第一話「仲間を探そう!~僕は可愛いメイドさん~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。
新作が完成しましたので、投稿いたします。
今回より第一章【マリブの幽霊船編】に入ります。
「・・・知らない天井だ」
ゆっくりと起き上がると、僕はバーのソファーの上に寝かされていた。
僕の身体の上にはシーツがかけられていた。
「・・・レベッカさんか、アイリスさんがかけてくれたのかな?後でお礼を言わないと」
えーっと、昨日は確か・・・レベッカさんとアイリスさんが完全に出来上がってしまい、レベッカさんがアイリスさんのおっぱいを揉みしだいたり、抱き着いてほっぺたにチューしたり、もうベロンベロンに酔っぱらっちゃったんだよね。
そして、アイリスさんがとうとうブチ切れてハリセンでレベッカさんを吹っ飛ばしたところまでは覚えているんだけど・・・。
「・・・まさか、あんなハチャメチャなことが現実にあるわけないよね。うん、僕、夢を見ていたのかもしれない・・・」
うん、これが夢だったらまだよかったよね。
「・・・夢じゃねえし」
しかし、それは現実の話だということを嫌でも思い知らされたのは、後頭部にデッカイたんこぶをこさえたまま、空になった麦芽酒のビンを抱きしめて、気持ちよさそうに寝入っているレベッカさんの姿だった。
「えへへへ~・・・もう飲めねえよぉ♥アイリスのおっぱい、もっと揉ませろ~♥ムニャムニャ・・・♥」
果てしなくダメ人間の見本のような人である。
僕はこのままレベッカさんを床に寝かせたままにはしておけなかったので、ソファーの上にレベッカさんを運び上げて、シーツをかぶせた。
「・・・ううん♥トーマぁ・・・だぁいすきぃ・・・♥」
「ふえっ・・・!?」
レベッカさんは生暖かい吐息と共に甘い声を上げて、シーツにくるまって寝息を静かに立てる。
ドクン、ドクン・・・。
心臓の鼓動が高鳴り、頭の中で響いている・・・!!
豊満な胸をソファーに押し付けて、谷間がこれでもかと見せつけるようにして見えているし、シーツがめくれて、むっちりとした太ももと丸みを帯びたお尻が少しだけ出ちゃっている。
あまりに色っぽいから、理性が一瞬吹き飛びそうになったけど、日本男児たるものが酔いつぶれている婦女子にそんなことを考えるなんて・・・ダメだ!クールだ、クールになれ、梶斗真よ!
僕はシーツをかけ直して、深呼吸をして、何とか冷静さを取り戻す。
そして、テーブルを見ると、昨夜にはなかった箱が置かれていることに気づいた。
見てみると、箱には包装紙が巻かれていて、ご丁寧にリボンまで巻かれている。
「・・・カードが挟んである。これは、アイリスさんから?」
『トーマへ
七人の獣騎士、入隊おめでとう。我々は君の入隊を心から歓迎しよう。
ささやかではあるが、この拠点における君の隊服を用意させてもらった。
気に入ってもらえればいいが、もし寸法が合わなかったら声をかけてほしい。
これからは、七人の獣騎士の一員として、家族として、よろしく頼む。
トーマが好きすぎる姉 アイリス』
アイリスさんは僕の為に隊服まで用意してくれたんだ。
これを着て、一日でも早くこの【七人の獣騎士】に慣れてほしいと願ってくれているのだろうか。
そう思うと、ここまで色々と世話をしてくれるアイリスさんの優しさに、僕は嬉しくなってくる。
「・・・そうだ、僕はもう【七人の獣騎士】の一人なんだ。気を引き締めて仕事を頑張って、アイリスさんたちに呆れられないように頑張らなくちゃ!!」
僕はリボンをほどいて、箱のふたを開いた。
そして、その中に入っているものを見ると・・・。
「・・・え?え?えええーーーーーーーーーっ!?」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「ううん・・・ふぁぁぁ~っ、よく寝たぜ。うーん、いい朝だ!!」
「おはよう、ネボスケ。もうお前以外は全員起きているぞ」
「ふみゅ?ああ、昨日は結構盛り上がったからなぁ~。あれ?トーマはどこだ?」
「・・・ふふふ、今頃準備をしているのではないか?」
大食堂から、アイリスさんとレベッカさんの声が聞こえてくる。
うう、これが本当に隊服なのかな?正装の衣装とは思えないんだけど?
でも、もうこうなったらこれを着るしかない。
僕は意を決して、ドアを叩いた。
「・・・おはようございます。朝食の準備が調いました」
「ああ、入ってきてくれ。ありがとう」
ドアを開いて中に入ると、レベッカさんが僕を見て目を丸くし、アイリスさんの表情が見る見るぱぁぁっといい笑顔になる。
僕の姿は、白いフリルがたくさんついているゴスロリ風のメイド服に身を包んだ、メイドの姿になっていた。膝の丈までしかないミニスカート、背中や胸元が大きく開いているメイド服、動くたびに風が吹いて、スース―するから落ち着かないし・・・正直死ぬほど恥ずかしい!!
