第十八話「斗真の過去①~悪友~」
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【桜視点】
「・・・あのさ、斗真。ちょっと質問をしてもいいかい?」
「・・・うん、いいよ。答えられる範囲でなら」
俺は深くため息をついてから、質問をする。
「まず、どうしてここにアイリスさんがいるのかな?確か、レベッカさんたちと一緒に今度の不祥事の反省文を書かされているはずじゃなかったか?」
俺の後ろに、斗真を抱きしめているアイリスさんの姿を見て、頭が痛くなってくる。
ちなみにレベッカさんたちは、俺たちの入浴しているところや、着替えをしているところを勝手に盗撮した罰として、一人につき1000枚の始末書を書かされることになった。(斗真の写真を町中にバラまいたビビアナさんとアレクシアさんにはその3倍の3000枚の始末書を書いてもらうことになっている)
「そんなもの、とっくの昔に1000枚書き終えたから、ここにきているに決まっているだろう」
「それじゃ次の質問、どうして斗真をお姫様抱っこをしながら歩いているのかな?」
「それは私がトーマを愛しているからに決まっているだろう」
うん、全然答えになってねえ。
それに、質問をしているのは斗真なんだけど。
「・・・それじゃ、アイリスさん。斗真はどうしてそんなカラカラのミイラのような状態になっているの?」
「・・・一晩中、愛し合ったからだな♥」
やっぱり、そうだったのか・・・。
愛し合ったと言えば同意の上での行為だろうけど、それが、夜寝ている間に斗真の部屋に忍び込んで、彼を無理矢理押し倒してそのまま・・・という形になったということは、斗真の変わり果てた姿を見れば大体の見当はつくのだが。
「・・・アイリス・・・夜這い・・・一晩中・・・」
「・・・あのねぇ、盗撮や覗きをやらかして怒られたばかりなのに、貴方たちには反省というものがないのかい」
「済まないとは思っている。しかし、トーマに対する思いが抑えきれなくなり、ガマンが出来なくなった。後悔はしていない。まるで生まれ変わったような気分だ。世界の全てが光り輝いて見える。本の真似事ではなく、本当に心から愛している人と愛し合うというのは、実に素晴らしいことだったのだな」
目をキラキラさせながら、割とろくでもないことを言っているアイリスさん。そんな彼女に抱かれて、もはや抵抗する気力もないまでに搾られまくり、ミイラのような姿となった斗真は虫の息だった。
今までは感情や恋愛というものがよく分かっていなかった分、斗真を心から愛しているという自分の感情に目覚めたせいか、今までよりも遠慮なく斗真をベタベタ可愛がり、甘えまくるアイリスさんはまるで自我に目覚めたフランケンシュタインのようにも思える。
「桜、お前が斗真の兄弟分となったと聞いてな、改めて言わなければならないことがある」
「何ですか?」
アイリスさんは真剣な表情で、顔を真っ赤にしながら意を決したように大きな声で言った。
「ふ、ふ、ふしだらな嫁ですが、何卒、よろしくお願いいたします!!」
俺はその場で派手にズッコケた。
「い、いや、それを言うなら”ふつつかな嫁ですが”じゃないかな!?ふしだらじゃない!てか、そんなことを大っぴらに白昼堂々、大勢の人前で言うことじゃないと思うけど!?」
「む、そうか。それなら改めて、み、淫らな嫁ですが、何卒、よろしくお願いいたします!!」
「淫らでもねえ!!ふつつかだ、ふつつか!!アンタ、そこまでバカだったか!?」
「と、と、トーマのことになると、頭の中が真っ白になって、自分が何をやっているのか分からなくなる。わ、わ、私、壊れて、しまったのかもしれない」
アカン、アイリスの頭から煙が噴き出して、パニックを起こしている!!
感情に目覚めたばかりのロボットかよ!?
