第三話「知識の宮殿①~ゲームは1日1時間~」
本日二回目の投稿をいたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
【斗真視点】
さあ、やってきました【ファジー・ネーブル】!
コアントロー大陸の中でも、巨大なオアシスの近くに建てられたこの街は【砂漠の花園】、【知識の宮殿】と呼ばれており、世界中から観光客が訪れる有名なスポットらしい。
僕たちが熱砂を踏みしめて、ファジー・ネーブルの玄関口でもある城門にたどり着くと、そこでは傷ついた兵士たちが治療を受けているテントが建てられて、衛兵らしき人たちが甲冑を着込んで、長槍を構えて太陽の照り付ける暑さにも歯を食いしばって耐えながら、城門を取り囲んでいた。
「トーマ様!!こちらです!!」
テントの中から、アンジェリカ元王女が飛び出してきた。
確か、アルビナ元王妃様とアンジェリカ元王女が身を寄せているサビアと友好国の関係を結んでいるファジー・ネーブルの異変を聞きつけて、率先して傷ついた兵士たちの手当をしているんだったな。
「包囲網を敷いて、地の魔神を逃がさないようにしているんやけど、博物館の中に立てこもったまま、全く動きがあらへん。どんな手段に出るか分からへんから、こうして警備を厳重に敷いとるんやけど、衛兵たちが暑さにそろそろ限界を迎えとるんや!」
「そりゃそうだろうね。こんな太陽が照り付ける砂漠で甲冑を着込むなんて、自殺行為でしかないからな」
「それなら、これを使ってください!他の衛兵さんたちの分もすぐに作りますから!」
僕は水の魔法布と鋼の魔法布を一度糸にほぐすと、そのまますぐに鎖帷子のように編みなおして、ニットのインナーのような防具を仕立て上げた。あらゆる攻撃を弾き返す頑丈な鋼属性の糸と、熱を吸収して快適な温度を保ちつつ、水属性の回復効果で体力と魔力を回復させる効果のある【癒しの鎖帷子】だ。
「・・・おおっ!?身体がさっぱりして、気持ちがいいぞ・・・!!」
「これを着込んで甲冑を着込んでも、さっきまでの焼けつくような熱さが嘘のようだ!」
「これなら気合を入れなおして、また戦えるぞ!」
鎖帷子を着込んだ衛兵さんたちが驚きの声を上げて、気力を取り戻していく。
さらにアレクシアさんが準備した柑橘類の汁を絞って、冷やした即席スポーツドリンクを飲み干すと、身体中に水分と程よい塩分を吸収した衛兵さんたちの表情が見る見る覇気を取り戻していく。
「ぷはああああああっ!!い、い、生き返るぜっ!!」
「・・・あ~~~っ!!よし、気合を入れなおして、もうひと頑張りだ!」
「ああ、この知識の宮殿を魔神だか何だか知らねえが、好き勝手になんてさせねぇ!!」
威勢のいい声を上げて、休む間もなく自分たちの陣地に戻っていく衛兵たちを見て、ビビ姉の瞳が驚いたように少しだけ目を見開いていた。
「それにしても、騎士団や衛兵たちが束になっても敵わないとはな・・・」
「兵士たちの話によると、ムナカタはゾウのような魔物【ガネーシャ】の姿になっていきなり襲い掛かってきたそうだ。剣で斬ろうが、槍で突こうが、彼女が生み出す岩石の盾に弾かれて手も足もでなかったらしい。さらにその盾は火炎弾や電撃と言った魔法さえもはじき返してしまったそうだ」
「そして、一気に乗り込もうとしても結界が張られていて、手も足も出せないようだ。それと、妙なことを言っていたぞ。城門に近づこうとすると、中から『選ばれし9人の知識の追究者たちよ、この知識の迷宮の謎を解き明かして見せよ』と言われたらしい」
「・・・そのフレーズ、どこかで聞いたことがあるような」
アイリスからの報告を聞いて、桜が何か心当たりがあるのか考え込む。
このフレーズ、僕もどこかで聞いたことがあるような気がするんだよね。
「・・・よっしゃ、とりあえずオレたちも状況がどうなっているのか、見てみようぜ」
大アネキに言われて、僕たちは臨戦状態になっている城門に近づいて様子を見ることにした。
僕たちが城門に近づいた、その時だった。
「・・・・・・?」
突然、世界が一瞬だけ”揺らいだ”。
