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第九話「禁書ネクロノミコン~バカな王様は敵よりも怖い~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。

新作が完成しましたので、投稿いたします。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

 「饕餮とうてつよ、この度の失態は、さすがに妾でも看過出来ぬぞ。あのような愚かな人間ごときに、よもや妾たち邪眼一族まで軽く見られていたとはのぉ・・・」


 「も、申し訳ございません!!」


 部下に対して寛容な態度で接するヴェロニカも、饕餮から挙げられた報告を見て、厳しい表情を浮かべていた。冷たい目で見下ろされた饕餮は、地面に額をこすり付けるほどの勢いで、謝罪する。


 「ネクロノミコンを手に入れるまでは【彩虹の戦乙女】たちには気づかれないように、細心の注意を払うようにと言い渡しておいたはずじゃ。ハイドラの書の時とは、状況が異なっているからな」


 「おっしゃる通りでございます・・・!」


 「あの禁書は、4冊ある禁書の中でも最も危険と言われているもので、ピラミッドの最深部にある祭壇に封印されているものじゃ。ネクロノミコンの力を魔導書に写し取り、写本と言う形で手に入れるには、思いのほか時間がかかる。ネクロノミコンの封印が解かれる時、死者の世界とこの世界を繋げている【死者の都】の門が開くと言われておる。ゆえに、扱いに関しては、細心の注意を払わねばならないにも関わらず、あのアムレット国王は、【彩虹の戦乙女】のトーマに、禁書の手掛かりとなる重要なことを、わざわざ教えてしまった。お前が【彩虹の戦乙女】には手を出すなと、警告したにも関わらずな」


 つまり、饕餮の命令が聞けないということは、彼女に指示を出したヴェロニカのことさえも軽く見ているということになる。あの無能に、ただの小娘程度にしか思われていないということは、ヴェロニカの機嫌を大きく損ねるには十分すぎる理由だ。


 「・・・饕餮、お前がやるべきことは、分かっておるな?邪眼一族を愚弄する輩は、誰であっても、妾は断じて許さぬ。アムレット国王はもう用済みじゃ。然るべき罰を与えよ。そして【彩虹の戦乙女】の傭兵どもが現れようとも、必ず全員打ち倒せ。ああ、もちろん、トーマは生け捕りにするのだぞ?」


 「ははっ!!」


 ヴェロニカは、手に持っていたグラスを握りしめると、グラスに無数のひびが入り、粉々に砕け散った。血のようにしたたり落ちる葡萄酒を、ヴェロニカはれろりと舌で舐め取る。その表情は極めて不機嫌そうであり、その瞳には、愚か者に対する怒りと憎悪、殺意でギラギラとした光が宿っていた。


 「・・・下衆が・・・調子に乗りおって・・・」


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 「そういえば、ベリス姉さまが言っていた、重要な仕事って何ですか?」


 「ああ、今回、ベアトリクス陛下は正式な依頼として、アムレットで不当な扱いを受けている王妃様と王女様を救出し、王妃様たちの無実を証明して、アムレットに責任を追及するために、我々が動くことになった。依頼主は【砂の王国サビア】の【アーシュラ・フォン・ウヴァル】女王陛下と【オルグレン公爵家】の当主様からだ」


 「オトンと、アーシュラ陛下からの依頼!?」


 アルビナ王妃様と、アンジェリカ王女様が目を見開いて、立ち上がるほどに驚いた。


 何でも【オルグレン公爵家】というのは、アルビナ王妃様たちの実家らしい。


 「まあ、それについてはほとんど斗真とオリヴィアさんが解決してくれた。この証拠の文書の管理を担当していた文官も拉致・・・もとい、危険にさらされる前に保護して、そのまま拘束した。グリゼルダさんが同行して、文官を暗殺しようとしていた暗殺者を仕留めてくれたんだ」


 「連中は暗殺者ギルドの中でも末端の使い捨てだったから、誰から依頼を受けたのか、本人たちも知らなかったみたいだけどね。暗殺者に狙われる心当たりがあったらしいけど、文官も口を閉ざして、質問には何も答えようとはしなかったけど・・・」


