第十五話「ピラミッド探索③~桁違いの強さ~」
本日二回目の投稿をいたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
”雨野柳太郎が、殺人鬼【スレッジハンマー】だった。”
その話を聞いて僕は、頭を思い切り殴られたようなショックを受けた。
あの事件については、連日のように報道されていて、僕たちの学校も、臨時休校になるほどの大騒ぎだった。
黒髪のショートヘアーの女性ばかりが狙われた、連続猟奇殺人事件。
鈍器で頭を殴られて殺害されて、死んだ後に、被害者の顔を殴って潰すという残忍な手口の事件。
その犯人が、まさか、高校生で、僕たちと同じクラスメートだったなんて。
「仮にそうだとして、どうして、そんな話を、トーマに話す必要があるのよ。それに、アメノとかいう勇者は、アンタたちの仲間なんでしょう?どうして私たちが、アンタたちの仲間の後始末に、付き合わなくちゃいけないのよ。ナメているのかしら?」
グリゼルダさんが怒りを孕んだ冷たい目で、宗像を睨みつける。
しかし、宗像は意に介さないと言ったように、感情の起伏を感じさせない無表情のままだ。
「さあね。ただ、アイツが、クロスから勇者として認められている以上は、私たちは、アイツには迂闊には手は出せない。襲われているのが魔物だけなら、勇者の使命を全うしているだけに過ぎない。しかし、アイツは、とうとう同じチームの女子にまで手をかけた。このまま放っておけば、さらに多くの犠牲者が出ることになる。そもそも、アイツが勇者を引き受けた理由は、梶、お前を倒すためなのだからな」
「僕を倒すため・・・!?」
「ああ、雨野のことについて調べてみたら、君と雨野は、中学時代に、毎日のように喧嘩をしていたらしいじゃないか。雨野は君に負けたことを強く恨んでいる。そして、君の見た目が可愛らしい女の子のような身なりをしていることから、アイツはひどい女嫌いになったんだ。アイツにとって女性は、力ずくで無理矢理従えるだけの人形のようにしか思っていないからな」
何だ、それは・・・。
完全に逆恨みだし、女子たちにとっては、ただのとばっちりじゃないか!
雨野は、僕のことを勝手に女子だと勘違いして、中学三年間、毎日のように追いかけまわして、自分が勘違いしていたことなど棚に上げて、そこまで憎んでいたのか。
「そいつ、マジで気持ち悪いな」
「同感や。そないな男に目ェつけられるやなんて、トーマちゃんも災難やな」
「まあ、どう受け取るかは、君次第さ。私は君たちと戦うつもりはないし、雨野たちに味方をする気もない。好きにやらせてもらうよ」
そういって、宗像は立ち去ろうとする。
「逃げるの?」
「相手の手の内も読めないのに、勝負を挑むバカはいないでしょう?」
「つれないわね」
いうが早いか、グリゼルダさんと、オリヴィアさんが同時に飛び出して、正面からはオリヴィアさん、背後からはグリゼルダさんが挟み込むようにして、攻撃を仕掛けようと、身構えた。
「はい、そうですかって、帰すわけないやろ!」
「アンタがクロスの使いである以上、その話を鵜呑みにするわけにはいかないわ!」
「・・・どいつもこいつも、面倒くさいわね」
宗像の身体が黒い光に包まれると、見る見るその身体が倍以上に膨れ上がり、異形の姿に変貌を遂げる。
頭は巨大な耳と長い鼻、二本の大きく反り上がった牙を生やし、全身の色が灰色に変わり、分厚い皮膚の鎧で覆われた【象】をイメージさせるような魔人【ガネーシャ】。
ガネーシャとなった宗像は、グリゼルダさんが放った無数のクナイを、片腕で薙ぎ払い、腕を振った風圧を受けて、グリゼルダさんが吹き飛ばされた!
「きゃああああああっ!!」
グリゼルダさんが岩に身体を叩きつけられると、そのまま、力なく倒れこんだ。
「グリゼルダ!?・・・お前、上等やないか!!」
さらに、オリヴィアさんが放った突きを、驚異的な動体視力で捕らえると、槍の穂先を掴んだ!
オリヴィアさんの目が大きく見開かれて、驚きをあらわにする。
「な、何やて!?」
「オリヴィアの槍を、掴みやがっただと!?」
「・・・最凶最悪の傭兵団というのは、この程度か?」
オリヴィアさんが必死で槍を引き抜こうとするが、ガネーシャの握力はすさまじく、ビクともしない。
そして、乱暴に振り払うと、オリヴィアさんが吹き飛ばされて、大岩に、身体を叩きつけられた!
「かはっ・・・!!」
「オリヴィア!テメェ!!」
「はああああああっ!!」
僕と、大アネキは同時に飛び出して、大剣を振り上げて、ガネーシャに斬りかかった!
