第二話「ビビ姉の過去~ミステリーな騎乗兵は意外とできる人だった?~」
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「・・・補強はこれで良しっと。桜、そっちのジャケットの補強はどう?」
「ああ、バッチリだ。竜の魔力を糸に変えて縫い込んだから、火炎や電撃をはじき返す強度までブチ上げた。これだけの補強を施せば、多少の物理的攻撃にはビクともしねぇ」
セントラル・ミュージアムに向かうことになった僕たちは、念には念を入れて大アネキたちの装備のメンテナンスに取り組んでいた。ベリス姉さまがくれた不思議な置時計の力で、部屋の中の時間だけがゆっくりと流れている中、万が一の漏れがないように補強をしていく。
「・・・・・・あんな目に遭わされたというのに、あの連中の装備を念入りにメンテナンスをするとか、お前らお人好しにもほどがある」
「それとこれとは話が別でしょ。それに、ニナも悪気があったわけじゃないし・・・」
「・・・いちいちツッコんだり、怒っていたら、あたしたちの精神が持たないっての」
深くため息をつきつつも、こんな破天荒な日常が当たり前のような感じになってきている今日この頃。
それに、今頃はこの話を聞きつけたベリス姉さまから雷を落とされていることだろうから、とりあえず今は装備の補強に精神を集中しよう。
僕たちは魔法裁縫師。
どんな時でも、仲間が傷つかない様に装備の強度やメンテナンスを怠らないのが、僕たちなりの矜持ってもんだ。
「それで、どういうところなの?その、セントラル・ミュージアムって」
「・・・・・・別に、ただのデカい博物館」
「なかなかのものだよ。古今東西の貴重な文献や、古代生物の標本などが数多く展示されているからね。元々は魔法技術の研究を行うために建てられた施設だったんだけど、魔法技術に様々な知識を取り入れるために、世界中から様々な資料を取り寄せて、そのうち、世界最大級の規模を誇る巨大な博物館になったからね」
「ほう、世界最大級の博物館とはすごいな」
話を聞いていたつばさやユキちゃんも目を見開いて、驚いていた。
ビビ姉は無表情だけど、少しだけ照れているのか、頬を赤く染めてそっぽを向いている。
「世界最大級の博物館の創立者であるビビちゃんにとっては、鼻が高いだろうねぇ?」
「・・・・・・うるさい、永遠に口を閉じていろ、色ボケ」
「え」
え?
ビビ姉が、世界最大級の博物館の創立者・・・?
「・・・本当だ、このパンフレットに、ビビアナさんの名前が載っている。初代館長にして、創立者。そして、300年前では世界で最も注目されていた世界最年少の天才博物学者にして魔法技師と書かれているぞ」
「すごい!確かにビビ姉、何を考えているのかさっぱり分からないけど、意外と物知りな所あるよね」
「・・・・・・魔道具の研究をするときに、生き物の身体の仕組みとか、材料となる鉱石や魔石を採掘する時に、どの年代の地層にどういうものがあるのか気になって調べていたら、いつの間にか、研究者たちが集まってこんなデカい施設になっていた」
「若干8歳で、その当時は100万分の1の合格率と言われている魔法技師の資格を手に入れた、世界最年少の魔法技師になった天才少女だったんだよ」
「・・・・・・いいから黙れ、埋めるぞ、色ボケ」
「え?」
「・・・・・・博物館が300年の間に増設とかしていなければ、内部の構造はだいたいわかる。それに、あそこには貴重な展示品を盗まれないように、防犯用のトラップはいくつか仕掛けておいた。その中に、ちょっと厄介なものがある」
「厄介なもの?」
「・・・・・・異空間転送装置」
異空間転送装置?
