけたんだよ。ちょっと厨二くさかったかな?」
「オレたちの名前が刻まれているぜっ!!いいっ、これ、すごくいいっ!!」
「あらあらまあまあ~、これは嬉しいですわね~」
「まだ魔導キャノンを打ち出すには、火力が足りない。そこで、残りの霊脈に封印を施して、霊脈の魔力をカートリッジに吸収させて、タンクに取り込もうと思っている。元々、霊脈の魔力を利用しているなら、魔力の成分を調べて、向こうの世界と繋がるための魔力を相殺する魔力に変えれば、結界を打ち消すことが出来るかもしれないからね」
「・・・そうか。これを開発していたからそこまで疲弊していたのか。本当にご苦労だった。大義である」
ベアトリクスは、桜がやつれている理由が魔導兵器の開発に精魂尽き果てるまで取り組んでいたからだと思い、目頭が熱くなる。
しかし、目の前で涙をぬぐうベアトリクスに対して、ヴィルヘルミーナとオリヴィアは何とも言えない、気まずい気分になった。
(・・・こりゃ、本当のことは言えないよね。元カノの勇者がこの世界どころか、自分たちがいた世界まで滅ぼそうとしていることを知って、ショックで落ち込んでいたなんてさ)
(・・・まあ、チヅルとかいう勇者がやらかしたことを聞かされて、ショックを無理矢理振り払うために、時間の流れを緩やかにする魔法をかけて、作業に没頭しとったわけやから、当たらずとも遠からずやけどな・・・)
実際は、千鶴が【神々の黄昏】を引き起こして自分たちがいた世界まで滅ぼそうとしているということを聞かされて、千鶴の狂気を見破れなかった自分自身に対する失望で落ち込みまくっていたのだ。そして、休憩を一切せずに、数十時間以上も魔導兵器の開発に没頭することで、傷心を何とか回復させようとしていたというのが真実である。意外と純情なところがあるのだ。
「ところで、トーマちゃんはどうしたのかしら?」
ベアトリクスが斗真を探して辺りを見回すと、部屋の隅にあるけが人用のベッドに寝かされている人物の姿を見て、目が止まった。
ベッドに寝かされていたのは、何と・・・斗真だった。
「・・・サクラ、トーマ君も相当ショックを受けていたみたいだけど、何があったの?」
「・・・寅若さんが自分のことを殺したいほど恨んでいると、高橋さんから聞かされてね。色々とあり過ぎて、ストレスが限界近くまで溜まっていたところにそんな話を聞かされたものだから・・・ショックで倒れちゃったの」
桜の言葉を聞いて、レベッカたちは斗真の心がついに限界を超えてしまったことを察して、表情が凍り付いた。
「と、トーマちゃん!!?ちょっと、何があったの!?しっかりしてぇぇぇっ!?」
斗真は灰のように真っ白に燃え尽きていた。
白目を剥き、唇の端を歪めて乾いた笑みを浮かべているその表情は、完全に絶望に染まっていた。
【朗報】巨大魔導兵器【アルコバレーノ】ついに完成する!
次回からは空、海、大地をかける機関車型魔導兵器に乗り込んで世界をめぐります!
機関車型のメカが大好きなので、気合を入れて書いていきたいと思います!
【悲報】斗真、幼なじみの女の子に「殺す」と言われて、ショックで廃人になる。
溜まりに溜まったストレスがついに大爆発。
これまでに報われることのない主人公に、幸せが訪れるのはいつの日のことか。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!




