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第二話「港町ブルベリ~パーティー名は【彩虹の戦乙女】~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。

新作が完成しましたので投稿いたします。

どうぞ、よろしくお願いいたします!!

 朝食を終えて、僕たちはアイリスさんの転移魔法で出かけることになった。


 目的はまず冒険者ギルドに冒険者として登録して、今後の生活費と仲間を探すための活動資金を稼ぐためのクエストを引き受けることだ。


 そして、僕たちがやってきたのは【ブルベリ】という穏やかなターコイズブルーの海と白い砂浜が広がる港町だった。


 「なあ、どうしてミルティユじゃなくて、ブルベリの冒険者ギルドで登録するんだよ。遠回りになるんじゃねえか?」


 「・・・それは今、ミルティユの冒険者ギルドに行っても、大勢の冒険者たちが詰め寄っていて、新規の登録に割ける人員などほとんどいないと思ったからだ」


 「例の幽霊船の事件が、何か関係しているのでしょうか?」


 「ああ、ミルティユは現在その話で町中が大騒ぎになっているようだ。夜な夜な不気味な霧と共に現れる幽霊船に興味を持って見に行ったものや、真偽を確かめようとして調査に向かった人間が全員行方不明になっているらしい。ミルティユの冒険者ギルドは総力を挙げて幽霊船の正体を突き止めて、行方不明になった人たちの捜索に乗り出すらしい」


 「なるほどなぁ、その前に近隣の村や町で情報を出来るだけ多く集めておこうってことか」


 「ああ、それにミルティユの冒険者ギルドは昔から血の気の多い荒くれものや、新人冒険者を見つけると冒険者の心得を教えてやろうという名目で執拗なしごきをやろうとするものがいるそうだ。私たちだけならどうとでもできるが、トーマを危険な目に巻き込ませるわけにはいかないだろう?」


 「まあな。いるんだよなー、相手が女や子供だと思ってやたら威張り散らしてきやがるヤツ」


 新人いじめか・・・。

 なんていうか、そういうのは異世界でも、現実世界と同じようなことがあるんだね。


 「さて、ついたぞ。ここがブルベリだ」


 ブルベリの街は穏やかな港町といった感じの雰囲気で、潮の香りが風に流れて鼻をくすぐってくる。

 大通りに入ると、海で採れたばかりの新鮮な魚介類や、樽に入っているみずみずしい野菜にフルーツなどが売られていて、活気に満ちていた。


 「・・・え?あの人、頭にレベッカさんと同じような耳や尻尾が生えている?」

 

 「ああ、ありゃあ【コボルト】だな」


 「・・・え!?あ、あの人、トカゲ・・・みたいな顔をしている。それに尻尾も生えている?」


 「ふむ、あれは【リザードマン】だ。君は亜人種や魔族を見たことがないのかね?」


 「トーマのいた世界にはそういうのがいないんだってよ」


 「・・・そうか、僕、本当に異世界に来たんですね・・・」


 「ちなみにこうして初めて亜人種や魔族を見て、君はどう思った?」


 アイリスさんが尋ねてきた。


 「・・・最初は驚きました。本とかゲームとかで見たことがあっても、実際に見たことはないから。でも、少しずつ慣れていくと、異世界というよりはなんていうか外国に旅行に来ているような感じがしてきて、ああ、この世界にはこういった人たちが普通に生活をしているんだなって思います」


 「・・・怖いとか、恐ろしいとか、その、汚らわしいとか思ったりはしないのか?」


 「・・・うーん、そりゃ言葉が通じるかどうか分からないし、怖いというか、初対面の人が相手だから緊張することはあっても、その、汚らわしいとかそういった気持ちはないかな。むしろ、話したこともないのにどうしてあの人たちを嫌う理由になるのか、僕にはそっちのほうが理解できませんけど」


 現実世界でも、瞳の色や肌の色、生まれた場所が違うというだけで、相手を差別したり、迫害したりする問題があるからな。同じ世界で生きている人間同士なんだから、困ったときにはお互い様って感じで助け合ってもいいんじゃないかなって思う。人間なんて一人きりじゃ絶対に生きていけないんだからさ。


 「・・・そうか、君は魔物や魔族、亜人種に対して必要以上に恐れたり、嫌悪するといった感情は持っていないのだな。ふふふっ、そういう見た目や他人の偏見だけで決めつけない所はいいことだ」


 そういって、アイリスさんは僕の頭に手を置いて優しく撫でてくる。


 何だろう、アイリスさんがすごく嬉しそうな感じがする。


 「だろー?オレのことを見ても、トーマはオレを怖がらなかったんだもんなー♥」


 そういって、レベッカさんが反対側から僕に抱き着いて頭をくしゃくしゃに撫でてくる。

 僕は二人に挟まれて、頭を撫でられながら冒険者ギルドまでそのまま歩き続ける羽目になった。


 うう・・・、周りのみんなからじろじろ見られて、恥ずかしいよ!






 何せ、まさか外に出る時までこのメイド服のまま行くことになるとは思わなかった!

 風が吹くたびに、スカートがめくれて、通り過ぎる人が僕のことを見ているような気がする・・・!!






 「安心しろ。お前のパンツは見えないように、私たちがちゃんとお守りしている。君のぷりんとした可愛らしいペシュの実(この世界にある桃によく似ている果物)のようなお尻を愛でていいのは、私たちだけだからな」


 「にゃはははー♥本当にいいケツしてるぜー♥」


 あとで覚えていろ・・・!

 今日の夕飯は煮干しだけにしてやるっ!!