「・・・・・・展示品を無許可で持ち出そうとしたり、武器を持って乗り込んできた犯罪者が出た時に、発動する防犯システム。建物の中に、5つの異空間を作り出してその空間に強制転移させる。死にはしないけど、体力的にも精神的にも廃人一歩手前まで追い詰める様々なトラップやアトラクションで鎮圧させることが出来る」
「・・・そんな危険なシステムが誤動作したら、大惨事になるんじゃねえのか?」
「・・・・・・大丈夫、異次元空間を展開する魔法陣に供給される魔力を遮断すれば、システムは解除される。まあ、その世界では物理的な干渉は無効化されるから、力ずくでは出られない。内部にあるシステム解除スイッチを見つけられない限りは出られない」
そうやって、泥棒たちが疲れ果てて抵抗する気力を失った時に、解除して捕まえると言った仕組みになっているそうだ。
「・・・やりすぎというか、かなりえげつないシステムだよね」
「・・・・・・何事にもやるからには全力で取り組むのが、私の流儀。ふんすー」
「それだけの実力と地位があるのなら、どうして傭兵に転職したの?」
「・・・・・・人間関係に疲れたから」
ビビ姉の話によると、彼女の功績を妬んだ研究者たちから、陰口を叩かれたり、嫌がらせをされたりすることがあったらしく、その報復として異空間転送装置を始めとする様々なイタズラ用魔道具を作り出しては、自分に突っかかってくる連中全員を痛い目に遭わせたらしいのだが、その中に、上流貴族のお偉いさんがいたらしい。
ビビ姉に冤罪をなすりつけて、館長の座から引きずり下ろして自分が館長になり代わって、博物館の実質的な支配者になろうとしていたらしいのだが、その目論見があっさりとバレて、ビビ姉から過激なお仕置きをされまくって、心身ともにボロボロの状態になって追い出された。しかし、そのことがお偉いさんの親に知られて、バカ親から猛抗議を受けまくり、ビビ姉は一時孤立して、白い目で見られたらしい。
後日、その貴族がやらかしていた悪事が全てバレて、然るべき裁きを受けることになり、その家族も息子が犯罪にまで手を染めて博物館を自分のものにしようとしていたことを知っていて止めなかった、それどころか自分たちのものにしようと企んでいたことが発覚して、その貴族の家はお家取り潰し、領地没収、絶海の孤島に島流しとなってしまったのだ。
「・・・・・・あとで手のひらを返したように媚びへつらい、すり寄ってくる連中の対応が面倒くさくなって、こっちから出て行ってやった。それなら命がけの自由を追求する冒険者をやろうと思った。そんな時に、レベッカに誘われて、ここに入ったってわけ」
ああ、ビビ姉ってそういう薄っぺらい人が大嫌いだもんね。
そして、自然に僕の背中に抱き着いて、ほっぺたに何度もキスをしながら、ビビ姉はいつもの無表情で話を続ける。ええい、猫かこの人は?自由気まますぎる!
「・・・・・・5つの異空間はそれぞれ【天空の間】、【海底の間】、【大地の間】、【自然の間】、そして【兵器の間】の部屋となっている。この防犯システムを、ムナカタとか言うヤツとか、邪眼一族に目を着けられていなければいいんだけど。あくまでも防犯システムだから、命までは取られはしないけど、改造されると厄介な兵器になる可能性もある」
確かに、その近くに宗像さんがダンジョンを構えている以上は、この博物館に興味を持って、何かを仕掛けてくる可能性もあるよね。
その時だった。
僕の通信機に着信が入った。
「はい、斗真です。・・・ベリス姉さま?何かあったんですか?」
通信機に連絡をしてきたのは、何とベリス姉さまだった。
『・・・トーマちゃん、悪い知らせよ。アルビナ公爵令嬢から【ファジー・ネーブル】の町が、地の魔神と名乗る人物に乗っ取られたという連絡が入ったわ。準備を整え次第、早急にファジー・ネーブルに向かってちょうだい!』
マジかよ!?言っている矢先からやらかしたか!
