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第九話「怠惰のビビアナ、覚醒②~怠惰を超える希望~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!

新作が書き上がりましたので、投稿いたします!

どうぞよろしくお願いいたします!

 【斗真視点】


 ラピス様から聞かされた話は、僕が想像しているよりも遥かに最悪の事態だった。

 まさか、こっちの世界と繋がっていた、僕たちがいた世界にまで影響を与えていたなんて。


 この世界が【神々の黄昏】によって消滅すると、ブラックホールのようなものに変わって、繋がっている世界まで飲み込んで崩壊させてしまうなんて冗談じゃない。しかもそのことを知っていながら【救済】といってこの世界だけではなく、僕たちがいた世界まで消し去ろうとしているなど、正気の沙汰ではない。


 というか、この事を桜が知ったらストレスで間違いなく胃に穴が空くかもしれないな・・・。

 ただでさえ、生まれて初めての初恋の相手がここまでやらかす人物だったなんて知った時は、どうして止められなかったのかとものすごく落ち込んでいたわけだし。えーっと、胃痛によく効く薬とかって、この世界にもあるかな?まずは桜にそれを飲ませてから、この話はした方がいいかもしれない。


 「・・・というか、それだったら松本を倒して、この世界とあっちの世界が繋がっているものを壊しちゃえば、世界はなくならないで済むってことですか?」


 「まあ、そういうことだな。それに、悪い話ばかりじゃねえんだ」


 「実は、クロスが他の世界と繋がろうとするために必要な魔力を吸い上げている、大陸の中でも最も強い魔力が一定の場所に溜まっている”霊脈”と呼ばれる場所が4か所あるのだが、そのうちの2つが、魔神の手によって封印されてしまっているんだ。それによって、クロスは思うように魔力を供給出来なくなっている」


 「つまり、あっちの世界とこっちの世界はまだ完全に繋がっている状態ではないということですわ。ですが、この二つのポイントの封印を解放されてしまったら、再び儀式が再開されてしまいます。首謀者の勇者は今頃、そのポイントの封印を解こうとしているはずです」


 なるほど・・・。


 でも、そこで一つ疑問が生まれる。

 いったいどうして魔神が霊脈を封印したんだろうか?


 「その封印をした魔神って?」


 「・・・一人は”風”を司る魔神タイフォン。今は”タカハシ・ツバサ”と名乗って、人間の女性の姿に化けているッスね」


 「つばさが!?」


 つばさが、松本の計画を阻止するために、霊脈を封印して魔力の供給を止めていたなんて知らなかった。それじゃ、彼女が僕たちの味方になってくれるって言う話は・・・本当だったんだ!!


 「・・・もう一人は”光”を司る魔神ラディウス。コイツも今は”トラワカ・ヒカル”と名乗って、人間の女性の姿に化けて行動しているみたいッス」


 「・・・光も!?」


 「おいおい、その二人、トーマの知り合いかよ?」


 「・・・幼なじみです」


 僕が答えると、シャルラッハロート様は「マジかよっ!?」と驚き、ルアン様も呆気にとられた顔つきになる。


 「・・・(リーダー)・・・」


 僕もつい、昔の呼び名を口ずさむ。

 僕たちがいつまでも強い絆で結ばれて、離れることはないと信じていたあの時の呼び名。


 目を閉じる。

 

 そこには喧嘩別れする前の光が、不敵な笑みを浮かべて微笑みかけている。





 ー斗真、私たちは3人いつまでも一緒だ。世界の誰にも負けない、最強の3人組だ!-





 世界の誰にも負けない。


 そうだよ。

 昔はそんなバカげたことを本気で信じていたんだ。

 僕と、つばさと、光の3人組ならどんなことだって怖くないって本気で信じていた。


 「・・・さて、もうそろそろ時間ッス。今からビビアナ、貴方に自分の魔力の全てを譲渡するッス。貴方には”怠惰を超える希望”を手に入れているッス」


 「・・・・・・怠惰を超える希望?」


 「・・・そうッス。元々うちらが司る大罪は”怠惰”。これはすべきことを怠けるというだけではなく、絶望に落ちて、未来に希望が見いだせなくなることも指しているッス。貴方は過去に何度も裏切りを受けて、他人に感情を見せることがなくなってしまった。他人に期待をすることをやめてしまった。それも一つの怠惰なんス」


