第七話「クロス聖王国の落日①~セルマ、崩壊~」
本日二回目の投稿をいたします!
そして、100話まで書き上げました!!
これも全て読者の皆様の暖かい応援のおかげです!!
これからも頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします!
本当にありがとうございます!!
【桜視点】
「・・・・・・」
「だーっはっはっは!さっすがトーマ!よくやったぁ!お前は最高の弟分だぜ!!」
「ククク・・・!まさか、ここまでやるとはな!お姉ちゃんは、お前が弟であることに、誇りに思うぞ!」
斗真からの連絡を受けて、表情が固まり、凍り付いてしまったベアトリクス陛下に対して、レベッカさんたちは大爆笑していた。
いや、斗真に全て丸投げしたら、こんな結果になることなんて、予想がつくことでしょうに。
アイツが気弱で大人しくて、争いことを好まない、子犬のような性格だと思っていたのか?
あり得ない。
アイツは、自分たちにとって「敵」と見なした相手には、容赦なく喉笛に噛みついて、息の根を止めるまで攻撃の手を緩めることはない、闘犬そのものでしょうが!
まあ、さすがに予想以上の展開に、言葉を失うのは分かる気がするけどさ。
あくまでも、王妃様と王女様、オリヴィアさんを救出してくることが主な目的だったはずだよね?
それなのに、王妃様たちと意気投合して、廃墟の監獄を焼き払うなんて、誰が想像できる?
誰が、王国に先制パンチで、砦を2つも稲妻で吹き飛ばすなんて、想像できる?
現在、アムレットは未曽有の大混乱に陥っているらしい。
そりゃそうだろうな。いきなり巨大な稲妻が落ちて、砦を丸ごと吹き飛ぶような事件が立て続けに起きれば、どこの国だって混乱に陥ることだろう。
しかも、死人はおろか、けが人も出ていない。
稲妻がまるで、砦だけを破壊するかのように落下して、吹き飛ばすなんて言う現実離れした展開なんて、驚くしか他にないよな。
「・・・アムレットは、今度の騒ぎで、大陸中から注目を浴びることになるわね」
「ああ、ここまでの大騒ぎになれば、アムレットはハチの巣をつついたような大騒ぎになります」
「そんな時に、王妃との婚約破棄や国家転覆の真相について突かれたら、アムレットがボロを出す可能性が高いわね」
「アムレット国王が暴露した、クロス王国と裏で繋がっていたことも追及されれば、クロスに決定的なダメージを与える事が出来るな。数々の不祥事が続き、同盟国が離れていき、もはや今のクロスは孤立無援の状態だ。ここでもし、禁忌に手を出していたことが世界中に知られたら、国王とセルマの極刑は免れない。そうなれば、クロスは間違いなく滅亡するだろうな」
アムレット王、本当に無能だったんだな・・・!
というか、無能の癖に、行動力があり過ぎるだろう。
その結果、自分が裏でやっていた悪事が全部バレた上に、クロスも巻き込んで、自滅の運命を辿ることになるんだから。まさかアムレット王がここまで使えないとは、クロスも想像していなかっただろう。
「まあ、クロスには同情はしないわ。こんなことになったのも、禁忌に手を出したり、見境がつかなくなっていたことが原因なんだから。このまま一気に、クロスを潰す。あの国は、もはやこの世界にあってはならない害悪でしかないわ」
ベアトリクス陛下は呆れつつも、すぐさま、表情を引き締めて、椅子から立ち上がった。
「これから、四国同盟の国王たちに召集をかけて、クロスに正式な抗議を行うわ。アムレット国王のこの証言と、オラドールの里で回収したパラケルススの魔石に、人体実験の記録、これだけの証拠が揃えば、もう言い逃れは出来ないからね」
「オレたちは、斗真が戻ってきた後に、王妃様たちの保護と護衛を担当する班と、ネクロノミコンを手に入れようとしているクロスの勇者たちを追い詰める班に分かれて、行動に移すということでいいんだよな?姐さん」
「上出来よ。クロスへの一番槍は、私たちに任せておきなさい」
ベアトリクス陛下は、唇の端を釣り上げて、悪鬼羅刹のような表情を浮かべると、拳の骨をバキボキと鳴らしながら、威圧を全身から放った状態で、部屋から出て行った。
すれ違う時に「やっとあのクロスに引導が渡せる・・・!」と、物騒な笑みを浮かべていた辺りからして、マジで殺る気マンマンといったところだろうな。
さてと、こっちはこっちで、禁書を手に入れて、大陸を支配しようなどとバカなことを考えている、のぼせ上った国王へのお仕置きを、きっちりとやらねえとな?