「分かりました!今、桜たちと一緒に装備品のメンテナンスも終わったところです。これから、ファジー・ネーブルに向かいます!」
『気を付けてちょうだい。地の魔神は駆けつけた警備隊や騎士団の連中をたった一人で壊滅させて、博物館の中に立てこもっているそうよ。まるで、トーマちゃんたちを待ち構えているみたいだわ』
「・・・十中八九そうでしょうね。でも、どうして博物館に襲撃を仕掛けたりしたんでしょうか?」
「そりゃ、あの博物館には最先端の技術を追究する魔道具の研究が行われているんだ。大浦の時もそうだったけど、もし、その技術を利用して魔導兵器を作って侵略かなんかに利用されたら、大変なことになるぜ」
そうか、あそこには魔道具や魔導兵器に関する文献もあるし、素材も揃っているもんな・・・!
しかし、まさかそれが狙いで博物館を狙うなんて・・・!
「・・・兄弟、気を引き締めてかかるぜ。宗像はこれまでの奴らとは違う。ガネーシャの強大なパワーに加えて、超高校級の心理学者と呼ばれるほどの、人間心理を巧みに操ることに長けている天才だからな」
ピラミッドで見た、宗像さんの強力なパワーを思い返す。
うん、あれは無策で特攻したら確実に返り討ちに遭う。かといって、どんな対策を打てばいいのだろうか?まあ、そういうことはみんなで移動しながら話し合って、対策を考えるしかないな。
「彩虹の戦乙女、出動だね!」
「・・・・・・人の古巣で好き勝手やりやがって」
僕たちは魔道具の電源を切ると、部屋から飛び出した。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「・・・異次元空間を作り出すなんて、異世界って本当に面白いものがあるのね」
一方その頃、宗像沙織はセントラル・ミュージアムのコントロールルームを見回しながら、珍しく目を見開き興奮した様子で、感嘆の声を上げていた。
「私たちの世界にあるヴァーチャルの技術でも、ここまでのものはないわね。この防犯システムを考え付いた【ビビアナ・ブルックス】っていうのは、本物の天才ね」
彼女はビビアナの作った異次元転送装置のコントロールパネルに手を添えると、目を閉じて、オレンジ色の光を放つ魔力を注ぎ込む。
(ここのシステムを知った時、私の能力を最大限に生かせる場所だと分かった。でも、システムのプロテクトがものすごく厳重で難解な作りをしていて、容易く侵入することも出来なかった)
彼女はダンジョンを構えて冒険者を待ち受けるふりをして、実はセントラル・ミュージアムのセキュリティに侵入するために、何度もハッキングを試みていたのだ。心理学者として天才的な頭脳を持つ彼女でも、ビビアナが開発したプログラムに侵入することはたやすいことではなく、何日間も飲まず食わず寝ずで取り組んでいた。
そして、ついにセキュリティを突破して、内部に潜入することに成功したのだ。
「・・・異次元空間にあるシステム解除装置を切れば解除できるシステムを乗っ取ることは出来なかったけど、ここまで潜ることに成功すれば、私の能力も十分に使える」
不敵な笑みを浮かべて、左手にスマホを持ち、右手をコントロールパネルにかざした。
「空間魔法、発動。能力名ー”遊戯管理者”」
彼女を中心に空間が揺らめき、まるでヴァーチャル映像のように空間が切り替わっていく。
博物館の床にはいくつものマスが浮かび上がり、建物の内部を一周するようにコースが作られていく。
「使用するゲームは”ファンタジック・ミュージアム”。さて、本物の天才である貴方の実力、お手並み拝見させてもらいますよ。ビビアナ・ブルックスさん」
宗像が不敵な笑みを浮かべた・・・。
ビビアナ、実はかなりハイスペックな頭脳と華やかな実績の持ち主でした。
それなのに、斗真と出会ったことによって一気にポンコツ化・・・。
次回、世界最大級の博物館を舞台に、斗真たちが大暴れいたします!!
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