 ビビ姉は思い当たることがあるのか、黙り込んだ。


 「・・・でも、レベッカたちに出会って、貴方は変わったッス。貴方が生み出した奇想天外な発明品が、彼女たちを幾度となく救ってきた。仲間と呼べる彼女たちと出会って、貴方は次第に心を開くようになった。貴方も彼女たちを信じるという希望が生まれたのと同じように、彼女たちにとっても貴方は希望なんス」


 「・・・・・・希望といわれても、私にはピンとこない」


 ビビ姉はどこか沈んだ様子でぽつりとつぶやく。

 何だろう、この感じは・・・不安になっているのかな?


 何となくだけど、ビビ姉とは付き合いは短いけど、不思議と彼女が何を考えているのか、僕には分かるような気がする。ビビ姉は頭はいいし、僕たちの中では一番年上のお姉さんだけど、人付き合いは・・・正直言って下手だ。自分の思っていることを素直に表現することが苦手というか、無表情という仮面を纏い、滅多に感情をあらわにしない(ミーナさんには一転して毒を吐きまくっているけど)のは、他人に自分を否定されることを恐れているような気がする。


 僕は意を決して、ビビ姉の前に立ち、彼女の瞳を見つめる。


 思い切り息を吸って、吐いて、言いたいことを何度も頭の中でリピートする。


 「・・・・・・トーマ?どうしたの?」


 「・・・ビビ姉・・・!!」


 



 そして、普段まともに回転することのない脳味噌をフル回転させて、思いついたことを言う!!






 「僕は・・・ビビ姉が・・・大好きだぁぁぁーーーーーーっ!!」






 「!?」


 ビビ姉が目を見開き、固まった。


 「背が小さくて可愛いビビ姉が好きだ!小動物みたいにいつもくっついてくるビビ姉が好きだ!ちっちゃいお胸を気にしているみたいだけど、僕はそんなちっちゃい胸が大好きだ!頭がいいのに、訳の分からない発明をしては爆発させまくるドジな所があるけど、可愛くて好きだ!毒舌で時々鋭いツッコミをすることもあるけど、そういうところも大好きだ!!」


 ビビ姉が自分に自信がないと思う余地がなくなるまで、とにかくひたすら好きだと言い続けてやる!!

 だって、大好きなんだから、仕方ないじゃん!!


 大きいおっぱいも大好きだけど、小さいおっぱいだって嫌いなんかじゃない!むしろ好きだ!

 ましてやビビ姉のような可愛らしい美少女だったら、なおさらのことじゃないか!

 しかも、この見た目なのに、年上のお姉さんなんだから!


 「ビビ姉が自分のことを信じられなくても、僕がビビ姉を信じる!!ビビ姉は、ビビ姉のことを信じると決めた僕を・・・疑う?」


 「・・・・・・ううん、疑うはずがない!」


 「ビビ姉が僕たちを信じてくれるのと同じように、僕たちも、僕もビビ姉のことを信じる!!絶対に僕たちだったらどんな相手だろうと負けない!!希望を分かち合うことが出来る仲間だから!!」


 「・・・・・・希望を分かち合う、仲間!」


 ビビ姉がハッと目を覚ましたように大きく目を見開き、少し何かを考え込んでいたが、やがて僕に顔を上げると・・・彼女の口元がわずかに吊り上がった。


 「・・・・・・そうだ。トーマを信じると決めた自分を信じることは出来る。アイツらのことだって、戦いのときには、心のどこかで連中と一緒ならどんなことだって乗り越えていけると信じていた」


 心のどこかで感じていた、希望。

 みんなと一緒なら、どんな危機でも乗り越えていけるという希望。


 自分の心の奥にあった希望を感じ取り、ビビ姉は、優しく微笑んだ。


 「・・・・・・トーマ、お前が私に希望を思い出させてくれた。私は私に出来ることをやるだけと割り切っていたけど、そういう風に出来たのはトーマやレベッカたちがいてくれたからだった」