そして、今までのいた場所とはどこか違う違和感を感じて辺りを見回す。
後ろには、アンジェリカさんや衛兵たちが立っていて、さっきと変わらない風景が広がっている。
しかし、僕たちが一線を超えて、目の前に広がっているさっきまでいた世界とは違う世界に入り込んでしまったような違和感を感じてならない。
『選ばれし9人の知識の追究者たちよ、この知識の迷宮の謎を解き明かして見せよ・・・!』
突然どこからか声が聞こえたかと思うと、城門に大きくスクリーンのようなものが現れて、博物館のような建物に流麗な英語の文でタイトルが表示される。
『ファンタジック・ミュージアム!!』
「・・・そうだ、思い出したよ。これ、ファンタジック・ミュージアムのオープニングじゃん!」
「そっか、僕も思い出したよ!!」
「・・・ファンタジック・・・何やて?」
「スマホゲームだよ。僕たちの世界で、最近ものすごく人気なゲームなんだ」
『ファンタジック・ミュージアム』とは。
プレイヤーは賢者見習いの魔法学園の生徒となって、世界最大級の博物館『アルカディア』で卒業試験を受けに来た途中で、アルカディアを乗っ取った邪悪な魔法使い『ラプラス』から博物館を取り戻すために、ラプラスが仕掛けたゲームに挑んで、博物館を取り戻していくというボードゲーム。
最大9人まで同時プレイが可能で、武闘家や僧侶、魔法使い、遊び人といった様々な職業や豊富なスキル、多彩なイベント、経験値を稼いでいくことによって自分のキャラクターを成長させていくという育成型RPGの要素と、一人で楽しむシングルモードとチームに分けて楽しめるパーティーモードがあり、若い世代から中高年の世代まで楽しめるゲームとして、現在、最も注目されているスマホゲームとしてバズっている。
「戦闘だけじゃなくて、クイズとか、パズルとか、止まったマスによってさまざまなイベントが起こるから、バランスよく成長させていくやり方もあれば、一つのスキルに経験値を集中して突っ込んで、専門的な分野に特化したタイプのキャラを育てるのもありと言われているんだ」
「・・・・・・つまり、トーマの世界にある娯楽用の玩具といったところか」
ビビ姉だけがどうやら理解してくれたらしく、感心したように唸っている。
『・・・私の新しいダンジョンにようこそ。そこに、プレイヤーが9人揃ったみたいだね』
どこからか、宗像さんの声が聞こえてきた。
「宗像、博物館を乗っ取って何をするつもりだ?」
『それが知りたければ、このゲームを攻略して最深部のコントロールルームにいる私の所に来なよ。私が監修したこのゲームを、幕ノ内たちが攻略出来たらの話だけどね』
「・・・まさか、僕たちがテンカン草を手に入れるのを邪魔するつもりなの!?」
冗談じゃない!!
テンカン草を手に入れて、薬を作ってもらわないと、僕たちはこのままずっと女の子の身体のままなんだぞ!?きっとこのままじゃ、大アネキたちから毎日のようにメイド服とか、スクール水着とか、恥ずかしい衣装を着せられて、セクハラされ放題の地獄のような日々を送らないといけないんだ!!
「そうはさせないぞ!!僕たちだって男の子としての人生を奪おうとしても、お前の思い通りになんてさせない!!」
『梶、お前は一体何を訳の分からんことを言い出すんだ!?』
「このままじゃ、僕は女の子として、ブラジャーとかパンティーとか女の子は着なくちゃダメだって言われて、無理矢理着せられてしまうんだ!!僕の人生が色々と終わってしまってもいいって言うのか!!この人間失格の、冷血漢の、サディスティック・クリーチャーめ!!」
『どうしてそこまで言われないといけないのだ!?とっくに人間なんてやめているし!!というか、お前が何を言いたいのかさっぱり分からん!!ああもう、お前の相手をしていると頭がおかしくなりそうだ。さっさとゲームを始めるぞ』
「斗真落ち着け!!冷静になって考えろ、たとえこのまま女の子の身体のままだろうと、男の身体に戻ろうとも、女装を無理矢理させられるなんて今に始まったことじゃないだろう!?」
「そう言えばそうだったぁぁぁーーーーーーっ!!」
ガッデム!なんてこったい!!