しかし、ガネーシャは取り出した巨大な戦鎚で、僕たちの攻撃を、同時に防いだ!!
本気で放ったのに、コイツ、片手で大アネキと僕の攻撃を、受け止めただって!?
「・・・梶、君と戦うのは、今じゃない。いずれ、君とは、本気で戦う時が来るだろう。その時まで、勝負は、お預けだ!」
ガネーシャが大きく腕を振るうと、戦鎚に吹き飛ばされて、僕と大アネキは、アレクシアさんを巻き込んで、地面に倒れこんだ!
「アレクシアさん!!」
「・・・大丈夫ですわ!ですが、これはちょっと、ヤバいかもしれませんわ・・・!」
「・・・コイツ、マジで、強い・・・!!」
大アネキや、アレクシアさんも、ガネーシャがこれまでに戦ってきた魔人とは、桁違いの強さを持っていることを、もはや認めざるを得ない。僕も最初から全力でかかっていったのに、全く、効いていなかった・・・!
「パオオオオオオオオオオンッ!!」
ガネーシャが雄々しく吼えると、地面を殴りつけて、大量の砂が舞い上がる。
そして、砂煙が晴れていくと、そこには、宗像の姿はどこにもいなかった。
「・・・クソッ、今のオレたちじゃ、アイツには勝てねえってことかよ・・・!」
「・・・300年間のブランクは、想像よりも、影響があるのかもしれませんわね。この長い年月の中で、戦い方も、魔法の技術も、そして、彼女たちが操る魔法能力も、想像していたよりも遥かに、進化している」
「・・・それって、魔王の力を、完全に自分のものに出来ないと、この先ヤバいってことよね」
「・・・そういうこっちゃな」
まさか、宗像がここまで強いなんて・・・!!
僕たちの全面敗北・・・、きっとあの後、戦ったとしても、僕たちが今こうして生かされていることが、奇跡のようなものだろう。
アレクシアさんたちも、まさか、自分たちが負けるとは思っていなかったのだろう。
意気消沈と言うか、愕然としていて、空気がどんよりとして重いものとなってのしかかってくる。
「・・・だーっ!!10秒落ち込んで考えたけど、やっぱり、負けるのってメチャクチャ腹が立つな!!しかもこれ、一番最悪な負け方じゃねーかっ!!」
そう思っていた時、突然、大アネキが立ち上がって、天井に向かって、腹の底から大きな声で叫んだ!
僕たちは思わず、その場でひっくり返り、大アネキにみんなの視線が集まる。
「うわあっ!?」
「お、おい、団長?どないしたんや!?負けたショックで、頭がついにアホになったんか!?」
「いえ、団長の頭がもはやつける薬がないまでにバカだというのは、今更のことですわ!」
「ただでさえ、手が付けられないレベルのバカなのに、このうえ、発狂したら、どうしようもないわよ!?」
「お前ら、人のことを、メチャクチャ言うな!!!」
「そ、そうですよ!!いくら何でも、本当のことだからって、言い過ぎじゃないですか!!」
「オイコラ、お前が一番キッツイぞ!?」
おかしい、僕は大アネキのことを必死でフォローをしているだけなのに!
「・・・こうなると、今までは魔王の力は、少しだけしか使っていなかったからな。つーか、使い過ぎると、魔王の意識に、精神が持って行かれちまうから、姐さんからはみだりに使うなって言われていたんだけどよ。でも、こんな状況になっちまったら、みだりに使うんじゃなくて、完全に自分のものにするために、使えるようにしておかねえと、ならねえってことだ」
そう言って、大アネキは、自分の左手の甲を見つめる。
「・・・オレたちの身体の中に封印された、七大魔王の力を、使いこなせるようにな」
「・・・今の状態でも、能力を使い過ぎると、自分が自分やなくなるような気がするんやけどな」
「それだけ、私たちの身体に封じ込められている、魔王の力が強力ということよ」
「・・・デメリットの方が多いですしね~。もしこれを使って、魔王の意識に飲まれたら、わたくしたちの自我や記憶、魂までもが消滅してしまうことに繋がりますし」
大アネキたちの身体の中に、魔王の魂が封じ込められている?
まさか、それが、大アネキたちの身体に刻まれている紋章の力の正体なのか?
「・・・でも、さっきのゾウ女と戦って、結果はこのざまだ。今まで、こんな力がなくてもやっていけるって、どこかで甘く考えていたのかもしれねえ。それに、もし、オレたちが負けたら、トーマだって命を落としていたかもしれないんだ」
「・・・そうやな」
「・・・ちょっと、私たち、調子に乗っていたのかもしれないわね」
「・・・ええ、情けない限りですわね」
大アネキが、自分の頬をパンッと両手で挟み込むように叩いた。
「この一件をさっさと片付けて、オレたちは、魔王の力を解放するために、姐さんに鍛え直してもらわねえとな!!」
大アネキが、みんなを鼓舞するかのように、いつものあの、まぶしくて、強気な笑みを浮かべていた。
この笑顔を見ていると、どんな状況に陥っても、絶対に大丈夫だという思いが、込み上がってくる。
僕の大好きな、大アネキの笑顔が、戻った・・・!!