 

 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 ブルベリの大通りを進んでいくと、中央広場にたどり着いた。

 中央広場に面した通りの一画に、オレンジ色の屋根と白い壁が特徴的の大きな建物があった。


 スパニッシュ・コロニアル様式によく似ている、アーチと回廊で囲まれている美しい作りをしたこの建物が【冒険者ギルド】らしい。


 建物の中に入ると、市役所のような作りをした部屋の中には、ゲームや漫画でしか見たことがないような恰好をしている人たちの姿がたむろしている。


 人間だけではなく、とがった耳が特徴的な【エルフ】や狼のような耳と尻尾を生やした獣人【ワーウルフ】、巨大なハンマーを軽々と片手で持ち上げている小さな子供のような姿をした【ドワーフ】、【オーガ】に【ミノタウロス】と呼ばれる亜人種や魔族までもがいて、人間と楽しそうに談笑をしていたり、クエストについて話し合っている。


 何だろう、クロスの王宮で魔族について聞かされていた話とは全然違うんだけど。


 「どうかしたのか?」


 「・・・うん、クロスの王宮で王様から聞いた話とは全然違うんだなって思って」


 「・・・大方、”魔物は人を殺し、喰らう”だの、”亜人種は人間にも劣る畜生同然の下等生物”だの、”魔族は人間を誘惑し、堕落させて魂を食らう悪しき存在”とか聞いていたのだろう?」


 「・・・うん。でも、聞いていた話と全然違うなって思ってさ」


 「・・・まあ、魔族と人間の関係は過去に色々とあったから、一言で説明するというのは難しいものだが、クロスの場合は、魔族や魔物、亜人種を絶対的な悪として敵視し、存在することが罪だとまで言い切るような極端な例だ。もはやあれは狂信者ともいえるな」


 「とりあえず、冒険者登録を済ませようぜ。あのクソムカつく国のことなんざ、あまり話したくねえからな」


 「・・・それもそうだな」


 レベッカさんがクロスの話を無理矢理打ち切ると、忌々しそうに舌打ちする。

 アイリスさんもクロスに相当強い恨みを持っているようだけど、一体何があったのだろう?

 まあ、今はまだ話してくれそうにもないし、とりあえず今僕たちがやるべきことは冒険者の登録かな。


 受付に行くと【バフォメット】という種族の受付嬢のお姉さんが、笑顔で応対してくれた。


 「ようこそ、ブルベリ冒険者ギルドへ。新規の冒険者登録でよろしかったですか?」


 「ああ。リーダーはこの【レベッカ・レッドグレイブ】。人数は現在3人だ」


 「うむ、それでは冒険者パーティーの登録における必要事項をこちらの書類にお書きください」


 アイリスさんがパーティー結成の申請書を受け取り、記載項目を埋めていく。


 そして、書類にパーティーの隊員の名前と拠点の住所、問題行動を起こした場合、登録した冒険者ギルドに罰金などの責任を持つというサインを書き上げると、最後にレベッカさんが人差し指を朱肉に押し付けて、そのまま契約欄に捺印した。


 「パーティーの結成費用は、5000ゴールドとなっておりますが、よろしいでしょうか?」


 「どうぞ」


 アイリスさんが拠点の宝物庫に置いてあった、過去に集めていた緊急時の資金を稼ぐために保管していた古美術品を売りさばいて稼いだ金貨を置いて、職員さんが確認する。


 「確かに頂きました。最後に、パーティーの名前はいかがいたしますか?」


 「そりゃ、決まってるぜ。プレアデ・・・もがもが」


 レベッカさんの口をアイリスさんがとっさに塞いだ。


 (お前はバカか?300年前に死んだはずの私たちと同じ名前の冒険者パーティーなどが出てきたら、クロスに目を付けられるだろうが。クロスの内情を探るまでは、私たちのかつての名前は出さない方がいい)


 (でもよ、それならどうするんだよ?)


 「・・・そうだな、トーマ。君ならどんな名前がいいと思う?」


 「・・・え?僕、ですか?」


 「ああ、君がもし私たちのパーティーの名前を考えてくれるのならば、それにしようと思う」


 「もがもが・・・、ぷっはぁぁぁっ!!うん、それならオレもいいぞ」


 どうしよう、まさか僕にそんな大役を任されるとは思わなかった。

 うーんと、えっと、確か元々この【七人の獣騎士(プレアデス)】は、7人の隊員で結成された傭兵団だって言っていたな。


 七・・・えっと・・・七に関係していて、何て言うか、女性らしい華やかな名前は・・・。






 「・・・【彩虹の戦乙女(グラン・シャリオ)】」






 北斗七星を外国語でそういう風に言っていたことを思い出しながら、僕は口にしていた。


 「・・・冒険者パーティー・・・グラン・シャリオ・・・いい名前じゃねえか!!」


 「・・・ああ、君に聞いてよかったな。うん、これなら私も賛成だ」


 レベッカさんとアイリスさんが興奮した様子で頷き、レベッカさんが僕に抱き着いて肩をバンバンと叩いてきた。うん、嬉しいけど痛い、痛いって!!


 「よっしゃあ!!今日からオレたちは冒険者パーティー【彩虹の戦乙女(グラン・シャリオ)】だぜ!!」


 「ふふふ、これから忙しくなるぞ。まずはパーティーの運営資金を稼がねばな。レベッカがパーティーのリーダー、私がお前のサポートや運営における資金管理、健康管理、クエストの受注を引き受けよう。トーマは武器や防具の調達や、私たちの生活面におけるサポートを頼む」


 「はい!!」


 こうして、僕たちは冒険者パーティー【彩虹の戦乙女(グラン・シャリオ)】を立ち上げて、新しい人生の一歩を踏み出した。


 


次回から、新米の冒険者パーティーとしての活動を開始します。

そして、斗真の元に予期せぬ来訪者が・・・?


次回もよろしくお願いいたします。

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