「・・・どうしたんだ?あまりに大声で騒いでいるから、みんな、こっちを見ているぞ?」
そこにやってきたのは、高橋つばさだった。
彼女は、俺たちの状況を見て、何が起こっているのか分からないと言ったように首をかしげる。
・真っ白に燃え尽きたミイラのような姿になった斗真を抱きしめているアイリスさん。
・人前で、堂々と自分のことを「淫らな嫁」「ふしだらな嫁」と連呼しまくり、パニック状態になっている。
うん、どう説明すればいいのかさっぱり分からねえ。何だ、このカオス。
とりあえず、目の前の不審者を衛兵に突き出すか、通報するかが正解だろうな。
まあ、とにかく、俺たちは高橋さんを連れて拠点の屋敷に向かった。
★★★★★少女たち移動中★★★★★
俺たちは屋敷の地下にある、落ち着いた雰囲気のバーにやってきた。
ここは俺たちにとってもお気に入りの場所なので、落ち着いて話が出来る。
「・・・いい感じのバーだな。映画とかに出てきそうだ」
「まずはそこに座ってよ。俺、何か冷たい飲み物でも入れてくるから」
「ふむ、ハーブティーを入れようか。私に任せてくれ」
アイリスさんと一緒にハーブティーとお菓子を用意すると、俺たちもソファーに座って一息ついた。
「・・・しかし、よく魔神の私をお前たちの屋敷で預かることを、魔王が許可したものだな」
「まあ、彼女は下々の民の意見にもしっかりと耳を傾けてくれる素晴らしいお方だからね。それに、魔神の力を利用して良からぬことを企むバカ共がどこにいるか分からないからね、それなら、俺たちの所に預けておいた方が安心ってことさ」
「ベアトリクス陛下に、トーマとお前の隠し撮りの一件を部下たちにバラされたくなければ、その条件を飲めと脅しておいて、よくそんなことが言えるな」
「・・・斗真もかなり無茶をやらかす方だけど、幕ノ内も意外と無茶をするんだな」
「・・・そういうことは言わないでいいっての。まあ、君には色々と聞きたいことがあったからね。いちいち面会の手配をするのも、面倒だしな」
冷たいハーブティーを飲んで、一息つくと、高橋さんが周りを見回す。
「・・・そういえば、他の人たちはどうした?」
「ああ、彼女たちは先日盛大にやらかしてね、今頃、ヤマタノオロチ様の下で反省文1000枚書き取りの刑を受けているころさ。こっちに戻ってくるのは、明日以降になるかもねぇ。特に斗真の写真をバラまいて恥をかかせたビビアナさんとアレクシアさんには、滝に打たれて精神を鍛える修行も受けてもらうことになったから」
「・・・あとで、アレクシアさん絶対に報復しようとするだろうね」
「だろうね。まあ、せいぜい楽しませてもらうとするさ」
「・・・幕ノ内がそういう性格だったというのは意外だな」
まあ、クラスでは誰に対しても表面上では笑顔で明るく接する陽キャを演じていたしね。心の中では、自分が心を許している家族以外はどうでもいいって見下していたけど。
「・・・私に聞きたいことがあると言っていたが、まず、何から話せばいいだろうか」
「・・・つばさが知っていること、全部話してほしい。魔神たちの動きや、光のことも」
「・・・光、か」
斗真と高橋さんが意味深な溜息をつく。
「・・・二人と、寅若さんのことについて、昨日、斗真から話を聞いたよ。何でも、君たち3人は幼なじみだったんだってね。小学校からの付き合いで、仲が良かったそうじゃないか」
俺は昨日の夜、斗真から高橋さんと寅若さんが、小学校からの付き合いだったという話を聞いていた。 しかし、俺が知っている限り、斗真が学校で誰かと一緒に話している姿は一度も見たことがない。いつも一人で教室の隅で本を読んでいたり、屋上で寝ていたり、とにかく一人で過ごしていた。
他人を寄せ付けないって感じだったからな、あの時の斗真は・・・。
一匹狼というか、いつも鋭い目つきをしていて、近づいてくる人を寄せ付けないオーラを出していた。 今のレベッカさんたちの玩具にされている姿からは想像もつかないんだけどね。
「・・・そうだ。光と私、そして斗真はお互い両親が仕事で家にいない鍵っ子同士でな。家に帰っても一人ぼっちで、弟がいた光の家にみんなで集まって遊んでいた。実の両親よりも長く一緒に過ごしてきたかもね。私と、斗真と光と、光の弟の”明”の4人で遊ぶことが唯一の楽しみだった」