 「わたくしが少々2、30発ほど殴りつけたら、大人しく、全部白状してくれましたわ♥」

 

 その数で「少々」とは言わない。

 きっと今頃文官は、顔が腫れあがって、元の顏が誰だったのか、分からない状態に陥っていることだろう。


 「あとは、オリヴィアのことや、トーマを連れていかれた腹いせで、関節技のフルコースをお見舞いして、足腰がしばらくの間立たなくなるまで、痛めつけていただろうが」


 「あらあらまあまあ、あれでも、まだ物足りないぐらいなんですよ?」


 「鬼か、アンタは・・・」


 「・・・あんなえぐい拷問は、俺だって見たことがねえっていうか、あそこまでやるかっていう気持ちになるぐらいだったからな」


 桜でさえも顔色が悪くなるほどのオーバーキルをやらかしても、まだ気が済まないぐらいに、腹が立っていたんですか!?


 「・・・オルグレン公爵やアーシュラ国王は、今度の婚約破棄と、側室との再婚話を聞いて、怒り心頭らしいんだ。元々、この結婚はオルグレン公爵の先代当主と、先代のアムレット国王と話し合った末に決まった結婚でな。先代のアムレット国王が、オルグレン公爵に頭を下げて頼み込んだそうだ。それで、アルビナ王妃様をアムレットに嫁がせたんだ。その婚約によって、サビアは自国で管理しているオアシスの土地の一部をアムレットに譲渡して、アムレットとサビアの友好の橋渡しも担うほどの、重要なものだったんだよ」


 政略結婚ってヤツか。


 まあ、この世界においては、近隣国と同盟を組んで、他国からの侵略や干渉を防いだり、お互いに協力し合って国を繁栄させる政策の一環として、政略結婚が行われるのは別に珍しい話ではないらしい。


 「アムレットは優れた占星術師や回復術士を過去に何人も生み出してきた、伝統のある国なんだけどね。サビアと比べて、資金が少ない貧しい国だったから、治水に必要な資金が足りなかったのさ。川の氾濫が起こるたびに、領地に被害が出るから、治水の技術と莫大な資産を持つサビアに、公爵令嬢を嫁がせるから、治水の整備に力を貸してほしいと頼み込んだんだ」


 「それで、アルビナ様は今のアムレット国王と結婚して、王妃様になったというわけなんだね」


 「・・・二国の治水が完璧に行われれば、水道を整備して、近隣諸国に水道を敷いて、水不足の問題を解決することが出来る。そうなれば、サビアとアムレットは、他国と手を組んで協力することで、この地域の国を一つにまとめ上げる事が出来る。そうなれば、この地域一帯が盛り上がって、経済も潤うし、民が安全に暮らせる国を作れると思うたんや」


 「だから、治水や外交に力を入れていたんですね」


 「・・・・・・でもさ、それなら、今度の婚約破棄って、相当マズイんじゃないの」


 「そりゃそうだろう。夫婦仲が悪いから別れるという話で済む問題じゃないし!てか、何を考えているの、あのバカ国王は。先代の国王が、自国が近隣国と手を取り合って、友好を結ぼうとしているのに、それを全部パーにしてしまったのだからな」


 今や、アルビナ王妃様との婚約破棄、さらには偽造した書類を使って冤罪で罪人に仕立て上げたことが全て報告されて、アムレット国王の命はまさに風前の灯火の状態だ。近隣国からは非難の声が上がり、アムレットは現在、孤立無援の状態を迎えている。


 アルビナ王妃様と、アンジェリカ王女様って近隣諸国の間でも、国を建て直すために必死で頑張ってきた功労者として認められていたのだ。そんな王妃様たちを切り捨てるなんて、アムレット国王の気が触れたとしか思われないだろう。