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
セルマは一人、薄暗くじめじめとした牢屋に投獄されていた。
ベッドのシーツや枕が素手で引きちぎられてぶちまけられており、壁には、拳で殴って出来た穴がいくつも空いている。両手には手枷がはめられて、脚には鎖でつながれており、自由に動き回ることさえもできない。
荒れ果てた牢獄の中で、セルマは、髪の毛を両手でかきむしりながら、ブツブツと独り言をつぶやき続けていた。
「おしまいだ、おしまいだ、もう、何もかもおしまいです。どうしてこんなことになったのですか。パラケルススの魔石を使って、勇者を異世界から召喚して、邪魔な魔王軍を一掃して、未来永劫、クロス王国が世界の絶対的な英雄として、崇められ、私が功労者として称えられるはずだったのに」
目は血走っており、目の下には何日間も眠っていないのか、クマが浮かんでいる。
肌も荒れており、風呂に入ることも出来なかったせいか、彼女の身体からは汗の匂いと、鼻につく不潔な匂いが漂っていた。腕の至る所には、彼女が自分でひっかいた傷が蚯蚓腫れを起こしている。
オラドールの里の一件が失敗に終わり、パラケルススの魔石に手を出していたことや、人間を魔物に作り変えるおぞましい人体実験を行っていた証拠の映像や画像が世界中の都市に流れたことで、クロスには、休むことなく、苦情や抗議の知らせが殺到していた。
イグナーツ国王は、体調不良という理由で、離れに引きこもってしまった。
そして、このような不祥事が立て続けに起きた原因は、全て、自分のせいであると厳しく叱責され、罵倒され、挙句の果てには王宮魔導師の資格を奪われてしまった。
『お前が勝手に、我の許可もなく、このような事態を引き起こしたとして、お前には国家転覆の罪で極刑を命じる!!お前の首を差し出して、このクロスが助かるのならば、せめて最後は我が国の存続のために、大義のための犠牲となるのだ!!処刑の時が来るまで、牢屋の中で、己の罪を悔いるがいい!!』
これが、イグナーツ王からの餞別の言葉であった。
これまでずっと、国王の命令に忠実に従い続けてきたにも関わらず、王は自分をあっさりと切り捨てたのだ。まあ、国王の命令で一連の事件を計画して、実行したことについては証拠が挙がっているため、国王自身の罪が暴かれるのも時間の問題なのだが、国王はあくまでも、全てセルマが勝手にやったことだとわめき散らした。非常に見苦しい、悪あがきである。
そして、魔力を封じ込める首輪を無理矢理つけられてしまい、セルマは魔法さえも使えなくなってしまった。
「・・・梶斗真!全てはアイツのせいですわ!アイツがクズ勇者たちなんかに、あっさりと追放されなければ、こんなことにはならなかったのです。そして、幕ノ内桜も、私のやること為すことにいちいち口を出してこなければ、こんなことには、ならなかったんだぁぁぁっ!!う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーっ!!!」
セルマが血走った眼をギョロギョロとせわしなく動かしながら、壁を殴りつける。
壁にひびが入り、手の皮が破けて血がにじんでも、もはや理性を失った獣のように暴れて、止めるものがいないせいか、彼女の興奮はさらにエスカレートしていく。
「私は悪くない!悪いのは、全部アイツらだ!梶斗真、幕ノ内桜、使えないクズ勇者たち、自分勝手な国王、英雄を常に求め続ける愚かな群衆、そして、死にぞこないの【七人の獣騎士】!!どいつもこいつも、私の覇道の邪魔ばかりしてくる!!皆で寄ってたかって、私のことを虐める!!全部、全部、ぜぇぇぇんぶ、アイツらのせいですわぁぁぁぁぁぁっ!!」
壁に思い切り頭突きを何度もぶつけて、彼女の額がぱっくりと割れて、血がしたたり落ちる。
彼女は自分が悪いとは、絶対に認めない。
自分がこのような惨めな展開を迎えているのは、あくまでも、他人や世界のせいだと、全ての責任を誰かのせいにし続けている。
もはや、彼女には【魔の勇者】としての誇りは、微塵も残されていなかった。
ひとしきり暴れた後、セルマは、ある妙なことに気づいた。
おかしい、これだけ暴れているのに、衛兵がやってこない。
今日は、朝から衛兵の姿が見えなかった。
それに、やけに・・・静かだ。
まるで、王宮の中の時間が止まってしまったかのような、不気味な静けさが漂っている。
「・・・どういうことですか・・・?」
その時だった。
「ぐああああああーーーっ!!」
牢屋の中に、断末魔が響き渡る。
思わず驚いて、声がする方を見ると、何かが階段を転げ落ちて、床に落ちて、そのまま動かなくなった。
よく見ると、それは、衛兵だった。
衛兵は、首が奇妙な方向に折れ曲がり、胸に穴をあけた状態で、息絶えていた。