 「ビビ姉!」


 「・・・・・・怠惰を超える希望、今ならわかる。当たり前のように思っていて忘れていた、初めてアイツらの仲間になった時の喜びも、信じあえる仲間が出来た時の嬉しさも、トーマという心から愛する人がそばにいてくれることの大切さも!!」


 初めて感じた興奮や喜び、嬉しさという感情はそれらが当たり前になると徐々にその新鮮さが色あせていく。大切なことなのに、あの時感じた喜びや高揚感、興奮を保ち続けていくことは意外と難しい。そしてそれが当たり前になるから、どこか冷めていく。


 自信がついたことを実感して、感じた嬉しさ。

 大切な仲間が出来た時に感じた喜び。


 それを一人だけではなく、皆で分かち合い、そこから希望というものが生まれる。


 「・・・・・・ラピス様、私、やる!!」


 「・・・その言葉を待っていたッスよ!」


 ラピス様が用意してくれた【氷結熊の毛皮】、【ジャイアントマイマイの殻】、【フローズンメガテリウムの毛皮】、【ミノタウロスの角】、【霊獣ヴァーハナの霊核】を青色の糸にほどいて、頭の中でイメージした魔法闘衣を仕立て上げる・・・!


 怠惰を超える希望。

 僕がビビ姉の希望になる。

 ビビ姉が僕を希望と思ってくれることに応えるために・・・!


 意識を集中させろ。

 一つ一つの縫い目に魔力を染み込ませて、頑丈で動きやすい魔法闘衣を仕立て上げることだけに集中しろ・・・!!


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 「・・・・・・出来た!」


 僕が仕立て上げたのは乗馬服をイメージした青色の魔法闘衣だった。

 胸元には【怠惰】と【希望】を象徴する氷の紋章を刻み込み、高貴なロイヤルブルーのジャケットとホワイトのズボンが映える作りに仕立ててみた。騎乗兵のビビ姉なら、これがピッタリだと思ったんだ。


 「・・・すごい出来ッスね。この魔法闘衣なら、自分の魔力を全て注ぎ込むことが出来るッス!」


 「当然だ、私が見込んだ魔法裁縫師なのだからな!」


 「何言ってやがるんだ、オレが先に見込んだんだよ!」


 ルアン様とシャルラッハロート様がまたヒートアップしそうになり、それをヴェルディア様が止める。


 「・・・・・・これが、トーマが私のために作ってくれた魔法闘衣!」


 ビビ姉は魔法闘衣をしばらく見つめて、興奮しているのか頬が赤く染まっていく。

 あまり感情を見せないけど、こういうところがものすごく可愛かったりする。


 「・・・それじゃあ、そろそろ魔力を注ぎ込むッスよ!もうそろそろ、この世界も崩れてきているッス。ビビアナ、覚悟はいいっスね?」


 「・・・・・・覚悟なら決めている。よろしくお願いします!」


 ビビ姉がそう言うと、ラピス様が青い光を放ち、その光が魔法闘衣に流れ込んでいく。

 そして、部屋に亀裂が生じると、青い光に包まれて視界が青一色に染まっていき、やがて何も見えなくなっていく。


 ー・・・この世界の崩壊を止められるのは、トーマ君たちだけッス。トーマ君たちは、私たちにとっても希望なんス。貴方たちに我々七大魔王の力を託すッス・・・!-


 ラピス様の声が頭の中に聞こえてきたと思った瞬間、僕の意識は途絶えた・・・。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 ー・・・これが、話に聞いていた魔王の力?-


 目を覚ますと、宗像の声が聞こえてきた。

 どうやら、元の世界に戻ってきたようだ。現在、僕とビビ姉は一つになっている状態だ。


 「・・・・・・怠惰と希望を司りし騎士、ビビアナ・ブルックス、ここに参上」


 ビビ姉の姿は、僕の予想をはるかに超えた姿に激的な変化を果たしていた。


 身長は170㎝を超えるスラリとした長身になり、髪の毛も腰まで伸ばしたポニーテールになっていた。

 乗馬服の魔法闘衣を着こなし、長く伸びた脚の美しさを強調するような真っ白なズボン。

 両手には熊の爪を施した手甲を装着し、不死鳥をデザインした髪留めで髪の毛を縛り、ブーツにはヴァーハナ神(ロバの姿をした神様)の紋章が刻まれている。


 まるで宝塚に出てくる麗人のような、洗練された美貌を持つ女性へと成長を果たしていた。


 「ビビアナが大きくなった!?」


 「これが、ビビちゃんの魔王になった姿やて・・・!?」


 みんなもビビ姉の変身した姿に目を丸くして、驚きの声を上げている。


 



