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第十話「知識の宮殿⑥~ビビアナVS地の魔神ゼルザール~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!

新作が書きあがりましたので、投稿いたします!

どうぞよろしくお願いいたします!

 【ビビアナ視点】


 -・・・はぁ、さっさと潰しておけばよかった。-


 私の姿を見て、宗像・・・ゼルザールは深くため息をついた。


 -全く面倒くさいけど・・・ここでアンタらを潰しておかないと、後々、もっと面倒なことになりそうだな!-


 「・・・・・・行くぞ」


 足を踏み出して、前に進もうとした瞬間、いつもとは違う感覚に驚いた。

 身体が、思ったよりも軽く動かせる。

 今まで、身体能力はみんなと比べると劣っていた分、魔導兵器に乗り込んで戦っていたけど、それと同じ・・・いや、それ以上の力強さで踏み切ることが出来ている。


 ゼルザールが繰り出す巨大な拳が目の前まで迫ってくる。

 目を離すことなく、私が次はどうするべきか、頭の中で素早く構築されていく。


 ゼルザールに一発を喰らわせるための、ルートが出来上がっていく。


 「ふっ!」


 拳の上に乗り、そのまま腕に飛び移り、ゴーレムの頭部に上半身だけを生やしている宗像に狙いを定めて、巨大な氷の塊を作り出すと、それをハンマーで殴り飛ばす!


 氷の塊が宗像に直撃して、ゼルザールの全身がよろめいて後ずさる。


 「・・・・・・弱点はそこか!」


 -・・・ぐっ!!時間をかけ過ぎたか。だが、私も負けるわけにはいかない!-


 ふうん、やっと感情というものを見せてきたか。これはかなり焦っているみたいね。

 ゼルザールが大きく吼えると、胸の周りに無数の岩石が生み出されて、尖った切っ先をこっちに向けて放ってきた。


 (ビビ姉、カタツムリの能力を使って!ジャイアントマイマイの殻なら、あんな岩石なんてビクともしないよ!)


 トーマのアドバイス通りに、頭の中でジャイアントマイマイの姿をイメージして魔力を発動すると、私の周りを覆いかぶさるように、巨大な氷の殻がバリアのように現れた。そして、次々と打ち出してくる岩石の刃をはじき返していく。


 -・・・ちっ!!-


 「・・・・・・今度はこっちの番だ」


 私はさっき、アイツがやっていたのと同じように殻を持ち上げると、バッティングの要領でハンマーで打ち付けて吹き飛ばした。無数の棘を生やした氷の殻は回転しながら、ゼルザールの胸部に直撃する。胸の部分を覆っていた装甲がはがれて、巨大な赤色の心臓のようなものが飛び出した。


 -ぐうううううっ!?-


 心臓をえぐられて、ゼルザールが大きくのけぞり、悲鳴のような声を上げた。

 そして、彼女の左腕の部分が崩れ落ち、音を立てて地面に落下した。そして、土塊で生み出された腕がボロボロと風化して、砂へと変わっていく。


 -・・・どういうことだ。どうしてこんな攻撃が効くんだ?-


 「オラァァァァァァッ!!」


 ハンマーを振り回して、土塊を打ち返し、ゼルザールの身体に次々と着弾して爆発する。

 この程度の攻撃じゃ、さほどダメージは与えられない・・・しかし、全くダメージを与えられていないわけじゃない。


 (ビビ姉、アイツに少しずつダメージを与えて行けば、あの心臓の部分が飛び出すみたいだ!)


 「・・・・・・私を相手にしたことが、アイツにとっての不運だったかもね」


 これは驕りでもうぬぼれでもなく、確信だ。


 私の【スキル】、それがアイツにとっては予想外の弱点だ。


 -・・・身体が思うように動かない。魔力もいつものように出せない?ー


 



 「・・・・・・それが、私の司る大罪”怠惰”の力だ!!」




 


 「・・・そういうことか。アイツ、自分の大罪の力を自分のものにすることが出来たのか」


 「それって、アイリスの左目や、レベッカの左手に刻まれている紋章の力と同じものかい?」


 「・・・ビビちゃんの持つ怠惰の力は、七つの大罪の中でも一番強いとも言われている怠惰。怠惰には、わたくしたちの大罪の全てを無効化してしまうほどの強い効果があるのですが、一度使用すると、ビビちゃんの身体や心にも影響を与えてしまうものなのですわ」