さらには、リボンやフリルがたくさんついたカチューシャや、ミニソックス、靴まで用意しおってからに・・・!!
何、アイリスさんはもしかするとメイドフェチなの!?
ううう、どうしてこうなったんだろうか!?男性がスカートやメイド服を着ることが、この世界では正装として認められているのだろうか!?ていうか、異世界に無理矢理召喚されるわ、同級生に命を狙われるわ、助けてもらった人たちには女装を強制させられるわ・・・僕の人生って相当なものじゃないかな!?
「うおおおおおおーっ!すっげぇ、可愛いじゃねえか!!似合う、似合う!!」
「フッ、私の目に狂いはなかったようだな。君の身体のサイズにピッタリになるように徹夜で作ったものだが、着心地はどうだろうか?」
目ではなく、貴方はその思考回路が狂っているのではないでしょうか。
「え、ええ、まあ、着心地はいいですけど・・・何故にメイド服なのでしょうか?」
「君には主に館で我々の生活の手助けをしてもらおうと思っていてね、家事全般も得意と言っていたから、そんな君にはメイド服が隊服として一番ふさわしいと思ってな。君の可憐で可愛らしい魅力をさらに引き出してくれることによって、私たちにとっても目の保養にもなるというか、まさに君は私たちの心のオアシスともいえる存在なのだよ」
「アハハハハハ、コイツ、見た目はまともそうだけど、かなりのバカだろう?」
レベッカさんにバカと言われるようでは、アイリスさんの性格や性癖も相当アレなのだろう。
「ちなみに、昨日買い出しで買ってきた食料品や酒で使ったお金の残り、いわば全財産をこれの材料費ににつぎ込んだからな」
「アカンでしょ!?これからどうするんですか!?」
しっかりしているようで、この人もかなりの無計画だな!?
それじゃレベッカさんのことをとやかく言えないでしょ!?
「とりあえず、この近くの冒険者ギルドで冒険者として登録してもらい、手ごろなクエストを引き受けて、資金を稼ごうと思っている。残りの隊員たちの居場所も分かったから、助け出しに行くためにも冒険者の登録と資金は必要不可欠だ」
「資金は分かる気がしますけど、冒険者の資格も必要なんですか?」
「おう、この世界じゃ【冒険者ギルド】で冒険者としての登録を済ませておかないと、一般人は立ち入り禁止とされている区域には入ることも出来ねえんだ。オレたちも300年前には一応傭兵ギルドで傭兵として登録はしていたんだけど・・・」
「300年前に私たちは死んだということになっていたらしいからな。傭兵ギルドに、私たちの名前はなかった。おそらくずっと前に抹消されてしまったのだろうな」
「なるほど・・・」
「それでよ、残りの連中の居場所が分かったって言っていたな!どこにいるんだよ!?」
「落ち着け。とりあえず、連中のうち、行方が分かったのは4人だ」
【橙の大陸コアントロー】の【グラン・マルニエ砂漠】に【オリヴィア・オズボーン】。
【青の大陸ドランブイ】の【バルクーク山脈】に【ヴィルヘルミーナ・ワイズマン】。
【緑の大陸バーディネ】の【シャルトリューズの森】に【アレクシア・アッシュクロフト】。
そして、ここ【藍の大陸マリブ】には・・・。
「この近くの【ミルティユ】っていう大きな造船所が設けられている島があるのだが、そのすぐ近くの入り江から、コイツの魔力が感じられた。まず間違いないだろう」
アイリスさんが取り出したのは、古い紙だった。
それは懸賞金が書かれている手配書で、そこには、蛇を模した兜と重厚な甲冑を身に纏っており、男か女か、素顔が分からない人物の似顔絵が描かれていた。
「彼女こそが【七人の獣騎士】の【隠密】、【月闇のグレンヴィル】こと【グリゼルダ・グレンヴィル】だ」
この近くに、3人目の仲間がいる・・・。
「まだ見つかってねぇのはビビアナだけか」
「ああ、引き続き彼女の行方を追ってみる。とりあえずはこの4人だけは見つかった」
アイリスさんとレベッカさんの表情に笑みが浮かんでいるのを見て、僕も俄然やる気が出てきた。
よーし、こうなったらもうメイド服で勤務することになろうと、僕は僕に出来ることを全力でやろうじゃないか!気合入れなおして、頑張るぞ!!
「おっ、ちゃんと女物の下着もつけている♥」
「ああ、セットで着けたからな♥」
「ひゃうん!!」
レベッカさんが僕のスカートをぴらりとめくって、ケラケラと楽しそうに笑っていた。
前言撤回だ。
まずはこの頭がイカレたこの二人の頭を椅子でカチ割って、正気に戻すことが先決のようだ。
主人公、早々に抵抗を諦めて、変態という淑女たちのメイドに確定・・・。
この怒りや恨み、ストレスも全て報復対象の勇者たちに向けられるというのは言うまでもありません。
そして、まともそうだったアイリスさんまでもが「ショタコン+ブラコン+金銭管理能力が皆無(トーマに関することに限る)」という問題児であることが判明しました。この傭兵団、団長と副団長がこれでよく務まったものです。