 「・・・魔王になっても、胸はぺったんこのままなのだな」





 ピシッ、と空気が凍り付くような発言をブチかましたのは・・・アイリスだった。


 ビビ姉の胸の部分は・・・悲しいまでに絶壁だった。

 あれ、おかしいな?ニナの時は巨乳になったのに、ビビ姉の胸はどうして大きくならないんだ?


 「・・・あー、そういえば昔、こういうことわざを聞いたことがあるよ。”ベルフェゴールは胸を見ず、頭を鍛えよ”ってね」


 「確か、ベルフェゴール一族というのは血の関係か、魔力の性質のせいか分からないが、代々貧乳というか、発育が普通の女性と比べると幼い姿のままで止まってしまうという実例があるな」


 「そうそう。意味は”世の中には理屈ではどうすることも出来ない運命というものがある。欠点と嘆くことよりも、知識と教養を高めて、中身を成長させたほうがいい”っていうない物ねだりを戒める言葉だね」


 ミーナさんとアイリスの言葉が、ビビ姉の胸にザクザクザクと突き刺さる・・・!!


 「・・・・・・私のおっぱいが大きくならないのは・・・・・・運命・・・・・・?」


 確かに、ラピス様も小さかったけど、これが魔力や血の性質によるものだとしたら、これはもうどうしようもないのだろう。


 ビビ姉の顏が真っ青になり、目に涙を浮かべて震えだす。


 そして、表情は・・・完全に絶望に落ちていた。


 ちょっと待て!?さっきまで希望に満ちていたのに、地獄のどん底に落とされるってどういう展開だよ!?


 「でも、ボクはそんなビビちゃんの小さくて、可愛らしい小ぶりなおっぱいが大好きさ!!今すぐに抱きしめてあげたいぐらいだよ、マイ・プリンセス♥」


 ミーナさんは目にハートを浮かべて、ビビ姉に熱いラブコールを送る。

 しかし、それはもう完全にとどめだろう。桜も「あ、もうコイツ終わった」とどこか諦めたような表情になっているし。


 「・・・・・・うふ、うふふ、うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ、くけけけけけけけけけけ」


 「・・・び、ビビちゃん?」


 「・・・・・・頭の中で、何かが切れた」


 そう言った瞬間、ビビ姉の身体から床一面が凍り付く強烈な冷気が噴き出した!


 空気が凍り付く冷気を放ちながら、ビビ姉は無表情のまま、歪んだ笑みを浮かべている。


 「・・・・・・大丈夫。トーマはこの胸を、私を、愛していると言ってくれた。だから絶望などしない。今やるべきことをきちんとやり遂げる」


 そう言って、ビビ姉はミーナさんを振り返る。


 「・・・・・・ヴィルヘルミーナ」


 「な、なんだい?」


 「アトデ、ブチコロス」


 爽やかないい笑顔で、中指を立てて言いきった。


 死刑宣告を受けて崩れ落ちるミーナさん。

 そして、宗像に向き直り、巨大なハンマーを持って身構えた。


 「・・・・・・覚悟しろ」

 

【悲報】ビビアナ、魔王になっても貧乳は変わらず。貧乳の原因は【血の関係】【遺伝】【運命】。


【悲報】ヴィルヘルミーナ、戦いの後に、ビビアナから処刑宣告される。


今回はどんな展開にしようか、悩みました。


次回もどうぞよろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 宗像のセリフに、ー・・・これが、話に聞いていた魔神の力?- ってありますが、それがビビの事なら魔王の力では?
[一言] 今回、斗真は愛でられませんでしたね まあ怠惰だからめんどくさがってやらないだろうとは思ってたし こんな事態知ったらそれどころじゃないだろうしね あと、今更ですが シャルラッハロートが斗真を…
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