第十六話「中毒者の暴走~ビビアナは今日もダメだった~」
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「・・・桜、そっちが片付いたら、ちょっと、害虫駆除、一緒にやらない?」
『・・・斗真、そっちで、雨野に関することで、何かあったの?』
「あれ、どうしてわかったの?」
『お前、今、自分の声がどれだけ不気味なものになっているのか、分かってないのか?ホラー映画の怨霊の声としても、十分に使えるぐらいなんですけど』
むう、しつれいな。
ああ、感情が先走って、いきなり訳の分からないことになっていたのかもしれないな。
僕は咳払いをしてから、これまでに起こったことを端的にまとめて、説明した。
雨野が、因幡さんと鹿島さんを殺害したこと。
雨野の正体が殺人鬼であったこと。
宗像さんと対峙し、そして、歯が立たなかったことを・・・。
『・・・なるほどな。だいたいのことは分かった。それで、宗像は雨野を見限って、出て行ったというわけか。まあ、それなら【地の黒騎士】の戦力が、大きく削れたことになるね』
「そうなの?」
桜の話によると、クラスメートの中には、鳳たち勇者のステータスに匹敵するほどの、強力な魔法能力を持つ魔人に変身することが出来る人が、8人いたらしい。
そして、その中に、宗像さんも含まれていたそうだ。
『宗像沙織、寅若光、高橋つばさ、御厨ゆかり、大浦竜、高森士郎、花房青龍、百田秀郷。この8人は、勇者のステータスを超えるとも噂されている【英霊使い】というスキルを持っている連中だったんだ。まあ、セルマはあくまでも『勇者』のステータスを持っていることにこだわっていたから、連中のことには、目もくれていなかったけどね。噂のことも信じていなかったみたいだし』
宗像たちが勇者だったら、もしかしたら、ヤバかったかもな。
桜は思わず、ゾッとするようなことを言った。
『とにかく、今は雨野たちを倒して、ネクロノミコンを守ることに専念しよう。こっちも、引き続き、アムレットの周辺で、また大量発生が起きるかもしれないから、それに備えて、監視を続けるよ。ところで、雨野の話だけど、宗像がそう言っていたんだよね?』
「うん、正直、証拠もないから、何とも言えないんだけどね」
『・・・いや、これで確信したよ。宗像は、警察からも非公式だけど、高校生にして、数々の難事件を解決するために、協力を頼まれていた、犯罪心理学者だからね。確か、スレッジハンマーの事件にも、プロファイリングなどで、捜査に協力をしていたからね』
ええっ!?宗像って、そんな刑事ドラマのようなことをやっていたの!?
「というか、どうしてそこまで、知っているの?そういうのって、表ざたには報道されないはずじゃないかな?」
『そういう警察の裏事情というものは、俺のような人間の所には流れてくるもんさ。それに、雨野のことは、うちの組も前々から目をつけていたからね』
「・・・どういうこと?」
『雨野が事件を起こしたのは、うちの組の縄張りだったからさ。うちの組は、堅気に対して暴力を振るったり、カツアゲしたり、美人局をひっかけたりしたら、小指を飛ばしてワビを入れさせたうえで、徹底的に再教育する方針でね。よほどのことがない限りは、一般人に絡まれても、怪我しない程度に、抑えつける程度にするように教育していたのさ。まあ、もちろん、正当防衛も視野に入れてね』
桜が、一瞬だけ、冷たく笑ったような気がした。
『・・・まあ、その辺はいいとして、あの事件のせいで、真っ先に疑われたのが、現場のすぐ近くに住んでいた、うちの組の組員だったわけさ。その時の、警察の捜査のやり方が、とにかく強引でね。言いがかりをつけて別件逮捕に、応じなかったら逃亡罪で無理矢理捕まえる。証拠もないのに、一日中、取調室で恫喝、脅迫、暴力行為とやりたい放題だ。どうやら、上層部の指示で、うちの組をそのまま潰してしまおうという計画だったらしい』
「そ、そんなの、メチャクチャじゃないか!?」
『ああ、警察官の知り合いから話を聞き出した時には、俺もあり得ないと思ったよ。県警の上層部が、冤罪をでっち上げてでも、うちの組を潰そうとするなんて、正気の沙汰じゃない。このままじゃ、県警とうちの組の戦争になりかねない状況に陥りそうだったから、俺も独自でいろいろと調べてみたんだ。そしたら、決定的な証拠が見つかったんだよ』
「決定的な証拠?」
『そう、5件目に起きた事件現場の近くに、防犯カメラが置かれていたんだ。そのカメラの映像を、ちょっとしたツテで手に入れてね。事件発生直後に、現場となった児童公園から、フードを頭からすっぽりと覆っている、一人の大柄な男性の姿が目撃されたんだ。そして、カメラには、その男の素顔が写っていた。それが、雨野だったというわけさ』
「それなら、その証拠を突き出せば、真犯人の雨野が捕まえられるじゃない!」
『・・・ところが、そういうわけにはいかない。雨野の父親は、県警本部のお偉いさんで、雨野も、柔道の全国大会で何度も優勝していて、オリンピックの出場も期待されるほどのアスリートだ。それが、女性6人を殺害した、連続猟奇殺人事件の真犯人として捕まってみろ。雨野の親父のキャリアも、人生も、おしまいだろ。それに、この証拠も、正規の手続きで手に入れたものじゃない。警察に提出したら、握りつぶされるのがオチだ』
「・・・そんな」
『まあ、だからと言って、大人しく引き下がるつもりもなかったけどね。せっかく苦労して手に入れた、重要な証拠だ。警察に提出する以外にも、他にもいろいろと使い道はある。最近は、匿名で投稿する動画サイトもあるからねえ。世間を騒がせている殺人鬼の素顔が、明るみに出ている動画なんかが世に出たら、炎上は確定だ。その映像を頼りに、どこかの誰かさんが、雨野の正体を特定するなり、個人情報を調べ上げて、ネットに晒したりと、追い詰める方法はいくらでもあるさ』
桜、なんだか、すごく生き生きとしていませんか?