「・・・俺たち、何があってもずっと固い絆で結ばれている、最強の三人組だ、なんて言っていたよね。陸さんたちに憧れてさ」
陸さん、という言葉に俺は聞き覚えがあった。
三人組・・・。
三神市・・・。
陸さんってもしかして・・・。
「・・・それって、ひょっとして喫茶店【三羽ガラス】の緋色陸、常盤天、群青海のことかい?三神市でその名を知らない不良はいないと言われている、伝説の不良たちのこと?」
「・・・うん、僕たち、その喫茶店にいつも集まって遊んだり、陸さんから喧嘩を教えてもらったりしていたんだ。陸さんたちは僕たちにすごく優しくしてくれてさ、僕たちもいつか陸さんたちのような三人組になりたいって思っていた」
「あの時が、今思えば一番楽しかった時だったかもな。ずっと私たちは何時までも一緒だと、本気で信じていた。一人の男に、二人の女の3人組なんていつかは斗真を取り合ったりするのかと思ったが、私たちはこの3人でつるんでバカなことをやって遊ぶのが大好きだった」
なるほど、あの鬼のような強さは、あの3人組に育てられてきたからか。
そりゃ、常人離れする強さを手に入れるわけだ。あの3人は、町中のヤクザが束になっても敵わねえからな。
そこで、俺はあることに気づいた。
「・・・うん?だったって、どういうことだ?」
「・・・私たちはもうあの時の3人組ではないということさ」
「・・・僕たちのもう一人の仲間だった、寅若光は、僕のことを恨んでいる」
斗真は静かに言葉を紡ぐ。
「僕が、光の弟の明を・・・殺したも同然だから」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【三人称視点】
バナーヌの遺跡。
古代ギリシャの神殿を彷彿させるような、朽ちてなお荘厳な雰囲気と美しい建築様式を感じさせる古代遺跡。遺跡の中には、無数の水路が張り巡らされており、清らかな水がとめどなく流れている。
「ガハッ・・・!!な、何て力だ・・・!!」
「は、速くて、何も見えない・・・!!」
遺跡の中で、冒険者らしき服装に身を包んだ屈強な身体つきをした男性たちが、満身創痍の姿で地面に膝をつく。彼らの身体には無数の切り傷が刻まれており、出血の量からもうこれ以上戦うことは出来ないどころか、今すぐに治療をしないと命に係わるほどだった。
そんな彼らの前に、高熱の光が爪のように生えている一匹の”獣”が立ちはだかった。
全身を黄金の体毛で覆い尽くし、両腕には高出力の光の爪を装備した虎のような頭部と人間の女性のような身体を持つ虎の獣人だった。彼女は琥珀色の瞳で、座り込んでいる冒険者たちを凄みの利いた瞳で睨みつけると、鋭い爪を身構える。
「ひっ・・・!!も、もう、悪かった。もう二度と、ここには来ないからっ!!」
「た、助けてくれぇっ!!俺はまだ、死にたくない!!」
「あ、あたし、まだ・・・!」
ザシュッ!!
命乞いをして、涙を流しながら懇願する冒険者たちの横を、風が吹き抜けたかと思うほどの速さで獣が駆け抜けると冒険者たちの首が地面に落ちて転がった。
「・・・一度戦いを挑んできた以上、生き残りたければ勝つ以外に道などない。戦いを放棄した敗者には死あるのみ。それが、戦いというものだ」
そう言って、獣人の姿が夕焼けのようなオレンジ色の光が揺らめくと、長身の女性の姿に変わった。
肩まで伸ばした黒髪のセミショートには金色のメッシュを編み込み、へそを出したノースリーブのシャツにフレアパンツというスレンダーな身体つきをした、中性的な雰囲気の女性だ。
彼女の美貌とは裏腹に、彼女が纏う空気は敗者に一切の情けをかけることのない殺戮マシーンのような無機質なものだった。そして、彼女は自分が倒した骸に振り返ることもせず、歩き去っていく。
「斗真、お前のことは絶対に許さない。私たちを裏切ったその罪は、お前の命で償ってもらうぞ」
彼女の名前は【寅若光】。
かつて、斗真、つばさとつるんでいた三人組の一人でもあり、斗真にとっては親友だった女性だ。
しかし、彼女の瞳は、斗真に対する底知れない憎悪と殺意の炎が燃え上がっていた。
とうとう、最後の一人だったアイリスとも一線を超えました・・・!
自分の感情に目覚めて、暴走しっぱなし、迷走しっぱなしのアイリスの珍行動はこの後も続きます。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!!