今までずっと目を背けてきた真実を突きつけやがって!!
「・・・俺たちはもう逃げられないんだよ・・・この女装地獄から・・・あの痴女たちの魔の手からは・・・もう諦めて全てを受け入れた方が楽になれるぞ・・・?」
「・・・兄弟・・・一緒に地獄に落ちようか」
『幕ノ内も一体どんな目に遭ったんだ!?目が死んでいるし、まだゲームも始まっていないうちから、何を勝手に絶望しているんだ!?』
「・・・どうせ俺たちはもう、まともな男の人生なんて歩けないんだよ・・・」
「・・・笑いなよ、笑いたければ笑えばいいじゃん」
『ああ、もう、訳が分からん!!ゲーム・スタート!!』
宗像がさじを投げたような、ヤケクソの声が聞こえた瞬間。
僕たちの足元に魔法陣が浮かび上がって、そのまま光の中へと飲み込まれていった。
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【レベッカ&アイリス&ニナチーム 大地の間】
【三人称視点】
「うおっと・・・!」
「・・・ここは、どこだ?見た感じ、どこかの遺跡のような作りをしているが」
魔法陣が現れて、そこから飛び出してきたレベッカ、ニナ、アイリスは辺りを見回して状況を確認する。薄暗い神殿か遺跡のような岩が積み上げられている建物の内部には、青白く燃え上がる不気味な炎がたいまつとして揺らめいている。
「・・・どうやらここは博物館の中みたいね。大地の間と呼ばれている、鉱石とか遺跡から出土された聖遺物や出土品などが展示されているエリアにいるってことぐらいしか分からないわ」
ニナが影を這わせて情報を説明するが、思ったように影が上手く操ることが出来ない。
魔法を発動させようとしても、まるで制御がかかってしまっているかのように、魔力を出せなくなっていた。
『・・・ああ、そうそう。このゲームの中では、探索とかそう言う魔法はアイテムを取らない限りは使えない様になっているわ。ゲームをクリアするためには、貴方たちがいるこの世界のゴールにある異空間転送装置の切り替えスイッチを押さないと、元の世界には戻れない。そこにあるダイスを振って、出た目の数だけしか進めないようになっているから、ルールに従って行動すること』
「ケッ、生憎オレたちは言うことを聞くのが大嫌いなんだよ!!こんなところ、丸ごと焼き払ってやるぜ!!」
レベッカが大剣を取り出して、炎を出そうとしたが・・・炎は出なかった。
「・・・あれ?おい、嘘だろ、炎が出ねえぞ!?」
「・・・罠だったか。私もさっきから雷を出そうとしているが、出てこない。どうやら本当に魔法が使えないようだな」
「マジかよ!?」
「つまり、このゲームを攻略しないと、この異空間からは出られないってこと!?」
宗像が言っていたことが本当だということを理解して、アイリスが悔しそうに表情を歪めながらダイスを持って、思い切り放り投げた。
「郷に入っては郷に従えというヤツか!」
ダイスの目は【3】を指し、レベッカたちは3マス進んだ。
【マミーが現れた!戦闘開始!】
レベッカたちの前に魔法陣が現れて、そこから【マミー】が現れた。
褐色の肌を持ち、身体中に包帯を巻きつけて、長い黒髪を揺らしながらどんよりと光のない瞳を向けて、身構えている美しい女性の姿をした・・・アンデッド系モンスターだった。
「ほんぎゃらぱっぱっぱぁぁぁぁぁぁっ!!!イヤッ、嫌だ、ミイラ女が出たぁぁぁーーーっ!!!」
ニナの恐怖のゲームの始まりを告げるゴングとして、博物館中に響き渡った。
斗真&桜、絶賛やさぐれ中。(気にしていないとは言っていたけど、やっぱり怒っていた)
ニナの絶叫がゴング代わりとなって、宗像との対決が始まりました。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!!




