第十三話「ピラミッド探索①~地獄のアイリス・リサイタル~」
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僕たちは、魔物の大量発生が起きた場所の地下を目指して、洞窟の中を進んでいた。
太陽の直射日光、焼けるような熱い砂の海をイメージしていた僕にとっては、洞窟の中の探索は、正直ありがたい話だった。まあ、浮かれているような状況ではないけどね。
暗い洞窟を、片手にランプを持ち、片手で岩壁を辿りながら、足元に注意して、進んでいく。
「しかし、本当にこの洞窟が、ピラミッドの地下と繋がっているのかよ」
「魔力の反応を追ってみたら、ピラミッドからの地下通路と、この洞窟が繋がっていることは間違いありませんわ」
「ピラミッドって、この大陸の守護神の【ファラオ】を奉るために作られたお墓やからな。王族であっても、おいそれと入れるモンちゃうからな。せやけど、まさか、こないなところからピラミッドに入れるとは、思わんかったわ」
「・・・でも、安全な道とはいいがたいわよ」
グリゼルダさんがそう言った理由は、僕たちが現在歩いてきた洞窟の至る所に、転がっている白骨だ。
道に迷い込んだ冒険者や、盗賊と言った装いや武器が近くに転がっている辺りを見ると、盗賊の白骨らしきものも転がっている。
「白骨の一部が変色していますわ。これは、猛毒を流し込まれて、骨が毒で変色したものですわね。つまり、ここには猛毒を持つ魔物がいる可能性がありますわ」
「まあ、砂漠に出てくる魔物やっちゅうたら、ギルタブリルやケプリ、サンドワームとか、けったいな連中がおるからな。ほんで、こういう遺跡ともなると、ゾンビやマミーがうじゃうじゃ出るしな」
「オリヴィアさん、詳しいですね」
「おう、ウチ、ここに入る前は世界を股に飛び回って、お宝を探し求めていた、トレジャーハンターやったさかいな。盗賊ギルドで培った知識っちゅうヤツや」
歩き続けていると、突然、洞窟だった通路が、まるで整備でもされたかのような石作りの壁と床が広がった空間にたどり着いた。壁には、使い古されたランプがかかっており、長い通路が闇の中へと向かって伸びている。
そして、僕たちは、岩を直接彫って作られた、荘厳な作りの神殿らしきものの前にたどり着いた。
「おい、これって・・・!」
「・・・地下にまさか、このような神殿があるとは、驚きですわね・・・」
これって、固い地層をくり抜いて、神殿のように作られたものじゃないか?
そのあまりの出来の素晴らしさ、美しささえ感じてしまう光景に、僕は言葉を失う。
「・・・どうやら、ここがピラミッドと繋がっているっていうのは、間違いなさそうだな」
「・・・せやな。トーマちゃん、覚悟はええか」
オリヴィアさんが、まるで何かに悟られないような低い声でつぶやくと同時に、大アネキたちの雰囲気が豹変する。通路の奥に向かって、険しい視線を集中させている。
僕よりも遥かに研ぎ澄まされた、直感が感じ取った、気配。
明らかに、それは殺意を持った、敵の気配だった。
それも、大勢いる。
僕たちは一旦、岩陰に隠れて、部屋の様子をうかがう。
よく見ると、暗闇の中で、血に飢えた瞳をぎらつかせている魔物たちの姿があった。
この辺りにも、よく見ると、冒険者や盗賊のものらしき白骨が、転がっている。
「そう、簡単には、中には入れさせてくれないか」
「つまり、ここまでして守らなきゃならんお宝が、あるっちゅうこっちゃな。へへへ、腕が鳴りよるで」
「オリヴィアちゃん?抜け駆けはダメですよ~?そうやって、宝箱とミミックを間違えて大変なことになったり、罠に引っかかったり、過去に散々やらかしまくっているんですからね~?」
メキメキメキッ←アレクシアさんの指が、オリヴィアさんの顔にめり込む音。
アレクシアさんのアイアンクロー!
オリヴィアさんには効果抜群だ!!
「ギブギブギブギブ、大声を上げられんよって、そういうのは、勘弁してや・・・!」
「貴方がバカなことを考えなければ、よろしいだけですわ♥」
「しかし、これだけ、大量の魔物がいたら、何も考えないで、突っ込んでいったら、さすがにヤバいか」
「ヤバいどころか、あっという間にコテンパンですってば」
いくら中学時代に、一度に50人相手をして勝ったことがあるとはいえ、ここにいる魔物の数は、その倍以上はいるだろう。
「それに、連中、かなり殺気立ってないかしら?」
「よく見ると、これ、魔物の血の匂いがすげえするな。もしかして、オレたちが来る前に、誰かが乗り込んで、戦ったのかもしれねえな」
「もしかすると、それが、クロスの勇者たちではありませんか~?」
つまり、雨野たちは一足先に、ネクロノミコンを手に入れるために、この先に向かったという可能性が高い。そうなると、この先で、雨野たちと遭遇する可能性があるな。
そこで、大アネキが、何かを思いついたように、手をポンと叩いた。
「そうだ!オレにいい考えがあるんだ!ビビアナが、以前、洞窟で魔物の大量発生があった時、このアイテムを使って、魔物たちの動きを止めることが出来たんだった!」
そういって、大アネキが胸の谷間から取り出したのは、小型の青色の魔道具だった。
何だろう、白いボタンのようなものと、黒いスピーカーのようなものがついているけど・・・。
まるで、音声レコーダーのようだ。
そして、それを見た瞬間、オリヴィアさんとアレクシアさんの顔色が真っ青になった。
なぜだろう、アレクシアさんが表情を引きつらせるなんて、よっぽどの効果がある、もしくは、相当危険な代物ではないだろうか?