もしかして、そういうこと、前にもやったことがあるとか、言わないよね?
『そうなれば、雨野や、雨野の父親にも、捜査のメスが入らざるを得ない状況に、持っていくことは、十分に可能な話だ。県警本部も、世間に注目されれば、真偽を確かめざるを得ないしな』
桜は、雨野が殺人鬼である証拠となる動画を入手し、ひそかに、雨野を追い詰めるつもりだったらしい。修学旅行が終わって、家に帰ってから、動画をネットに上げるつもりだったはずが、異世界に召喚されてしまい、現在に至るということだった。
『・・・アイリスさんには、俺がそっちに行けるかどうか、相談してみるよ。アムレットのことは、アイリスさんやミナに任せておいても、大丈夫だろうしね』
「・・・ミナ?ああ、ヴィルヘルミーナさんのこと?そういえば、ヴィルヘルミーナさんも、桜のことだけ【サクラ】って呼ぶよね。仲良しになったんだね」
『・・・どうして自分のことについては鈍いくせに、他人のそういうやり取りに関しては、鋭いんだよ』
「僕が鈍い?」
うーん、一体、どういうことだろう?
今まで、みんなから「斗真は鈍い!」とか「朴念仁!」とか言われたことがあるけど、どうして、そういうことを言われるのか、全く分からない。
「そういえば、そっちは、どんなことになっているの?」
僕が聞くと、桜の声にかぶせて、どこからか、変な雑音が聞こえてきた。
いや、これは、一体何だろう?
まるで、地の底から響いてくる、恨みと悲しみと怒りに満ちた、怨霊の声を思わせるような、冷たく、低くてか細い、声ともいえるようないえないような、不気味なものだ。
「・・・ト・・・マ・・・」
「桜、あのさ、そこにもしかして、ゆ、幽霊とか、いないよね!?」
「ひぃぃぃぃぃっ!?」
グリゼルダさんが思わず飛び上がって、アレクシアさんに抱き着いた。
『・・・ああ、これ?大丈夫、幽霊じゃねーし』
桜は、何というか、呆れてものが言えないといった感じで、投げやりに言い放った。
「そう、よかった。てっきり、桜が、幽霊にとり憑かれたのかと思ったよ」
『まあ、ある意味、幽霊よりもタチが悪いというか、何というか・・・』
「・・・どういうこと?」
桜が一旦通信を切って、僕のスマホに改めて連絡を入れた。
ビデオ電話の画面になり、桜が、疲れ果てた表情で映し出された。
そして、桜がスマホを向けた先には・・・。
ビビ姉が、倒れていた。
目は開きっぱなしで、目の焦点が合っていない。
髪の毛は、何と、白髪になっていた。
肌はかさつき、口をパクパクと小さく動かして、何かをつぶやいていた。
『・・・トーマ成分が切れた。早く抱っこして、トーマの匂いを、クンカクンカ、スーハースーハー、しなくては。トーマが、欲しい。トーマを、くれ。トーマ、トーマ、トーマ・・・』
ぶっ壊れていた。
「「「「ビビアナーーーーーーッ!!?」」」」
ビビ姉の変わり果てた姿を見て、大アネキたちが思わず大声を上げた。
『・・・国王に腹いせで、魔物の大量発生の時に、ゴーレムの首を、アムレットの王宮の王の部屋に投げ込んで、王宮内を大パニックにしたところまではよかったんだけどさ。その後、急に倒れちゃったんだよ。トーマと引き離されて、定期的にトーマの匂いを嗅がないと、死んじゃう病気にかかっているとか、訳の分からないことを言っているんだけどさ』
全然よかねーよ!!