そして、衛兵の死体を蹴り飛ばして、一人の女性が槍を持って、ゆっくりと歩いて、セルマに近づいてきた。
「・・・あ、貴方は・・・!?」
「お元気そうで何よりです、セルマ様」
それは、松本千鶴だった。
彼女は、全身に血しぶきを浴びた異様な姿で、子供のように屈託のない笑みを浮かべた。
「今更何をしにきたんですか!?貴方たちのせいで、私は、何もかもを失ったんだ!!私を殺しに来たんですか?私を殺せば、全てが闇に葬られるとでもおっしゃるつもりかしら!?」
「・・・セルマ様は、英雄になりたいんですよね?」
「はあっ・・・!?」
「私一人じゃ、英雄になるのはちょっと大変だから、手を貸してほしいかなって思いまして・・・」
そういって、千鶴はセルマの言葉には耳を貸さずに、牢屋の鍵を槍で破壊した。
牢屋の扉が開くと、千鶴はにこやかに微笑んだまま、セルマを置いて階段を上がっていく。
こっちの言葉には一切返事もせず、一方的に自分の意見だけを述べて、勝手にいなくなる千鶴の振る舞いに怒りを覚えたセルマは、階段を駆け上がって、千鶴を追いかける。
階段を上がり、廊下で立っている千鶴の後姿を見つけると、セルマは鬼のような形相で詰め寄ろうとした。
しかし、セルマの目には、予想さえしていなかった、荒れ果てた光景が広がっていた。
「・・・・・・なっ!?」
城内は、天井、床、壁、至る所に血が飛び散っていた。
そして、床を埋め尽くしているのは、胸を貫かれて絶命している、人間だった。
衛兵もいた。
メイドもいた。
貴族も、大臣の職についているものも、騎士も、皆、死んでいた。
セルマは思わず吐き気を催して、その場で胃の中のもの全てをぶちまけた。
「・・・みんな、救ってあげたんです。これでもう、この城の人たちは、苦しむことはない。私が救ってあげたんです。だって、私は勇者だから・・・」
千鶴が楽しそうに微笑みながら、血の付いた槍を持って、まるで親に褒めてもらいたい子供のように、自分がこの惨状を作り上げたことを告げる。
「・・・国王陛下、国王陛下は、どうしたんですか・・・!?」
「国王様?ああ、あの人なら、玉座の間にいますよ」
千鶴の答えを聞いた瞬間、セルマは、裸足で走り出した。
玉座の間に繋がる廊下では、大勢の人間が息絶えて、横たわっていた。
苦悶の表情を浮かべて、恐怖で引きつった表情を浮かべて、ピクリとも動かない。
血の匂いと、むせ返るような腐臭が立ち込める廊下を、セルマは必死で走る。
玉座の間の扉は開きっぱなしになっていた。
セルマが飛び込むと、彼女の瞳が大きく見開かれた。
「・・・ああ・・・あああ・・・陛下・・・!!」
玉座の間は、地獄のような光景が広がっていた。
イグナーツ国王が、よっぽど恐ろしいものを見たのか、この世のものとは思えないような、恐怖で引きつった表情で、絶命していた。
国王は巨大な氷の中に閉じ込められており、身体の至る所に、氷の棘で串刺しにされていた。
まるではりつけにされているかのように、両手を横に広げたままの状態で、心臓を槍で貫かれていた。
世界を支配しようと目論んでいた、暴君のあまりにも無残な最期であった。
セルマは全身の力が抜けて、その場に座り込み、ショックのあまりに失禁してしまった。
「国王様、これでもう、苦しまなくていいんですよね。だって、人間も魔物も、死ねば、悲しいことも苦しいことから、全部解放されるから。私、間違ってないと思うんですよ・・・多分」
イグナーツ国王、城中の衛兵や使用人たちを皆殺しにしたのは、千鶴だった。
彼女はそのことを隠そうともせずに、あくまでも、これが国王たちを救ったと、満足そうに言った。
「い・・・いや・・・い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーっ!!!!」
そこで、ついにセルマの精神が崩壊した。
目からぽろぽろと涙があふれ出し、喉が裂けんばかりに絶叫し、思考回路が真っ白になっていく。
そして、セルマに対して、千鶴は慈愛さえ感じさせるような、優しく微笑んで、彼女に話しかけた。
「・・・セルマ様、私と一緒に、この世界を救済しませんか・・・?誰からも理解されることのない、真の英雄になりましょうよ」
彼女には、罪の意識など微塵もなかった。
「死」こそが、彼女がもたらす唯一の救済だと、信じている。
この日をもって、クロスは滅亡の時を迎えた。
クロス王国、抗議をする前に、千鶴によって壊滅状態となりました。
千鶴とセルマが、本作品のラスボスとして考えております。
人間の心や感情が一切ない千鶴の暴走は留まることを知りません。
そして、精神を崩壊されたセルマの運命は・・・?
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!!