「それは何よ?」
「ああ、そうか。グリゼルダは、これ、まだ知らんかったな」
「グリゼルダちゃんが入隊してからは、使う機会なんてありませんでしたからね~」
「よっしゃ、とりあえずこれで、魔物たちには一旦大人しくしてもらおうかなっと!」
「ちょいちょい、待ちぃや!アンタ、耳栓を忘れとるがな!あれがなかったら、さすがに、ウチらもお陀仏や!」
「わたくしの回復魔法でも、完治するには時間がかかりますわ~」
アレクシアさんが耳栓を取り出して、僕たちに手渡した。
何だろう、どうしてこんなところで、耳栓をつけなくちゃいけないんだろう。
そして、耳栓をつけたことを確認すると、大アネキが魔道具を操作する。
「よしっ、それじゃ、行くぜ」
大アネキが魔道具を投げつけた瞬間。
「・・・あ!」
「ちょ、しまった・・・」
僕とグリゼルダさんのつけていた耳栓の取り付けが甘かったせいか、ポロリと、落ちた。
『副隊長、アイリス・アーヴィング!!かくし芸で、歌を歌います!!』
あれ?これって、アイリスお姉ちゃんの声だよね?
そう思っていると、美しい音楽が流れ始めたかと思った、次の瞬間・・・。
『ほ゛ん゛け゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛~っ!!!』
「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーッ!!」」
この世のものとは思えない、音程というものが狂いまくっている、恐ろしい歌声が大音量で響き渡った。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
アイリスの歌が流れだすと、それを聞いた魔物たちの断末魔の悲鳴が響き渡った。
『グギャアアアアアアアアアアアーーーーーーッ!!?』
『イ、イヤダ、ヤメロ、ヤメテクレェェェェェェッ!!』
『だ・・・ぁ・・・ず・・・げ・・・で・・・ぇぇぇぇぇぇっ!!』
『なんだ、この歌はぁぁぁぁぁぁっ!?この世のものとは、思えねえーーーーーーっ!!ひどい!!ひどすぎる!!悪魔が、歌っていやがるぅぅぅぅぅぅっ!!』
『頭が、割れるぅぅぅぅぅぅっ!!脳味噌が溶けちまう!!ああ、マジで、吐きそうだぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!お゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ーーーっ!!』
『うええええええええーーーん!!ママーッ!!ママーッ!!』
『う、歌の毒が、身体中に回ってぐるぅぅぅぅぅぅっ!!痺れて、身体が、動かなくなる・・・!!』
『おしまいだぁぁぁぁぁぁっ!!この世のおしまいだぁぁぁぁぁぁっ!!』
『うけけけけけけけけけけけけけけけ!!』
『ブクブク、ピクピク、ブクブク、ピクピク』
神殿の中は、もはや、阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。
ギルタブリルが目から涙を流しながらのたうち回って、泣き叫んでいる。
マミーやゾンビが、あまりにもひどいオンチな歌に耐え切れず、地面に倒れて動かなくなった。
ケプリの精神が崩壊したのか、失禁し、狂ったように笑いながら壁に頭を打ち付けだす。
そして、ほとんどの魔物が、白目をむき、口から泡を吐き出して、気を失っていた・・・。
失神、気絶、精神崩壊、幼児退行、そして・・・アンデッドは成仏、または消滅に至るという、あまりにも破壊力が凄まじすぎる、アイリスの歌であった。
スイッチを切って、レベッカたちは、倒れてピクリとも動かなくなった魔物たちに、両手を合わせて黙祷をささげる。
「・・・相変わらず、アイツの歌はすげえな」
「ええ、あの子、歌を歌うと、自分の世界に入り込んじゃうから、自分の歌で気絶をすることはないんですよね」
「そらそうや。サソリが自分の毒で死ぬわけないやろ」
そして、レベッカたちが振り返ると・・・。
「・・・あれ?」
「と、トーマちゃん?グリゼルダちゃん?なぜ、倒れていますの?」
「お、おい、これ、耳栓ちゃうか!?まさか、お前らもあの歌を聞いてもうたんか!?」
斗真とグリゼルダが、地面に突っ伏して、倒れていた。
耳栓が外れてしまい、悪魔の歌としか言いようのない、いや、悪魔に聞かれたら大激怒を通り越して、戦慄させるほどの恐ろしい歌を全部聞いてしまったのだ。
「お、おい!!トーマ!!しっかりしろ!!」
「大丈夫だよ、大アネキ。僕は平気だよ」