 「・・・もう大陸中の国に、婚約破棄の一件は発表してしまったしな」


 「そんなことをすれば、非難轟々になることなど、火を見るよりも明らかだろうよ」


 この国王様って、無能だけど、無駄に行動力があり過ぎるのが問題だよな・・・。

 世間ではありえないと思うようなことを、全力投球でやってしまう性格らしい。


 「・・・国王としての使命よりも、個人の感情を優先するとか、マジでありえねえだろうよ・・・」


 国王として、初めからコケているわけだしね。

 自分の無能さを棚に上げて、王妃様に嫉妬して、悔しいから当てつけで浮気をするわ、その上、冤罪を仕掛けて婚約を破棄し、罪人に仕立て上げるわじゃ、もうこれ、どうしようもないだろうよ。


 「アムレットの先代もひどいことをしたよな。もはや血が繋がっているという話だけじゃ、次代を継がせるのは無理なレベルのクズじゃん。息子の性格の矯正に、他国を巻き込むなよって話」


 「国王陛下が直々に頭を下げて頼まれたら、公爵でも断れないからね。ましてや、アムレットとサビアの友好を結ぶ政策の一環なわけだし。王妃様はそれで、一生懸命仕事を頑張ってきたわけだし」


 「・・・前々から、ベアトリクス陛下は、アムレット国王とは社交の場で何度か顔を合わせたことがあったらしいのだがな、いつか盛大にやらかすだろうと思っていたそうだ。他国の代表が集まっている場で、平気で自国の自慢話や、他国の悪口を話すからな。王妃様や宰相が窘めても、一度興奮したら手が付けられなくなるらしい」


 「・・・国王陛下を、やっぱり、始末しておけばよかったんやな・・・」


 アンジェリカ王女が、ぽつりとつぶやいた。


 「お、おい、アンジェリカ・・・!」


 「・・・おかんや大臣がいくら注意をしても、オトンは聞き入れようとはせえへんかった。政略結婚やとしても、いつかはオトンも国王としての自覚を持つようになれば、他国の人の前で、自国の恥になるような行為はしなくなると、心のどこかで期待しとった。オトンとおかんの間に、愛情っちゅうモンがなかったとしても、国を支えていくために、お互いに協力し合って、アムレットを盛り上げてくれるなら、ウチはそれでよかったんや。それが、王族としての宿命やからな」


 アンジェリカ王女は、顔を上げて、まっすぐ僕たちを見つめて言い切った。


 「・・・せやけど、他国の人にまでこれほど迷惑をかけるようなら、もう、おしまいや。【彩虹の戦乙女】の皆さん、この度はご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ございません。これ以上、オトン・・・アムレット国王がとんでもないことをやらかす前に、どうか、あの男を容赦なく潰してください。あの男は、もう、父親でも、国王でもありません・・・!」


 父親との絶縁宣言を口にして、アンジェリカ王女は深く頭を下げた。


 「でも、もしそうなったら、王族の貴方たちだって無事じゃ済まなくなるかもしれないよ?」


 「・・・もう覚悟は決めました。娘がこんなことを言わなくてはならなくなるまで、追い詰めてしまったことには、私も責任があります。ウチらがもしいなくなるようなことになっても、アムレットと言う国はなくならないことでしょう。今こそ、アムレットは生まれ変わるべきなのです。どうか、お力をお貸ししてください。この通りでございます・・・!」


 国王の暴走を止められなかった、王族としてのけじめをとることを選んだ二人の表情には、迷いはなかった。もし、自分が死ぬことになっても、覚悟は決めたと言った表情だ。


 王妃様たちが下した結論に、僕たちは、かける言葉を失っていた。

アムレット国王、無能なくせに、無駄に行動力があり過ぎるせいで、やらかしまくってます。

「彩虹の戦乙女」には手を出すなと言われているのに、話を聞かないで、斗真を誘拐する。

先代国王がアムレットが他国と友好を結ぶ一環として、婚約を取り付けたのに、破棄しておじゃんにする。

冤罪まで仕掛けて、罪人に仕立て上げる。

クロス王国と手を組んで、禁書を手に入れようとする。


これ、もう確実に積みましたな・・・。

国王と、クロスの勇者たちに強烈なざまぁを下しますので、これからもよろしくお願いいたします!


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