第十一話「サファイア街道の戦い①~光の魔神、登場~」
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【三人称視点】
ブラオベーレを臨む、白く美しい砂浜と紺碧の海が広がる海岸を一望できる、のどかな自然と古城が建ち並ぶ【サファイア街道】。
冒険者たちの心を癒し、観光スポットとしても人気を誇る海岸に、異様な雰囲気を醸し出している一行の姿があった。
身なりがボロボロで、ヘドロのように濁った瞳をブラオベーレに向けたまま、狂気に歪んだ笑みを浮かべているもの、怒りや憎悪といった負の感情のみしか残っていないような鬼のような形相を浮かべているもの、感情をそぎ落とされたように無表情を浮かべているものなど、思わず距離を離れたくなるような悪臭と威圧感を放ちながら、ゆっくりと砂浜を歩いていく。
「・・・やっと見つけたぜ。あそこに、梶がいるんだな?」
悪意に満ちた、醜悪な笑みを浮かべている坊主頭で体格のいい長身の少年、【烏丸信玄】がブラオベーレを見ながら、後ろにいた【登坂修司】に聞いた。肩にかかる長髪をうざったそうにかきあげながら、修司は頷いた。
「ああ、間違いない」
「・・・あの陰キャ野郎だけが、どうしてS級ランクの冒険者としてみんなから慕われているんだよ。マジで気に入らねえぜ」
「本当だよね。こっちは雁野のせいで、クロス王国からは追い出されるわ、奴隷にされかけるわと散々な目に遭っているっていうのにさぁ・・・!」
「そうだよね。梶のくせに生意気だよねー。アイツがあたしたちを裏切ってバックレたくせに、一人だけ何幸せになってんのって感じ」
「本当だよ。梶くんだけずるいよ・・・許せない」
【印南若菜】が憤懣やるかたないといった様子で悪態をつく。
転移する前はクラスでも人気を誇るギャル系の金髪美少女だったが、長い間、風呂にも入れない過酷な生活を送ってきたせいか、手入れがされていなかった肌はボロボロになり、身体中から汗や体臭が入り混じった鼻につく匂いを放っていた。
若菜から少し離れて【海老沢鳴美】と【鮫島明日香】もついてきている。
「みんな、あのブラオベーレの町を焼き払って、梶の野郎を引きずり出してやろうぜ!!そして、アイツの目の前で、大切な街が俺たちの手で壊されていく光景を見せつけてやるんだ!!」
「あの町から全てを奪って!!女を犯して!!抵抗するヤツは目の前で殺してやれ!!梶に絶望っていうものを見せつけてやるんだぁぁぁっ!!」
「へへへ、楽しくなってきやがったぜ!!」
「私たちの能力がどんなものか、見せてあげなくちゃねぇ?」
「憂さ晴らしに、子供を何人か、見せしめに殺しちゃおうよ?私たちは選ばれた人間なんだからさぁ~?ねえ、えびっち?」
「・・・そうだね」
いきり立つ彼らの前を遮るように、一人の人影が立ちはだかった。
「・・・最低な連中だな」
「・・・テメェは・・・寅若?」
金色のメッシュを編み込んだセミショートヘアー、鋭い眼光を放つ金色の瞳、スラリとした長い脚が特徴的な女性・・・寅若光は腕を組みながら、烏丸たちを見下すような冷たい目で睨みつけている。制服ではなく、ノースリーブのシャツにフレアパンツ、黒い手袋を装着している姿は武闘家のような印象を感じさせる。
「・・・へへへ、こんなところで会えるとは思っていなかったぜ。アンタもどうだい?今から梶の野郎と、梶を匿っているあの町をメチャクチャにしてやろうと思っているんだけどよぉ」
「・・・何故町まで襲う必要がある。お前たちの復讐に、町の人たちは関係ないだろう」
「うるっさいわねー!あたしたちはね、雁野と梶のせいで結構ひどい目に遭ったんだから!梶をボコボコにするだけじゃ気が済まないのよ!!」
「どうせなら、この力を使ってやりたいことをやりたいようにやってやるぜ!!へへへっ、とりあえずあの町の女は全員捕らえて、俺たちのオモチャにして可愛がってやりてぇなぁ!!」
「歯向かうヤツは一人残らず皆殺しだ!ヒャハハハハハハッ!!そして、あの町を手に入れて、面白おかしくやってやるのさ。たまらねぇよなぁ、弱いヤツをいたぶって、犯して、嬲りまくるのはよぉ!!」
「あははは!!松本さんのせいで、ひどい目に遭ったんだ!!こうなったら、私たちよりも幸せそうにしている奴らを一人残らず痛めつけてあげるんだからぁ!!」
「もう何人も殺しているんだもん。今更何人やったって、同じことでしょ~?キャハハハッ!!」
悪鬼のような笑みを浮かべて、薄汚い欲望をさらけ出す姿はもはや人間のそれではなかった。
クロス王国から裏切られて、奴隷落ちまで仕掛けた彼らの精神はもはや常軌を逸脱しており、他者を傷つけて、犯し、奪うことに快感を覚えてしまっていた。
「・・・救いようがない、か」
光が冷たく吐き捨てた、次の瞬間。
「ヒャハハハハハハハハハ・・・あん?」
ゴロン。
烏丸の首が胴と切り離されて、地面に落ちて転がった。
自分の身に何が起きたのか分からないまま、その表情は醜悪な笑みを浮かべたままで固まっていた。
「・・・キャアアアッ!!」
海老沢が悲鳴を上げて逃げだそうとする。
そんな彼女に向かって、光の身体が光ったかと思うと、瞬時に海老沢の目の前に現れた。
海老沢はとっさに身構えるが、彼女の目の前には、光の右足が迫っていた。
グシャッ!!!