レベッカが斗真を抱き上げると、斗真は焦点の合わない目を泳がせたままで答えた。
「あのねー、僕の目の前に、この世のものとは思えない綺麗なお花畑と、この世のものとは思えない綺麗な川が流れているんだぁ。すっごくあったかくて、気持ちいいよぅ。ああ、あの川を渡れば、もっと気持ちよくなれそう♥」
「ああ・・・、暖かくて、妬みや恨みといったものが、全部洗い流されていくような、清々しい気分だわ。今まで、私を縛り付けてきたしがらみや苦しみから、全て解放されていくような感じね。トーマ、あの船に乗れば、二人きりで、もっともっと気持ちよくなれるわよぅ♥」
確かに幸せかもしれない。
しかし、全ての業から解放される代償として、生命が失われるのだから、シャレにならない事態である。
「オイコラ、待てやぁぁぁぁぁぁっ!!その船には乗ったらアカン!というか、そこ、あの世の一歩手前やないかーーーーーーいっ!!帰ってこいっ!!トーマちゃん!!グリゼルダちゃーん!!」
「うふふふふふふふふふふ♥ついに、トーマと二人きりになれたわ。このまま、二人で気持ちいいことをして、私とトーマとの間に子供が出来れば、やっと大好きな人と結ばれて、幸せになれるのね。団長、アレクシア、ビビアナ、貴方たちのことは大好きだけど、私だって、トーマに女として見てもらいたいのよ。お姉ちゃんとしてではなくて、女として、愛して欲しいのよ。でも、ようやく、結ばれる時が来たのね。さあ、トーマ、お姉ちゃんと気持ちいいことをしましょうねー♥赤ちゃん作ろうねー♥」
「えっ、船の渡し賃が600万円?おかしいよ、三途の川の渡し賃は六文銭って聞いたことがあるよ。えっ?僕が着ている服を全部脱いで、裸になれば、タダで乗せてくれる?みんなの前で、ストリップしろって?うーん・・・、恥ずかしいけど、いいよー♥これで僕、あっちの気持ちよくなれる場所に行けるなら、脱いじゃうもん♥」
「起きろ、このアホどもぉぉぉぉぉぉっっ!!今にも死にかけているっていうのに、夢の中で、エロいことをやっている場合かぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
アレクシアの怒号とともに、二人の額に、強烈なチョップが炸裂した。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
・・・はっ!!
僕は一体、何をしていたんだろう。おでこが、ずきずきと痛い。
目が覚めて飛び起きると、大アネキが抱き着いてきて、ワンワンと泣いていた。
「よ゛か゛った゛ぁぁぁぁぁぁ~っ!!トーマ、大丈夫か!?」
「・・・一時はどうなるかと、思いましたわ」
「ああ、せやけど、死因がアイリスの歌を聞いて、ショック死やなんて、シャレにもならんわ」
近くでは、グリゼルダさんが意識を取り戻して、疲れ切った様子のオリヴィアさんたちの姿に、首をかしげている。
そうだ、僕たちは確か、アイリスさんの歌を聞いた後、意識を失って・・・。
「・・・トーマ、私たち、どうやら、助かったみたいね」
「うん、グリゼルダさんともう一度会えて、嬉しいよ」
僕たちは、生還した喜びを分かち合うかのように、手を取り合い、いつの間にか抱き合っていた。
そして、僕たちを大アネキとアレクシアさんが引き離した。
「・・・お前もなんだかんだ言って、トーマのことが、大好きなんだな」
「ツンツンした態度ばかり取っていないで、たまには、デレも見せた方がよろしいですわよ~?」
「・・・何よ、アンタたちは。一体、何が言いたいのよ」
なぜか、グリゼルダさんに大アネキとアレクシアさんが、神妙な顔で、何かを話し続けていた。
しかし、今度からは、アイリスお姉ちゃんの歌には・・・気をつけないといけないな。
おそらく、次はもう、生きては帰れないような気がしてきた。
どうか、アイリスお姉ちゃんの歌を聴く機会が、今後、来ませんように・・・。
グリゼルダの秘めた思いが、ついに、みんなに知られてしまいました・・・。
夢の中だと、かなり大胆な性格になるグリゼルダ。これは、斗真と一線を超えるのも、時間の問題かもしれません。
そして、今回、最終兵器の一つとして、アイリスの歌が、猛威を振るいました。
耳栓をつけていなければ、斗真たちでさえも生命の危機を迎える破壊兵器で、歌っている本人は、気おれで上手く歌えているつもりです。歌っている本人だけは平気で、気づいていないという状態です。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
次回もよろしくお願いいたします!!