 「・・・なるほどな。怠惰は、全ての感情や欲望を否定し、希望を見いだせなくなる大罪。他の大罪は欲望の高揚によって生まれるものだからな」


 

 (・・・・・・昔から、自分の怠惰が上手くコントロールできなくて、どうすれば他の連中のように使いこなせるのか、ずっと考えていた)


 (・・・・・・使い方は分かっていた。でも、私には自分自身に対する希望なんて見出せなくて、怠惰を使えば、自分の大罪に飲まれて、そのまま堕ちていくのが目に見えていた)


 (・・・・・・でも)


 (・・・・・・今の私には、確かに、希望がある)


 「・・・・・・トーマがいてくれる。そして、仲間たちがいつも一緒にいてくれる。それが、私の希望なんだ!!」


 ”対象の全てのスキルや身体能力を、一時的に制限する”能力。

 それが、私の司る怠惰が生み出す技。


 身体能力、耐久力、素早さや魔力など一時的でしかないけど全てのスキルを通常の半分以下でしか動かすことが出来なくなる。


 頑丈が売りのボディの耐久度が半減した今なら、ゼルザール、お前のことを倒すことが出来る。


 倒すしかない。

 ここで負けたらみんなが死ぬ。


 生きるか死ぬかの戦い、私たちが勝って、未来を切り開く!!




 「雲霓之望うんげいののぞみ!!氷魔法・怠惰王の宝鎚(ブルー・ラグーン)!!」



 

 ハンマーから勢いよく冷気を噴き出して、ゼルザールの身体を凍らせながら、凍り付けた部分を思い切りハンマーで殴りつける!


 -ぐあああああああああーーーーーーっ!!!-


 凍り付いて、耐久力がほとんどなくなった腕が、脚が、身体中を覆っている装甲がハンマーを打ち付けるたびに、衝撃に耐え切れず、無数のひびが入る。


 (・・・私の計算が・・・完全に狂った・・・か・・・)




 「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 (喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!)




 私が頭上に振り上げたハンマーを一気に振り下ろし、ゼルザールの脳天に直撃する。


 そして、その後に冷気が集まって生み出した巨大な氷の拳が、地の魔神を容赦なく殴りつけて、そのまま地面へと叩きつけた。ゼルザールの腕が氷に覆われて、ボロボロと崩れ落ちていく。


 そして、ゼルザールの頭部が凍り付くと、重みに耐えきれなくなった両足が崩れ出して、ゼルザールは土煙を舞い上げながら、前のめりに倒れこみ・・・動かなくなった。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 【三人称視点】


 ゼルザールが倒れこみ、ピクリとも動かなくなった。


 その様子を見ていたレベッカたちは、目の前で起きている状況をただ茫然と見ていたが、ふとレベッカが我に返った。


 「・・・おい、これって、もしかして・・・アイツら・・・勝ったのか?」


 「・・・どうやら、そうみたいだな」


 土煙が晴れて、ゼルザールの近くに人影が見えた。

 

 それは・・・ビビアナを背負った斗真だった。

 ビビアナは斗真におぶさった状態で、レベッカたちに向かってピースサインを出した。


 


 「・・・・・・私と、トーマの、みんなの大勝利♥ブイ!」


 「・・・し、死ぬかと思った・・・ブイ・・・!」




 「・・・よっしゃあぁぁぁぁぁぁぁーーーっ!!!」


 「・・・よくやったぞ、トーマ!ビビアナ!!」


 「ビビちゃあ~ん!!さすが、ボクのマイ・エンジェル!!本当に勝っちゃったよぉ!!」

 「・・・・・・誰がお前のものになった。百回死んでみるか、エロ王子が。あ゛ぁん?」

 「ここでマジギレ!?嘘でしょ!?」


 「・・・大したモンやないかい。なぁ、サクラ?」


 「・・・知ってるよ」


 レベッカの感極まった叫び声で、ボロボロだった彼女たちの瞳に光が宿り、斗真たちに駆け寄る。

 斗真はみんなにもみくちゃにされて、フラフラになりながらも、何とか生きて帰ることが出来たことに、喜びをしみじみと感じていた。


 「・・・・げほっ・・・ごほっ・・・!!」


 後ろから大きく咽ぶ声が聞こえた。

 振り返ると、そこには人間の姿に戻った宗像が地面に倒れこんでいた。

 