つか、王宮の王の部屋に、ゴーレムの首を投げつけて、国王たちを大混乱に陥れたって?
よくやった!というか、僕がやりたかった!!
いや、そんなことよりも、ビビ姉が倒れている原因って、僕かい!?
『本当に申し訳ないんだけど、グリゼルダさんとアレクシアさんをこっちに寄越してもらってもいいかな?魔物がまた集まり出している。どうやら、地下で意図的に大量発生を起こそうと、強い魔力を発しているヤツが、いるみたいなんだ。回復魔法やサポートのスペシャリストのアレクシアさんとグリゼルダさんがいてくれると、心強い』
「なるほどね。きっとそいつは、この神殿の最深部にいると見て、間違いなさそうだね」
『ああ、俺とビビアナさんが、入れ替わりに、そっちに向かう!』
「あらあらまあまあ、それは、仕方がありませんわね?・・・あのロリババア、手間をかけさせやがって。せっかく、トーマちゃんと一緒にいられたというのに・・・!」(ビビアナは、アレクシアよりも4つ年上である)
アレクシアさんがどす黒い表情を浮かべて、舌打ちしたような気がしたけど、気のせいだろう。
そして、グリゼルダさんの瞳にどす黒い炎が燃え上がって、不気味な笑みを浮かべていたのが見えたけど、きっと気のせいだ。
転移魔法の魔法陣でアレクシアさんとグリゼルダさんが別れを惜しむように、ハンカチで涙をぬぐいつつも、姿を消した。そして、入れ替わりに、桜とビビ姉が現れた。
「サクラ!ビビアナ!」
「・・・みんな、無事で何よりだ。宗像と戦って負傷したと聞いたときには、かなり焦ったよ」
「ビビ姉!」
僕が近づくと、ビビ姉が、光を失った瞳をこっちに向ける。
「・・・・・・トーマ?」
ビビ姉の身体が、ビクンと、大きく海老ぞりになってから、飛び起きた。
髪の毛の色が、見る見る、綺麗な水色に戻っていく。
顔のしわが、肌のかさつきが、すべて消えていく。
見目麗しい、眠たげな眼をした美女の姿を取り戻していく。
「私の身体は、トーマで、出来ている」
はい?
「血潮は愛、心は情欲」
「おい、ビビアナ?」←大アネキの戸惑い。
「幾星霜の時を超えて、離れ離れになっていたが、魂はひかれあう」
「いや、まだ離れて、数時間ぐらいしか経ってないけど」←桜のツッコミ。
「ただの一つの妥協も許さず」
「ただの一つの別離も許さず」
「私が愛する者はこの世にただ一人 聖なる宝衣に身を包みし天使」
「彼のいない世界になど、意味はない」
「私の身体は、魂は、永遠にトーマと共にあり!」
あのー・・・。
僕の前で仁王立ちになり、拳を握りしめて、天に向かって突き出しているビビ姉の姿を、全員が呆然と見ていた。うん、そのアホらしくも、威風堂々とした姿は、まさにアホの覇王の最期というべき姿だろう。
「・・・・・・トーマ♥」
ビビ姉が、僕の手を引っ張ると、そのまま持ち上げて、細腕からは想像もつかないほどの怪力で、お姫様抱っこをした!!ちょ、ちょっと、待って!?何をするつもりなの!?
「・・・・・・もう我慢が出来ない♥」
「お、落ち着いてください!てか、今、任務中ですからね!?」
何をやらかそうとしているんだ、この人は!?
そして、ビビ姉はそのまま、ものすごい速さで走り出した!!
嘘だろう、この人、メチャクチャ足が速いぞ!?今までずっと、怠けていたっていうの!?
「私の愛は、もう、メルトダウン突破ナリィィィーーーーーーッ!!」
「い゛や゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーーーーーっ!?」
「妊娠、既成事実、子作りィィィーーーッ!!」
もはや、暴走機関車となったビビ姉は誰にも止められない。
だから、彼女は気づいていなかったのだろう。
部屋を出たすぐ先に、転移魔法陣があったことに。
僕とビビ姉は、魔法陣の光に飲み込まれて、視界がグルグルと回転する!
そして、どこかに飛ばされたらしく、僕とビビ姉は抱き合ったまま、床に投げ出された。
僕が顔を上げると、目の前には、地下とは思えない光景が広がっていた。
太い円柱、綺麗に舗装された床、清らかな水が絶え間なく流れる水路。
そこは、豪奢な祭壇が置かれた、荘厳な雰囲気の部屋の中だった・・・!
ビビアナ、ついに、斗真の中毒者となってしまいました(笑)。
斗真と少し離れただけで、斗真成分が抜けて、廃人一歩手前に追い込まれてしまうほどに。
雨野のことを追い詰めるために、暗躍していた桜。
徐々に雨野の裏の一面が。明らかになっていきます。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!