「かふっ・・・!?」
光のローキックを喰らい、海老沢の上半身と下半身がちぎれ飛んだ。
そのまま上半身が吹き飛んで、近くにあった大木に思い切り叩きつけられる。
強烈な衝撃で亀裂が入り、ゆっくりと倒れこんで、海老沢の上半身を容赦なく踏みつぶした。
「・・・えびっち?え、ちょっと、嘘でしょ?」
「・・・お、おい、マジで死んだのかよ?」
「・・・ど、どうして?」
目の前で烏丸と海老沢があっけなく死んでいった。
二人を瞬時に葬り去った光は、感情を見せない無表情を浮かべたまま、頬にかかった返り血を指ではじく。
「・・・ふん」
「お、おい、テメェ!!どうして、やりやがった!?」
「どうして、だと?人の命を奪ったんだ。お前たちだっていつかは理不尽に命を奪われることになるのが、当然のことだろう。覚悟はしていたんだろう?」
光は拳をギリリと握りしめて、腰をかがめてゆっくりと身構える。
「強者を語るなら、常に誰かから奪われる覚悟をしておくことだな。その覚悟もないくせに、自分の強さを弱者だけに向けて振りかざそうとする輩など、この世で最も哀れで愚かな負け犬だ!」
毅然とした態度、揺らぐことのない信念、彼女の言葉の一つ一つに力が込められていて、修司たちは圧倒される。迷うことなく、海老沢と烏丸の命を奪った彼女が本気であることを察して、恐怖で足がすくむ。
「・・・ふざけんじゃねえよ!このクソがぁぁぁっ!!」
印南が吼えると、赤い光を放ち、孔雀を模した異形の姿【アルゴス】の姿に変わった。
背中から生やした羽には無数の目玉がついており、それぞれが意思を持っているかのように、それぞれの目がぎょろぎょろと睨みつけている。
「や、やられる前に、やってやるぜっ!!」
「よくもえびっちを!!」
印南に続き、修司も鶏を模したような異形【コカトリス】の姿に変わり、ドラゴンのような強固な皮膚で覆われた尻尾を振り上げて、武器である双剣を身構える。そして、鮫島もノコギリザメのような頭部と、身体中に無数の棘を生やし、身体の各部に魚のヒレのような突起がついた【カリュブディス】の姿へと変わった。
その時だった。
「やめろっ!!」
凄まじい突風が吹き荒れて、光とコカトリスたちの間に現れたのは、つばさだった。
つばさは光の姿を見つけて、驚きで目をわずかに見開く。
「・・・光!」
「・・・つばさ。邪魔をするな」
「こんなことをやって、何の意味があるんだ!私たちが争いあっても、何もならないだろう!」
「・・・仲良しごっこなんてやるつもりなどない」
つばさの制止など聞く耳は持たないと言わんばかりに、光は構えを解かない。
「・・・それに、武器を持って誰かを襲おうとしている奴らに話し合いで解決できると思うか?もうすでに、コイツらが何人もの命を手にかけていたとしてもか?ここでコイツらを逃がしたことで、さらに犠牲者が出たとしても、お前はそれでも無駄な話し合いで解決しようとするのか?」
「・・・でも、だからといって殺すのは間違っている!!」
「・・・お前は邪魔だ」
光の姿が夕焼けのようなオレンジ色の光を放つと、頭部に虎の耳を生やし、胸や股間などを隠す程度に金色と黒色の縞模様の毛並みに覆われて、両手には鋭い切れ味を誇る巨大な爪を装着した【ワータイガー】の姿に変貌する。そして、止めようとしたつばさを押しのける。
「・・・光!!」
地面に倒されて、つばさが光を止めようと叫ぶが、彼女の耳にはもはや声は届かない。
「・・・戦いというものがどういうものか、教えてやる」
獰猛な虎のような唸り声を上げて、ワータイガーとなった光が牙をむいた・・・。
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一方、その頃・・・。
「何でこないな緊急事態の時に、転移魔法陣がぶっ壊れとんねん!!」
「・・・・・・お前らが使い過ぎて、乱暴に扱ったのが原因だろうが」
「・・・どこの誰だ?魔法陣を鍋敷きの代わりにしてぶっ壊したバカは?」
転移魔法でブラオベーレに戻ろうとしていた斗真たちだったが、なぜか、ビビアナのパワードスーツに二手に分かれて乗り込み、海の上を全速前進で飛んでいた。
そうでなくとも、メモ帳代わりに使って魔法文字を塗りつぶしたり、ジュースや酒をこぼして魔法文字を消したりとしまくっていたため、いつかは壊れるのが目に見えていた。そして今回は、冒険の途中で作った高温の鍋を置いたことによって、魔法陣が完全に壊れてしまったのだ。
「ごめんなさい、僕です!!」
「「「「「「「よりによって、トーマかよっ!?」」」」」」」
「本当にすみません!鍋敷きと間違えました!!」
「・・・マジかよ・・・頭痛い・・・」
桜は頭痛をこらえるように、こめかみを抑えた。
斗真のかつての親友、寅若光を登場させました。
格闘シーンをこれから書くためにも、格闘技の描写や表現をもっと勉強します。
そして、最後のシーンで珍しく斗真がやらかしました。魔方陣を鍋敷きと間違えて壊す主人公など彼ぐらいではないかと思っていただけるような作品が書けるように頑張ります!