 彼女の身体からオレンジ色の光の粒子が淡く噴き出している。


 「・・・兄弟、仕上げは肝心だぜ」


 「・・・うん、そうだね」


 桜の肩を借りて、斗真が霊符を持って宗像に近づいていく。

 

 「・・・私の計算が外れた・・・戦いの中で・・・学んで・・・成長するなんて・・・漫画や小説だけかと思っていたのにな・・・なかなかやるじゃない、梶・・・」


 「・・・僕だけじゃ絶対に無理だったよ。ビビ姉や、みんなが一緒に戦ってくれたから、勝つことが出来た。僕一人だけだったら、きっと何もできないままだったと思う」


 「・・・アンタたちの本当の強さを見誤ったことが、私の敗因か。悔しいけど・・・アンタたちは・・・大したものよ。私がずっと前に捨ててしまった・・・憧れていた強さを持ち続けている・・・どうして私は・・・捨ててしまったんだろうな。一人きりでいれば、誰からも裏切られることもない、信じる者は自分だけでいい・・・でもそれは・・・ただ逃げていただけ・・・だった・・・」


 宗像が斗真を見つめる瞳には、自分が過去に捨ててしまったものに対する憧憬の情が浮かんでいた。

 

 「・・・梶」


 「・・・何?」


 「・・・さっさと私を封印しろよ。そして、今すぐにブラオベーレに引き返せ」


 宗像の発言に、斗真と桜は嫌な予感を感じた。


 「どういうことだ?」


 「・・・雁野の部隊・・・”炎の紅騎士(レーヴァテイン)” の残党が・・・ブラオベーレに攻め込もうとしている。私にも手伝わないかって、スマホで連絡がきたから、間違いない・・・」


 「・・・ちょっと待って、それは本当か!?」


 「・・・ああ、面倒だからシカトしたけど、連中は本気でお前に報復しようとしている。雁野の暴走がそもそもの始まりだが、連中は雁野の勇者の称号がはく奪されると同時に、雁野の暴走に手を貸していたと断定されて、犯罪奴隷として鉱山に送られていたけど・・・更迭の途中で・・・兵士を殺害して・・・世界中を逃げ回っていた。自分たちがこんな目に遭ったのは、雁野と、お前たちのせいだと思い込んでいるようだ・・・」


 「・・・そんな!」


 「完全に逆恨みじゃねえか・・・!」


 「・・・早く急げ。これが、お前たちに対する、私なりの・・・賞賛・・・だ」


 そういって、意識を失った宗像は静かに瞳を閉じた。


 斗真と桜は顔を見合わせて頷くと、斗真が静かに霊符を彼女の上にひらひらと落とした。

 霊符が触れると、彼女の身体が光に包まれて・・・霊符の中へと封印された。


 「・・・急ごう。ブラオベーレが危ない!!」


 斗真の声で全員が頷き、崩壊するダンジョンから早足で脱出した。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 一方、その頃・・・。


 「・・・この、気配は!」


 屋敷で何かを探知したつばさが、一枚のカードをめくった。


 「【塔】の正位置。予想外のトラブルか。ユキさん、この先から邪悪な力を持った何かが迫ってきているようだ」


 ーブラオベーレに近づいてきているようだな。この気配だと、敵国の軍ではなさそうだが。-


 「斗真たちに留守を頼まれている以上、この街に手出しはさせない。ちょっと、出てくるよ」


 -ふむ、それなら我も行こう。この匂いは、明らかにトーマたちを狙っている、邪悪な匂いだ。腐り切っている、吐き気を催すような怒り、憎しみ、殺意・・・実に不愉快だ。-


 「・・・そして、解決のカードが示しているのは・・・え・・・?」


 めくったカードを見て、つばさは驚いた。




 そのカードは”力”の正位置だった。

次回、斗真と因縁のある新しい女性キャラクターが登場します!


宗像を封印し、残りの魔神は4体。

これから先も完結を目指して、頑張って書いていきます!!


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!!


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