「それに、あのゾウさん、おっしゃっていましたわよね?トーマちゃんとのお楽しみは、後にとっておくと。つまり、今度負けたら、トーマちゃんを連れ去らって、押し倒して、無理矢理犯してしまうと言う展開も考えられますわよ・・・?」
「ああ、まあ、顔は可愛いけど、結構、あっちはデカかったしなぁ。そら、トーマちゃんを倒す前に、つまみ食いをしたくなる気持ちは分からんでもないけど・・・え?」
オリヴィアさんが言葉を言い切る前に、目が見開き、顔から血の気が一気に引いて真っ青になる。
彼女の言葉を聞いて、大アネキ、アレクシアさん、そして、グリゼルダさんが、オリヴィアさんの心臓が握りつぶすような、恐ろしい鬼のような形相を浮かべていた。
「あ、あ、あの、その、どうして、そないに、怒っとるんや!?」
「いいか、お前ら、トーマがあんなゾウ女なんかに、犯されて、横取りされてもいいっていうのか?あのゾウ女、顔もいいし、おっぱいも大きかったしよぉ、グリゼルダのツルペタで貧相な身体じゃ、全くと言っていいほど、お色気で勝てる見込みはねえ」
「はうあっ!!」
「それに、アレクシアみたいに、ガツガツしてねえしな」
「ごぺぱっ!?」
何を言っているのか、さっぱり分かりません。
というか、グリゼルダさんとアレクシアさんが、なぜか、両手を地面について落ち込んでいるんだけど、何があったの?
「トーマちゃんの鈍さは、異常やろ!?」
「だから、どういう意味ですか、それは!?」
「だからと言って、あんな女に、トーマを美味しく食べられちゃっても、いいっていうのか?」
「冗談じゃねぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!トーマちゃんは、わたくしのものですわっ!!誰にも渡すか、コノヤローーーーーーッ!!」
「魔王の力が怖くて、トーマを私のものに出来るか、クソッタレーーーーーーッ!!」
な、なんだ!?
アレクシアさんと、グリゼルダさんが今までに見たことがないまでに、荒ぶっていらっしゃる!?
「そうだ、トーマと子作りをしていいのも、美味しく食べてもいいのも、気持ちいいことをしていいのも、オレたちだけの特権だろうが!!他の女たちに、つまみぐいなんか、されてたまるか!!」
「団長、目が覚めましたわ!!トーマちゃんと子作りしていいのも、愛し合っていいのも、美味しく食べていいのも、わたくしたちだけの特権でしたわ!!」
「トーマは、私たちの大切な弟分だっ、私たちの可愛い弟分だっ、トーマの赤ちゃんは、私たちだけが妊娠していいんだぁぁぁっ!!」
「その通りだっ!!お前ら、気合はいいか!?これから先、どんな相手が出てきても、それだけは忘れるな!!トーマをクロス軍の女なんかに、指一本触れさせるな!!トーマの赤ちゃんを妊娠するのは、オレたちだけだ!!」
「「うおおおおおおおおおおおおーーーーーーっ!!」」
あれー?
どうして、あの3人、こっちを見ながら、ものすごく燃え上がっているんだろう?
まあ、やる気になってくれたなら、良かったな。いつものみんなに戻ってくれた!
僕も、このまま負けたままじゃ、悔しいもんな!
気合を入れなおして、絶対に、任務を遂行しなくては!!
「・・・えーっと、何や、これ?」
「僕にも、さっぱり分かりませんけど、皆さんが、いつもの皆さんに戻って、良かったですね!」
「・・・・・・ああ、そうやな」
オリヴィアさんがなぜか、疲れ切った表情で、深くため息をついた。
さてとここから仕切り直しだ!
斗真たちを圧倒する、宗像の強力な力・・・!
一時は敗北のショックで落ち込みましたが、斗真のことを宗像が狙っているという勘違いによって、レベッカたちの士気が復活しました。タイトルにあった「桁違いの強さ」とは宗像のことを差していますが、ある意味彼女たちの立ち直りの速さと、勘違いして、暴走し、間違った方向に燃え上がる彼女たちのバカさ加減も、ある意味桁外れです。バカとスケベの世界チャンピオンと言っても、過言ではないのが【七人の獣騎士】における全員の特徴です。
グリセルダも、やはり、同類だったようです。
真面目なふりをしていても、根っこは、レベッカたちと同じ性格のようです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!




